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「え……えええ……痛ぁあああああああああああいいいいいい‼」

 ズボッと槍を引き抜くと床にパタパタと血が落ちる。
 地面に倒れ転げ回るエルダー。
 マーニャと衛兵たちは、ただただポカンとしていた。

「てめえみてえなクズに使ってた時間がもったいねえわ! 今すぐ殺して鬱憤腫らしてやろうか?」
「ひぃいいい!!」

 そこで衛兵たちは置かれている状況を理解し、彼らは私を取り囲んだ。

「ア、アリーヴェ様! あなたと言えども――」
「うっせえうっせえうっせえええええええ!」

 槍を振り回し、衛兵たちの横面を一度にひっぱたく。
 同時に地面に倒れ、痛みに喘いでいた。

「おい、マーニャ」
「は、はい……」

 私はマーニャに槍を向ける。
 彼女は目をまんまるに見開くが、まだ私を陥れようと考えているのか、信じられないことを言い出す。

「こ、こんなことをしても、なんにもなりませんよ! あなたが言葉にした真実は変わらないのですから!」
「…………」

 私はため息をつき、一歩前に踏み出す。
 そしてマーニャの靴を勢いよく踏んづける。

「痛いっ!」

 足の痛みにピョンピョン飛び跳ねるマーニャ。
 さらにマーニャの足を引っ掛けて、地面に転がす。

「ななな、何をするつもりですの?」

 ガタガタ震えているマーニャ。
 私は槍をクルクルと回し、彼女の鼻先に先端を突き付ける。

「これで最期だけど……何か言い残したことはあるか?」
「さ、最期……?」

 大量の冷や汗を流し、歯をカタカタ鳴らし、顔を引きつらせるマーニャ。
 恐怖に怯え、真っ青な顔で私を見上げている。

「もし真実を語ると言うのなら許してやろうと思っていたが……お前にそのつもりはないみたいだな」

 私は槍を振り上げる。

「ちょ……」
「じゃあな、クソ女!」
「ま――」

 相手に向かって力の限り槍を振り下ろす。
 マーニャは涙を流しながら、大声で叫ぶ。

「嘘をつきました! アリーヴェ様は何も言っていません! エルダー様への不平不満など一言も漏らしていませんでしたぁああああああ!」

 ガッと音を立てて突き刺さる槍。
 マーニャはその槍を見下ろして、硬直している。
 槍はマーニャの股間辺り――地面に突き刺さり、彼女には傷一つついていない。

 するとマーニャは恐怖のあまり放尿してしまい、綺麗なドレスがジワーッと濡れていく。

 槍を地面から抜き去り、私はそれを肩に担ぐ。

「このおもらし女が二つの意味で漏らしたけど……そういうことだ。分かったか?」

 エルダーは肩から血を吹き出しながらマーニャを唖然と見ている。
 沈黙が続くが、ハッとしたエルダーは口を開いた。

「マ、マーニャ……どういうことだ?」
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