22 / 31
三章 ランの誇り
第二十二話
しおりを挟む
*
私が話を結ぶまで彼等は一言も言わず、ただ黙って聞いてくれた。
「…そっか…ラン、悩んでいたんだね――ランがそんな風に悩んでいたなんて知らずに、街を助けてくれたのに、あんな風な態度取ってしまってごめんね…」
アバンテはうつむいたまま言った。だけどアバンテがそんな風に謝る必要ないよ。誰だって普通の人間ならあんな魔法を見たら恐怖してしまうに決まっているから。
全てを話した私の心はどこか空虚で、そしてすがすがしかった。彼等に言えなかった魔女である事の秘密。ずっと仲良くしていたいと思っていた彼等に、隠さざるを得なかった(と思っていた)事情。騙しているような、自分を偽らなければいられなかった事に対しての心のつかえが取れた事が心地良かった。
「…そうだ!ラン、僕達がこの森までやって来た理由を言っていなかったよね。なるべく早く言わなければいけない事だったのに、どうしてすぐに言わなかったんだろう…」
私も彼等に聞くべき事があったのだと、セラノの言葉で思い出した。
「ええセラノ、教えてくれる?」
セラノはこくりと頷くと、真剣な顔で語り始めた。
「街が精霊に襲われて…ランが森へ帰って行ってからの事。僕達少年団は集まってランのしてくれた事を皆に話したんだ。ランはあの巨大な精霊と対峙して街を守ってくれたんだってね。
少年団の皆は、確かにアバンテのようにあのランの魔法の威力に驚いてしまっていた者もいた。でも話を聞いているうちに皆が、ランは街を守りに来てくれたんだってわかってくれたんだ。
なのに僕達はランにひどい事をしてしまったのだから、ベイロンドの森に何人かで行ってランに謝りに行こうと決めていた。
…その時…八月九日くらいからなんだ。街では異変が起こり始めた。
まず、町長が大人の人を何十人も館に呼び寄せて密談をした。その密談と言うのが…噂によると魔女狩りを…するんだと言うんだ。気になった僕等は、その話をもっと詳しく調べようと決めた。
密談のメンバー、日取り、場所…。そうして十七日の夕方、ついに僕達は町長が魔女狩りについての本格的な会議をするのだという事をつきとめた。館の一階の会議室の窓の下で町長達の話を盗み聞きしたんだけど、何と、街の有志四十二人が二十日に街の人達には秘密裏に、ベイロンドの森で魔女を探し出し、魔女狩りをすると言うんだ!」
「な…なんですって…」
私が驚きそう言うと、セラノは本当に申し訳なさそうな顔をした。
セラノのせいではないけれど…。やっぱり人間は魔女を恐れるだけではなく、その存在さえも許さないのだろうか。私は街の人々のあの眼を思い出し、かすかに唇を震わせた。
「でも…あの町長さんがそんな事を言うなんて…」
街の発展と人々の未来を熱く語った、あの時の町長さん――スタークさんの会合での演説を思い出す。あの人が…魔女を狩るのだとまで言ったのだろうか…。
「…でも…町長さんまるで人が変わってしまったみたいで…あれ以来館から外出する事はなくなってずっとこもりっきりなのよ」
アバンテがそう付け加えた。
町長さんが今までとは別人のように…そして魔女狩りを…。考えれば考える程、あの町長さんがそんな事を命じたのだろうかと思う。
何かがつかみ取れたような、つかみ取れないようなそんな居心地の悪い気持ちがして、私はそれよりもしなければならない事があるのだと思いついた。
「僕達この事を一刻も早くランに知らせようと思った。そういうわけで僕とアバンテはここにやって来たんだけど、その間少年団の他の皆は、有志隊の人達が森に向けて出発をしようとする前に、町長を説得に行く事になっているんだ」
「そうだったの。ありがとう…二人共」
私は二人に頭を下げた。町長さん達が魔女狩りを始めるのだという事を聞いて、私はやはり失望を隠さざるを得ない。街の人達はあの一件で魔女に相当恐れをなしてしまったのだろう。
だけどこうしてセラノとアバンテが再び私と話をしに来てくれたという事に、私は強い感銘を受けた。一時はもう私には、友達と呼べる人達は二度とできないだろう。そんなあきらめに似た予感があったのだ。
全てを語る事のできる友達のいるという事が、こんなにも安堵と暖かさをもたらすものなのだという事。ずっと忘れ去っていた気持ちだ。
町長さんがもたらせたという魔女狩りの一件。この一件を今日中に何とか片付ける事ができるだろうか?
それまで――それまで考えて答えを出したい。
人間、魔女、色々なものの本質。私は今、それ等に触れているような気がする。ぎりぎりまで触れて、知って、そして答えを出したいと今思うのだ。ただどんな答えがあったとしても、私は「セラノとアバンテに会えてよかった」と、それだけは言えると思う。
「この事をコリネロス――私の魔女の先生に伝えなきゃ。そしてその後私、シェナに行くわ。少年団の皆が心配だし…町長さんが変貌してしまったというのが気になるの」
「そうか、ランは歩いてここまで来たの?」
セラノが聞いた。
「ううん違うわ。ほうきで空を飛ぶ魔法で、魔女の塔から急いで来たの」
「そんな事ができるんだ!いいなぁ…それならラン、シェナに行くのに僕も連れて行ってもらえないかな。僕も仲間達がどうなったか気になるから…」
「それならあたしだってそう!」
アバンテもセラノと同じ事を言う。二人の気持ちはよくわかる。二人共友達を大事にする人達だから。だけどほうきには二人乗りがせいぜいだ。
「その気持ちはわかるけど…」
私が言いよどんだその時。後でドアの開く音がした。
「私とランで一人ずつ乗せていく事にすれば大丈夫じゃない」
「リィディ!」
そう言いながらリィディとルックさんは部屋に入った。
セラノとアバンテに会って話をするのに夢中で、ドアの外にリィディとルックさんがいる事をすっかり忘れていた。私の話をずっと聞いていたのだろうが、何となくばつが悪い。
「私とランは今すぐ塔に帰って、コリネロスにこの事を相談して対策をうってもらいましょう。そしてその後シェナに行く途中でこの子達を拾っていって、シェナに行けばいいわ」
「そうね、わかった。なら急ごう、リィディ」
「この子達は私が面倒見ておくから、ランちゃん、リィディちゃん、行くといい。コリネロスさんによろしくな」
ルックさんがそう言ってくれた。
「わかりました。ルックさん」
「ラン、塔に行って帰って来て、どのくらい時間がかかる?」
「うーん…ほうきの魔法で往復に一時間と少しは必要だと思う…そしてコリネロスと相談して…リィディ、この家からシェナまではどのくらいかかるかしら?」
「二人乗りだとおそらく四、五時間かかると思う…シェナに着くのは早くて今日の夜ね」
「そっか…もし町長さんが少年団の説得にも耳を貸さないようだったら、街道で魔女狩りの人達に出会うかもしれないな…」
セラノはそう言いながら神妙な面持ちでアバンテと目を合わせた。
「……」
「じゃあ行ってくるわね。なるべく早くこっちに来れるようにするから。セラノとアバンテもう少し休んでいて」
私とリィディはルックさんの家を出ると、すぐさま塔にとって返した。
私が話を結ぶまで彼等は一言も言わず、ただ黙って聞いてくれた。
「…そっか…ラン、悩んでいたんだね――ランがそんな風に悩んでいたなんて知らずに、街を助けてくれたのに、あんな風な態度取ってしまってごめんね…」
アバンテはうつむいたまま言った。だけどアバンテがそんな風に謝る必要ないよ。誰だって普通の人間ならあんな魔法を見たら恐怖してしまうに決まっているから。
全てを話した私の心はどこか空虚で、そしてすがすがしかった。彼等に言えなかった魔女である事の秘密。ずっと仲良くしていたいと思っていた彼等に、隠さざるを得なかった(と思っていた)事情。騙しているような、自分を偽らなければいられなかった事に対しての心のつかえが取れた事が心地良かった。
「…そうだ!ラン、僕達がこの森までやって来た理由を言っていなかったよね。なるべく早く言わなければいけない事だったのに、どうしてすぐに言わなかったんだろう…」
私も彼等に聞くべき事があったのだと、セラノの言葉で思い出した。
「ええセラノ、教えてくれる?」
セラノはこくりと頷くと、真剣な顔で語り始めた。
「街が精霊に襲われて…ランが森へ帰って行ってからの事。僕達少年団は集まってランのしてくれた事を皆に話したんだ。ランはあの巨大な精霊と対峙して街を守ってくれたんだってね。
少年団の皆は、確かにアバンテのようにあのランの魔法の威力に驚いてしまっていた者もいた。でも話を聞いているうちに皆が、ランは街を守りに来てくれたんだってわかってくれたんだ。
なのに僕達はランにひどい事をしてしまったのだから、ベイロンドの森に何人かで行ってランに謝りに行こうと決めていた。
…その時…八月九日くらいからなんだ。街では異変が起こり始めた。
まず、町長が大人の人を何十人も館に呼び寄せて密談をした。その密談と言うのが…噂によると魔女狩りを…するんだと言うんだ。気になった僕等は、その話をもっと詳しく調べようと決めた。
密談のメンバー、日取り、場所…。そうして十七日の夕方、ついに僕達は町長が魔女狩りについての本格的な会議をするのだという事をつきとめた。館の一階の会議室の窓の下で町長達の話を盗み聞きしたんだけど、何と、街の有志四十二人が二十日に街の人達には秘密裏に、ベイロンドの森で魔女を探し出し、魔女狩りをすると言うんだ!」
「な…なんですって…」
私が驚きそう言うと、セラノは本当に申し訳なさそうな顔をした。
セラノのせいではないけれど…。やっぱり人間は魔女を恐れるだけではなく、その存在さえも許さないのだろうか。私は街の人々のあの眼を思い出し、かすかに唇を震わせた。
「でも…あの町長さんがそんな事を言うなんて…」
街の発展と人々の未来を熱く語った、あの時の町長さん――スタークさんの会合での演説を思い出す。あの人が…魔女を狩るのだとまで言ったのだろうか…。
「…でも…町長さんまるで人が変わってしまったみたいで…あれ以来館から外出する事はなくなってずっとこもりっきりなのよ」
アバンテがそう付け加えた。
町長さんが今までとは別人のように…そして魔女狩りを…。考えれば考える程、あの町長さんがそんな事を命じたのだろうかと思う。
何かがつかみ取れたような、つかみ取れないようなそんな居心地の悪い気持ちがして、私はそれよりもしなければならない事があるのだと思いついた。
「僕達この事を一刻も早くランに知らせようと思った。そういうわけで僕とアバンテはここにやって来たんだけど、その間少年団の他の皆は、有志隊の人達が森に向けて出発をしようとする前に、町長を説得に行く事になっているんだ」
「そうだったの。ありがとう…二人共」
私は二人に頭を下げた。町長さん達が魔女狩りを始めるのだという事を聞いて、私はやはり失望を隠さざるを得ない。街の人達はあの一件で魔女に相当恐れをなしてしまったのだろう。
だけどこうしてセラノとアバンテが再び私と話をしに来てくれたという事に、私は強い感銘を受けた。一時はもう私には、友達と呼べる人達は二度とできないだろう。そんなあきらめに似た予感があったのだ。
全てを語る事のできる友達のいるという事が、こんなにも安堵と暖かさをもたらすものなのだという事。ずっと忘れ去っていた気持ちだ。
町長さんがもたらせたという魔女狩りの一件。この一件を今日中に何とか片付ける事ができるだろうか?
それまで――それまで考えて答えを出したい。
人間、魔女、色々なものの本質。私は今、それ等に触れているような気がする。ぎりぎりまで触れて、知って、そして答えを出したいと今思うのだ。ただどんな答えがあったとしても、私は「セラノとアバンテに会えてよかった」と、それだけは言えると思う。
「この事をコリネロス――私の魔女の先生に伝えなきゃ。そしてその後私、シェナに行くわ。少年団の皆が心配だし…町長さんが変貌してしまったというのが気になるの」
「そうか、ランは歩いてここまで来たの?」
セラノが聞いた。
「ううん違うわ。ほうきで空を飛ぶ魔法で、魔女の塔から急いで来たの」
「そんな事ができるんだ!いいなぁ…それならラン、シェナに行くのに僕も連れて行ってもらえないかな。僕も仲間達がどうなったか気になるから…」
「それならあたしだってそう!」
アバンテもセラノと同じ事を言う。二人の気持ちはよくわかる。二人共友達を大事にする人達だから。だけどほうきには二人乗りがせいぜいだ。
「その気持ちはわかるけど…」
私が言いよどんだその時。後でドアの開く音がした。
「私とランで一人ずつ乗せていく事にすれば大丈夫じゃない」
「リィディ!」
そう言いながらリィディとルックさんは部屋に入った。
セラノとアバンテに会って話をするのに夢中で、ドアの外にリィディとルックさんがいる事をすっかり忘れていた。私の話をずっと聞いていたのだろうが、何となくばつが悪い。
「私とランは今すぐ塔に帰って、コリネロスにこの事を相談して対策をうってもらいましょう。そしてその後シェナに行く途中でこの子達を拾っていって、シェナに行けばいいわ」
「そうね、わかった。なら急ごう、リィディ」
「この子達は私が面倒見ておくから、ランちゃん、リィディちゃん、行くといい。コリネロスさんによろしくな」
ルックさんがそう言ってくれた。
「わかりました。ルックさん」
「ラン、塔に行って帰って来て、どのくらい時間がかかる?」
「うーん…ほうきの魔法で往復に一時間と少しは必要だと思う…そしてコリネロスと相談して…リィディ、この家からシェナまではどのくらいかかるかしら?」
「二人乗りだとおそらく四、五時間かかると思う…シェナに着くのは早くて今日の夜ね」
「そっか…もし町長さんが少年団の説得にも耳を貸さないようだったら、街道で魔女狩りの人達に出会うかもしれないな…」
セラノはそう言いながら神妙な面持ちでアバンテと目を合わせた。
「……」
「じゃあ行ってくるわね。なるべく早くこっちに来れるようにするから。セラノとアバンテもう少し休んでいて」
私とリィディはルックさんの家を出ると、すぐさま塔にとって返した。
0
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる