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醜い心
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ここ数日、エリーズは機嫌が悪かった。
原因は、分かっている。
婚約者であるステファーヌ・ギャロワは、文武両道にして眉目秀麗。
学園でも指折りの人気者だ。
これまでも、彼に近づこうとする者は少なくなかった。
だが、彼女たちは自分の立場を弁えていたし、公爵家令嬢で学年首席――才色兼備の婚約者がいる事実を前に、早々に身を引いていた。
しかし。
ここ最近、違う。
一年生にして“学園のマドンナ”と噂される伯爵令嬢――アンヌ・ビロン。
彼女が、堂々とステファーヌの傍にいる姿が、度々目撃されるようになった。
「ステファーヌ様。本日の課題で、どうしても分からない箇所がありまして……また、少しだけ教えていただけませんか?」
勉強を口実に距離を詰める。
ポロ試合での一件が、彼女の矜持に火をつけたのは明らかだった。
アンヌは、あの手この手でステファーヌに近づいていた。
「悪いけど、俺、この後エリーズと学園内のショップタウンに行く予定なんだ。だから、他の人に聞いてもらえるかな」
「少しでいいんです……」
アンヌは視線を伏せ、声を落とす。
「もうすぐテストも近いですし……わたくし、不安で……」
一瞬の沈黙。
そして、彼女は小さく首を振った。
「あ……いえ。ご迷惑ですわよね。ステファーヌ様のお時間も考えず……申し訳ございません」
ぽろりと、一筋の涙。
健気な笑顔。
それを見ていたクラスメイトたちが、ざわめき始める。
「おいステファーヌ、少しくらい良いだろ」
「俺も教えてほしいところあるけど、断るのか? 冷たいな~」
「ショップタウンなんて、明日でも行けるじゃん」
男子生徒たちは、アンヌを庇うようにステファーヌを囲んだ。
「それとも、今日中に買わなきゃいけない物でもあるのか?」
「……いや、そういうわけじゃないけど……」
言い淀んだ、その瞬間。
「ステファーは、わたくしの荷物持ちよ」
少し離れた席から、冷ややかな声音が飛んできた。
一斉に、視線が向く。
そこにいたのは、帰り支度を整えながら、すました顔で立つエリーズだった。
感情を抑えた声。
だが、その一言だけで、教室の空気が一変する。
エリーズが視線を向けると、アンヌの肩が、ほんのわずかに強張った。
その沈黙に耐えきれなくなったのか、一人の男子生徒が、意を決したように口を開く。
「……エリーズ嬢。前々から申し上げようと思っていたのですが、いくら公爵令嬢で、婚約者とはいえ――ステファーヌに対する態度は、目に余ります」
「おい、やめろ!」
ステファーヌが慌てて制止する。
だが、もう遅かった。
「いいや、言わせてくれ! 俺は、友達を従者みたいに扱われているのが我慢ならないんだ!」
「そ、そうだ! あの言動は人道的じゃない!」
「ステファーヌが言えないなら、俺たちが言ってやる!」
次々と重なる声。
――集団心理とは、かくも恐ろしい。
一人では決して楯突けない相手でも、数が揃い、誰かのためという大義名分があれば人は容易く、一人の少女を糾弾できてしまう。
「……何も、知らないくせに」
ステファーヌの口から、かすれた声が零れ落ちた。
だが、その言葉は誰の耳にも届かない。
「ショップタウンくらい、一人で行けよ!」
「ステファーヌが可哀想だ!」
非難は、矢のようにエリーズへ向けて放たれる。
「だま――」
ステファーヌが叫びかけた、その直前。
「分かりましたわ」
エリーズが、静かに言った。
怒りも、焦りも、声には滲ませない。
それが、かえって場の空気を凍りつかせる。
「本日の荷物持ちは、結構です」
それだけ告げると、エリーズは踵を返した。
何人かの女生徒が、無言のまま彼女に付き従う。
教室の扉が閉まる音がやけに大きく響いた。
教室を出ていく背中は、最後まで振り返らなかった。
「待って、エリー! 本当に……よろしかったんですの?」
背後からかけられた声に、エリーズは足を止める。
「フィリシテ様……マリリーズ、シルヴィ。お恥ずかしいところを、お見せしてしまいましたわ」
彼女の後を追ってきたのは、三人の少女だった。
フィリシテ・レアンドル――一学年上に在籍する王太子殿下の妹で、この国の王女。
マリリーズ・アルシェは侯爵令嬢、シルヴィ・フレモンは伯爵令嬢。
そして彼女たちは、幼い頃からの友人でもある。
「エリー、今日をどれほど楽しみにしていたか、私たちは知っていますわ」
「いつもの貴方でしたら、あの場で言い返していたでしょう? どうして……」
「それにしても、多勢に無勢で好き勝手言って……思い出すだけで腹が立ちます!」
フィリシテは心配そうに眉を寄せ、
マリリーズは自分のことのように胸を痛め、
シルヴィは怒りを隠そうともせず顔をしかめた。
「三人とも……ありがとうございます」
エリーズは眉を下げ、少し寂しそうに微笑む。
「ですが、いいのですわ。……彼等の言葉は、本当のことでもありますもの」
「でも!」
フィリシテが声を強める。
「二ヶ月も前から人気店を予約して、甘い物が好きな彼と行くのを、あれほど楽しみにしていたじゃない!」
「そうですわ! ステファーヌ様に喜んでいただけたら嬉しいって、仰っていましたでしょう?」
「私たちから見ても、ステファーヌ殿は……エリーズと一緒にいる時が一番、楽しそうです。あんな言葉、気にする必要などありません!」
シルヴィの言葉は、とても優しかった。
だが、それでも――。
彼等の言葉は、エリーズの胸に深く突き刺さっていた。
ステファーヌは、どれほど放漫な態度を取られても、どれほど我儘を言われても、決して反抗しなかった。
今でこそ自信に満ち、誰もが認める人物となった彼だが、本来は気弱で、言いたいことを胸に仕舞い込む性格だ。
それを誰よりも知っているからこそ、クラスメイトたちの言葉は、彼の本心を代弁しているように思えてしまった。
そして、発端は“学園のマドンナ”と呼ばれるアンヌ。
彼女に声をかけられて、不快に思う男性などいないだろう。
普段はエリーズに何も言えない男子生徒たちが、彼女の前でだけ、あそこまで強気になった理由も理解できた。
ステファーヌだって、きっと嬉しかったはずだ。
そう思った瞬間、胸の奥が、耐えきれなくなった。
――彼は、エリーズの婚約者。
彼の隣は、自分の場所だ。
そこに踏み込もうとする存在に、黒い感情が湧き上がったことを、エリーズは否定できない。
そんな醜い感情を抱く自分が嫌で、だからこそ、あの場を去ったのだ。
しばしの沈黙の後、エリーズは顔を上げた。
「……折角ですわ」
静かに、しかしはっきりと。
「三人とも、この後お暇でしたら、喫茶店に付き合ってくださいませんか? 次の予約となると、また数ヶ月先でしょうし……」
少しだけ、柔らかく微笑む。
「無駄にしてしまうのは、勿体ないですもの」
その言葉に、三人は一瞬だけ、どこか悲しそうな表情を浮かべ――
それから、示し合わせたように微笑んで頷いた。
「本当は、私もずっとあのお店、気になっていたの!」
「ふふ……甘いものばかりですもの。食べ過ぎないよう、気をつけませんとね」
「女子会、楽しみですわ!」
明るい声が重なり、空気がふっと和らぐ。
三人の友人の存在に、エリーズは胸の奥が温かくなるのを感じた。
――独りではない。
そう、静かに実感する。
胸を締めつけていた重たい感情が、少しずつほどけていく。
「ありがとうございます。……皆さんと行けるなら、きっと楽しいですわ」
エリーズは、ようやく心からの微笑みを浮かべた。
四人は肩を並べ、他愛のない話をしながら、ショップタウンへと向かう。
笑い声が、石畳の道に軽やかに響いた。
原因は、分かっている。
婚約者であるステファーヌ・ギャロワは、文武両道にして眉目秀麗。
学園でも指折りの人気者だ。
これまでも、彼に近づこうとする者は少なくなかった。
だが、彼女たちは自分の立場を弁えていたし、公爵家令嬢で学年首席――才色兼備の婚約者がいる事実を前に、早々に身を引いていた。
しかし。
ここ最近、違う。
一年生にして“学園のマドンナ”と噂される伯爵令嬢――アンヌ・ビロン。
彼女が、堂々とステファーヌの傍にいる姿が、度々目撃されるようになった。
「ステファーヌ様。本日の課題で、どうしても分からない箇所がありまして……また、少しだけ教えていただけませんか?」
勉強を口実に距離を詰める。
ポロ試合での一件が、彼女の矜持に火をつけたのは明らかだった。
アンヌは、あの手この手でステファーヌに近づいていた。
「悪いけど、俺、この後エリーズと学園内のショップタウンに行く予定なんだ。だから、他の人に聞いてもらえるかな」
「少しでいいんです……」
アンヌは視線を伏せ、声を落とす。
「もうすぐテストも近いですし……わたくし、不安で……」
一瞬の沈黙。
そして、彼女は小さく首を振った。
「あ……いえ。ご迷惑ですわよね。ステファーヌ様のお時間も考えず……申し訳ございません」
ぽろりと、一筋の涙。
健気な笑顔。
それを見ていたクラスメイトたちが、ざわめき始める。
「おいステファーヌ、少しくらい良いだろ」
「俺も教えてほしいところあるけど、断るのか? 冷たいな~」
「ショップタウンなんて、明日でも行けるじゃん」
男子生徒たちは、アンヌを庇うようにステファーヌを囲んだ。
「それとも、今日中に買わなきゃいけない物でもあるのか?」
「……いや、そういうわけじゃないけど……」
言い淀んだ、その瞬間。
「ステファーは、わたくしの荷物持ちよ」
少し離れた席から、冷ややかな声音が飛んできた。
一斉に、視線が向く。
そこにいたのは、帰り支度を整えながら、すました顔で立つエリーズだった。
感情を抑えた声。
だが、その一言だけで、教室の空気が一変する。
エリーズが視線を向けると、アンヌの肩が、ほんのわずかに強張った。
その沈黙に耐えきれなくなったのか、一人の男子生徒が、意を決したように口を開く。
「……エリーズ嬢。前々から申し上げようと思っていたのですが、いくら公爵令嬢で、婚約者とはいえ――ステファーヌに対する態度は、目に余ります」
「おい、やめろ!」
ステファーヌが慌てて制止する。
だが、もう遅かった。
「いいや、言わせてくれ! 俺は、友達を従者みたいに扱われているのが我慢ならないんだ!」
「そ、そうだ! あの言動は人道的じゃない!」
「ステファーヌが言えないなら、俺たちが言ってやる!」
次々と重なる声。
――集団心理とは、かくも恐ろしい。
一人では決して楯突けない相手でも、数が揃い、誰かのためという大義名分があれば人は容易く、一人の少女を糾弾できてしまう。
「……何も、知らないくせに」
ステファーヌの口から、かすれた声が零れ落ちた。
だが、その言葉は誰の耳にも届かない。
「ショップタウンくらい、一人で行けよ!」
「ステファーヌが可哀想だ!」
非難は、矢のようにエリーズへ向けて放たれる。
「だま――」
ステファーヌが叫びかけた、その直前。
「分かりましたわ」
エリーズが、静かに言った。
怒りも、焦りも、声には滲ませない。
それが、かえって場の空気を凍りつかせる。
「本日の荷物持ちは、結構です」
それだけ告げると、エリーズは踵を返した。
何人かの女生徒が、無言のまま彼女に付き従う。
教室の扉が閉まる音がやけに大きく響いた。
教室を出ていく背中は、最後まで振り返らなかった。
「待って、エリー! 本当に……よろしかったんですの?」
背後からかけられた声に、エリーズは足を止める。
「フィリシテ様……マリリーズ、シルヴィ。お恥ずかしいところを、お見せしてしまいましたわ」
彼女の後を追ってきたのは、三人の少女だった。
フィリシテ・レアンドル――一学年上に在籍する王太子殿下の妹で、この国の王女。
マリリーズ・アルシェは侯爵令嬢、シルヴィ・フレモンは伯爵令嬢。
そして彼女たちは、幼い頃からの友人でもある。
「エリー、今日をどれほど楽しみにしていたか、私たちは知っていますわ」
「いつもの貴方でしたら、あの場で言い返していたでしょう? どうして……」
「それにしても、多勢に無勢で好き勝手言って……思い出すだけで腹が立ちます!」
フィリシテは心配そうに眉を寄せ、
マリリーズは自分のことのように胸を痛め、
シルヴィは怒りを隠そうともせず顔をしかめた。
「三人とも……ありがとうございます」
エリーズは眉を下げ、少し寂しそうに微笑む。
「ですが、いいのですわ。……彼等の言葉は、本当のことでもありますもの」
「でも!」
フィリシテが声を強める。
「二ヶ月も前から人気店を予約して、甘い物が好きな彼と行くのを、あれほど楽しみにしていたじゃない!」
「そうですわ! ステファーヌ様に喜んでいただけたら嬉しいって、仰っていましたでしょう?」
「私たちから見ても、ステファーヌ殿は……エリーズと一緒にいる時が一番、楽しそうです。あんな言葉、気にする必要などありません!」
シルヴィの言葉は、とても優しかった。
だが、それでも――。
彼等の言葉は、エリーズの胸に深く突き刺さっていた。
ステファーヌは、どれほど放漫な態度を取られても、どれほど我儘を言われても、決して反抗しなかった。
今でこそ自信に満ち、誰もが認める人物となった彼だが、本来は気弱で、言いたいことを胸に仕舞い込む性格だ。
それを誰よりも知っているからこそ、クラスメイトたちの言葉は、彼の本心を代弁しているように思えてしまった。
そして、発端は“学園のマドンナ”と呼ばれるアンヌ。
彼女に声をかけられて、不快に思う男性などいないだろう。
普段はエリーズに何も言えない男子生徒たちが、彼女の前でだけ、あそこまで強気になった理由も理解できた。
ステファーヌだって、きっと嬉しかったはずだ。
そう思った瞬間、胸の奥が、耐えきれなくなった。
――彼は、エリーズの婚約者。
彼の隣は、自分の場所だ。
そこに踏み込もうとする存在に、黒い感情が湧き上がったことを、エリーズは否定できない。
そんな醜い感情を抱く自分が嫌で、だからこそ、あの場を去ったのだ。
しばしの沈黙の後、エリーズは顔を上げた。
「……折角ですわ」
静かに、しかしはっきりと。
「三人とも、この後お暇でしたら、喫茶店に付き合ってくださいませんか? 次の予約となると、また数ヶ月先でしょうし……」
少しだけ、柔らかく微笑む。
「無駄にしてしまうのは、勿体ないですもの」
その言葉に、三人は一瞬だけ、どこか悲しそうな表情を浮かべ――
それから、示し合わせたように微笑んで頷いた。
「本当は、私もずっとあのお店、気になっていたの!」
「ふふ……甘いものばかりですもの。食べ過ぎないよう、気をつけませんとね」
「女子会、楽しみですわ!」
明るい声が重なり、空気がふっと和らぐ。
三人の友人の存在に、エリーズは胸の奥が温かくなるのを感じた。
――独りではない。
そう、静かに実感する。
胸を締めつけていた重たい感情が、少しずつほどけていく。
「ありがとうございます。……皆さんと行けるなら、きっと楽しいですわ」
エリーズは、ようやく心からの微笑みを浮かべた。
四人は肩を並べ、他愛のない話をしながら、ショップタウンへと向かう。
笑い声が、石畳の道に軽やかに響いた。
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