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第一章 サハル砂漠編
10 鯨子の実態
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「鯨子は、かつてはこの世界を中心的に統べている
人間の種族の一種みたいなものじゃった」
薬鯨はそう言って、かつてのことから話し始めてくれた。
「かつてこの世界が平和じゃった頃、よくわしらはウタを歌った。
そして、ある時、人間がウタを歌い始めた。その時にそれを心地よく思わない鯨もおってな、
どうやらその鯨が怒ったらしい。
『わしら創造主の真似事をするな』と。
しかし、人間は高い知識とマナを利用した創生術というものを完成させてのじゃ。
そのことから、強く反抗したらしくてのう、その鯨が怒り狂って殺してしまったのじゃ」
「その鯨って……もしかして…?」
俺は思わず聞いてしまった。
「まぁ待たんか。最後まで話を聞け。
お主に関わる事なんじゃぞ。安心せい、わしではないわ。
そしてのう、その後、人間は鯨を恐れた。
だが、鯨も自身の行いを反省したのじゃ。
そして、自らの力を与え分け、時にウタを聞こえる者を世界に解き放つという契約を自身に課した。
その契約の代償が全世界の種族の人間がウタを聞き取れなくするというものじゃ。
元来、ドワーフやエルフ、魔女、獣人の純血の人間ではないものはウタを聞き取れんかったのじゃ。
だから、契約の代償は人間だけという事になった。
この契約の恩恵が先ほど言った加護じゃ。
それぞれの鯨の持つ加護を人に与えるというものじゃな。
だが、人間はその稀に生まれてくるウタを聞き取れる子供を良しとはしなかった。
その子らを鯨子という異名を付け、迫害し、殺していった。
時には売りさばき、拷問にかけることもあったというらしいのじゃよ。
そして、時が経つに連れて、鯨子は姿を消し、絶滅したと言われておるのじゃ。」
俺はここまでの話を聞いて、驚いた。
こんな過去があって、こんな事実がこの世界にはあったなんて。
地球もこの世界も人間は愚かなのかもしれないと思った。
でも、もし、俺が鯨子の末裔だかなんだかわからないが、そうだったとしたら、
これまでに死んできた人の命を背負っているという事だ。
そして、その命をないがしろには出来ない。
もっと言えば、鯨子の本当の性格は俺にはわからないけど、
絶対に悪い事をした人たちじゃないと思う。
ただ、ウタが聞こえるというだけで、迫害されて殺されてきた人達なだけだ。
その鯨子の間違った印象を世界中からなくしたい。
それが俺に出来るこの世界での役割なのかもしれない。
「教えていただき、ありがとうございました。
とても勉強になりました。
まだわからない事も多いですが、強くなって、
この世界を昔みたいな平和な状態にしたいと思いました」
「お主、馬鹿か?」
薬鯨は俺の方を見て、苦笑交じりにそういった。
「お主じゃ無理じゃ。
確かに、お主は運が良い。しかも、十中八九鯨子の生き残りか、末裔じゃ。
だが、この世界には強い奴などわんさかおる。
そもそも砂上カジキ一匹も倒せん奴はこの世界じゃ強くはなれん」
〝お前じゃ無理だ〟
〝お前に出来るの?〟
〝お前は趣味程度の歌しか歌えないよ〟
俺は前世の地球で言われてきたことが脳裏に浮かぶ。
「そんなことは言われなくても分かってますよ!
僕は決して強くはなれないかもしれない、
決して世界に影響を与えるような大きいことは出来ないかもしれない、
それでも! それでも、僕は諦めたくないんです!!」
俺はもう諦めたくない。前世での後悔を、前世でのやり残しをこの世界では克服したい。
素直にそう思っていた。
アインやミぜさんのような強い人たちに助けられっぱなしなのは、もう嫌なんだ。
俺は覚悟を決めていた。
「お主やはり面白いのう。
強くなりたいか?」
「なりたいです!」
「そうか、なら、わしが強くしてやろう。
だが、強くするといっても条件がある」
「条件?」
「先ほど言った、人間を殺してしまった鯨を探して欲しい。
これだけじゃ」
「あ、はい。
その鯨ってどこにいるんですか?」
「わからぬ。そやつは霧を使うからのう。
それもマナをよく込めたものじゃ。
到底、下級の生物には認知することすら難しいであろう」
「そうなんですね」
そういえば、移動をし続ける国やら都市があるとミぜさんから聞いた気がする。
「その鯨っていうのはどの鯨なんですか?」
俺は前に七頭の鯨の話を聞いた時には、
一頭だけ聞き取れなかった鯨がいる、もしかしたらそいつかもしれないと俺は感づいていた。
「????じゃよ。
人間の言葉ではないゆえ、人間が聞き取ることは不可能じゃろう」
「じゃあどうやって、探せば……」
俺は分からなかった。手がかりもない。
危険性もある。霧を使う。
そんな怪物をどうやって見つければ良いのだろうか。
「これはお主が強くなることにも直結してるのじゃが、
わしの加護を使えば良い!」
薬鯨は微笑を含めた声でそう言った。
人間の種族の一種みたいなものじゃった」
薬鯨はそう言って、かつてのことから話し始めてくれた。
「かつてこの世界が平和じゃった頃、よくわしらはウタを歌った。
そして、ある時、人間がウタを歌い始めた。その時にそれを心地よく思わない鯨もおってな、
どうやらその鯨が怒ったらしい。
『わしら創造主の真似事をするな』と。
しかし、人間は高い知識とマナを利用した創生術というものを完成させてのじゃ。
そのことから、強く反抗したらしくてのう、その鯨が怒り狂って殺してしまったのじゃ」
「その鯨って……もしかして…?」
俺は思わず聞いてしまった。
「まぁ待たんか。最後まで話を聞け。
お主に関わる事なんじゃぞ。安心せい、わしではないわ。
そしてのう、その後、人間は鯨を恐れた。
だが、鯨も自身の行いを反省したのじゃ。
そして、自らの力を与え分け、時にウタを聞こえる者を世界に解き放つという契約を自身に課した。
その契約の代償が全世界の種族の人間がウタを聞き取れなくするというものじゃ。
元来、ドワーフやエルフ、魔女、獣人の純血の人間ではないものはウタを聞き取れんかったのじゃ。
だから、契約の代償は人間だけという事になった。
この契約の恩恵が先ほど言った加護じゃ。
それぞれの鯨の持つ加護を人に与えるというものじゃな。
だが、人間はその稀に生まれてくるウタを聞き取れる子供を良しとはしなかった。
その子らを鯨子という異名を付け、迫害し、殺していった。
時には売りさばき、拷問にかけることもあったというらしいのじゃよ。
そして、時が経つに連れて、鯨子は姿を消し、絶滅したと言われておるのじゃ。」
俺はここまでの話を聞いて、驚いた。
こんな過去があって、こんな事実がこの世界にはあったなんて。
地球もこの世界も人間は愚かなのかもしれないと思った。
でも、もし、俺が鯨子の末裔だかなんだかわからないが、そうだったとしたら、
これまでに死んできた人の命を背負っているという事だ。
そして、その命をないがしろには出来ない。
もっと言えば、鯨子の本当の性格は俺にはわからないけど、
絶対に悪い事をした人たちじゃないと思う。
ただ、ウタが聞こえるというだけで、迫害されて殺されてきた人達なだけだ。
その鯨子の間違った印象を世界中からなくしたい。
それが俺に出来るこの世界での役割なのかもしれない。
「教えていただき、ありがとうございました。
とても勉強になりました。
まだわからない事も多いですが、強くなって、
この世界を昔みたいな平和な状態にしたいと思いました」
「お主、馬鹿か?」
薬鯨は俺の方を見て、苦笑交じりにそういった。
「お主じゃ無理じゃ。
確かに、お主は運が良い。しかも、十中八九鯨子の生き残りか、末裔じゃ。
だが、この世界には強い奴などわんさかおる。
そもそも砂上カジキ一匹も倒せん奴はこの世界じゃ強くはなれん」
〝お前じゃ無理だ〟
〝お前に出来るの?〟
〝お前は趣味程度の歌しか歌えないよ〟
俺は前世の地球で言われてきたことが脳裏に浮かぶ。
「そんなことは言われなくても分かってますよ!
僕は決して強くはなれないかもしれない、
決して世界に影響を与えるような大きいことは出来ないかもしれない、
それでも! それでも、僕は諦めたくないんです!!」
俺はもう諦めたくない。前世での後悔を、前世でのやり残しをこの世界では克服したい。
素直にそう思っていた。
アインやミぜさんのような強い人たちに助けられっぱなしなのは、もう嫌なんだ。
俺は覚悟を決めていた。
「お主やはり面白いのう。
強くなりたいか?」
「なりたいです!」
「そうか、なら、わしが強くしてやろう。
だが、強くするといっても条件がある」
「条件?」
「先ほど言った、人間を殺してしまった鯨を探して欲しい。
これだけじゃ」
「あ、はい。
その鯨ってどこにいるんですか?」
「わからぬ。そやつは霧を使うからのう。
それもマナをよく込めたものじゃ。
到底、下級の生物には認知することすら難しいであろう」
「そうなんですね」
そういえば、移動をし続ける国やら都市があるとミぜさんから聞いた気がする。
「その鯨っていうのはどの鯨なんですか?」
俺は前に七頭の鯨の話を聞いた時には、
一頭だけ聞き取れなかった鯨がいる、もしかしたらそいつかもしれないと俺は感づいていた。
「????じゃよ。
人間の言葉ではないゆえ、人間が聞き取ることは不可能じゃろう」
「じゃあどうやって、探せば……」
俺は分からなかった。手がかりもない。
危険性もある。霧を使う。
そんな怪物をどうやって見つければ良いのだろうか。
「これはお主が強くなることにも直結してるのじゃが、
わしの加護を使えば良い!」
薬鯨は微笑を含めた声でそう言った。
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