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第2章 希望と憎悪
カフェにて
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「どうだった? ゼクスくんと対面してみて」
ゼクスと別れた一同が向かった先は、学園門から一番近い喫茶店だ。
学園関係者が営んでいる場所であるが、客は殆どいない。
――それもそのはず、ここはほぼ【八顕】専用の場になってしまっている。
従業員も、そして客も。【八顕】の、それこそ【三貴神】側につく人間ばかりだ。
「刀眞家の面影なんて、ないに等しかったでしょ?」
案内された席に、一番最初に座ったのは亜舞照奏鳳。
少年のような屈託のない笑顔を浮かべて、「私に感謝しなさい」とばかりに胸を張る。
次に座ったのが制服魔改造少女、月姫詠斬灯だ。
「……でも、やっぱりダークなところもあるかなぁ。そこも格好いいなぁ」
「どこに着目しているのやら」
色気づく斬灯に対して若干呆れた顔をしたのは、これまた制服改造少女の須鎖乃サツキだ。
無論彼女だって、ゼクス・ファーヴニルという男に興味が無いわけではない。
ただ、斬灯が進む段階が早すぎると感じざるをえない。
たった数分間で、何が分かるというのだろう?
「仕方ないでしょう。『元』は刀眞の次男とはいえ、苦しい思いをしてここまで来ている。そりゃ、大して努力を必要としなかった私達や――それ以上に属性:【雷】に恵まれて甘々に育った刀眞遼とは、レベルが違うのでしょうね」
他の【三貴神】をみやって、サツキはため息をついた。
しかし、彼女の思いとは裏腹に、奏鳳も斬灯もどこ吹く風状態である。
「古都音さんはどうなの? さっき、思いっきり見つめ合ってたけど」
「えっ?」
急に話を振られるとは思っていなかった、最後に着席した少女――終夜(よすがら)古都音は、慌ててメニューを取り落としそうになった。
顔を赤らめて、座り直し――払うように手をパタパタさせる。
「私は、別に――」
アガミはカウンターから、リラックスしたように。
しかし最低限の警戒を怠らず、女子4人の会話を静かに聞いていた。
「――ただなんとなく、彼の心の傷を私で埋めてあげられるかな、って。考えていただけです」
「ひゅーひゅー、さすがぁー。え? 本気?」
古都音の言葉を聞いて、からかおうとした奏鳳は。
彼女から発せられたあまりにも『本気』な答えに言葉を失い。
斬灯は「じゃあ、ライバルだね」なんて冗談めかして牽制しようとし。
サツキは、静かにその様子を観察していた。
「私も確かに、ゼクスくん良いなーって思うよ!」
「貴女は別でしょう。今までの男は、付き合う前に斬灯が【八顕】だとバレると恐縮しすぎて逃げていくだけ。今回逃げなかったからってだけでしょ」
冷静に分析したサツキの言葉が図星だったのか、しかし。
斬灯は口を尖らせて「違うもん」と言葉を返す。
そのあとに、急に真面目な顔になって。
「まあ、古都音さんは。本気で、考えないといけないよね」
――と。
奏鳳も頷いている。
「ほんとねー。刀眞から、迫られてるんだって?」
【八顕】の次代候補同士での恋愛は禁止されている、というのは暗黙の了解だ。
しかし、古都音やゼクスはそれに該当しないため、【八顕】の面々からは目をつけられるのは必然なのだ。
「でも、よく分からないのですよね。――私をほしがるなら、何故ゼクスくんを捨てたのでしょう?
私だって、致命的な【顕現】的欠点がありますのに……」
「真面目に言えば、古都音さんはね。外観的アドバンテージが高すぎるんだよ。あと親の会社」
古都音の親がトップを勤めている、【顕装】メーカー、【終夜顕工グループ】。
その事業を刀眞が狙っているのだろうと、サツキは推測していた。
――加えて、古都音自身が絶世の美少女であるというのも強い。
「貴女を欲しがる人なんて、この学園に何人いるか分かったもんじゃないでしょ」
「それは、そうかもしれません」
護衛のアガミがいなかった1年間の事を、古都音は思い返す。
友人たちのお陰でなんとかなっていたが、確かに。
恐怖を覚えるほど、言い寄られたことは何度もある。
「アガミも、護る事は出来ても反撃出来ないからねぇ。ちゃんと本当の意味で、守ってもらえる人を見つけようね」
「そうですね……」
奏鳳の言葉に、古都音は頷く他なかった。
「でもまあ、ボクはゼクスくん争奪戦はパスかな。そういう関係になりたいわけじゃないし」
「その割には、部屋に連れ込まれたって聞いたけどー?」
斬灯の口撃に、ぎくり……と。
固まる奏鳳。
「あれは、ね」
それとこれとは別、と奏鳳が不敵に笑ったのを認めて。
斬灯もまた、「ぐるるる」と唸っていた。
そんな話を、アガミはずっと聞いていて、思う。
カップを拭いているオーナーをちらりと見つめながら、アガミは呟いた。
「いやはや――。
女って、怖えな」
ゼクスと別れた一同が向かった先は、学園門から一番近い喫茶店だ。
学園関係者が営んでいる場所であるが、客は殆どいない。
――それもそのはず、ここはほぼ【八顕】専用の場になってしまっている。
従業員も、そして客も。【八顕】の、それこそ【三貴神】側につく人間ばかりだ。
「刀眞家の面影なんて、ないに等しかったでしょ?」
案内された席に、一番最初に座ったのは亜舞照奏鳳。
少年のような屈託のない笑顔を浮かべて、「私に感謝しなさい」とばかりに胸を張る。
次に座ったのが制服魔改造少女、月姫詠斬灯だ。
「……でも、やっぱりダークなところもあるかなぁ。そこも格好いいなぁ」
「どこに着目しているのやら」
色気づく斬灯に対して若干呆れた顔をしたのは、これまた制服改造少女の須鎖乃サツキだ。
無論彼女だって、ゼクス・ファーヴニルという男に興味が無いわけではない。
ただ、斬灯が進む段階が早すぎると感じざるをえない。
たった数分間で、何が分かるというのだろう?
「仕方ないでしょう。『元』は刀眞の次男とはいえ、苦しい思いをしてここまで来ている。そりゃ、大して努力を必要としなかった私達や――それ以上に属性:【雷】に恵まれて甘々に育った刀眞遼とは、レベルが違うのでしょうね」
他の【三貴神】をみやって、サツキはため息をついた。
しかし、彼女の思いとは裏腹に、奏鳳も斬灯もどこ吹く風状態である。
「古都音さんはどうなの? さっき、思いっきり見つめ合ってたけど」
「えっ?」
急に話を振られるとは思っていなかった、最後に着席した少女――終夜(よすがら)古都音は、慌ててメニューを取り落としそうになった。
顔を赤らめて、座り直し――払うように手をパタパタさせる。
「私は、別に――」
アガミはカウンターから、リラックスしたように。
しかし最低限の警戒を怠らず、女子4人の会話を静かに聞いていた。
「――ただなんとなく、彼の心の傷を私で埋めてあげられるかな、って。考えていただけです」
「ひゅーひゅー、さすがぁー。え? 本気?」
古都音の言葉を聞いて、からかおうとした奏鳳は。
彼女から発せられたあまりにも『本気』な答えに言葉を失い。
斬灯は「じゃあ、ライバルだね」なんて冗談めかして牽制しようとし。
サツキは、静かにその様子を観察していた。
「私も確かに、ゼクスくん良いなーって思うよ!」
「貴女は別でしょう。今までの男は、付き合う前に斬灯が【八顕】だとバレると恐縮しすぎて逃げていくだけ。今回逃げなかったからってだけでしょ」
冷静に分析したサツキの言葉が図星だったのか、しかし。
斬灯は口を尖らせて「違うもん」と言葉を返す。
そのあとに、急に真面目な顔になって。
「まあ、古都音さんは。本気で、考えないといけないよね」
――と。
奏鳳も頷いている。
「ほんとねー。刀眞から、迫られてるんだって?」
【八顕】の次代候補同士での恋愛は禁止されている、というのは暗黙の了解だ。
しかし、古都音やゼクスはそれに該当しないため、【八顕】の面々からは目をつけられるのは必然なのだ。
「でも、よく分からないのですよね。――私をほしがるなら、何故ゼクスくんを捨てたのでしょう?
私だって、致命的な【顕現】的欠点がありますのに……」
「真面目に言えば、古都音さんはね。外観的アドバンテージが高すぎるんだよ。あと親の会社」
古都音の親がトップを勤めている、【顕装】メーカー、【終夜顕工グループ】。
その事業を刀眞が狙っているのだろうと、サツキは推測していた。
――加えて、古都音自身が絶世の美少女であるというのも強い。
「貴女を欲しがる人なんて、この学園に何人いるか分かったもんじゃないでしょ」
「それは、そうかもしれません」
護衛のアガミがいなかった1年間の事を、古都音は思い返す。
友人たちのお陰でなんとかなっていたが、確かに。
恐怖を覚えるほど、言い寄られたことは何度もある。
「アガミも、護る事は出来ても反撃出来ないからねぇ。ちゃんと本当の意味で、守ってもらえる人を見つけようね」
「そうですね……」
奏鳳の言葉に、古都音は頷く他なかった。
「でもまあ、ボクはゼクスくん争奪戦はパスかな。そういう関係になりたいわけじゃないし」
「その割には、部屋に連れ込まれたって聞いたけどー?」
斬灯の口撃に、ぎくり……と。
固まる奏鳳。
「あれは、ね」
それとこれとは別、と奏鳳が不敵に笑ったのを認めて。
斬灯もまた、「ぐるるる」と唸っていた。
そんな話を、アガミはずっと聞いていて、思う。
カップを拭いているオーナーをちらりと見つめながら、アガミは呟いた。
「いやはや――。
女って、怖えな」
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