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第1章 浮気者の公爵令息に婚約破棄されましたが推しの王子を愛でるので問題ありません
【4.王子と私の秘密(後編)】
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「マーシェル王子?」
もう薄暗い時間だし、塔の螺旋階段は中央を石の太柱が支えているので少し下方はもう柱の陰になっており、その声の主の姿は見えない。
その女の声は言った。
「お悩みが深いご様子」
「おまえは?」
マーシェル王子は訝し気に尋ねたが、声の主はそれには答えず、
「今夜はここで寝てしまえば?」
と明るく言った。
「は?」
「恐ろしいお爺様が現れて叱りつけてくれるかもしれませんわよ。そうすればあなたの悩みも吹き飛ぶのでは?」
お爺様! マーシェル王子はハッとした。
そして同時にこの声の主がなぜお爺様のことに言及したのか気味悪く思った。
幼い頃にも、マーシェル王子はこの塔に入り込み眠ってしまったことがあった。
誘拐かと王宮中が騒ぎになり、王子がこの塔で発見されるや否や、そのときまだ健在だった祖父が叱りつけに来たのだった。
祖父は立派な体躯を持った大男で威厳があり、家族からも家臣からも尊敬されていた。その祖父に怒られ、マーシェル王子は身が縮み上がるかと思った。
しっかりトラウマになっているらしい。
今でもあのときの恐怖が思い出されると体が震える。
今日もあのときと同じことをしてしまったのか――とマーシェル王子は自分の成長のなさに呆れながら、しかしもう亡き祖父に叱られることはないのだと少し寂しく思う。
祖父なら、今の兄と自分の問題に何と言うだろうか?
「お爺様か。出てきてもらいものだな……」
「いますよ、そこに」
「これは肖像画だ」
「――大袈裟に考えすぎなんじゃないですか」
声の主は突然言った。
「え?」
マーシェル王子がいきなり何のことだと思い聞き返すと、声の主は言った。
「あなたが困り果てるくらいなら、身代わりになってあげられればよいのだけど。でも、あなたの立場はあなただけのものですしねえ……」
「――身代わり?」
そう呟いてからマーシェル王子ははっとした。
身代わり!
そうだ! 自分が身代わりなのだ、別な大きなものの!
父王の弟、叔父君が不穏な動きをしているのを聞いたことがある!
このままでは兄と叔父の対立構造になる。父王はそんな状況にただ楔を打ちたかったのだ。面倒な状況を避ける第3案として。
なるほど、補佐の勉強や剣技ばかりに目を向けていた自分は、あまり政治的なものに首を突っ込んでこなかった。のんびりし過ぎだと言われればその通りだが、現在の王宮内のパワーバランスにどれくらいの深刻性があるか、目を向けてこなかった。
これは、真面目に考えるだけ損だな――。
マーシェル王子は直感で感じ取った。
マーシェル王子はすっかり憑き物が落ちた顔になっていた。
「叔父上でも支持するかな……」
「あ、は? えええと、何……。ま、まあ何でもいいです、あなたの悩みの内容までは知りません」
しかし声の主もほっとした様子だった。
「では私はこれで退散しますね」
「待ってくれ! あなたは誰だ」
マーシェル王子は叫んだ。
「いや、名乗るほどのものでは……」
「いや、教えてくれ」
マーシェル王子はそう言いながらすっくと立ちあがり、階段をかけおりて声の主を見ようとした。
同時にその気配を察知して声の主はさっと逃げた。
塔の中で声が響いて聞こえていただけで、そもそも少し離れたところにいたようだ。足音が遠いのがマーシェル王子には分かった。
「せめて名を!」
マーシェル王子は叫んだが、声の主はガン無視だ。
「このように助けてくれるなど。あなたは守護天使か?」
マーシェル王子が薄気味悪そうに問いかけると、それには声の主は答える気になったようで、
「天使じゃありませんけど、一生あなたを見守ってますわ」
と答えた。
声の主は塔を出ようとしていた。そのとき塔の入口らへんにいた誰かが「メ……ア……様」という声が聞こえた。
マーシェル王子はハッとして耳を澄ます。
名まえのヒントが得られるかもと思ったのだ。
しかしそれ以上話し声は聞こえなかった。
名にメとアの入る若い女性?
誰かがはっきり名を呼んだということは妖精か何かの類ではなく生身の人間。
彼女は自分のことをよく知っているようだった。
しかし姿は現さない。見られてはいけない事情でもあるのだろうか?
いったい彼女は何者なのだろう。わざわざ声をかけに来てくれるなど……。
それに今のこのどことなくすっきりとした心の中。彼女は平穏な日常を取り戻してくれた恩人といってもいい……。
※
一方、塔を駆け下りたメルディアーナは、ゼーハーゼーハー肩で息をした。
母もやはり「マーシェル王子の姿が見えないなら塔かもしれない」と思って人を遣わせていたため、塔の入口らへんで母の使いっぽい人に姿を見られたときはギクッとした。
そう。王宮でマーシェル王子の姿が見えないとちょっとした騒ぎになっていると母に聞いたので、メルディアーナも子どものときの記憶を辿っていそうなところに行ったのだった。
案の定いたので「単純なヤツ」と思ったが、こちらにも気付かずぽつんと何か考え込んでいる様子はなんだかとてもかわいそうにも見えてきた。
母の言ってた悩みは相当深いのかもしれない。
何の悩みか知らないが、マーシェル王子の悩みなんてほとんど祖父に昔叱られたときの記憶を揺り動かしてやれば解決できると思っているメルディアーナは、肖像画にかこつけてマーシェル王子の祖父について口にしてみた。
思った通り、祖父のことを言った途端、マーシェル王子はさくっと自分なりの解決の糸口を見つけ、元気になったように見えた。
「単純なヤツ。でもそこがいい……」
メルディアーナはほっとした。もう心配はいらないと思った。
でも少し後味が悪い。執拗に名を聞いてくるマーシェル王子を突き放してしまった。
『推し』だから一生見守るに嘘はないけど!
まさかあんなに正体を知りたがるとは思わなかった。
もちろん、婚約者のいる身で余計な火種は避けたいから正体明かすわけにもいかない。このまま、キツネかタヌキかとでも思っておいてもらうしか……。
いや、メルディアーナも一瞬考えた。
あんなに何度も「誰だ」と聞いてくれたのだから、正体を明かしたら恋とか芽生えちゃったりする? それならダナンに婚約破棄されても全然オッケーなんだけど!と。
しかし、すぐに冷静な自分が「現実見なよ」と忠告した。
母にだって「何夢見てんの、バカ娘。王子があなたに恋とか100パーない」と一蹴されるのがオチ。
挙句、成金伯爵家のバカ娘が王子にこっそり会いに行ったなどと不名誉な噂が回りって母が持ってきた縁談がぶち壊れた場合、名門のウェブスター公爵家を敵に回すことになってしまう。
鬼のような形相の母が目に浮かぶ。くわばらくわばら……。
そんなこんなで、あの塔のできごとはメルディアーナの中でしっかり封印し、どこにも漏らすことはなかった。
(ちなみに、王太子から王弟への王嗣の変更があり、数か月ほど王宮はかなりゴタゴタした。マーシェル王子の悩みはもしかしてそれに関わるものかとピンときたメルディアーナは、塔の中での話に首を突っ込まなくてよかったと心の底からほっとしたものである。難しい話は苦手なのよ……!)
あれ以来、マーシェル王子がたぶんあの塔の女性を探しているっぽいような噂を聞いた。
その女性を探しているせいで恋の噂がないのだという人もいた。
しかしメルディアーナは知らんぷりするしかなかった。
ところが、ここへきて、幸か不幸かメルディアーナは突然婚約破棄されてしまった。
そうなると、もう母やダナンやウェブスター公爵家に何の遠慮もいらない。
マーシェル王子は塔の令嬢を探してるんでしょ?
メルディアーナは名乗り出たくて仕方なくなってしまった。
今や婚約者もいない独身令嬢なんだし、別にアタック(※死語)してみてダメならまた遠目から愛でる『推し活』に戻るだけだし、「気安く王子に話しかけるな」ってちょっと母に怒られるくらいじゃない。
メルディアーナは自由な気持ちでぱあっと顔をほころばせた。
もう薄暗い時間だし、塔の螺旋階段は中央を石の太柱が支えているので少し下方はもう柱の陰になっており、その声の主の姿は見えない。
その女の声は言った。
「お悩みが深いご様子」
「おまえは?」
マーシェル王子は訝し気に尋ねたが、声の主はそれには答えず、
「今夜はここで寝てしまえば?」
と明るく言った。
「は?」
「恐ろしいお爺様が現れて叱りつけてくれるかもしれませんわよ。そうすればあなたの悩みも吹き飛ぶのでは?」
お爺様! マーシェル王子はハッとした。
そして同時にこの声の主がなぜお爺様のことに言及したのか気味悪く思った。
幼い頃にも、マーシェル王子はこの塔に入り込み眠ってしまったことがあった。
誘拐かと王宮中が騒ぎになり、王子がこの塔で発見されるや否や、そのときまだ健在だった祖父が叱りつけに来たのだった。
祖父は立派な体躯を持った大男で威厳があり、家族からも家臣からも尊敬されていた。その祖父に怒られ、マーシェル王子は身が縮み上がるかと思った。
しっかりトラウマになっているらしい。
今でもあのときの恐怖が思い出されると体が震える。
今日もあのときと同じことをしてしまったのか――とマーシェル王子は自分の成長のなさに呆れながら、しかしもう亡き祖父に叱られることはないのだと少し寂しく思う。
祖父なら、今の兄と自分の問題に何と言うだろうか?
「お爺様か。出てきてもらいものだな……」
「いますよ、そこに」
「これは肖像画だ」
「――大袈裟に考えすぎなんじゃないですか」
声の主は突然言った。
「え?」
マーシェル王子がいきなり何のことだと思い聞き返すと、声の主は言った。
「あなたが困り果てるくらいなら、身代わりになってあげられればよいのだけど。でも、あなたの立場はあなただけのものですしねえ……」
「――身代わり?」
そう呟いてからマーシェル王子ははっとした。
身代わり!
そうだ! 自分が身代わりなのだ、別な大きなものの!
父王の弟、叔父君が不穏な動きをしているのを聞いたことがある!
このままでは兄と叔父の対立構造になる。父王はそんな状況にただ楔を打ちたかったのだ。面倒な状況を避ける第3案として。
なるほど、補佐の勉強や剣技ばかりに目を向けていた自分は、あまり政治的なものに首を突っ込んでこなかった。のんびりし過ぎだと言われればその通りだが、現在の王宮内のパワーバランスにどれくらいの深刻性があるか、目を向けてこなかった。
これは、真面目に考えるだけ損だな――。
マーシェル王子は直感で感じ取った。
マーシェル王子はすっかり憑き物が落ちた顔になっていた。
「叔父上でも支持するかな……」
「あ、は? えええと、何……。ま、まあ何でもいいです、あなたの悩みの内容までは知りません」
しかし声の主もほっとした様子だった。
「では私はこれで退散しますね」
「待ってくれ! あなたは誰だ」
マーシェル王子は叫んだ。
「いや、名乗るほどのものでは……」
「いや、教えてくれ」
マーシェル王子はそう言いながらすっくと立ちあがり、階段をかけおりて声の主を見ようとした。
同時にその気配を察知して声の主はさっと逃げた。
塔の中で声が響いて聞こえていただけで、そもそも少し離れたところにいたようだ。足音が遠いのがマーシェル王子には分かった。
「せめて名を!」
マーシェル王子は叫んだが、声の主はガン無視だ。
「このように助けてくれるなど。あなたは守護天使か?」
マーシェル王子が薄気味悪そうに問いかけると、それには声の主は答える気になったようで、
「天使じゃありませんけど、一生あなたを見守ってますわ」
と答えた。
声の主は塔を出ようとしていた。そのとき塔の入口らへんにいた誰かが「メ……ア……様」という声が聞こえた。
マーシェル王子はハッとして耳を澄ます。
名まえのヒントが得られるかもと思ったのだ。
しかしそれ以上話し声は聞こえなかった。
名にメとアの入る若い女性?
誰かがはっきり名を呼んだということは妖精か何かの類ではなく生身の人間。
彼女は自分のことをよく知っているようだった。
しかし姿は現さない。見られてはいけない事情でもあるのだろうか?
いったい彼女は何者なのだろう。わざわざ声をかけに来てくれるなど……。
それに今のこのどことなくすっきりとした心の中。彼女は平穏な日常を取り戻してくれた恩人といってもいい……。
※
一方、塔を駆け下りたメルディアーナは、ゼーハーゼーハー肩で息をした。
母もやはり「マーシェル王子の姿が見えないなら塔かもしれない」と思って人を遣わせていたため、塔の入口らへんで母の使いっぽい人に姿を見られたときはギクッとした。
そう。王宮でマーシェル王子の姿が見えないとちょっとした騒ぎになっていると母に聞いたので、メルディアーナも子どものときの記憶を辿っていそうなところに行ったのだった。
案の定いたので「単純なヤツ」と思ったが、こちらにも気付かずぽつんと何か考え込んでいる様子はなんだかとてもかわいそうにも見えてきた。
母の言ってた悩みは相当深いのかもしれない。
何の悩みか知らないが、マーシェル王子の悩みなんてほとんど祖父に昔叱られたときの記憶を揺り動かしてやれば解決できると思っているメルディアーナは、肖像画にかこつけてマーシェル王子の祖父について口にしてみた。
思った通り、祖父のことを言った途端、マーシェル王子はさくっと自分なりの解決の糸口を見つけ、元気になったように見えた。
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メルディアーナはほっとした。もう心配はいらないと思った。
でも少し後味が悪い。執拗に名を聞いてくるマーシェル王子を突き放してしまった。
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鬼のような形相の母が目に浮かぶ。くわばらくわばら……。
そんなこんなで、あの塔のできごとはメルディアーナの中でしっかり封印し、どこにも漏らすことはなかった。
(ちなみに、王太子から王弟への王嗣の変更があり、数か月ほど王宮はかなりゴタゴタした。マーシェル王子の悩みはもしかしてそれに関わるものかとピンときたメルディアーナは、塔の中での話に首を突っ込まなくてよかったと心の底からほっとしたものである。難しい話は苦手なのよ……!)
あれ以来、マーシェル王子がたぶんあの塔の女性を探しているっぽいような噂を聞いた。
その女性を探しているせいで恋の噂がないのだという人もいた。
しかしメルディアーナは知らんぷりするしかなかった。
ところが、ここへきて、幸か不幸かメルディアーナは突然婚約破棄されてしまった。
そうなると、もう母やダナンやウェブスター公爵家に何の遠慮もいらない。
マーシェル王子は塔の令嬢を探してるんでしょ?
メルディアーナは名乗り出たくて仕方なくなってしまった。
今や婚約者もいない独身令嬢なんだし、別にアタック(※死語)してみてダメならまた遠目から愛でる『推し活』に戻るだけだし、「気安く王子に話しかけるな」ってちょっと母に怒られるくらいじゃない。
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