11 / 39
第1章 邂逅
アマツの憂鬱
しおりを挟む
『最後になるが、入学試験の成績優秀者を発表する』
――っはぁ。
やっと終盤にさしかかってきた。
気づかれないように欠伸をしつつ、俺……火威天は椅子に座り直す。
入学式の会場になっているスタジアムは、八顕学園の中でも小さい方だという。
観客席はたった2000人「しか」入れない。
最大のスタジアムは1万人収容可能なんて謳っているんだが、それは滅多なことが無い限り使わないんだろう。
それにしても、話が長いんだよな。
学園長の話は兎も角として、【顕現】の属性説明だとか、【顕装】の使用制限だとか。
そういう話は俺達にとって、一般常識の範囲内だ。
――全く知らないで、この学園に来る人の方が少ないっての。
きちんとした勉強は初めてです、って言う人でも。
自分の能力くらいは把握できてるだろ、普通。
……はぁ。俺も次席にならず、もう少し手を抜けば。
今頃ゼクスや、鈴音と一緒に学園散歩が出来ていたころだったのによ。
『次席、火威天!』
「はい」
おっといけねー。
呼ばれた。
俺は条件反射じみた返事をし、立ちあがる。
席移動の時間だ。今し方座っていた観客席の方からフィールドへ移動し、スタジアムの中央部に向かう。
――クソほど恥ずかしいな。やっぱり来るべきじゃなかった。
すれ違っていく中で、「火威家の長男で次席って、首席は誰なんだ?」とか、「全く知的に見えないんだけど」とか、勝手な事をこそこそと言わているのがわかる。
面と向かっては口が裂けても言えなさそうなのに、こう言うときだけ調子に乗りやがる。
俺は怒りの沸点が低いんだ。
そういうことを耳にすると、「おうおう、野蛮にみえて悪かったな」と口を挟みたくなるが、考えた野蛮な考えを振り払う。
こんなところで騒ぎなんて起こしてたら、迷惑を被るのは火威家全体だ。
――八顕学園に入る以上。覚悟をしてきているはずなんだし落ち着け、自分。
案内された特別席は、ちょうど「その他」の新入生と対面するように配置されていた。
座り込むと俺はとりあえず「アイツら」が居るか目で確認する。
勿論、【八顕】と【三劔】の奴らのこと。
ああ、居るわ。合わせて3グループか、それぞれの関係が目に浮かんでくるぜ。
「こちら側」の人たちが、軽く礼をしたり、手を振ったりするのが見えた。応えるように、そちらを見て頷いてみせる。
さてさて、首席は――まあ、誰かは分かっていた。
『首席入学者、蒼穹城進!』
……ああ、俺はコイツを知ってる。
知らないわけがない。毎年の【八顕】の定例会議で良く会うし、ゼクスから話も聞いている。
その一見中性的で優しげな、整った顔も。
「蒼穹城」という名字が示すとおりの、青空のような髪も。
幽玄な、オレンジ色の瞳に隠されている――人を見下しきったそれも。
コイツが、5年前にゼクスを見捨てた奴だ。
同時に、ゼクスを殺そうと画策した野郎だ。
「久しぶりだね、火威君。――君はどうして、僕をそんなに睨みつけているのかな?」
隣に、俺とは対照的に。
優雅な動きで座った彼は、こちらを横目で見ながら話しかけてきた。
「さぁな。……自分の胸によく聞いてみな」
「僕にはわかんないな」
俺達が多少の私語をしたところで、それを止める人も咎める人もいない。
生徒達には聞こえていないだろうし、周りの大人たちも、俺達へ手出ししにくいのだろう。
まあ、だからこそ目の前のコイツみたいな野郎がつけあがるんだよ。
影響力を持っているのは一族であり、現当主であるのに、自分も王様か何かになったような態度をしやがる。
『では、蒼穹城君。入学生代表の挨拶を』
「はい」
こちらが腹立つほど爽やかに返事をした彼は。
俺の方を見て「じゃあ、またお話しようか」と一見優しげに笑いかけると、背を向ける。
別に俺は、話をしたくないんだがな。
親の代から仲が悪いんだし。
――っはぁ。
やっと終盤にさしかかってきた。
気づかれないように欠伸をしつつ、俺……火威天は椅子に座り直す。
入学式の会場になっているスタジアムは、八顕学園の中でも小さい方だという。
観客席はたった2000人「しか」入れない。
最大のスタジアムは1万人収容可能なんて謳っているんだが、それは滅多なことが無い限り使わないんだろう。
それにしても、話が長いんだよな。
学園長の話は兎も角として、【顕現】の属性説明だとか、【顕装】の使用制限だとか。
そういう話は俺達にとって、一般常識の範囲内だ。
――全く知らないで、この学園に来る人の方が少ないっての。
きちんとした勉強は初めてです、って言う人でも。
自分の能力くらいは把握できてるだろ、普通。
……はぁ。俺も次席にならず、もう少し手を抜けば。
今頃ゼクスや、鈴音と一緒に学園散歩が出来ていたころだったのによ。
『次席、火威天!』
「はい」
おっといけねー。
呼ばれた。
俺は条件反射じみた返事をし、立ちあがる。
席移動の時間だ。今し方座っていた観客席の方からフィールドへ移動し、スタジアムの中央部に向かう。
――クソほど恥ずかしいな。やっぱり来るべきじゃなかった。
すれ違っていく中で、「火威家の長男で次席って、首席は誰なんだ?」とか、「全く知的に見えないんだけど」とか、勝手な事をこそこそと言わているのがわかる。
面と向かっては口が裂けても言えなさそうなのに、こう言うときだけ調子に乗りやがる。
俺は怒りの沸点が低いんだ。
そういうことを耳にすると、「おうおう、野蛮にみえて悪かったな」と口を挟みたくなるが、考えた野蛮な考えを振り払う。
こんなところで騒ぎなんて起こしてたら、迷惑を被るのは火威家全体だ。
――八顕学園に入る以上。覚悟をしてきているはずなんだし落ち着け、自分。
案内された特別席は、ちょうど「その他」の新入生と対面するように配置されていた。
座り込むと俺はとりあえず「アイツら」が居るか目で確認する。
勿論、【八顕】と【三劔】の奴らのこと。
ああ、居るわ。合わせて3グループか、それぞれの関係が目に浮かんでくるぜ。
「こちら側」の人たちが、軽く礼をしたり、手を振ったりするのが見えた。応えるように、そちらを見て頷いてみせる。
さてさて、首席は――まあ、誰かは分かっていた。
『首席入学者、蒼穹城進!』
……ああ、俺はコイツを知ってる。
知らないわけがない。毎年の【八顕】の定例会議で良く会うし、ゼクスから話も聞いている。
その一見中性的で優しげな、整った顔も。
「蒼穹城」という名字が示すとおりの、青空のような髪も。
幽玄な、オレンジ色の瞳に隠されている――人を見下しきったそれも。
コイツが、5年前にゼクスを見捨てた奴だ。
同時に、ゼクスを殺そうと画策した野郎だ。
「久しぶりだね、火威君。――君はどうして、僕をそんなに睨みつけているのかな?」
隣に、俺とは対照的に。
優雅な動きで座った彼は、こちらを横目で見ながら話しかけてきた。
「さぁな。……自分の胸によく聞いてみな」
「僕にはわかんないな」
俺達が多少の私語をしたところで、それを止める人も咎める人もいない。
生徒達には聞こえていないだろうし、周りの大人たちも、俺達へ手出ししにくいのだろう。
まあ、だからこそ目の前のコイツみたいな野郎がつけあがるんだよ。
影響力を持っているのは一族であり、現当主であるのに、自分も王様か何かになったような態度をしやがる。
『では、蒼穹城君。入学生代表の挨拶を』
「はい」
こちらが腹立つほど爽やかに返事をした彼は。
俺の方を見て「じゃあ、またお話しようか」と一見優しげに笑いかけると、背を向ける。
別に俺は、話をしたくないんだがな。
親の代から仲が悪いんだし。
0
あなたにおすすめの小説
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる