四煌の顕現者:ゼクス・ファーヴニルの復讐譚

鶴生世乃

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第1章 邂逅

試合前、対峙

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 ――スタジアムの殆どが、こちらに注目しているように感じたのは気のせいだろうか?

 いや、気のせいではないようだ。

 俺が試験の実戦フィールドに立つと、そこには既に善機寺ぜんきじはやての姿。
 無愛想なフェイスに本心を隠した男は、こちらを観察するように目を細めている。

 先程密会した、直ぐ後にこれだ。
 相手もこっちも微妙な雰囲気だが、その様子を他の誰に見せるわけにも行かないのも、同じだった。

「りょ、両者名乗りを」

 試験官の職員の声は震えていた。
 それもそうか。
 本日初めての、【八顕】の次代が参加する実戦試験である。

 その相手は、【ファーヴニル】を名乗っているとは言え、一見無名の男。
  実際は元【八顕】の落ちこぼれなんて、誰も思っていないだろうな。

善機寺ぜんきじ、颯」

 先に名乗ったのは、あちらから。
 不機嫌でどこか退屈そうな、低い声が耳に届く。

「ゼクス・ファーヴニル」

 俺も名乗る。

 善機寺の後ろの方を目の端で捉えると、そこには蒼穹城たち一団がベンチでふんぞり返っている。
 こちらの敗北を疑っていないような、そんな顔だ。

 ――いいのかね、皆の前では行儀のいい好青年気取りの蒼穹城進が、そんな格好を晒しちゃって。

 試験官がルールを説明している間、俺と善機寺は微動だにしなかった。

 まだ、こちら側についていない以上、俺が手加減する訳にはいかない。
 ……俺の復讐の為に、




 見せしめになってもらおう。

「両者、戦闘準備」
「元素の属せし物、名乗るしは【いぶき】。
 顕現せし様は【打刀うちがたな】。
 ――今ここに現れよ。 
 我を【顕現者オーソライザー】たらしめる証が1つ――【緑漆打刀拵りょくうるしのうちがたなこしらえ】!」

 フィールドを、強大な竜巻が包み込む。
 その真ん中にいるのは善機寺で、その手に徐々に【顕現オーソライズ】されているのは、一振りの刀だ。
 その刀身には、風が走るような僅かな歪みがみえている。

 周りの新入生達は、その半数が驚いていたが、【八顕】やその関係者の面々はとくに驚くこともないようだ。
 【顕現者オーソライザー】であることが確定した10歳から、今までの5年間。

 多少なりとも家庭で【顕現オーソライズ】を見たことのある人なら、あの程度なら見たことはあるのだろう。

 しかし、日常的に【顕現オーソライズ】能力を見ることのない人々は、驚いていた。

「ゼクス・ファーヴニル――、お前が、それに値するかどうかは俺が決める」


 つまりは、善機寺に勝てということだな?

 ――お安い御用だ。

 俺は試験官に、基本的には【顕現オーソライズ】しないことを伝える。
 型式に則った長い顕現式なんて使わない。

 そもそも、今回持ってきているのは青い【熾火結晶ボーンファイア・クリスタル】だ。
 蒼穹城たちが見ているところで、5年前を想起させることはしないほうがいい。

 俺は、身体に顕現力を循環させる。
 【顕現オーソライズ】より明確に形を成せないため、普通の【顕現者オーソライザー】には使いにくいだろうが、俺には一番合っているものだ。
 
 アマツによれば、この戦い方が善機寺も得意なはずなんだが……、相手は使う様子がないな。

 前哨戦に過ぎないってことか。
 こっちも、あっちも。

「……なるほど。【顕現唱術ゾーサライズ】、か」

 善機寺も納得がいったようだ。

 軽く深呼吸をして、一度だけアマツたちのを振り向く。
 アマツは「やっちまえ」とサムズアップをし、冷撫は対照的に何やら祈るように手を組んでいる。

 ――俺の暴走を心配しているんだろう。

 たしかに、昨日の校舎裏で東雲を助けてしまったとき。
 俺は暴走しかけた。

 けれど、今回は違う。
 何が違うのかは勿論、青い【熾火結晶ボーンファイア・クリスタル】だ。
 これが有るかぎり、俺が暴走することはない。

「準備が整ったら挙手を」

 俺は右手を挙げ、善機寺は左手を挙げる。

 戦いの前の緊迫感がピークに達し、体が武者震いを起こす。











「それでは、はじめっ!」
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