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第1章 邂逅
○○サイドゲーム
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合図が、あった。
「はじめっ!」
――相手が取り回しの難しい刀なら当然、懐に入り込めば何とかなる。
地面を駆ける音すら遅れて、昨日の――校舎裏での戦いとは明確違う、純粋な「凶器」となった弾丸の如く。
俺は、善機寺向かって右手を射出する。
1秒もかからない速度で肉迫した俺に、善機寺が驚いた顔をして回避行動を取ろうとしている中。
右拳は、吸い込まれるようにして相手の頬にヒット。
僅かに目で反応している男に、笑みを見せる。
「手加減するなって言うなら、手加減はしないけど」
「それでこそ……闘争、だろう。
まさか【顕現唱術】にも満たない、純粋な顕現力が主軸だとは思わなかったが……」
「アマツに聞いたところによると、善機寺家もそういうの得意だと聞いたけど?」
周りに聞こえない程度の声で善機寺と話をするが、その間も攻撃の手は休めない。
顕現力を外側に循環させていてよかった。
刀と渡り合うなんて、普通は無理だ。
一旦距離を取り、相手の隙を探す。
「さて、次は俺から行かせて貰おう」
そういった善機寺が、姿を消す。
どこに消えた? と考える前に。
後ろでも横でもなく、「意表を突く」ために前に再び出現した彼は。
そのまま刀をひっさげ、俺を切り捌く動作に入る。
上段からの恐ろしい一撃に、しかし俺は。
周りの人が息を呑むのを視認できるほど、余裕を持っていた。
防御の為に手が伸びる。
「【氷結】」
【顕現唱術】詠唱。
顕現式よりもシンプルに。
短く詠唱するこの方法は、本当に俺と合ってる。
右手で彼の刀を掴むと同時に、発動。
――手と刀が接着され、その場で止まる。
「膂力なら鍛えてるから、無駄だぞ」
押し込もうとしている善機寺に忠告し、そのまま【顕現】した武器を、膂力でたたき折る。
砕けた武器に、目を見開く善機寺。
――その程度か、なんて相手を愚弄した言葉は使わない。
いくら【八顕】が一角、【風】を司る善機寺家。
その次代候補だとしても、まだ15歳だ。
「そろそろトドメと行きますか」
唖然としている男の鳩尾に、再度殴打を開始。
女子生徒の悲鳴が上がるが、気にしないでおこう。
そのまま数回、善機寺の身体を引き寄せて蹴りも見舞っておく。
崩れ落ちた善機寺を見つめ、そのまま10カウントを待つ。
――勝利は確定した。
正直言ってしまえば。
先程は言わないようにしていた。しかし――。
手応えがなさすぎる。
――――
「あちゃぁ。あれは駄目だ」
僕、蒼穹城進はファーヴニル君と颯の戦いを見て、ため息をついていた。
完全にワンサイドゲームだし、颯は自分の【顕現】した武器に頼り過ぎ。
1撃目からモロに攻撃を受けているし、なんとも言えないな。
「ゼクス・ファーヴニルは、純粋な顕現力主軸の戦い方か。……これまた珍しいな」
遼は、戦い自体じゃなく。彼の戦い方に興味を持ったみたいだ。
確かに、面白い。
善機寺一族はその【顕現唱術】使いが多いことで有名なのに、それを彼は使わなかった。
【顕現者】としては、異端になるからね。
仕方ないと言えば仕方ないのではあるけれど。
結局それも2度しか発動させていないんだし、相当ファーヴニルくんは強いんだろうね。
『勝者――、ゼクス・ファーヴニル!』
アナウンスと共に、ファーヴニル君が僕たちから背を向ける。
目が一瞬だけ合ったんだけど、やっぱりちょっと酷いね。
――僕、何かしたのかな?
「この次の次が【火威アマツ】対【進】だけど、大丈夫か?」
「何が? あんな地味な戦いで終わるとは、おもわないけど」
僕もパフォーマンスとしてちょっとド派手にやって、それで火威君に勝てればいいや。
火威君が弱いと印象づければ――。
ファーヴニルくんも、こっちに着いてくれるかも知れないからね。
「はじめっ!」
――相手が取り回しの難しい刀なら当然、懐に入り込めば何とかなる。
地面を駆ける音すら遅れて、昨日の――校舎裏での戦いとは明確違う、純粋な「凶器」となった弾丸の如く。
俺は、善機寺向かって右手を射出する。
1秒もかからない速度で肉迫した俺に、善機寺が驚いた顔をして回避行動を取ろうとしている中。
右拳は、吸い込まれるようにして相手の頬にヒット。
僅かに目で反応している男に、笑みを見せる。
「手加減するなって言うなら、手加減はしないけど」
「それでこそ……闘争、だろう。
まさか【顕現唱術】にも満たない、純粋な顕現力が主軸だとは思わなかったが……」
「アマツに聞いたところによると、善機寺家もそういうの得意だと聞いたけど?」
周りに聞こえない程度の声で善機寺と話をするが、その間も攻撃の手は休めない。
顕現力を外側に循環させていてよかった。
刀と渡り合うなんて、普通は無理だ。
一旦距離を取り、相手の隙を探す。
「さて、次は俺から行かせて貰おう」
そういった善機寺が、姿を消す。
どこに消えた? と考える前に。
後ろでも横でもなく、「意表を突く」ために前に再び出現した彼は。
そのまま刀をひっさげ、俺を切り捌く動作に入る。
上段からの恐ろしい一撃に、しかし俺は。
周りの人が息を呑むのを視認できるほど、余裕を持っていた。
防御の為に手が伸びる。
「【氷結】」
【顕現唱術】詠唱。
顕現式よりもシンプルに。
短く詠唱するこの方法は、本当に俺と合ってる。
右手で彼の刀を掴むと同時に、発動。
――手と刀が接着され、その場で止まる。
「膂力なら鍛えてるから、無駄だぞ」
押し込もうとしている善機寺に忠告し、そのまま【顕現】した武器を、膂力でたたき折る。
砕けた武器に、目を見開く善機寺。
――その程度か、なんて相手を愚弄した言葉は使わない。
いくら【八顕】が一角、【風】を司る善機寺家。
その次代候補だとしても、まだ15歳だ。
「そろそろトドメと行きますか」
唖然としている男の鳩尾に、再度殴打を開始。
女子生徒の悲鳴が上がるが、気にしないでおこう。
そのまま数回、善機寺の身体を引き寄せて蹴りも見舞っておく。
崩れ落ちた善機寺を見つめ、そのまま10カウントを待つ。
――勝利は確定した。
正直言ってしまえば。
先程は言わないようにしていた。しかし――。
手応えがなさすぎる。
――――
「あちゃぁ。あれは駄目だ」
僕、蒼穹城進はファーヴニル君と颯の戦いを見て、ため息をついていた。
完全にワンサイドゲームだし、颯は自分の【顕現】した武器に頼り過ぎ。
1撃目からモロに攻撃を受けているし、なんとも言えないな。
「ゼクス・ファーヴニルは、純粋な顕現力主軸の戦い方か。……これまた珍しいな」
遼は、戦い自体じゃなく。彼の戦い方に興味を持ったみたいだ。
確かに、面白い。
善機寺一族はその【顕現唱術】使いが多いことで有名なのに、それを彼は使わなかった。
【顕現者】としては、異端になるからね。
仕方ないと言えば仕方ないのではあるけれど。
結局それも2度しか発動させていないんだし、相当ファーヴニルくんは強いんだろうね。
『勝者――、ゼクス・ファーヴニル!』
アナウンスと共に、ファーヴニル君が僕たちから背を向ける。
目が一瞬だけ合ったんだけど、やっぱりちょっと酷いね。
――僕、何かしたのかな?
「この次の次が【火威アマツ】対【進】だけど、大丈夫か?」
「何が? あんな地味な戦いで終わるとは、おもわないけど」
僕もパフォーマンスとしてちょっとド派手にやって、それで火威君に勝てればいいや。
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