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「…………」
マーニャは何も言うことができず、下唇を噛みしめて私を睨んでいる。
クリスは依然として私の背後で静かにたたずみ、私はマーニャに対して鼻で笑った。
「まだ文句あんのか? ああ?」
「い、いえ……何もありません」
真っ青な顔をそらすマーニャ。
そしてエルダーに向かって申し訳なさそうな笑みを向ける。
「す、すみませんでした……エルダー様を振り向かせたく思い、あのような嘘をついてしまったのです……」
「う、嘘だと……アリーヴェの話は全て嘘だったと言うのか!?」
「は、はい……」
頭を地面にこすりつけ、マーニャは謝罪する。
エルダーはマーニャを睨みつけたかと思うと、急に私にしがみ付いてきた。
「ア、アリーヴェ……アリーヴェ! 悪かった! 私は騙されていたんだ! それが今分かった! やはり真の愛は君と共に――」
「てめえとの間に、真の愛なんてねえんだよ! 婚約者を信じられない野郎と添い遂げるつもりはねえ。じゃあな」
私はエルダーを振り払い、踵を返す。
エルダーは肩の痛みに顔を歪めながら叫ぶ。
「君にこんなことをされても私はまだ君のことが好きなんだ! マーニャの話が嘘だったと安心している自分がいる。お願いだ……許してくれ、アリーヴェ!」
「…………」
私はエルダーの方へ振り向き、満面の笑みを向ける。
「アリーヴェ……」
エルダーは私の笑みに安心したのか、涙を浮かべながら笑顔を浮かべた。
そんなに私のことが好きなのか。
そんなに私が欲しいのか。
そんなに私が恋しいのか。
ならば何故私を信じなかったのだ。
少し考えれば分かるはずだ。
エルダーに対しての不満を口にするような愚かな女ではないことを。
だと言うのに、エルダーはマーニャの言葉を信じてしまった。
いつも傍にいるはずだった私より、マーニャを選んだのだ。
だが彼は不細工ながら、必死に愛を叫んだ。
だから私は振り返った。
彼に言うために。
だから私は口を開く。
彼に教えるために。
「くせえから口開くな、アホ」
「んなっ……」
お前がマーニャを選んだ時点で終わりだったんだよ。
今更いい顔されたところで、靡くわけないだろう。
私は槍を地面に突き刺す。
エルダーはビクッと体を震わせ、尻餅をつく。
そんな情けないエルダーの姿を見て、クリスが微笑を浮かべた。
私はそんなクリスに槍を手渡す。
クリスはその槍を、いつものことのように手慣れた手つきで折りたたむ。
「では、帰りましょうか、クリス」
「はいお嬢様」
私たちは歩き出す。
「待ってくれ……アリーヴェ!!」
背中にエルダーの声を聞きながら歩き出す。
その胸のうちはスッキリとしており、私は晴れたような気分で屋敷を後にした。
マーニャは何も言うことができず、下唇を噛みしめて私を睨んでいる。
クリスは依然として私の背後で静かにたたずみ、私はマーニャに対して鼻で笑った。
「まだ文句あんのか? ああ?」
「い、いえ……何もありません」
真っ青な顔をそらすマーニャ。
そしてエルダーに向かって申し訳なさそうな笑みを向ける。
「す、すみませんでした……エルダー様を振り向かせたく思い、あのような嘘をついてしまったのです……」
「う、嘘だと……アリーヴェの話は全て嘘だったと言うのか!?」
「は、はい……」
頭を地面にこすりつけ、マーニャは謝罪する。
エルダーはマーニャを睨みつけたかと思うと、急に私にしがみ付いてきた。
「ア、アリーヴェ……アリーヴェ! 悪かった! 私は騙されていたんだ! それが今分かった! やはり真の愛は君と共に――」
「てめえとの間に、真の愛なんてねえんだよ! 婚約者を信じられない野郎と添い遂げるつもりはねえ。じゃあな」
私はエルダーを振り払い、踵を返す。
エルダーは肩の痛みに顔を歪めながら叫ぶ。
「君にこんなことをされても私はまだ君のことが好きなんだ! マーニャの話が嘘だったと安心している自分がいる。お願いだ……許してくれ、アリーヴェ!」
「…………」
私はエルダーの方へ振り向き、満面の笑みを向ける。
「アリーヴェ……」
エルダーは私の笑みに安心したのか、涙を浮かべながら笑顔を浮かべた。
そんなに私のことが好きなのか。
そんなに私が欲しいのか。
そんなに私が恋しいのか。
ならば何故私を信じなかったのだ。
少し考えれば分かるはずだ。
エルダーに対しての不満を口にするような愚かな女ではないことを。
だと言うのに、エルダーはマーニャの言葉を信じてしまった。
いつも傍にいるはずだった私より、マーニャを選んだのだ。
だが彼は不細工ながら、必死に愛を叫んだ。
だから私は振り返った。
彼に言うために。
だから私は口を開く。
彼に教えるために。
「くせえから口開くな、アホ」
「んなっ……」
お前がマーニャを選んだ時点で終わりだったんだよ。
今更いい顔されたところで、靡くわけないだろう。
私は槍を地面に突き刺す。
エルダーはビクッと体を震わせ、尻餅をつく。
そんな情けないエルダーの姿を見て、クリスが微笑を浮かべた。
私はそんなクリスに槍を手渡す。
クリスはその槍を、いつものことのように手慣れた手つきで折りたたむ。
「では、帰りましょうか、クリス」
「はいお嬢様」
私たちは歩き出す。
「待ってくれ……アリーヴェ!!」
背中にエルダーの声を聞きながら歩き出す。
その胸のうちはスッキリとしており、私は晴れたような気分で屋敷を後にした。
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