そうですか、私より妹の方を選ぶのですか。別に構いませんがその子、どうしようもない程の害悪ですよ?

亜綺羅もも

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「ねえ、なんで言ったことができないの? 私は掃除をしてって言っただけじゃない」
「申し訳ございません、ソフィアお嬢様……」

 廊下を歩いていると、ソフィアの部屋から話し声が聞こえて来る。
 何事かと覗き込んで見ると、中では侍女に詰め寄るソフィアの姿が見えた。

 どうやら侍女は部屋のツボを割ってしまったようだ。
 そのことに怒っているようだが……ソフィアはニヤニヤと笑っている。

「ねえ、掃除をしていてなんで壺が割れるのかしら?」
「そ、それは、ソフィアお嬢様が……」
「何? 私がなんなの?」
「い、いえ……申し訳ございません」

 とうとう泣き出してしまう侍女。
 推測ではあるが、原因はソフィアにあるのだと思う。
 そう考えた私は二人の間に入って、ソフィアを止める。

「ソフィア。もう許してあげたらどう? この壺、この間買った安い物でしょ?」
「高い安いの問題ではないのです、お姉様。割ったこと自体に問題があるのよ」
「それは分るけれど、本当にこの子だけの失敗で割れたのかしら?」
「ええ、そうよ。私はこの目で見ていたのですから」

 私は説明を求めるように侍女の方に視線を向ける。

「あの、私……」
「大丈夫よ。私が守ってあげるから」
「……ソフィアお嬢様に足を引っ掛けられたのです。その時に壺に手をかけてしまって……」

 やはりそうか。
 この子が悪いんじゃなくて、ソフィアが原因を作っていたんだ。
 私は怒りが込み上げてくるが、出来る限り冷静にソフィアに言う。

「いい加減にしなさい。いつもあなたは問題ばかり――」
「ああ、もう、うるさいなぁ。善人面ばかりするお姉様にはうんざりですわ。もういいから、あんたは出て行って」

 しっしと手を払うソフィアを見て、侍女がそそくさと部屋を出て行く。

「ねえソフィア――」
「説教はやめてくれません? お姉様にはお姉様の考えがあるのでしょうけど、私にも私の考えがあるのです」
「…………」

 心底辟易するような表情を浮かべるソフィア。
 彼女とは会話も成立しない。
 以前はまだマシだったのに、今は完全に迷惑かけたい放題。
 このままじゃこの子、いずれ自滅することに気づいていないのかしら……
 
「一言だけ言っておくけれど、あなたがやったこと、全部あなた自身に返ってくるわよ」
「あはは。それは返って来た時に考えるから大丈夫です。ご忠告ありがとうございます」
「…………」

 私は大きくため息をつき、ソフィアの部屋を出た。
 あまり彼女のことで神経を使いたくないのだけれど……毎日がこうだからどうも私自身もストレスが溜まってしまう。
 廊下で深呼吸しながら、楽しいことを思い出し、無理矢理に笑顔を作る。
 いつかソフィアには天罰が下る……だけどその前にあの子の性格を変えてあげることはできないものだろうかとも考えるが……とてもじゃないが不可能であろう。
 一人で怒るソフィアの声を聞いて、私は諦めのため息をもう一つついた。
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