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第1章 邂逅
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逃げるようにして東雲契から離れる俺、ゼクス・ファーヴニルと。
必死についてくる冷撫がスタジアムについた頃には、入学式は既に終わっていた。
スタジアム前の巨大な電光掲示板には、新入生100人の名前と。
それらがどの、クラスに所属することになるのか表示されている。
実際には朝の時間だけ生徒が利用する「仮」のモノでしかないが、まあいい。
――俺は、先程の事を考えていた。
東雲契は変わった。
まず、顔はまるっきり変わった。如何にもな令嬢っぽくなっていた。
声も変わり、立ち振る舞いも変わりすぎて本人だと気づかなかったくらい。
しかし、正体が分かった後に見返してみれば、その面影は残っていた。
そもそも、性格は変わっていないようにもみえる。
――勿論、建前では感謝を述べていたが。
その瞳の奥に「助けられて当たり前」と言わんばかりの驕りが見え隠れしていたのを、俺は見逃さなかった。
普段は蒼穹城家の影に隠れて大人しくしているから、もし何かの問題を起こしたとて。
周りには「東雲さんが、そんなことするわけないでしょう」と周りを味方につけるのは簡単だろう。
だからこそ、彼女に復讐するのは一番タイミングを考えなければならない。
――いや、全員同時に最初の一撃は与える。
学園生活を送っているうちに、絶対。
合同訓練や必修科目などといったチャンスは訪れるだろうから。
その時が狙い目だ。
「冷撫、出来るだけ離れないで」
「はい」
俺の言葉に対して、冷撫は返事と俺の手を握ることで応える。
何故たった100人しかいない筈の新入生で、これだけごった返している意味がわからないが。
取り敢えずは、はぐれないように対策をするべき。
入り口で集まっているグループを押し分けるようにして、掲示板がよく見えるポジションまで移動する。
「んー、――あっ。ありました」
冷撫がいち早く見つけたのか、掲示板の上の方を指さす。
「このクラス分けを決めた人、誰だよ」
頭を抱えたくなる衝動を、必死に俺は抑えていた。
特殊階級【八顕】と、それに続く【三劔】で会わせて11家。
俺はファーヴニル家として参加でも、総数は変わらず11で。
加えて東雲や鈴音の名前まで。
つまり1クラス25人中、実に半数以上が【八顕】の次代候補とその関係者になっているのだ。
「ちょっと、これは」
一般家庭出身の新入生は、生きた心地がしないだろう。
俺が普通の家庭から生まれていたら、絶対に不登校になる。
唯一の救いは、この学園が単位制で。
運が良ければ必修科目以外会わなくても済むことか。
「お、いたいた」
なんとも言えない気持ちで冷撫と2人、掲示板を見つめていると。
野蛮と知的、相反する2つの要素を何故か兼ね備えている男――。
アマツがやってきた。
――その機嫌はなんとなく、悪そうだ。
「入学式はどうだった?」
「普通。――強いて言えば、蒼穹城が首席で腹が立ったくらい」
彼の言葉に、俺は黙って頷いた。
そのくらい分かっている。本当に奇跡に近いタイミングであるのだが、今年は11家全員が同じ年に入学するという――。
いや、した。
実際今そういう状況なのだ。
「ほら、あそこだ」
アマツの指さした方向に目を向けると、確かに蒼穹城がいる。
先程「助けてしまった」少女……東雲契と。
『元』兄、刀眞遼と。
そして、名前の知らない深緑の髪をした少年と何やら話をしていた。
「あそこにいるのは善機寺の坊やだな」
視線を察して、アマツが説明してくれる。
俺はそんな彼に、ありがとうと礼を言おうとして――。
『失望したよ。君は特別優秀な人間だと思っていたのに、兄と違ってとんだ劣等種(ゴミ)だったなんてねぇ』
突然、頭に5年前の記憶がフラッシュバックした。
急激な吐き気と頭痛に、思わず口を塞ぎ、出来るだけ不自然にならないように座り込む。
「ゼクス!?」
アマツの声に、心配ないと手を制して、ゆっくりと深呼吸をする。
――人を見て吐き気がする、ってのは本当にあるんだ。
今初めて体験したが、気持ち悪すぎる。
「よっこいしょ」
「座ってて大丈夫ですよ?」
立ち上がり、直ぐにふらついた俺を冷撫が支えた。
今から復讐しようとしているのに、こんな体たらくではいられない。
ただ、これは。
「確実にトラウマだな」
「……そりゃな。お前の今の人生がどうあれ、人生を大きく変える原因でもある」
――あのとき、蒼穹城や刀眞が俺を見捨てなかったら、とか。
そういうことを考えた事がないわけではない。
しかし、俺は今の生活の方がいいと、心の奥底から感じている。
「今日は私達が説明しておきますから、ゼクスくんは先に寮で休んで下さい」
冷撫の言葉に、力なく笑う。
そうだな……。
学園生活の一日目からダウンなんてあまりやりたくないが、まあいいか。
……とりあえず、寮に行って寝よう。
片付けも何も済んでいないが、寝ることくらいは可能だろう。
必死についてくる冷撫がスタジアムについた頃には、入学式は既に終わっていた。
スタジアム前の巨大な電光掲示板には、新入生100人の名前と。
それらがどの、クラスに所属することになるのか表示されている。
実際には朝の時間だけ生徒が利用する「仮」のモノでしかないが、まあいい。
――俺は、先程の事を考えていた。
東雲契は変わった。
まず、顔はまるっきり変わった。如何にもな令嬢っぽくなっていた。
声も変わり、立ち振る舞いも変わりすぎて本人だと気づかなかったくらい。
しかし、正体が分かった後に見返してみれば、その面影は残っていた。
そもそも、性格は変わっていないようにもみえる。
――勿論、建前では感謝を述べていたが。
その瞳の奥に「助けられて当たり前」と言わんばかりの驕りが見え隠れしていたのを、俺は見逃さなかった。
普段は蒼穹城家の影に隠れて大人しくしているから、もし何かの問題を起こしたとて。
周りには「東雲さんが、そんなことするわけないでしょう」と周りを味方につけるのは簡単だろう。
だからこそ、彼女に復讐するのは一番タイミングを考えなければならない。
――いや、全員同時に最初の一撃は与える。
学園生活を送っているうちに、絶対。
合同訓練や必修科目などといったチャンスは訪れるだろうから。
その時が狙い目だ。
「冷撫、出来るだけ離れないで」
「はい」
俺の言葉に対して、冷撫は返事と俺の手を握ることで応える。
何故たった100人しかいない筈の新入生で、これだけごった返している意味がわからないが。
取り敢えずは、はぐれないように対策をするべき。
入り口で集まっているグループを押し分けるようにして、掲示板がよく見えるポジションまで移動する。
「んー、――あっ。ありました」
冷撫がいち早く見つけたのか、掲示板の上の方を指さす。
「このクラス分けを決めた人、誰だよ」
頭を抱えたくなる衝動を、必死に俺は抑えていた。
特殊階級【八顕】と、それに続く【三劔】で会わせて11家。
俺はファーヴニル家として参加でも、総数は変わらず11で。
加えて東雲や鈴音の名前まで。
つまり1クラス25人中、実に半数以上が【八顕】の次代候補とその関係者になっているのだ。
「ちょっと、これは」
一般家庭出身の新入生は、生きた心地がしないだろう。
俺が普通の家庭から生まれていたら、絶対に不登校になる。
唯一の救いは、この学園が単位制で。
運が良ければ必修科目以外会わなくても済むことか。
「お、いたいた」
なんとも言えない気持ちで冷撫と2人、掲示板を見つめていると。
野蛮と知的、相反する2つの要素を何故か兼ね備えている男――。
アマツがやってきた。
――その機嫌はなんとなく、悪そうだ。
「入学式はどうだった?」
「普通。――強いて言えば、蒼穹城が首席で腹が立ったくらい」
彼の言葉に、俺は黙って頷いた。
そのくらい分かっている。本当に奇跡に近いタイミングであるのだが、今年は11家全員が同じ年に入学するという――。
いや、した。
実際今そういう状況なのだ。
「ほら、あそこだ」
アマツの指さした方向に目を向けると、確かに蒼穹城がいる。
先程「助けてしまった」少女……東雲契と。
『元』兄、刀眞遼と。
そして、名前の知らない深緑の髪をした少年と何やら話をしていた。
「あそこにいるのは善機寺の坊やだな」
視線を察して、アマツが説明してくれる。
俺はそんな彼に、ありがとうと礼を言おうとして――。
『失望したよ。君は特別優秀な人間だと思っていたのに、兄と違ってとんだ劣等種(ゴミ)だったなんてねぇ』
突然、頭に5年前の記憶がフラッシュバックした。
急激な吐き気と頭痛に、思わず口を塞ぎ、出来るだけ不自然にならないように座り込む。
「ゼクス!?」
アマツの声に、心配ないと手を制して、ゆっくりと深呼吸をする。
――人を見て吐き気がする、ってのは本当にあるんだ。
今初めて体験したが、気持ち悪すぎる。
「よっこいしょ」
「座ってて大丈夫ですよ?」
立ち上がり、直ぐにふらついた俺を冷撫が支えた。
今から復讐しようとしているのに、こんな体たらくではいられない。
ただ、これは。
「確実にトラウマだな」
「……そりゃな。お前の今の人生がどうあれ、人生を大きく変える原因でもある」
――あのとき、蒼穹城や刀眞が俺を見捨てなかったら、とか。
そういうことを考えた事がないわけではない。
しかし、俺は今の生活の方がいいと、心の奥底から感じている。
「今日は私達が説明しておきますから、ゼクスくんは先に寮で休んで下さい」
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