最強ギルドの斧使いが呪われた山を攻略します!ティルナノーグサーガ『ブルジァ家の秘密』

路地裏の喫茶店

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第三章・我が儘お嬢様

ベル・ブルジァ

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登場人物:

グラウリー:過去に呪われた山バルティモナに挑戦していた斧戦士ウォーリアー
トッティ:若い鈍器使いメイサー
エイジ:かつて風の都で修行した蒼の魔導師ブルーメイジ
ベル:突然現れたリドルトの姪



24

「本当にそいつ一人なんだろうな」
 男達は幅広の剣を手に持ちながらエイジに聞いた。

「当たり前だろーが」
「ううっ」トッティはまるで悪い夢でも見たかのように、青ざめた顔をして眼を細めた。眼の前の男達に恐れをなしたのではなく、どう考えても理不尽なエイジの扱いに腹が立って立って仕方がなかったのだった。

「…そんじゃ――いくぜ、死ねや!」
 男の一人、スキンヘッドの男は間合いを詰めざま剣を右から左へと薙いだ。遠心力とその重さを利用してダメージを与える鈍器使いの戦士の武器にはえてして長い得物が多い。近距離で自由を奪い一気に仕留める作戦だった。

 ガギィン!

 だがトッティはそれを左手に装備した盾で防ぐと、盾を相手に押し付け右下にその力を受け流した。
「おっ」と言いながら、スキンヘッドの男の剣先が街のタイルに落ちる。
 その瞬間を見逃さずトッティは剣の腹に向かって垂直にメイスを振り下ろした。カーンという音が響いて剣が叩き折られる。

「クソがぁッ!」
 右方向から側面を突こうとしたもう一人のならず者は相方が自分の方に体勢を崩されたその瞬間を狙って突きを繰り出した。だがトッティはその突きをメイスの柄でかち上げる。そこに、左手の盾の固い側面部分を男のこめかみに思い切りぶち当てたのだった。

「ぎゃああ!」男は悲鳴を上げて吹っ飛んだ。トッティはすかさずスキンヘッドの男のみぞおちに蹴りを入れる。つま先に鉄板の仕込まれた冒険者用の靴は男の腹を貫くかのような衝撃をもたらした。
「げえ!」



「――て、てめえら覚えてやがれよ!」
 陳腐な捨て台詞を残して気を失った相方を担いだスキンヘッドの男は苦しそうな顔をしながら尻尾をまいて逃げていった。



「ベル――見てわからんのか。あれはならず者の類だったんだぞ――どうしてそんな事も――ジルは少し甘やかしすぎていたんじゃないのか……」
リドルトはならず者達の背中を見ながら言った。

「そ――そんな事は!どうだっていいのよ!とにかく、秘宝!秘宝を一刻も早く貸して欲しいの!」
「まあ、待ちなさい。ベル――困ったな……ジルとは――弟とは、とうの昔に袂をわかつているというのに」

「おお――なんて、何て酷い!血を分けた弟が今にも死にそうだと言うのに!伯父さんは悪魔!そう、悪魔よ!伯父さんなんか灼熱の業火の滾るエルヴァルの地獄に落ちてしまえばいいんだわ!わたし、絶対秘宝を持ち帰る!持ち帰ると決めたのよ!さあ!秘宝はどこなの!?」
 決闘の行方も我知らずベルは執拗に騒ぎ立てた。だがそれも無理からぬ事であったかもしれなかった。

 ティルナノーグの面々達は……と言うと、その言いあいには口を挟めずにいた。
 彼等がリドルトに依頼を受けたのはバルティモナの秘宝を持ち帰る。という所までであり、またその秘宝がリドルトの手から、どこへ行くとしてもそれは彼等の関与しえる所ではなかったからである。

 何となくどうしたらよいかと考えていると、リドルトはこう言った。
「とにかく私はもう少しベルの話を詳しく聞いてみます。皆さんは長旅でお疲れでしょうから、先ほど申しましたように宴席で飲み食いをし、寝室でゆっくりと疲れを癒してください」

 そうして彼等は言われたように宴席で食事を取り、杯を重ねて生命の喜び分かち合った。
 謎は残り、リドルトに秘宝を渡すとベルという少女が現われ――ならず者との決闘騒ぎがあり――。確かに幾らかの予想外の出来事はあったが――それでも彼等は課せられた任務を確実にこなすプロなのだった。
 何がしかの自分の考えに沈む者も数人いるにはいたが、基本的には大きな任務を達成しバルティモナの謎の一端を暴いたという喜びと安堵が彼等の心にあったのだ。



 だが――、そうして夜が更けてゆき――。
グラウリーはあてがわれた寝室の窓から夜空を眺めていた。
 
星があまり見えぬ、真っ暗な空。しかし月だけはいやに紅い色をたたえて輝きに満ちている。

「……終わらない――?まだ――何かが――…」
 彼は無意識にそう呟いていた。

 彼の寝室の灯火が消えた時――。
闇にうごめく無数の双眸が奇妙な唸りをあげてリドルト邸を凝視したのだった。

 ティルナノーグの戦士達は未だ知らぬ。
彼等は今より、初めて大きな運命の流れに身を乗せてしまった事を――。
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