奴隷落ち予定の令嬢は公爵家に飼われました

茗裡

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第一章

12 下校

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授業も終わり放課後。


「ルナリア。貴方も今から普通科に行くよね?良かったら一緒に行かない?」


授業が終わり帰る準備をしていると隣の席のエメが声を掛けてきた。


今日は生徒会がない日だ。


「ごめんなさい。生徒会がない日はディオン様の迎えは不要なの」
「え?そうなの?」
「ごめんね。明日は迎えに行くんだけど…」
「あ、いーよいーよ。気にしないで。じゃあ、迎えも無く普通科に行くのはルナリアには勇気がいるよね…」


折角誘ってくれた事に申し訳なく思いながらも断りを入れる。


すると、エメは顎に手を添えてブツブツと何か呟き始めた。


「よし。じゃあ、ルナリア今日一緒に寮までは帰れるんだよね?」
「ええ。寮までなら」
「じゃあ、玄関で少しだけ待てる?貴女に合わせたい人がいるんだ!」
「う、うん。それは大丈夫だけど、合わせたい人?」
「そ。私が仕える御方に貴女のことを紹介したいの」


エメは彼女が仕える御方という人の元にお迎えに行った。


私は、エメが戻って来るのを玄関で待った。


「お待たせ!ルナリア」


普通科の玄関から此方に向かって来るエメ。

エメの隣には金髪に青い目をしたスタイリッシュな男性を伴っていた。


「此方の御方が私が仕えるモラン伯爵家の嫡男リシャール様」
「お久し振りです。ルナリア嬢。エメから話は聞きました。エメとお友達になって下さったそうで、ありがとうございます」


物腰柔らかで優しい笑みを浮かべるリシャール様はそう言って頭を下げた。


リシャール様とは私がまだ侯爵令嬢の時にパーティーで数度お会いして挨拶を交わした程度には面識がある。


あの時は、私の方が爵位が高かったが、今は平民でリシャール様が頭を下げるなど言語道断だ。


「そんなっ。頭を上げて下さいませっ。わたくしの方こそ、何度もエメ様には助けて頂いた上に良くして頂きまして。えっと、その。わたくしの方こそエメ様と友達にならせて頂き誠にありがとうございます!」


ああああ、思いっきり言語がおかしくてなっちゃった。


何言ってるの私~~っ!


もうやだ。恥ずかし過ぎて顔上げられないよぉ



パニックになった私は羞恥で耳まで赤く染めて頭を下げたまま顔を上げられなくなってしまった。


「「ぷっ」」


私の挨拶に呆然としていたエメとリシャールが吹き出す。


「もーっ、可笑しい。ルナリア、笑わせないでよ。言葉が可笑しくなってるじゃん。それに、気を遣わず私のことはエメのままでいいから」


エメはケラケラと声を立てて笑う。


その横で口元を抑えて顔を逸らすリシャール様。


リシャール様の肩が震えていることから笑いを耐えていることが分かった。



「いやぁ。あのルナリア嬢がこんなに面白い方だったなんて知らなかったよ」


一頻り笑った後。


リシャール様は目尻に浮かんだ涙を拭いながら言った。


「改めて、これからもエメの事を宜しく頼みますね」
「え…っと。わたくし自身から言うのもなんですが…本当にわたくしでも宜しいのでしょうか?」


だって、色んな噂がある訳ありの人物だ。


それも、悪い噂しかない。


そんな人物が自分の大事な従者に付き纏っていたら嫌ではないのかと思ったのだ。


だが、彼は一瞬キョトンとした後に柔らかい笑みを浮かべた。


「エメは人を見る目があるんだ。僕は周囲の言葉よりもエメの言葉を一番に信じている。だから、ルナリア嬢が悪い人だとは僕は思わない」


そう言って、リシャール様は双眸を細めエメの頭部に手を置いた。


頭を優しく撫でる手付きと愛おしむようにエメを見つめる瞳がどれ程彼女を大事にしているか分かった。


それに、エメの方も溌剌で活発的な顔はなりを潜めて頬を赤らめて甘んじている。


二人の信頼関係が伺える様子と和やかな空気に自然と頬が綻んだ。


素敵な主従関係。


互いに互いを思いやっているのが分かる。


「それじゃあ、帰ろうか」
「はい。」


リシャール様の言葉に私とエメは頷いた。


三人で寮までの帰路に着く。


その間。色んな話を聞いた。


エメは幼い頃からリシャール様に仕えているらしい。


リシャール様も食堂で会ったブリスとは幼馴染だとか、


小さい頃のエメの話とかを聞かせてくれた。



三人で帰る下校はとても楽しかった。


私も久し振りに心の底から笑えた気がした。






「え。あれってルナリア様じゃないですか?」


一人の女生徒が三人を見て驚いた顔をして言った。


「あれは…モラン家の嫡男と育成科の生徒?」


一人の女生徒を囲む複数の男子生徒のうち一人が視線の先を追って言う。



「ルナリア様はディオン様の侍女になったはずですよね?それなのに、御迎えもせず他の人と先に帰るなんて!やっぱり、ルナリア様はディオン様の侍女には向かないと私は思います。ディオン様が可哀想ですわ」


そう言って、少女はハニーピンクの髪を揺らして目を潤ませて下校する生徒達が行き交う中大きな声で言った。

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