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2章
2章 8話
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「しっかし、寒くねぇか?ここ」
日神陽太は身震いをさせながら南雲氷雨の方へ向かう。陽太と氷雨は任務の為、修行中の晃也を除いて二人で任務に出掛けた。出掛けた先は東北。辺りには雪が積もり、肌で感じずとも見るだけで寒いと感じる程だった。
「でもよ、なんでこの任務引き受けるなんて言ったんだよ」
陽太が氷雨に問いかける。実を言うと、この任務は他の者が受けるはずだった任務を氷雨が譲ってもらったのだ。
「報酬も要らないとか、一体何があったんだよ」
「・・・そのうち分かるさ」
陽太は氷雨の沈黙を受け入れ、目的地へ到着するまで黙って進んだ。
辿り着いた先は、極寒の地。陽太が横を見ると、氷雨が険しそうな表情を浮かべながら辺りを見渡していた。するといきなり氷雨が何かを見つけたかのように走り出した。
「あっ、おい!待てよ!」
陽太も走って追いかける。氷雨が向かう先には、まるで大雪でカモフラージュされていたかのような、白塗りの壁。どうやらそれは何かの研究所の様だった。
「陽太、入るぞ」
「お、おう」
陽太は、氷雨の何か焦燥に駆られている様な状態に少し驚いていた。陽太の知っている彼は、いつも冷静沈着で物事を客観視出来る男だ。だが、今の彼はどうだ。自分の目の前のことしか考えられず、冷静沈着とはとても言えない。
その研究所の中へ入る。中には誰もいなかった。誰もいないんじゃないかと思えるほどに、静まり返っていた。
「ここは、きっと氷の一族の研究所だよ」
この沈黙を破ったのは、氷雨だった。
「氷の一族?なんだそれ」
陽太にはそれがなんなのか、何も分からなかった。
「氷の一族っていうのは、東北地方に伝わる、古くからの風習を受け継ぐ一族の事だよ。その一族は代々氷雪系の能力が受け継がれているから氷の一族」
「へぇ、そうなんだ」
「でも数年前、一部の研究機関によって氷の一族の隔離が行われたんだ。なんでも、氷の一族には使える能力があるとか」
「そんな理由で研究されてんのか、なんか可哀想だな。あっ、もしかして、お前がこの件引き受けたのってお前が氷の一族だったりして」
「ああ、そうだよ」
どこか遠くを見つめながらそう言い放った。
「僕は、氷の一族最後の生き残り、南雲氷雫の一人息子だよ」
息を飲んだ。氷雨が平然と言いのけた事に驚いたのだ。
「大丈夫さ、僕は全然冷静だ。確認作業みたいなものさ。ただ、五年前に消息不明になった父親を探しに来ただけだよ。少しでも手がかりがあると思ってね」
「・・・本当だよな」
返事はなかった。だがそれは氷雨が無視した訳では無い。
「っ!父さん!」
氷雨は走り出す。それを追いかけるように陽太も走った。
宙ずりにされる氷雨の父らしき人の前に、氷雨は立った。氷雨は彼を揺らしながら、
「父さん!起きて!起きてよ!」
と、何度も問いかけた。だがここでようやく陽太は気付いた。それは、この発見劇があまりにも上手く行きすぎている事だ。
この研究所に入り、すぐ目の前には大きな一本道の通路が。そこをただ進んで行っただけでここに辿り着いた。そしてこの研究所内はとても静寂に包まれている。もし本当にこの氷雨の父親が人質だとするなら、こんな状態で保護、収容はしないだろう。
しかし、気付くのがあまりにも遅すぎた。
「うっ、なんだ・・・っ!お前は!氷雨!」
「父さん!起きたんだね!今助けるから!」
「っ!待て!今すぐ俺から離れるんだ!早く!」
起きて早々、氷雨の父は物凄い剣幕で氷雨を怒鳴った。そしてそれに怯み、氷雨が一歩後退した。その刹那、
ザクッ!
先程まで静寂に包まれていたはずの研究所内が、その鈍い音と血溜まりがその上から覆いかぶさった。
目を向けると、氷雨の父の胸を何かが後ろから突き刺していた。そしてすぐに、一つの絶叫が響き渡った。
日神陽太は身震いをさせながら南雲氷雨の方へ向かう。陽太と氷雨は任務の為、修行中の晃也を除いて二人で任務に出掛けた。出掛けた先は東北。辺りには雪が積もり、肌で感じずとも見るだけで寒いと感じる程だった。
「でもよ、なんでこの任務引き受けるなんて言ったんだよ」
陽太が氷雨に問いかける。実を言うと、この任務は他の者が受けるはずだった任務を氷雨が譲ってもらったのだ。
「報酬も要らないとか、一体何があったんだよ」
「・・・そのうち分かるさ」
陽太は氷雨の沈黙を受け入れ、目的地へ到着するまで黙って進んだ。
辿り着いた先は、極寒の地。陽太が横を見ると、氷雨が険しそうな表情を浮かべながら辺りを見渡していた。するといきなり氷雨が何かを見つけたかのように走り出した。
「あっ、おい!待てよ!」
陽太も走って追いかける。氷雨が向かう先には、まるで大雪でカモフラージュされていたかのような、白塗りの壁。どうやらそれは何かの研究所の様だった。
「陽太、入るぞ」
「お、おう」
陽太は、氷雨の何か焦燥に駆られている様な状態に少し驚いていた。陽太の知っている彼は、いつも冷静沈着で物事を客観視出来る男だ。だが、今の彼はどうだ。自分の目の前のことしか考えられず、冷静沈着とはとても言えない。
その研究所の中へ入る。中には誰もいなかった。誰もいないんじゃないかと思えるほどに、静まり返っていた。
「ここは、きっと氷の一族の研究所だよ」
この沈黙を破ったのは、氷雨だった。
「氷の一族?なんだそれ」
陽太にはそれがなんなのか、何も分からなかった。
「氷の一族っていうのは、東北地方に伝わる、古くからの風習を受け継ぐ一族の事だよ。その一族は代々氷雪系の能力が受け継がれているから氷の一族」
「へぇ、そうなんだ」
「でも数年前、一部の研究機関によって氷の一族の隔離が行われたんだ。なんでも、氷の一族には使える能力があるとか」
「そんな理由で研究されてんのか、なんか可哀想だな。あっ、もしかして、お前がこの件引き受けたのってお前が氷の一族だったりして」
「ああ、そうだよ」
どこか遠くを見つめながらそう言い放った。
「僕は、氷の一族最後の生き残り、南雲氷雫の一人息子だよ」
息を飲んだ。氷雨が平然と言いのけた事に驚いたのだ。
「大丈夫さ、僕は全然冷静だ。確認作業みたいなものさ。ただ、五年前に消息不明になった父親を探しに来ただけだよ。少しでも手がかりがあると思ってね」
「・・・本当だよな」
返事はなかった。だがそれは氷雨が無視した訳では無い。
「っ!父さん!」
氷雨は走り出す。それを追いかけるように陽太も走った。
宙ずりにされる氷雨の父らしき人の前に、氷雨は立った。氷雨は彼を揺らしながら、
「父さん!起きて!起きてよ!」
と、何度も問いかけた。だがここでようやく陽太は気付いた。それは、この発見劇があまりにも上手く行きすぎている事だ。
この研究所に入り、すぐ目の前には大きな一本道の通路が。そこをただ進んで行っただけでここに辿り着いた。そしてこの研究所内はとても静寂に包まれている。もし本当にこの氷雨の父親が人質だとするなら、こんな状態で保護、収容はしないだろう。
しかし、気付くのがあまりにも遅すぎた。
「うっ、なんだ・・・っ!お前は!氷雨!」
「父さん!起きたんだね!今助けるから!」
「っ!待て!今すぐ俺から離れるんだ!早く!」
起きて早々、氷雨の父は物凄い剣幕で氷雨を怒鳴った。そしてそれに怯み、氷雨が一歩後退した。その刹那、
ザクッ!
先程まで静寂に包まれていたはずの研究所内が、その鈍い音と血溜まりがその上から覆いかぶさった。
目を向けると、氷雨の父の胸を何かが後ろから突き刺していた。そしてすぐに、一つの絶叫が響き渡った。
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