四煌の顕現者:ゼクス・ファーヴニルの復讐譚

鶴生世乃

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第1章 邂逅

試験開始

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 実技テストには、2種類ある。
 1つは課題を提示される形の実技試験。
 1つは実戦形式の試験。

「んぁぁ。……かったりい」

 大きな伸びをしてそんな声を上げているのは、火威ひおどしアマツ。
 場所は入学式のあったスタジアム。
 ……たった今、前半の試験が終わったところだ。

 試験内容は「お題を出され、その通りに【顕現オーソライズ】を実行する」というもの。
 【顕現オーソライズ】の発動までの時間や出力などを測り、その形状で「安定度」を測る。

 今回は「近接武器」という、特段難しい課題でなくてよかった。
 定義が広い課題なら、俺でもなんとかクリアすることが出来る。

 ――5年前は、「剣」っていうのがそもそも俺には難しすぎたからな。
 俺の一番の問題点は、【顕現オーソライズ】の詠唱から発動までの時間が早すぎる点だ。

 一般的に【顕現オーソライズ】という能力は、【式】を詠唱し、その間にイメージを固めるものだ。
 前提として詠唱が終わってから能力が発動する。
 よって、相当の手練れでもない限り【式】が必要なのだが、俺の場合は違う。

 俺は速度が速すぎる。
 どんな構造になっているのか分からないけれど、身体を巡る【顕現オーソライズ】の力の通りが良すぎるのだ。
 ……だから、詠唱を引き金とするのはいいものの、詠唱途中で違うものが生成されてしまう可能性の方が高い。
 よって、突き出された結果は「安定度」が落第――、ということだ。

 でも、今回はなんとかなった。
 一応【熾火結晶ボーンファイア・クリスタル】というアイテムを使ってしまっているから、いくらかの減点はあるだろう。
 ――わざわざ、一般的にはデメリットしかないものを装備していても減点されてしまうのは、それだけ俺が異質だってことか。

「つかれた」

 試験が終わって満点を取ってきたアマツが、相変わらず文句を言っていた。
 彼に課せられたお題は「遠距離武器」だったのだが。

 アマツは日本一の顕現者育成機関の試験だからと、難しく考えすぎてしまったらしい。
 拳銃を生成したという。

 しかも、試験官がざわめくほどの速度で。
 そりゃ、つかれる。
 彼の集中力や技術の高さを実感させられる。

 ――流石、生まれながらのエリート、なんだよなぁ。

「いや、そんなことはどうでもいいんだ。
 ……実践試験の相手は誰だよ?」

 彼に訊かれ、確認する。
 スタジアムのスクリーンに、一覧になって対戦表が表示されていた。

 対戦相手の名前を見、俺はなんとも複雑な気分になった。
 しかし、手加減するわけにはいかないだろう。

 ――彼があっち側にいる限り、相手をするときはちょっと、手加減はしない方が良いかもな。

善機寺ぜんきじ
「善機寺はやてか。
 ……相手は最初から実力をさらけ出すようなことはしないだろうけど、気をつけろよ」

 さっき話を取り付けたばっかりなのに、少し悪いことをしてしまったな。
 こっちも、ここで実力をさらけ出すわけには行かないんだけれど……。

「ところで、アマツの相手は?」
「…………」

 返事はない。しかし、その目はじっと掲示板の方を見つめている。
 アマツの顔には恐ろしい程、獰猛な笑顔が浮かんでいた。

蒼穹城そらしろ

 派手な戦いになりそうだな、というのが俺の感想だ。
 もう、彼の顔に知性のかけらもない。

 今し方試験を終えて、こちらに駆け寄ってきた冷撫が、若干引きながらアマツを見つめる。

「どうしたんですか、その顔」
「対戦相手を見て」
「ああー、はい」

 一瞬で状況を把握した彼女は、とりあえずアマツから離れた。
 俺の隣に移動し、注意深く――蒼穹城の方を見る。

「でも、相手は大して力を使わないのでは?」
「関係ねーよ。――俺もしないが」

 アマツが立ちあがる。
 そして準備運動と言わんばかりに、【顕現オーソライズ】を1つ。

「元素の属せし物、名乗るしは【ほむら】。
 顕現せし様(サマ)は【大太刀おおたち】。
 ――今ここに現れよ。 
 我を【顕現者オーソライザー】たらしめる証が1つ、【朱鷺丸トキマル】!」

 唱えたのは、【八顕】に伝わる伝統的な【顕現式】だ。
 彼は【八顕】、火威ひおどし家の人間であるから、これを使うことが多いけれど……。
 正直、【顕現オーソライズ】後の出力と量は多いものの。

 詠唱が長すぎて、1対1方式ならともかく、咄嗟に【顕現オーソライズ】できないんじゃないか、という懸念が俺の中にはある。

 最初に属性を指定し。
 次にどんな形を為すのかを指定する。
 そして最後に、【顕現オーソライズ】の固有名を宣言する。

「問題なし」

 床から炎が噴きだし。
 アマツが炎の中に手を突っ込み、僅かに顕現された柄を掴む。

 炎は終熄しゅうそくに向かい、最終的に彼の手にある物は、1本の巨大な刀であった。

「それ、本戦で使うわけじゃあないよな?」
「使わねーよ。これはパフォーマンス用だ」

 周りを見てみな、と言われ。
 見回すと、確かに他の新入生達や試験官が、こちらをみて唖然としている。

 ――つまり、見せびらかすためのものだったということだ。







「まあ、確実に1撃を与えられる状況下なら、これも使える」
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