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第1章 浮気者の公爵令息に婚約破棄されましたが推しの王子を愛でるので問題ありません
【2.推し王子】
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メルディアーナの『推し』とはマーシェル王子のことである。
この国の第二王子であらせられるマーシェル王子は、金髪碧眼の大変麗しい王子だ。
この国中の令嬢の視線を集めておしまいになるんじゃないかといった感じだが、ご自身はあまり気づいていらっしゃるのかいないのかよく分からない。
とにかく恋の噂もほとんどないのだ。(といっても、どうやらマーシェル王子には好きな人がいるらしいというそこはかとない噂だけはあるのだが。)
メルディアーナが特別マーシェル王子を『推す』きっかけになったのは、まあ容姿が好みど真ん中だというのが一番にあったが、メルディアーナの母、成金のコルウェル伯爵夫人がマーシェル王子の乳母を務めたことというのもあった。
十数年前、夫のおかげで経済的に十分成功したコルウェル伯爵夫人は、次は王宮内での立場をよくしたいと虎視眈々と狙っていた。
だから王妃様がマーシェル王子を妊娠・出産されるとなったとき、「これだっ!」と思ったに違いなかった。ちょうどお腹にはメルディアーナがいた。王妃様の妊娠・出産となれば乳母が募集される。それなりの家柄の者から選ばれるだろうから、夫コルウェル伯爵に頼んで根回ししてもらって、王子の乳母になろうじゃないの。乳母ともなれば王妃の信頼も、教育する王子の信頼も得られ、立場が確立されるはず!
コルウェル伯爵も夫人の希望に賛成し、根回しにわりかし大金をかけたと思う。そして無事にコルウェル伯爵夫人が生まれてくる王子の乳母になることが決まったのだった。
つまり、メルディアーナはマーシェル王子と乳姉弟ということになる。
乳姉弟らしく幼い頃はそれなりに一緒に遊んだが、とはいえ、相手は王家のご子息である。成長すれば、いくら乳姉弟とはいってもメルディアーナがマーシェル王子と気軽に会いにいける間柄ではなかった。
メルディアーナはマーシェル王子の容姿が小さい頃から好みど真ん中だったので、十を超えてからも頻繁に母親のところを訪ねマーシェル王子に会いたがった。
メルディアーナの母コルウェル伯爵夫人は乳母をきっちりこなした姿勢を評価され今や王妃の信頼も厚く、引き続きマーシェル王子の世話係も務めていたのだ。
「おかあさまぁ、今日もマーシェル王子に会える? 明日も?」
初めのうちは母親のコルウェル伯爵夫人も天真爛漫で無垢な娘のことだからと甘く大目に見ていたけれども、そのうち、あまりに気軽に、そして遠慮がなくなってきたと思えたため、メルディアーナが訪ねてくることを禁止するようになった。
「いや、あなたね。そんな気兼ねなく会っていい相手じゃありませんよ……」
王子に会いたいばっかりのメルディアーナは「なぜなぜなぜーっ?」と母親に詰め寄ったが、厳格な母親は、
「必要な距離感はきちんと守りなさい。相手は王子ですよ! もう二人とも年頃なんだし、調子に乗って馴れ馴れしく話しかけるなどあり得ません」
と厳しい口調で言うばかり。取り付く島もない。
「あのバカ娘のことだから、なんやかんや理由をつけて王子に会いに来るでしょうけど、メルディアーナは通してはいけません」
と侍女たちにも固く言いつけた。
メルディアーナは不服だったが、母親が断固として禁止している以上、部屋に入れてもらえない。マーシェル王子を一目見れないかと周囲をうろついてみるが、すぐ母親に通報され、家の者が迎えに来て連れ戻されるだけ。あまりマーシェル王子を見かけることはできなかった。
マーシェル王子は滅多に見られないのに、母親には「また来たの、バカ娘!」と怒られるので、結局メルディアーナはなんだか割に合わないと母親の仕事場周辺をうろつくのをやめた。
だから、メルディアーナはマーシェル王子から乳姉弟として幼いころ一緒に遊んだことがある程度には認識してもらっていただろうが、しかし今となっては全く接点も無くなってしまったのだった……。
それでも、メルディアーナはマーシェル王子に熱い『推し』の眼差しを送り続けていたので、コルウェル伯爵夫人はあきらめさせるために、さっさとメルディアーナに婚約者を用意することにした。このバカ娘は妙に積極的なところがあるので、母親なりの警戒心からだった。
「もう、あなたは婚約でもした方がいいわ……」
そして、ちょうよくダナン・ウェブスター公爵令息との婚約の話が浮上した。
名門ウェブスター公爵家と成金のコルウェル伯爵家!
コルウェル伯爵家が裕福であるという理由と、コルウェル伯爵夫人が乳母を務めているという部分で下駄をはかせてもらったにすぎない。
ダナンはそれが気に入らなかった。マーシェル王子推しのメルディアーナも、ダナンには全く興味を示さない。
しかし、大人の事情で婚約は纏まった。
そこからは、母コルウェル伯爵夫人は、
「あなたはもう婚約したのですからマーシェル王子のことは忘れねばなりませんよ」
とメルディアーナに言い含めた。
そして、どうしてもメルディアーナがコルウェル伯爵夫人を訪ねに王宮に来ねばならないときは、メルディアーナに目深の帽子を被せ、
「王子が傍にいてもいなくても極力言葉を出してはいけませんよ」
ときつくメルディアーナに言い含めた。
メルディアーナもまあ、婚約するような歳ごろにもなれば、もう色々分かっていた。
婚約した娘が――しかも、特に公爵家と!――節操なく「マーシェル王子かっこいい」などと言って回っていて良いわけがないことを。無防備に独身男性と会っていて良いわけがないことも。
それで、幼いころはそれなりに乳姉弟の恩恵を得られたメルディアーナであるが、別の男性と婚約してしまった今となっては、もう母の仕事場でマーシェル王子を見かけたとて、言葉を交わすこともなく直接じろじろ見ることもなく、ただ会えたことに満足するしかなかったのである。
しかし、そんなメルディアーナにはマーシェル王子に関して、最近一つの秘密があった。
この国の第二王子であらせられるマーシェル王子は、金髪碧眼の大変麗しい王子だ。
この国中の令嬢の視線を集めておしまいになるんじゃないかといった感じだが、ご自身はあまり気づいていらっしゃるのかいないのかよく分からない。
とにかく恋の噂もほとんどないのだ。(といっても、どうやらマーシェル王子には好きな人がいるらしいというそこはかとない噂だけはあるのだが。)
メルディアーナが特別マーシェル王子を『推す』きっかけになったのは、まあ容姿が好みど真ん中だというのが一番にあったが、メルディアーナの母、成金のコルウェル伯爵夫人がマーシェル王子の乳母を務めたことというのもあった。
十数年前、夫のおかげで経済的に十分成功したコルウェル伯爵夫人は、次は王宮内での立場をよくしたいと虎視眈々と狙っていた。
だから王妃様がマーシェル王子を妊娠・出産されるとなったとき、「これだっ!」と思ったに違いなかった。ちょうどお腹にはメルディアーナがいた。王妃様の妊娠・出産となれば乳母が募集される。それなりの家柄の者から選ばれるだろうから、夫コルウェル伯爵に頼んで根回ししてもらって、王子の乳母になろうじゃないの。乳母ともなれば王妃の信頼も、教育する王子の信頼も得られ、立場が確立されるはず!
コルウェル伯爵も夫人の希望に賛成し、根回しにわりかし大金をかけたと思う。そして無事にコルウェル伯爵夫人が生まれてくる王子の乳母になることが決まったのだった。
つまり、メルディアーナはマーシェル王子と乳姉弟ということになる。
乳姉弟らしく幼い頃はそれなりに一緒に遊んだが、とはいえ、相手は王家のご子息である。成長すれば、いくら乳姉弟とはいってもメルディアーナがマーシェル王子と気軽に会いにいける間柄ではなかった。
メルディアーナはマーシェル王子の容姿が小さい頃から好みど真ん中だったので、十を超えてからも頻繁に母親のところを訪ねマーシェル王子に会いたがった。
メルディアーナの母コルウェル伯爵夫人は乳母をきっちりこなした姿勢を評価され今や王妃の信頼も厚く、引き続きマーシェル王子の世話係も務めていたのだ。
「おかあさまぁ、今日もマーシェル王子に会える? 明日も?」
初めのうちは母親のコルウェル伯爵夫人も天真爛漫で無垢な娘のことだからと甘く大目に見ていたけれども、そのうち、あまりに気軽に、そして遠慮がなくなってきたと思えたため、メルディアーナが訪ねてくることを禁止するようになった。
「いや、あなたね。そんな気兼ねなく会っていい相手じゃありませんよ……」
王子に会いたいばっかりのメルディアーナは「なぜなぜなぜーっ?」と母親に詰め寄ったが、厳格な母親は、
「必要な距離感はきちんと守りなさい。相手は王子ですよ! もう二人とも年頃なんだし、調子に乗って馴れ馴れしく話しかけるなどあり得ません」
と厳しい口調で言うばかり。取り付く島もない。
「あのバカ娘のことだから、なんやかんや理由をつけて王子に会いに来るでしょうけど、メルディアーナは通してはいけません」
と侍女たちにも固く言いつけた。
メルディアーナは不服だったが、母親が断固として禁止している以上、部屋に入れてもらえない。マーシェル王子を一目見れないかと周囲をうろついてみるが、すぐ母親に通報され、家の者が迎えに来て連れ戻されるだけ。あまりマーシェル王子を見かけることはできなかった。
マーシェル王子は滅多に見られないのに、母親には「また来たの、バカ娘!」と怒られるので、結局メルディアーナはなんだか割に合わないと母親の仕事場周辺をうろつくのをやめた。
だから、メルディアーナはマーシェル王子から乳姉弟として幼いころ一緒に遊んだことがある程度には認識してもらっていただろうが、しかし今となっては全く接点も無くなってしまったのだった……。
それでも、メルディアーナはマーシェル王子に熱い『推し』の眼差しを送り続けていたので、コルウェル伯爵夫人はあきらめさせるために、さっさとメルディアーナに婚約者を用意することにした。このバカ娘は妙に積極的なところがあるので、母親なりの警戒心からだった。
「もう、あなたは婚約でもした方がいいわ……」
そして、ちょうよくダナン・ウェブスター公爵令息との婚約の話が浮上した。
名門ウェブスター公爵家と成金のコルウェル伯爵家!
コルウェル伯爵家が裕福であるという理由と、コルウェル伯爵夫人が乳母を務めているという部分で下駄をはかせてもらったにすぎない。
ダナンはそれが気に入らなかった。マーシェル王子推しのメルディアーナも、ダナンには全く興味を示さない。
しかし、大人の事情で婚約は纏まった。
そこからは、母コルウェル伯爵夫人は、
「あなたはもう婚約したのですからマーシェル王子のことは忘れねばなりませんよ」
とメルディアーナに言い含めた。
そして、どうしてもメルディアーナがコルウェル伯爵夫人を訪ねに王宮に来ねばならないときは、メルディアーナに目深の帽子を被せ、
「王子が傍にいてもいなくても極力言葉を出してはいけませんよ」
ときつくメルディアーナに言い含めた。
メルディアーナもまあ、婚約するような歳ごろにもなれば、もう色々分かっていた。
婚約した娘が――しかも、特に公爵家と!――節操なく「マーシェル王子かっこいい」などと言って回っていて良いわけがないことを。無防備に独身男性と会っていて良いわけがないことも。
それで、幼いころはそれなりに乳姉弟の恩恵を得られたメルディアーナであるが、別の男性と婚約してしまった今となっては、もう母の仕事場でマーシェル王子を見かけたとて、言葉を交わすこともなく直接じろじろ見ることもなく、ただ会えたことに満足するしかなかったのである。
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