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#2【日常と非日常の中で】
第14廻「親子の絆~一杯のラーメン」
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〇登場人物紹介〇
「小鳥遊吾郎-たかなしごろう-」
りなの父親、妻を病気で亡くしており男手一つでりなを養っている。
頑固で堅物な性格のようだが……
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
こちらは、りなの父親が経営している、ラーメン屋「菊乃屋」
夜の十九時頃、今の時間帯は、閉店10分前で客も誰もいなかった。
「りな…朝登校してから、帰って来ねえな。こっちにも来やしねえ…」
りなの父親、小鳥遊吾郎は妻が存命だった頃、撮った家族写真を見ながら溜め息を吐いた。
その時、店の引き戸が開いた。それに気が付いて吾郎は、入口の方を見る。
黒髪のサラサラヘアに、涼し気な赤色の瞳。スーツを着た青年が入って来ていた。
輪廻は、吾郎に軽く会釈をする。
「らっしゃい!何にしますか?」
吾郎は輪廻に声を掛ける。
輪廻は、メニューを見ながら考えていたが、顔を上げると
「醤油ラーメンと餃子のセットをお願いします」と頼んだ。
輪廻の前に氷の入った水のコップが出されると彼は、水を飲みながら店の中をひととおり眺め、餃子を焼き、細めの中華麺を華麗に湯切りして、ラーメンを作っている厨房の吾郎の背中をじっと見た。
吾郎は、ゾクリと背筋が寒くなり輪廻の方を振り向く。
「何ですか?じっと見て」
吾郎が言うと、輪廻は微笑を浮かべて言った。
「いえ、見事な麺さばきだなと思いまして」
「それはどうも」
吾郎は、まんざらでもないようだったが、何となく輪廻のただ者ではないオーラを感じ取っているように見えた。
「おまちどうさま、ラーメンと餃子ね」
カウンター席にチャーシュー、ネギ、なるとメンマ、とろりと半熟の味付け玉子が乗った醤油ラーメンとこんがり焼かれた羽根つき餃子が、置かれた。
輪廻は、両手で割りばしを割り、一口麺をすする。
「んっ、美味いな。このラーメン」
しばらくして彼は、ラーメンと餃子を完食して、黒革の財布から950円を支払い。
「ごちそうさま、美味しかったです」と礼を言った。
「ご主人、お話しを少し、よろしいでしょうか?」
輪廻が尋ねると、吾郎は疑問に思いながらも
「ご用はなんでしょう」と聞き返した。
「僕は、氷雨輪廻相談所と言う所の支援長をさせていただいております。氷雨輪廻と申します。お嬢さんの小鳥遊りなさんの事で、お話しをさせて頂こうと思いまして寄らせていただきました」と、にこりと微笑み、名刺を差し出した。
吾郎が名刺を受け取り、それに目を通し、輪廻をまじまじと見た。
「ほう、氷雨先生ですか。りなと知り合いで。それで、今りなはどこに」
◆
引き戸が軽い音を立てて、開いた。
そこには、大和と不安そうなりなの姿があった。
「りなっ!どこ、ほっつき歩いてたんだ」
吾郎が怒鳴ると、りなは後ずさり、輪廻と大和が彼女をかばう。
「まあまあ、落ち着いて…りなさんは、学校でのいじめと貴方の借金の悩みでうちにご相談にいらしたのですよ」
「えっ!?」
吾郎は、その言葉を輪廻から聴いて目を見開いて驚いている。
「さっ、りなちゃん。話して」
大和がりなをうながす。
「お父さん、私、お父さんを助けて働けるのは、辛くないよ。でも、こうして、お父さんと喧嘩して、顔を合わせづらくなることが何よりも、辛いの」
「それに私、輪廻さ…氷雨さん達にいじめを解決してもらって。とても感謝していて、氷雨さん達は、私の大事な人達なの。だから、お願い…氷雨さんの相談所に通わせて」
「お前が通っていたのは、この人の所だったのか…」
吾郎は、思わずホッと胸をなでおろし、うなずいた。
「俺こそ、すまん。りなに苦労を掛けてる。駄目な父親だな」
「ううん…お父さんは仕事だけじゃなくって一生懸命、私のお父さんもしてくれてるもん。ありがとうね」
りなは、久しぶりに父に素直に礼を言えた。
輪廻は、目を細めてうんうんと二度うなずいて、大和はぼろぼろと滝のように涙を流している。
吾郎は涙をぬぐいながらりなに伝えた。
「解った、そこまで言うなら氷雨さんの相談所にご迷惑にならない程度に通わせて貰いなさい。ただし、夜遅くならないように帰ってくるんだぞ」
「氷雨さん、りなをよろしくお願い致します」
「承知致しました」
輪廻は、おじぎをして柔らかな笑みを浮かべた。
「小鳥遊吾郎-たかなしごろう-」
りなの父親、妻を病気で亡くしており男手一つでりなを養っている。
頑固で堅物な性格のようだが……
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
こちらは、りなの父親が経営している、ラーメン屋「菊乃屋」
夜の十九時頃、今の時間帯は、閉店10分前で客も誰もいなかった。
「りな…朝登校してから、帰って来ねえな。こっちにも来やしねえ…」
りなの父親、小鳥遊吾郎は妻が存命だった頃、撮った家族写真を見ながら溜め息を吐いた。
その時、店の引き戸が開いた。それに気が付いて吾郎は、入口の方を見る。
黒髪のサラサラヘアに、涼し気な赤色の瞳。スーツを着た青年が入って来ていた。
輪廻は、吾郎に軽く会釈をする。
「らっしゃい!何にしますか?」
吾郎は輪廻に声を掛ける。
輪廻は、メニューを見ながら考えていたが、顔を上げると
「醤油ラーメンと餃子のセットをお願いします」と頼んだ。
輪廻の前に氷の入った水のコップが出されると彼は、水を飲みながら店の中をひととおり眺め、餃子を焼き、細めの中華麺を華麗に湯切りして、ラーメンを作っている厨房の吾郎の背中をじっと見た。
吾郎は、ゾクリと背筋が寒くなり輪廻の方を振り向く。
「何ですか?じっと見て」
吾郎が言うと、輪廻は微笑を浮かべて言った。
「いえ、見事な麺さばきだなと思いまして」
「それはどうも」
吾郎は、まんざらでもないようだったが、何となく輪廻のただ者ではないオーラを感じ取っているように見えた。
「おまちどうさま、ラーメンと餃子ね」
カウンター席にチャーシュー、ネギ、なるとメンマ、とろりと半熟の味付け玉子が乗った醤油ラーメンとこんがり焼かれた羽根つき餃子が、置かれた。
輪廻は、両手で割りばしを割り、一口麺をすする。
「んっ、美味いな。このラーメン」
しばらくして彼は、ラーメンと餃子を完食して、黒革の財布から950円を支払い。
「ごちそうさま、美味しかったです」と礼を言った。
「ご主人、お話しを少し、よろしいでしょうか?」
輪廻が尋ねると、吾郎は疑問に思いながらも
「ご用はなんでしょう」と聞き返した。
「僕は、氷雨輪廻相談所と言う所の支援長をさせていただいております。氷雨輪廻と申します。お嬢さんの小鳥遊りなさんの事で、お話しをさせて頂こうと思いまして寄らせていただきました」と、にこりと微笑み、名刺を差し出した。
吾郎が名刺を受け取り、それに目を通し、輪廻をまじまじと見た。
「ほう、氷雨先生ですか。りなと知り合いで。それで、今りなはどこに」
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引き戸が軽い音を立てて、開いた。
そこには、大和と不安そうなりなの姿があった。
「りなっ!どこ、ほっつき歩いてたんだ」
吾郎が怒鳴ると、りなは後ずさり、輪廻と大和が彼女をかばう。
「まあまあ、落ち着いて…りなさんは、学校でのいじめと貴方の借金の悩みでうちにご相談にいらしたのですよ」
「えっ!?」
吾郎は、その言葉を輪廻から聴いて目を見開いて驚いている。
「さっ、りなちゃん。話して」
大和がりなをうながす。
「お父さん、私、お父さんを助けて働けるのは、辛くないよ。でも、こうして、お父さんと喧嘩して、顔を合わせづらくなることが何よりも、辛いの」
「それに私、輪廻さ…氷雨さん達にいじめを解決してもらって。とても感謝していて、氷雨さん達は、私の大事な人達なの。だから、お願い…氷雨さんの相談所に通わせて」
「お前が通っていたのは、この人の所だったのか…」
吾郎は、思わずホッと胸をなでおろし、うなずいた。
「俺こそ、すまん。りなに苦労を掛けてる。駄目な父親だな」
「ううん…お父さんは仕事だけじゃなくって一生懸命、私のお父さんもしてくれてるもん。ありがとうね」
りなは、久しぶりに父に素直に礼を言えた。
輪廻は、目を細めてうんうんと二度うなずいて、大和はぼろぼろと滝のように涙を流している。
吾郎は涙をぬぐいながらりなに伝えた。
「解った、そこまで言うなら氷雨さんの相談所にご迷惑にならない程度に通わせて貰いなさい。ただし、夜遅くならないように帰ってくるんだぞ」
「氷雨さん、りなをよろしくお願い致します」
「承知致しました」
輪廻は、おじぎをして柔らかな笑みを浮かべた。
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