婚約破棄され売れ残りなのに、粘着質次期宰相につかまりました。

みゆきんぐぅ

文字の大きさ
12 / 217
婚約編

はるかに、根に持ってるようですね・・・。

しおりを挟む
とある夜会。
正式に婚約者発表をしてから、すでに何件か参加している。

もう、相手も見つかったし出なくても良いじゃないか。と、思うのだがそうもいかないのが貴族で、次期当主の役目だ。

いつもは、ガリウスをシャリオンの都合で付き合って貰っているのだが、今日はガリウスから今宵の夜会に誘われた。
なんでも、知り合いのアーメント伯爵の夜会で挨拶をしたいらしい。
アーメント伯爵は騎士の中でもパラディンで、第二騎士団団長だ。どんな繋がりかと尋ねたところ、学友らしい。

シャリオンはいつもハイシア家の次期当主で領主の顔で付き合わせているので、ガリウスのお願いに2つ返事でOKした。

ニコニコと笑みを浮かべるガリウスにエスコートされる。

初めて2人で出た夜会では、レオンの背中を見て育ってきたので、自分がエスコートされる事に些か不満があったが、体格差はどうしても埋められない。

それに数をこなしていくうち、ガリウスにエスコートされるのが、とても楽な事に気付いた。
そのため、気にしなくなっていた。
そして、今日もガリウスはシャリオンを甲斐甲斐しく世話してくれる。

「シャリオン。あちらで何か飲み物を頂きませんか?」

それは、ちょっと疲れたな。と、言うようなベストタイミングだった。
ただの政略結婚相手なのに良くもそこまで気を回せるものだと、感心しながら実のところのガリウスが相手になってくれた理由がわかってないのは怖いところだ。

「うん。ちょうどそう思っていたところだ」

なんにしても、今この場で出来るのは、ガリウスの顔を潰さず、にこやかに楽しむくらいだろう。

「シャリオン。お待たせしました」

言われた壁側で休んでいると、ガリウスが本日の主催であるアーメント伯爵を連れてきた。

「ガリウス。・・・これは、アーメント伯爵。先ほどぶりです」

シャリオンは片足を引かせ挨拶をすると、
伯爵もそれに返してくれた。

「2人の時間を邪魔して悪いですね」
「いえ。今日の主催でお忙しいのに、お話できて光栄です」
「悪いと思うなら、様子を見て頂いても良かったのですよ」
「ガリウスっ」
「あはは!ハイシア殿、余程好かれておりますね」
「えっ」
「アルベルト。余計なことは言わないでください」
「はいはい。分かった。・・・すまない、ハイシア殿。ただこれだけは言っておくと、ちょっと面倒臭い男だけど悪い奴じゃ無いんだ」

思い当たる節があってクスクスと笑うシャリオン。

「本人目の前に酷いですね。遠慮と言うものが無いのでしょうか」
「ないね!」
「ふふ。随分仲良さそうですね。アーメント伯爵と」
「ハイシア殿。良ければアルベルトとお呼びください。・・・あ。構わないよな?」

そう伺った先はガリウスである。
自ら確認するところ、ガリウスのことをよく分かっているのだろう。
ジト目でガリウスはアルベルトを見たが、渋々と言った感じで頷いた。

「では、僕のこともシャリオンと」
「駄目です」
「「え」」

この流れで普通そうなる所、否定したのはガリウスで、アルベルトもシャリオンもそう返されるとは思ってなくて、そちらを見てしまう。

「・・・、・・・冗談ですよ」
「いやいやいやいや。今お前本気だったでしょ!」

おかしそうに笑いながらアルベルトが言うが、ガリウスはすっとぼけていたままだった。

「では、改めてシャリオン殿。ガリウスとの婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「シャリオン殿に関しては殊更、狭隘な心の持ち主ですが」
「・・・お前は私を貶しにきたのか?・・・シャリオン。これをどうぞ」
「ありがとう」

持ってきてくれた飲み物を受け取ると、いつもと違う雰囲気に楽しくなってまじまじと見ていると、ガリウスと目があった。

「これのことは気にしないでくださいね」

自分より上の爵位にも関わらず、そんな事を言えるほど仲がいいのだろう。

「・・・、はい」
「なぜ、なにか言いたそうなんです?」
「私のことは気になさらないで、いつも通りにして下さい」

ふっと笑うシャリオン。
疑わせたのは悪いとは思うが、男と話すたびにこれで、その度に「浮気ですか?」と聞かれるのは、確かに心が狭い。ガリウスを見れば視線を逸らした。

「もう、なんかやってしまったのかい?ガリウス」

そう尋ねられるも、ニッコリと「思い当たりません」と、首を傾げだけ。

「ガリウスには良くしてもらってますよ。行き遅れた僕に気を使ってかわざわざ相手になってくれていますし」
「シャリオン・・・」
「シャリオン殿なら選り取り見取りだとかおもいましたが。
ところで、2人は仲良さそうですね。
巷では仲が悪いけど、レオン様の運びで2人が婚約したという噂があるんですよ」

少し驚いたようにいうアルベルトに苦笑を浮かべた。

「見ての通りですよ」
「なるほど。やはり噂はあてにならないな」

ガリウスの返答にアルベルトが肩をすくませた。
それからしばらく話し、積もる話はまた今度となった。
しかし、アルベルトが「最後に一つだけ」と、声を掛けてくる。

「そうだ仕事の話になってしまうのだけど、
シャリオン殿に伺いたい事が」
「僕に?」
「えぇ。最近、王都に出入りしている盗賊団が、そちらに頻繁に出入りしているという情報がありまして。何かご存知ないかと」

なんとも嫌な話だった。
シャリオンが思い出す限りないのだが。
領地に一度で戻って調べた方が良いかもしれない

「情報ありがとうございます。今のところないですがあ、盗賊団の名は?」
「赤蜘蛛です。なに、何もないなら良いのですよ。
では、楽しんでいってください」
「「はい」」

これから起きないと良いんけど。


⬛︎⬛︎


アルベルトが離れると、再びひっきりなしに挨拶にくる貴族達に、疲れを感じてきた頃。

最初の方に挨拶をした、殿下達が揃ってこちらにきた。
その途端腰に手を添えられていた手がより引き寄せられた。

「・・・?」

チラリとガリウスを見上げたが笑みを浮かべたままだ。自分が気にしすぎたのかも知れない。

2人に少し座って話そうかと、ソファーへと連れてかれる。
中央から少し離れ、声は抑えれば漏れない。

「まずは婚約おめでとう。シャリオン。ガリウス殿」
「ありがとう存じます。王太子殿下」
「わざわざ人から離れたのだから、言葉どうにかならない?」

チラリとガリウスを見上げればコクリとうなづく。これすら浮気と取られるわけにはいかないからな。
しかし、それを見ていた王太子殿下は驚いたようだった。

「あれ。シャリオンが尻に敷かれてる感じ?」
「どうやら僕は浮気者だと思われてるみたいだからね。ガリウス?」

恨み節を含ませていえば、クスクスと笑うガリウス。

「まだ誓約のことを拗ねているのですか?
魅力的な伴侶を持って心配するパートナーは普通だと思いますけど」

普通のパートナーは監禁だの、浮気相手の子供を処分するだの、脅さないと思うのだが。
・・・いや、処分から後継にしないに変えてはいたが、その子供が不幸になるのは目に見えている。

「誓約?」
「口約束でも婚約が決まったというのに、呼び出されて幼馴染だからとついて行ってしまう、困ったところがあるんですよ」

しかし、王太子殿下はその言葉に驚いたように呟き、こちらを見てきた。

いや、その反応で驚いたのはこちらだ。
軽率について行ったのはシャリオンだが、王命だと聞いて一旦は安心したのだから。

互いに驚いた後、ハッとしてライガー殿下を見た。すると小さくため息をつき、両手を上げた。

「悪かった。・・・あの時は驚きもあったし、連続で悪いの引いてくるから、心配もしていた。
なにより、ガリウスの政治の手腕も知っていたし、無理矢理なのかと勘繰った。
2人で話せば助けを求めやすいかも知れないと思ってそれで」

「なるほど。わかりました。
シャリオン。無理矢理ではなく、合意である事を証明しましょうか」

ライガー殿下の話を途中でぶった斬るガリウスに、不敬だろ・・・と思わず心の中でツッコミを入れていると、とんでもないものが回ってきた。

「は」
「殿下達の前で誓いましょう?」
「は?!」

なんてこと言うのだとガリウスを見る。
頬が熱くなってきた。
ガリウスの誓いと言ったらキスである。

なんで人前てそんなことっ

思わずガリウスの手を握る。

「っ・・・婚約は通ったのだから、わざわざそんなことする必要ないと思う。
それに、僕たち伴侶仲の問題でしょ?」

その言葉にガリウスが嬉しそうにすると、手を握り返してきた。

「えぇそうですね。・・・これで答えになりますか?ライガー殿下」
「・・・。あぁ」
「ご心配かけたようですが、私達は大丈夫ですので、あまりシャリオンにちょっかい出さないでくださいね」

あまりにもストレートとな言い方に、驚き見上げる。

「ちょっ、ガリウス!」
「婚約者に、元婚約者が近寄るのを面白く思わないわけないでしょう」

あの夜を思い浮かべれば、怒っていたのは理解している。だけどこれほどまでとは思わなかった。

「そうだけど」
「誓約書をお忘れですか?」
「・・・忘れてない、けど」

言葉を詰まらせると、2人のやりとりを見ていたルークが苦笑混じりに指摘する。

「これはガリウスが正しいんじゃない?
2人にその気がなくても、他はそうは思わないだろうし。兄上も気を付けないとね」

ルークが視線で謝罪を求めると、意図を汲んだライガーもそれに従う。

「あぁ。・・・すまない。もう2人きりで会うことはないから、ガリウス殿」
「・・・。ええ。その言葉を聞いて安心いたしました」
「でも、私も安心した。シャリオンにちゃんと良い人ができて。
ガリウス殿聞いたかい?
あまりにも婚約者候補に癖がありすぎて、貴族を諦めて平民から選ぼうとしたんだよ」

おかしそうに笑いながら言うルークをジト目でみる。
聞いたも何も、それを父上に提案していたらガリウスが現れたのだから知っているに決まっている。それを思い出し苦い顔をする。

「えぇ」
「公爵家のパートナーが平民なんて聞いたことが無いよ」
「全くです。シャリオンは目を離すと斜め45度ほどの方向に進み始める」
「あはは!それはいえてるね」
「ルー。否定してくれても良いんじゃないの?」
「まぁ蛇行運転くらいはしてると思うけど。まぁでもガリウスが見てくれるなら安心だ。
2人ならちゃんと言いたいことを言い合えてる見たいだし。ね?」

そう言われてハッとした。確かにガリウスにら言いたいことをちゃんと言えている。
見上げればニコリと笑みを浮かべたガリウスと視線が絡む。

「・・・そう、かも」

確かにそうだった。
比較することではないが、ライガー殿下には遠慮してしまう事があった。

そう思うと意外と良い相手だったのかもしれない。

しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

処理中です...