奴隷落ち予定の令嬢は公爵家に飼われました

茗裡

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第二章

11 弟からの呼び出し

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「僕、競技大会を更に楽しくするいい方法思いついたんだ~」


笑顔で述べるラッセル様に視線が集中する。


「ただ、競うだけじゃあ面白くないでしょ?」
「そうか?私は真剣勝負こそが男の勇姿だと思うぞ」
「ジャスティンさんはちょっと黙ってて」


笑顔で切り捨てられたジャスティン様は、しゅんと項垂れた。


当の本人は、年上であるジャスティン様が肩を落としていることに目もくれず、言葉を続けた。


「この競技大会で一番になった人は気になる人一人からキスしてもらうっていうのはどうかな?」
「ほほう、なかなかに面白そうだな」
「流石殿下、分かっていらっしゃる。この中にもさ、気になる異性がいる人っていると思うんだよねー。それに、ご褒美としてなら普段身分差があって絶対に手が届かない人でもひと時の夢を見ることが出来るでしょ?」


そう言って、ラッセル様はマイルズ殿下とエリン殿下の背後に控えるアラン様にちらりと目を向けた。


ラッセル様はアラン様がエリン殿下に思いを寄せていることに気付いているのだろうか。



笑顔の下で彼が何を企んでいるのか分からない。


「ラッセルよ。競技大会は複種類あるのだぞ。どうやって、ナンバーワンを決するのだ?」
「アルヴィン、それはもちろん考えているよ。育成科の生徒以外は全員一つだけしか競技大会に参加出来ない、それも五人以上参加者がいる種目にしか適応されない」
「私は出来ることならば、身体を使うものは全て出たいぞ」
「ジャスティンさんは好きにしたらいいよ。それに、ジャスティンさんはこういうの興味無さそうだし」
「そうだな。気になる異性と言われてもピンと来ないしな」
「それでは、受けたい人だけの参加型にしよう!もちろん、俺様は参加する!俺様が優勝して女子は皆、この俺様が頂く」
「殿下、一人だけだって言ってるじゃないですか!欲張っちゃダメですよ」


マイルズ殿下の言葉にラッセル様が突っ込むが、突っ込むのはそこではない。


何故か、留学生陣営では決定事項のように話が進んでいる。


「ラッセル、そのご褒美はここに居る方からしか選べないのかしら」
「クリスティーナが望む人なら、多分ご褒美くれるんじゃないかな?……一番にならなくても、頼めばやってくれそうだけど」
「そ、そうね。お姉様ならきっと一番になれば頭を撫でて頑張ったわねって褒めてくれるわよね。そして、わたくしの頬にお姉様の唇が……あっ、ダメですわ。アネットお姉様」


……えーと、今最後にボソリとアネット様の名前が聞こえたような。


クリスティーナ様は、既に意識は遠くへ飛んでいっているようで楽しそうで何よりだ。


しかし、カオスな空間が徐々に広がりつつあるから、誰かそろそろ収拾してくれないかと思う。


「人数は多い方がいいし、そこの君たちも参加してよ」


ラッセル様は、ブリスさんとクロードさんを振り返って言う。


「いえ、私たちは」
「僕達への歓迎祝いだと思って盛り上げてよ」


即座に断りを入れる二人に、ラッセル様は逃げ道を塞ぐ。


「ディオン兄さんももちろん参加するでしょう?僕、ディオン兄さんの侍女たちが気に入っちゃったからどちらかを指名するつもりなんだ」


ラッセル様は挑発するように言うが、ディオン様に挑発は効かない。


彼の場合、大抵くだらないと切り捨てるだろう。


そう、思っていたのだけれど───

「いいだろう。種目は馬術、剣術、体術の何れかにしよう」
「へぇー、以外。ディオン兄さんなら頭脳戦で来るかと思ったのに」
「相手の土俵で勝ってこそ意味があるだろう?」


ディオン様の意味深な言葉にラッセル様は小首を傾いだ。


それにしても何故、馬術、剣術、体術の三つなのか。


他にも種目は沢山あるし、ラッセル様の言うようにディオン様なら頭脳戦が得意だ。


ラッセル様は、馬術、剣術、体術が得意なのかと思ったが、華奢な身体からはとてもそうは見えない。


「強制参加と言うことならば、私は馬術でお願いしたく存じます」


ラッセル様の背後にいたクロードさんが、そう口にすると近くにいたディオン様が微かに笑った気がした。


「馬術ならばラッセルも得意だったな。そこのブリスとやらも騎士団の試験で馬術を受けるのだろう?これで四人だ。あと一人は──」
「ディオン様、私が出ましょう。ブリスも出るというならば、私も久し振りに彼と競いたくなったのです」


残り枠に名乗りを上げたのは、リシャール様だった。


馬術には、ディオン様、ラッセル様、リシャール様、クロードさん、ブリスさんの五人が。



頭脳戦では、マイルズ殿下、エリン殿下、アルヴィン様、アラン様、クリスティーナ様の六人が参戦する事となった。


「待って、シロも出る」


これで、決定かと思いきや珍しくシロがやる気になっていた。


「シロ、馬術出る」


馬術も、シロを加えた六人で競うこととなった。



私とエメは、ただ蚊帳の外でやる気になっている彼等を眺めていることしか出来なかった。



「あのっ、ルナリア様はいらっしゃいますか」


一人の男子生徒が慌てた様子で駆けて来た。


彼は、育成科の制服を来ているが初めて顔を合わせる方だ。


「ルナリアはわたくしですが、如何なさいましたか?」


走って来たのか、肩で呼吸する彼の元まで歩み寄ると、男子生徒は勢い良く顔を此方へと向けた。


「此処にいらしたのですね。弟君がお見えになっていますので、正門まで起こし下さいとのことです」


男子生徒の言葉が衝撃的過ぎて、理解するまでに時間を要した。



私には、四歳年下の弟がいる。


弟は、私と違って時期アングラード家を継ぐ者として大切に育てられた。



育て方の違いもあったが、両親があまり私たちを近付けようとはさせなかったから、弟と言葉を交わした記憶などほとんどない。



それなのに、弟が何をしに来たのか。なんのために。



両親が関わっているのかと思うと、目の前が真っ白になった。
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