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「……ここは?」
目覚めると私は全く記憶にない場所にいた。
木造の天井。
眠っているベッドは安物のようで少し動くだけで軋む音がする。
私は今置かれた状況を把握しようとした。
ユリウス様の下へ行って、浮気現場を目撃して、壺で殴られて……
それからどうなったのだろうか?
頭に痛みは無い。
私は怪訝に思いながらゆっくりと身体を起こす。
「気分はどうだ?」
「え?」
身体を起こすと、一壁にもたれかかりながらこちらを見ている男性の姿が視界に入る。
彼は黒い髪に黒い瞳。
それに黒い外套を身に纏う美男子であった。
見ていると不思議と怖気が走る、だが目を放せない。
私は彼を見つめながら、正体を探るべく話しかける。
「あなたは誰? それにここはどこ?」
「俺はファイ。そしてここはキリマールの村だ」
「キリマール……ユリウス様の町から少し北にある村ね。それで、あなたは何故こんな場所にいるの? そもそも、どうやって私をこんな場所まで運んできたの?」
ファイはクツクツと笑いながら、壁に備えらえている鏡を指差す。
「あれがどうかしたの?」
「一度あれを覗いてみろ。それからの方が話が早い」
「?」
私はベッドから起き上がり、鏡を覗き込んで見た。
「!?」
自分自身の顔を見て驚愕する。
長い赤髪に碧眼の大きな瞳。
これは――私じゃない。
元々私は金髪で瞳の色は茶色だったのに……
別人の顔がそこにある。
「ど、どういうこと? これはどういうことなの?」
「今のお前はディアナ・コンバルージュじゃない。お前はあの時、あの男に殺されてしまったのさ」
「こ、殺されたって……何をバカなことを」
「……殺されたお前の魂を、その肉体に移してやったんだよ。だからお前は別人として生き延びたというわけだ。殺されたという事実を受け入れろ」
「…………」
馬鹿馬鹿しい話。
ファイは挑発的な表情を浮かべているが、しかし嘘を言っているようにも思えない。
それに何よりの証拠として、現に私は別人に変わってしまっているのだ。
「……じ、じゃあそれが事実として、どうやってこの体に魂を移したというのかしら?」
「それは簡単な話だ。俺は死神だからな」
「し、死神?」
私はキョトンとする。
そんな私の顔を見てファイはまた笑っていた。
「死神なんて……そんなの存在するわけないでしょ!」
「存在するからお前はここにいて、存在するからお前の目の前にいるんだよ」
「…………」
信じられない。
でも今置かれた状況も信じがたいものであった。
彼は本当のことを言っているのだろうか?
私は彼を警戒しつつも、話を続けることにした。
目覚めると私は全く記憶にない場所にいた。
木造の天井。
眠っているベッドは安物のようで少し動くだけで軋む音がする。
私は今置かれた状況を把握しようとした。
ユリウス様の下へ行って、浮気現場を目撃して、壺で殴られて……
それからどうなったのだろうか?
頭に痛みは無い。
私は怪訝に思いながらゆっくりと身体を起こす。
「気分はどうだ?」
「え?」
身体を起こすと、一壁にもたれかかりながらこちらを見ている男性の姿が視界に入る。
彼は黒い髪に黒い瞳。
それに黒い外套を身に纏う美男子であった。
見ていると不思議と怖気が走る、だが目を放せない。
私は彼を見つめながら、正体を探るべく話しかける。
「あなたは誰? それにここはどこ?」
「俺はファイ。そしてここはキリマールの村だ」
「キリマール……ユリウス様の町から少し北にある村ね。それで、あなたは何故こんな場所にいるの? そもそも、どうやって私をこんな場所まで運んできたの?」
ファイはクツクツと笑いながら、壁に備えらえている鏡を指差す。
「あれがどうかしたの?」
「一度あれを覗いてみろ。それからの方が話が早い」
「?」
私はベッドから起き上がり、鏡を覗き込んで見た。
「!?」
自分自身の顔を見て驚愕する。
長い赤髪に碧眼の大きな瞳。
これは――私じゃない。
元々私は金髪で瞳の色は茶色だったのに……
別人の顔がそこにある。
「ど、どういうこと? これはどういうことなの?」
「今のお前はディアナ・コンバルージュじゃない。お前はあの時、あの男に殺されてしまったのさ」
「こ、殺されたって……何をバカなことを」
「……殺されたお前の魂を、その肉体に移してやったんだよ。だからお前は別人として生き延びたというわけだ。殺されたという事実を受け入れろ」
「…………」
馬鹿馬鹿しい話。
ファイは挑発的な表情を浮かべているが、しかし嘘を言っているようにも思えない。
それに何よりの証拠として、現に私は別人に変わってしまっているのだ。
「……じ、じゃあそれが事実として、どうやってこの体に魂を移したというのかしら?」
「それは簡単な話だ。俺は死神だからな」
「し、死神?」
私はキョトンとする。
そんな私の顔を見てファイはまた笑っていた。
「死神なんて……そんなの存在するわけないでしょ!」
「存在するからお前はここにいて、存在するからお前の目の前にいるんだよ」
「…………」
信じられない。
でも今置かれた状況も信じがたいものであった。
彼は本当のことを言っているのだろうか?
私は彼を警戒しつつも、話を続けることにした。
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