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酔いにかまけて、
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基礎物理後の水曜ランチも久しぶりだった。勇気を振り絞って誘って、断られたらどうしようかとも思った眞人だったが、裕次が「べつにいいけど」と短く答えたので安堵した。
「あのさ」
以前、裕次の告白を受けたグランド外れの芝生の上で、眞人はカツサンドをぼんやりと見つめながら言葉を紡ぐ。裕次はサンドイッチを齧りながら「なに」と短く促す。
「この前は……ごめん。オレたぶんだいぶ酔ってたんだと思う」
「べつにいいよ、もう」
さっぱりと言い切られて、眞人は二の句を次げない。あれは冗談だったんだとも、あれは本気だったんだとも言えなかった。少しの間沈黙が流れて、やがて裕次が目をあわさずに呟いた。
「おれ、考えたんだけど」
「……うん」
「あの人に、……ちゃんと、気持ち、伝えてみよう、と、思って……」
「……あぁ……」
咄嗟に「いいんじゃない」とはいえない眞人だった。裕次は相変わらず正面を向いたままで、視線を辿るとたぶんその先には、オケ部の練習室がある。
「いろいろ、考えて、……まだすぐには無理、だろうけど。……まぁでも、そういう気になれたのは、……きみのおかげ、と思う……だから、……その、」
ありがと。
そっぽを向かれて捨て置かれた一言だったけれど、眞人には確かに聞こえた。嬉しいと素直に思えないのが複雑だったが、半ば衝動的に横からぎゅっと裕次を抱きしめた。
「わ、なに……」
「それでいい、それがいいと思うよ。きっと、あの人はあんたのこと、受け入れてくれるよ。うん、よかった、幸せになれる」
「ちょ、なんか、……おかしくない?おれまだ、本人に言ったわけじゃないし、……なんかきみの態度、告白がOKだったみたいじゃん……」
「大丈夫だって。あの人はきっと……もしダメだったら、オレが責任もって貰い受けてやるから安心しなよ」
裕次から身を離しながら冗談めかして言うと、少し戸惑うようにその眸が揺れた。そして何か言おうと口を開きかけ、やっぱり思い直したのか悪戯っぽく笑って軽口を叩く。
「きみにもらわれるのはごめんだね。基本恥ずかしいやつだし、酔っ払うとうざいし、なにかとうるさいし」
「……裕次さん、なんか冗談に聞こえないので胸がすごく痛いんですけど」
そう言いながら眞人は庇うように胸に手を当てる。裕次はそれを見て苦笑し、視線を落とした。
「きみは優しすぎるから、おれのこういう言動に耐えられないだろ。……きみには、もっと優しい人がいるよ」
ただ単純にきみではダメだ、といわれるよりもずっと心に重くのしかかってきた。
それはつまり、あの人に対しては、自分のわがままを通してでも、それでも近くにいたいと思うってことだろ……。
二人の間に挟まれた眞人は、ただただ苦笑を顔にはりつけてこっそり不貞寝をする以外になかった。
「あのさ」
以前、裕次の告白を受けたグランド外れの芝生の上で、眞人はカツサンドをぼんやりと見つめながら言葉を紡ぐ。裕次はサンドイッチを齧りながら「なに」と短く促す。
「この前は……ごめん。オレたぶんだいぶ酔ってたんだと思う」
「べつにいいよ、もう」
さっぱりと言い切られて、眞人は二の句を次げない。あれは冗談だったんだとも、あれは本気だったんだとも言えなかった。少しの間沈黙が流れて、やがて裕次が目をあわさずに呟いた。
「おれ、考えたんだけど」
「……うん」
「あの人に、……ちゃんと、気持ち、伝えてみよう、と、思って……」
「……あぁ……」
咄嗟に「いいんじゃない」とはいえない眞人だった。裕次は相変わらず正面を向いたままで、視線を辿るとたぶんその先には、オケ部の練習室がある。
「いろいろ、考えて、……まだすぐには無理、だろうけど。……まぁでも、そういう気になれたのは、……きみのおかげ、と思う……だから、……その、」
ありがと。
そっぽを向かれて捨て置かれた一言だったけれど、眞人には確かに聞こえた。嬉しいと素直に思えないのが複雑だったが、半ば衝動的に横からぎゅっと裕次を抱きしめた。
「わ、なに……」
「それでいい、それがいいと思うよ。きっと、あの人はあんたのこと、受け入れてくれるよ。うん、よかった、幸せになれる」
「ちょ、なんか、……おかしくない?おれまだ、本人に言ったわけじゃないし、……なんかきみの態度、告白がOKだったみたいじゃん……」
「大丈夫だって。あの人はきっと……もしダメだったら、オレが責任もって貰い受けてやるから安心しなよ」
裕次から身を離しながら冗談めかして言うと、少し戸惑うようにその眸が揺れた。そして何か言おうと口を開きかけ、やっぱり思い直したのか悪戯っぽく笑って軽口を叩く。
「きみにもらわれるのはごめんだね。基本恥ずかしいやつだし、酔っ払うとうざいし、なにかとうるさいし」
「……裕次さん、なんか冗談に聞こえないので胸がすごく痛いんですけど」
そう言いながら眞人は庇うように胸に手を当てる。裕次はそれを見て苦笑し、視線を落とした。
「きみは優しすぎるから、おれのこういう言動に耐えられないだろ。……きみには、もっと優しい人がいるよ」
ただ単純にきみではダメだ、といわれるよりもずっと心に重くのしかかってきた。
それはつまり、あの人に対しては、自分のわがままを通してでも、それでも近くにいたいと思うってことだろ……。
二人の間に挟まれた眞人は、ただただ苦笑を顔にはりつけてこっそり不貞寝をする以外になかった。
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