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第1章 浮気者の公爵令息に婚約破棄されましたが推しの王子を愛でるので問題ありません
【3.王子と私の秘密(前編)】
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それは1年前くらいのことだった。
メルディアーナは、マーシェル王子を遠目に眺めながら、マーシェル王子が悩みを抱えているのではないかと思っていた。
マーシェル王子は、いつもの人当たりがよく柔らかい笑顔の陰に、最近どことなく暗い表情を隠していたのだ。幼い頃からマーシェル王子をこっそり見てきたので様子が違うことは分かる! もはやあまり接点のないメルディアーナだったので理由は分からなかったが、ひそかに心配していた。
これまでだって王子が元気がないことは多々あった。
しかし、ここまで悩んでいる様子なのは見たことがなかった。
母コルウェル伯爵夫人にそれとなくマーシェル王子が元気がないのではないかと聞いてみたら、そこはさすがの乳母で、
「どうも最近何か悩みがあるみたい。国王陛下と何かお話していたみたいで。って、メルディアーナ、あなたよく気付いたわね。王子は顔に出すタイプじゃないのに。はっ!!! もしやあなた、まだ『マーシェル王子チェック』をやってるわけ? いい加減やめなさいって言ってるでしょう!」
と逆にを小言をもらった。
ちなみにどうでもよいが、『マーシェル王子チェック』というのは、数年前メルディアーナがはまっていた遊びだ。なんのことはない。マーシェル王子を遠目にでも見かけた日に、今日のカッコよさ・肌つや・声に張りがあるか・元気かなどを自己流で採点するというもの……。ただそれだけ……。
はてさて、悩みがあると聞いては、メルディアーナは居ても立ってもいられなくなった。
「ああ、どうしたのかしら、マーシェル王子……。悩んでる顔もかっこいいけど、きゅううん♡って来るのはやっぱり笑顔の方なのに……」
マーシェル王子の様子がいつもより深刻そうだったから。何かよほどの理由があるのではと思えた。
恋の病とかだったらメルディアーナが出る幕はないが、もしそうでないなら……。
自分なんか役に立たないだろうけど、幼少期の体験から、一つ、マーシェル王子に喝を入れる方法を知っている……。もし彼を元気づけられるなら……。
「あの笑顔は国宝級よ。それを守るためなら正義だと思うわ!」
しかし、同時に難しさも感じていた。
しばらくメルディアーナとマーシェル王子との間には距離があり、今更メルディアーナの姿を見たところで、マーシェル王子的には「どちら様デスカ?」という感じだろう。
しかも自分は婚約者のいる身。男にこっそり会いに行くわけにもいかない。
マーシェル王子の前に姿を現さなければよいだろうか……? 何かに隠れて一言二言かわすだけでいい。
自分が誰であるかも明かす必要はない。
それならいいだろうか……? めっちゃ怪しいけど……。
※
マーシェル王子は悩んでいた。王位継承権のことだった。
ある晩、父王がこっそり部屋を訪ねて来たのだ。マーシェルは驚いた。
「父上どうされましたか、私が出向きますものを!」
「ジェームス王太子だが、おまえどう思う? 嗣子を変えようと思うのだ」
マーシェル王子は絶句した。
「なんですって!?」
父王はふうっとため息をついた。
「ジェームスは賭け事が好きで酒が好き」
「兄上はまあそうですが、でも王の資質はそれだけでは決まりませんよ!」
「他が優れていればな。だがお前から見てもジェームスは少し問題があるだろう」
マーシェル王子は反論することができなかった。
いつもたいがい、美しい女たちを侍らせてへらへらと遊んでいる兄。書物を読んでいるところは見たことがなかった。
「それはまあ……」
「儂はマーシェルの方が王に相応しいと思っている」
「いいえ! 決して私も褒められた人間ではなく……」
「考えておいてくれ。おまえが承諾するなら跡継ぎを変える」
父王はそれだけ言い残し、マーシェルが何か言う前に部屋を出て行ってしまった。
マーシェルは呆気にとられた。
何だ? 今の話はどこまで本気だ?
マーシェル王子はすぐさま断ろうと思った。
今まで自分が王になることは考えたことがなかった! やがて王弟として兄を支えることしか考えていなかったのだ。
だから、兄を補佐できるように勉強はしたし、いざというときのために剣技なども磨いてきた。
しかし、帝王学は学んでこなかった。それは兄の仕事だ。
念のためもう一度、今度は自分に甘めに振り返ってみてみたが、やはりどう見ても自分は相応しくないとマーシェル王子は思った。
何より兄が第一王子。自分は第二王子。そこには越えられない大きな壁がある!
まず周囲が納得するまい。第二王子が跡継ぎになるならそれなりの理由が必要だと思われた。
しかし今正当な理由があるとは思えない。多少頼りない王太子であるだけで、兄はまだ何か大きな失敗をしたわけでもなく、相応しくないと断じるだけの前歴はなかった。――なんとなく未来が不安というだけで王太子を廃するなど聞いたことがない。
だが同時に。父王がわざわざマーシェル王子の部屋にまで相談に来るというのはよほどのことだと思われた。
嗣子を替えるなど、簡単な思い付きで言えるようなことではないのだ!
なぜなら父王の提案は、例え王もマーシェルも誰にも言わなくても、必ずどこかでバレるものだからだ。
王が跡継ぎを第一王子から第二王子に変更したがっているという話が広まって見ろ。いくら自分が拒否したとて、必ず兄や兄を持ち上げる人たちの中に大きな禍根を残す。
自分がどれだけ無害そうに振舞っても、兄がどれだけ大人に振舞っても、父王がそう考えたという事実は二人の間に一生横たわるだろう。溝として。
そんなことを父王が分かっていないわけがない。
ということは、分かっていて尚、父王は自分に相談したのだ。かなりの覚悟があるとしか思えなかった。
どうしよう。
どうすべきか。
マーシェル王子は落ち着かず、時間があればふらふらと城の中を歩いてみた。
そんなとき、華やかな小部屋で、二人の妹がちょこんと並んで髪を結ってもらっていた。
二人の王女は艶やかな素材の色鮮やかなドレスを見に纏い、豊かな髪を櫛で梳いてもらっている。たおやかな真っ白な首筋が見え隠れしていた。
二人は、競うように「ああして」「こうして」と唇を尖らせながら髪結い侍女たちに指示を出していた。
まだ幼さの残る二人なので微笑ましくもあったが、マーシェル王子にはどうもその少女の無邪気さが若干苦手だった。
「あたくしの方が可愛い」と片方が言い出せば、たちまち取っ組み合いのケンカになるかもしれない危うさ。
争いはどんな身近なところにも潜んでいる。
マーシェル王子はぞっとして、嫌な考えを振り払うように首を振り、城の西塔の方へ歩いて行った。
塔の階段を上がれば、歴代当主の肖像画がたくさん架けてある。
マーシェル王子は昔からここに来るのが好きだった。物心ついたときから何か心配事があるとここに来た。薄暗くて静かで厳か。落ち着くのだった。
陰キャと思われるのが不本意であまり人には言っていなかったが、ここと書物庫はお気に入りの場所だ。
マーシェル王子は塔の階段に子どものように腰かけてふうっと息をついた。
そしてゆっくりと考えた。
ちっぽけな一人の自分と、軽薄で能天気な兄と、王位継承権について――。
ふと気づいたら日はとっぷりと暮れ、小窓からの光はほとんどなくなっていた。
「あれ?」とマーシェル王子は思った。
集中していると時間が早く過ぎるというアレだ。「俺まさか寝た?」と思うほどに。
時間が分からない。晩餐はもう始まっているか?
さぞ皆が心配するだろう。
ここに来ることは誰にも言わなかった。下手したらマーシェル王子がいないと軽く騒ぎになっているかもしれない。
慌てて立ち上がろうとしたとき、塔の階段の下方から透き通る女の声がした。
メルディアーナは、マーシェル王子を遠目に眺めながら、マーシェル王子が悩みを抱えているのではないかと思っていた。
マーシェル王子は、いつもの人当たりがよく柔らかい笑顔の陰に、最近どことなく暗い表情を隠していたのだ。幼い頃からマーシェル王子をこっそり見てきたので様子が違うことは分かる! もはやあまり接点のないメルディアーナだったので理由は分からなかったが、ひそかに心配していた。
これまでだって王子が元気がないことは多々あった。
しかし、ここまで悩んでいる様子なのは見たことがなかった。
母コルウェル伯爵夫人にそれとなくマーシェル王子が元気がないのではないかと聞いてみたら、そこはさすがの乳母で、
「どうも最近何か悩みがあるみたい。国王陛下と何かお話していたみたいで。って、メルディアーナ、あなたよく気付いたわね。王子は顔に出すタイプじゃないのに。はっ!!! もしやあなた、まだ『マーシェル王子チェック』をやってるわけ? いい加減やめなさいって言ってるでしょう!」
と逆にを小言をもらった。
ちなみにどうでもよいが、『マーシェル王子チェック』というのは、数年前メルディアーナがはまっていた遊びだ。なんのことはない。マーシェル王子を遠目にでも見かけた日に、今日のカッコよさ・肌つや・声に張りがあるか・元気かなどを自己流で採点するというもの……。ただそれだけ……。
はてさて、悩みがあると聞いては、メルディアーナは居ても立ってもいられなくなった。
「ああ、どうしたのかしら、マーシェル王子……。悩んでる顔もかっこいいけど、きゅううん♡って来るのはやっぱり笑顔の方なのに……」
マーシェル王子の様子がいつもより深刻そうだったから。何かよほどの理由があるのではと思えた。
恋の病とかだったらメルディアーナが出る幕はないが、もしそうでないなら……。
自分なんか役に立たないだろうけど、幼少期の体験から、一つ、マーシェル王子に喝を入れる方法を知っている……。もし彼を元気づけられるなら……。
「あの笑顔は国宝級よ。それを守るためなら正義だと思うわ!」
しかし、同時に難しさも感じていた。
しばらくメルディアーナとマーシェル王子との間には距離があり、今更メルディアーナの姿を見たところで、マーシェル王子的には「どちら様デスカ?」という感じだろう。
しかも自分は婚約者のいる身。男にこっそり会いに行くわけにもいかない。
マーシェル王子の前に姿を現さなければよいだろうか……? 何かに隠れて一言二言かわすだけでいい。
自分が誰であるかも明かす必要はない。
それならいいだろうか……? めっちゃ怪しいけど……。
※
マーシェル王子は悩んでいた。王位継承権のことだった。
ある晩、父王がこっそり部屋を訪ねて来たのだ。マーシェルは驚いた。
「父上どうされましたか、私が出向きますものを!」
「ジェームス王太子だが、おまえどう思う? 嗣子を変えようと思うのだ」
マーシェル王子は絶句した。
「なんですって!?」
父王はふうっとため息をついた。
「ジェームスは賭け事が好きで酒が好き」
「兄上はまあそうですが、でも王の資質はそれだけでは決まりませんよ!」
「他が優れていればな。だがお前から見てもジェームスは少し問題があるだろう」
マーシェル王子は反論することができなかった。
いつもたいがい、美しい女たちを侍らせてへらへらと遊んでいる兄。書物を読んでいるところは見たことがなかった。
「それはまあ……」
「儂はマーシェルの方が王に相応しいと思っている」
「いいえ! 決して私も褒められた人間ではなく……」
「考えておいてくれ。おまえが承諾するなら跡継ぎを変える」
父王はそれだけ言い残し、マーシェルが何か言う前に部屋を出て行ってしまった。
マーシェルは呆気にとられた。
何だ? 今の話はどこまで本気だ?
マーシェル王子はすぐさま断ろうと思った。
今まで自分が王になることは考えたことがなかった! やがて王弟として兄を支えることしか考えていなかったのだ。
だから、兄を補佐できるように勉強はしたし、いざというときのために剣技なども磨いてきた。
しかし、帝王学は学んでこなかった。それは兄の仕事だ。
念のためもう一度、今度は自分に甘めに振り返ってみてみたが、やはりどう見ても自分は相応しくないとマーシェル王子は思った。
何より兄が第一王子。自分は第二王子。そこには越えられない大きな壁がある!
まず周囲が納得するまい。第二王子が跡継ぎになるならそれなりの理由が必要だと思われた。
しかし今正当な理由があるとは思えない。多少頼りない王太子であるだけで、兄はまだ何か大きな失敗をしたわけでもなく、相応しくないと断じるだけの前歴はなかった。――なんとなく未来が不安というだけで王太子を廃するなど聞いたことがない。
だが同時に。父王がわざわざマーシェル王子の部屋にまで相談に来るというのはよほどのことだと思われた。
嗣子を替えるなど、簡単な思い付きで言えるようなことではないのだ!
なぜなら父王の提案は、例え王もマーシェルも誰にも言わなくても、必ずどこかでバレるものだからだ。
王が跡継ぎを第一王子から第二王子に変更したがっているという話が広まって見ろ。いくら自分が拒否したとて、必ず兄や兄を持ち上げる人たちの中に大きな禍根を残す。
自分がどれだけ無害そうに振舞っても、兄がどれだけ大人に振舞っても、父王がそう考えたという事実は二人の間に一生横たわるだろう。溝として。
そんなことを父王が分かっていないわけがない。
ということは、分かっていて尚、父王は自分に相談したのだ。かなりの覚悟があるとしか思えなかった。
どうしよう。
どうすべきか。
マーシェル王子は落ち着かず、時間があればふらふらと城の中を歩いてみた。
そんなとき、華やかな小部屋で、二人の妹がちょこんと並んで髪を結ってもらっていた。
二人の王女は艶やかな素材の色鮮やかなドレスを見に纏い、豊かな髪を櫛で梳いてもらっている。たおやかな真っ白な首筋が見え隠れしていた。
二人は、競うように「ああして」「こうして」と唇を尖らせながら髪結い侍女たちに指示を出していた。
まだ幼さの残る二人なので微笑ましくもあったが、マーシェル王子にはどうもその少女の無邪気さが若干苦手だった。
「あたくしの方が可愛い」と片方が言い出せば、たちまち取っ組み合いのケンカになるかもしれない危うさ。
争いはどんな身近なところにも潜んでいる。
マーシェル王子はぞっとして、嫌な考えを振り払うように首を振り、城の西塔の方へ歩いて行った。
塔の階段を上がれば、歴代当主の肖像画がたくさん架けてある。
マーシェル王子は昔からここに来るのが好きだった。物心ついたときから何か心配事があるとここに来た。薄暗くて静かで厳か。落ち着くのだった。
陰キャと思われるのが不本意であまり人には言っていなかったが、ここと書物庫はお気に入りの場所だ。
マーシェル王子は塔の階段に子どものように腰かけてふうっと息をついた。
そしてゆっくりと考えた。
ちっぽけな一人の自分と、軽薄で能天気な兄と、王位継承権について――。
ふと気づいたら日はとっぷりと暮れ、小窓からの光はほとんどなくなっていた。
「あれ?」とマーシェル王子は思った。
集中していると時間が早く過ぎるというアレだ。「俺まさか寝た?」と思うほどに。
時間が分からない。晩餐はもう始まっているか?
さぞ皆が心配するだろう。
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