四煌の顕現者:ゼクス・ファーヴニルの復讐譚

鶴生世乃

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第1章 邂逅

アマツの憂鬱

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『最後になるが、入学試験の成績優秀者を発表する』

 ――っはぁ。

 やっと終盤にさしかかってきた。
 気づかれないように欠伸をしつつ、俺……火威ひおどしアマツは椅子に座り直す。

 入学式の会場になっているスタジアムは、八顕学園の中でも小さい方だという。
 観客席はたった2000人「しか」入れない。

 最大のスタジアムは1万人収容可能なんて謳っているんだが、それは滅多なことが無い限り使わないんだろう。

 それにしても、話が長いんだよな。
 
 学園長の話は兎も角として、【顕現オーソライズ】の属性説明だとか、【顕装アーティファクト】の使用制限だとか。
 そういう話は俺達にとって、一般常識の範囲内だ。
 ――全く知らないで、この学園に来る人の方が少ないっての。

 きちんとした勉強は初めてです、って言う人でも。
 自分の能力くらいは把握できてるだろ、普通。
 ……はぁ。俺も次席にならず、もう少し手を抜けば。

 今頃ゼクスや、鈴音すずねと一緒に学園散歩が出来ていたころだったのによ。

『次席、火威天!』
「はい」

 おっといけねー。
 呼ばれた。

 俺は条件反射じみた返事をし、立ちあがる。
 席移動の時間だ。今し方座っていた観客席の方からフィールドへ移動し、スタジアムの中央部に向かう。

 ――クソほど恥ずかしいな。やっぱり来るべきじゃなかった。

 すれ違っていく中で、「火威家の長男で次席って、首席は誰なんだ?」とか、「全く知的に見えないんだけど」とか、勝手な事をこそこそと言わているのがわかる。
 面と向かっては口が裂けても言えなさそうなのに、こう言うときだけ調子に乗りやがる。

 俺は怒りの沸点が低いんだ。
 そういうことを耳にすると、「おうおう、野蛮にみえて悪かったな」と口を挟みたくなるが、考えた野蛮な考えを振り払う。
 こんなところで騒ぎなんて起こしてたら、迷惑を被るのは火威家全体だ。

 ――八顕学園に入る以上。覚悟をしてきているはずなんだし落ち着け、自分。

 案内された特別席は、ちょうど「その他」の新入生と対面するように配置されていた。
 座り込むと俺はとりあえず「アイツら」が居るか目で確認する。

 勿論、【八顕はちけん】と【三劔ミツルギ】の奴らのこと。
 ああ、居るわ。合わせて3グループか、それぞれの関係が目に浮かんでくるぜ。

 「こちら側」の人たちが、軽く礼をしたり、手を振ったりするのが見えた。応えるように、そちらを見て頷いてみせる。
 さてさて、首席は――まあ、誰かは分かっていた。


『首席入学者、蒼穹城そらしろしん!』


 ……ああ、俺はコイツを知ってる。
 知らないわけがない。毎年の【八顕】の定例会議で良く会うし、ゼクスから話も聞いている。

 その一見中性的で優しげな、整った顔も。
 「蒼穹城」という名字が示すとおりの、青空のような髪も。
 幽玄な、オレンジ色の瞳に隠されている――人を見下しきったそれも。

 コイツが、5年前にゼクスを見捨てた奴だ。
 同時に、ゼクスを殺そうと画策した野郎だ。

「久しぶりだね、火威君。――君はどうして、僕をそんなに睨みつけているのかな?」

 隣に、俺とは対照的に。
 優雅な動きで座った彼は、こちらを横目で見ながら話しかけてきた。

「さぁな。……自分の胸によく聞いてみな」
「僕にはわかんないな」

 俺達が多少の私語をしたところで、それを止める人も咎める人もいない。
 生徒達には聞こえていないだろうし、周りの大人たちも、俺達へ手出ししにくいのだろう。

 まあ、だからこそ目の前のコイツみたいな野郎がつけあがるんだよ。
 影響力を持っているのは一族であり、現当主であるのに、自分も王様か何かになったような態度をしやがる。

『では、蒼穹城君。入学生代表の挨拶を』
「はい」

 こちらが腹立つほど爽やかに返事をした彼は。
 俺の方を見て「じゃあ、またお話しようか」と一見優しげに笑いかけると、背を向ける。

 別に俺は、話をしたくないんだがな。
 親の代から仲が悪いんだし。
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