異世界転生、アニオタオバサン令嬢

さちもん

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○リー◎かっ!

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目覚めた私は夢の中で自分が誰なのかを知った。
50代のしがないオバハンではなく、日本人でもなかった。
名前はオーレリィ・ビルフラン。どっかで聞いた名前だなと思ったら『○リー◎物語』の主人公の本当の名前だと思い至った……知らんけど。イギリスの産業革命時代の話で、舞台はフランス。主人公は富豪の息子とジプシー?の女性との間に生まれた子供で父親を亡くし、ヨーロッパ横断の旅の途中で母も亡くして唯一の血縁であるお祖父様の元へと旅をするんだよ。優しいロバと愉快な犬と一緒に。
ロバの名前、なんやったっけ?パルクール?パリカール?そんな感じ。
主題歌もEDも好きやったなぁ。
「お嬢様?目が覚めたのですか?」
声の方へ視線をやるとちょっとキツめの顔をしたメイドさん。名前はロ-リーと言った。
あの時、私にタオルをかけてくれたメイドさんだ。
淡々とした口調だけど、私を気遣ってくれているのが分かる優しい人。
「私、どうしたのかしら?」
何で噴水に落ちてたんだっけ?
「側におりながら、お助けできず、申し訳ありません!」
頭を下げる彼女。
「私ってばあのクルクル頭の女に突き飛ばされたんだっけ?」
何となく覚えていること。
何か知らんけど、いちゃもん付けられたんだっけな。
「……お、お嬢様?く、口調が。」
二人しかいないし?
「あー、もうね無理は止めることにしたのよ。外面は保つけどね。」
オーレリィがどんなお嬢さんだったかは知らないけど、この子の魂は私と同化した。
好きなように生きる。
「あの………お嬢様、先程の歌、聞いたことのないものでしたね。」
あ、しもた。○リー◎物語思い出してたから、OP口ずさんでたわ。
「……あー、そう?」
「春の歌ですか?お嬢様が歌を歌われてたのを初めて聞きましたが、とてもお上手で素晴らしかったです。」
キツい感じのメイドさんのデレた表情はクルものがある。にしても、日本語で歌ったはずだけど、意味が通じていると言うことは、此方の言葉に通じているってことか。うむ……。
「ローリー、こんな歌はどう?」
○リー◎物語のEDを歌う。
「可愛らしい歌ですね、でも、お嬢様?ビルフラン家にいる動物にはないイメージですし、愛玩動物をご所望なのですか?」
記憶にあるビルフラン家には、番犬はいてもペット的な動物はいない。番犬は五匹ほどいる。見た目は強面だけど忠犬だし、オーレリィはそうでもないが、私はそれなりに好みのワンコだ。
「ちっこいワンコは、あんまり好みじゃないから、いいのよ。」
ビーグル犬よりセントバーナードみたいな大型犬がいい。ばろんより、ヨーゼフなのよ。
「はぁ……。」
「で、トイプーは、何で私を突き落としたのかしら。」
「と、といぷー、ですか?」
「あら、いけない。サーサリィのことよ。」
トイプーと言った後で言い直した。
あれは、私の実妹だった娘だ。
二卵性の双子だから似ていないのは当然で、私は三年前の14歳になる前に出奔し、曲なりにも貴族の令嬢だったため身柄の保護を王家の菩提寺院に願い出た。
除籍されてもよいと言う覚悟の出奔で、限界だったんだろね、オーレリィは家族からの虐待の証拠を持って駆け込んだ。自分を罵倒する両親と兄、そして、妹の音声が録音されている魔道具と隠し撮りした映像を保管した魔道具と共に。
魔道具研究所に勤めている唯一の友人であるロザリーに頼んで手に入れたものだ。ロザリーの家であるプリコット伯爵家は魔道具研究所に出資をしていて、所長はロザリーの父親だ。研究所の印の入った魔道具の性能は実際の裁判でも使われているほどのものだ。
オーレリィは、このままだと命の危険を感じたと鞭打たれた背中を乙女の恥じらい何のその寺院の司祭に見せたのだと言う。
オーレリィの婚約者は、第三王子だった。オーレリィの地位は準王族に値する。五歳の頃に結ばれたものだ。
そんな地位にいるオーレリィに対する名門侯爵家の仕打ちは王家にも衝撃を与えた。
第三王子はオーレリィの現状に気付きもしなかったと言うか双子の妹からないことないこと吹き込まれていて、近々オーレリィとは婚約破棄をして妹のトイプーと婚約を結び直すつもりだったそうだ。
王家の恥だな。
私ってばかなり優秀な令嬢で学園の教師や王城で受けていたマナー教師からの評判は良かったんだけど、第三王子は信じなかったみたい。
今のところ婚約は破棄されていないけどいずれ白紙となる予定で動いていると義父母が教えてくれた。
オーレリィは、実家とは絶縁し、娘が欲しかったと言う王弟陛下の養女となっていて、その御披露目茶会だったんだよね。
なので今の私の王家の婚約者としての地位は宙ぶらりんだけど、住まいは王弟陛下んちである。

実の娘で王家の婚約者でもあったオーレリィの実家は歴史が古く王家への忠誠も篤いとされていたオーランド侯爵家。高位貴族のスキャンダルを広める訳にはいかないと侯爵夫妻の王都へ向こう10年立ち入り禁止、私への慰謝料と接近禁止令が出される程度の罰が与えられた。
城での重要ポストは失われ、社交は領地で過ごしていた長兄と祖父母のみが許される細々としたものと行うものになった。
長兄は領地経営が性に合っていると言って、社交は次兄がしていた。滅多に領地から出ることのない長兄と領地に行くことのない両親や次兄、トイプーとの仲はあまりよろしくない印象だ。長兄は侯爵家の経理担当でもあったから派手で贅沢仕様の両親達とは揉めていた。私のことはトイプーのみならず両親や次兄から悪いように言われていたものの、初めて会った時に私の趣味ではなさそうだとは気付いていたが私の現状には気付けていなかったと祖父母と共に謝られた。
オーレリィにとってのトラウマ家族は領地に引っ込んで、妹のサーサリィもオーレリィとは違う女学院に転校となった。
もう、彼等に煩わされることもなく、新しいビルフラン家の令嬢としての生活が始まると安心した矢先の噴水事件だった。

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