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「…困りましたね」
ミネリさんが呟く。
「このホルルカ島っていう表示は?」
とりあえず、気になったことを訊いた。
「あ、はい。それは出身地です。…名前は非表示なのに、出身はちゃんと記されていますね…」
「そうですね」
なんの違いだろう?そもそもそんな島、知らないのだけれど。
「とりあえず…身分証として町に入ることは許可できますし、説明を続けます。まずは…試してみましょう。内容が私に見えないように、カードを自分の方へ向けてください」
「あ、はい。こう…ですか?」
黙考していると、ミネリさんは話を進めてきたので、言われた通りにカードの文字側を自分の方へ向ける。
「はい。そうしたら、ご自分の名前…と、思われる部分を指でなぞってみてください。ちゃんと機能しているなら、表示が変わるはずなのですが…」
「はい?」
よく分からないけれど、『※※※※※※※』の部分を人差し指でなぞってみる。するとーー
うわっ!?本当に表示が変わった。
「変わりました?」
「は、はい。これは…?」
「あ、内容は言わないでくださいね。ここから先の表示は、おいそれと他人に告げたりしてはいけないものですから」
「…分かりました」
言われずとも、この内容…人にはとても見せられません。だって、この表示ときたらーー
適性 他力本願
※※※※
なにこれ?また非表示があるのはともかく、『他力本願』が適性?おかしくない?それは適性に当てはまるの?いや、激しく嫌だわ。
ああ…白い神様の言葉が蘇る。
ーー「お前はなにもしなくていい。お前の周りの者が代わりにすべてをこなしてくれる、そんな能力をお前には授けるから」
絶対、反映されてるよね?人として、一番駄目なヤツだよね?黒い神様の言う通り、自分も他人も駄目にするよね、この適性!?
「良かった。適性は表示されたようですね。でしたら、今度はその適性をなぞってみてください」
うわあ~っと葛藤していると、ミネリさんの声がする。ああ…まだ終わってなかったのね。次に進むのが恐ろしいと思うのだけれど…なるべく常識人の手は煩わせたくない。はあ…
仕方なく、『他力本願』の文字をなぞった。
技能 庇護 魅了 擬人化
???なんだ、この表示…って、技能出た!?そうか。身分証には技能が表示されるのか。なるほど、確かに持っている技能によってはすぐに就職も叶うかーーって!これ!この技能!そんな問題ではないっ!技能とも言えないっ!
「どうです?技能は表示されましたか?」
再びうわあ~っと心中で叫んでいたら、声をかけられた。ミネリさんに。ハイ。取り乱してすみません。
「…はい」
私の様子に小首を傾げるミネリさん。そうだよね。普通、こんな悶絶ものの技能はないと思うのですよ。『擬人化』とか、意味が分からないし。それともこれ、普通なの?
「どうでしょう?魔法の技能とか、あります?」
「ないです…って、え?魔法?」
驚いて前のめりになった私に、向かい合って立っていたミネリさんが、一歩後ろへ下がる。
「そうですか…ないですか。魔法の技能があれば、王都から支援を願い出る所も多いのですが。では、なにかしらの職人技能は?例えば…『防具、武具製作』とか。あと…『料理』に『装飾』…」
「…ないです」
やっぱり私の技能は普通ではなかった…。でも、なんだろう。益々、ゲームじみてきた。主に魔法とか、魔法とか、魔法とか。
…魔法。いいなあ。使ってみたいなあ。
だけど悲しいかな。技能を持っていなかった。適性を見るに…どうも望めそうにない。とほほ。
「大丈夫ですよっ!ちゃんと支援場所はありますから!」
分かりやすくしょげてしまった私を、ミネリさんが元気づけようとしてくれる。ううっ、ありがとうございます。
「どうなるんだろう…」
思わずこぼす。ここに来て、不安が増した。いや、今までが能天気すぎたのか。家なし、金なし、仕事なし。ついでに名前もないときた。
「生きていれば、きっとなんとかなります。…無責任に聞こえるでしょうが。すみません。こんな言葉しか出てこなくて」
「ミネリさん…」
「そうだ。今出ている表示は、余白部分をなぞると消えます。一応、それで得られる情報はすべてです」
身分証の余白部分をなぞってみる。すると技能の表示は消えて、最初の名前と出身地の欄に戻った。
不思議なカードだ。木かと思えば金属に変わり、魂に刻まれているという情報を記した。
「これで身分証の再発行は完了。その身分証は、貴女の身元を保証してくれるものです。大切にしてください」
苦笑しながらも、淡々と事務的に続けるミネリさん。就く仕事によっては技能欄の提示が必要になることと、適性欄は基本他人に見せるものではないことを強めに言われ、説明は終わりとなった。そう。私だけに構っていられないのだ、彼女は。
「なにか質問はありますか?」
「今は…ないです」
「そうですか。では、疑問ができたなら、役所を訪ねて来てください。さあ、これで町の中へ入れます。リズの町へようこそ、です」
そう言うと、その場で少し待つよう告げて、ミネリさんは次の人の元へ行ってしまった。
いつの間にか、私が来た時よりも人が増えていた。身分証を持たぬまま逃げ延びてきた人は、まだまだいるようだ。
はあ。溜息しかないわ。
ミネリさんが呟く。
「このホルルカ島っていう表示は?」
とりあえず、気になったことを訊いた。
「あ、はい。それは出身地です。…名前は非表示なのに、出身はちゃんと記されていますね…」
「そうですね」
なんの違いだろう?そもそもそんな島、知らないのだけれど。
「とりあえず…身分証として町に入ることは許可できますし、説明を続けます。まずは…試してみましょう。内容が私に見えないように、カードを自分の方へ向けてください」
「あ、はい。こう…ですか?」
黙考していると、ミネリさんは話を進めてきたので、言われた通りにカードの文字側を自分の方へ向ける。
「はい。そうしたら、ご自分の名前…と、思われる部分を指でなぞってみてください。ちゃんと機能しているなら、表示が変わるはずなのですが…」
「はい?」
よく分からないけれど、『※※※※※※※』の部分を人差し指でなぞってみる。するとーー
うわっ!?本当に表示が変わった。
「変わりました?」
「は、はい。これは…?」
「あ、内容は言わないでくださいね。ここから先の表示は、おいそれと他人に告げたりしてはいけないものですから」
「…分かりました」
言われずとも、この内容…人にはとても見せられません。だって、この表示ときたらーー
適性 他力本願
※※※※
なにこれ?また非表示があるのはともかく、『他力本願』が適性?おかしくない?それは適性に当てはまるの?いや、激しく嫌だわ。
ああ…白い神様の言葉が蘇る。
ーー「お前はなにもしなくていい。お前の周りの者が代わりにすべてをこなしてくれる、そんな能力をお前には授けるから」
絶対、反映されてるよね?人として、一番駄目なヤツだよね?黒い神様の言う通り、自分も他人も駄目にするよね、この適性!?
「良かった。適性は表示されたようですね。でしたら、今度はその適性をなぞってみてください」
うわあ~っと葛藤していると、ミネリさんの声がする。ああ…まだ終わってなかったのね。次に進むのが恐ろしいと思うのだけれど…なるべく常識人の手は煩わせたくない。はあ…
仕方なく、『他力本願』の文字をなぞった。
技能 庇護 魅了 擬人化
???なんだ、この表示…って、技能出た!?そうか。身分証には技能が表示されるのか。なるほど、確かに持っている技能によってはすぐに就職も叶うかーーって!これ!この技能!そんな問題ではないっ!技能とも言えないっ!
「どうです?技能は表示されましたか?」
再びうわあ~っと心中で叫んでいたら、声をかけられた。ミネリさんに。ハイ。取り乱してすみません。
「…はい」
私の様子に小首を傾げるミネリさん。そうだよね。普通、こんな悶絶ものの技能はないと思うのですよ。『擬人化』とか、意味が分からないし。それともこれ、普通なの?
「どうでしょう?魔法の技能とか、あります?」
「ないです…って、え?魔法?」
驚いて前のめりになった私に、向かい合って立っていたミネリさんが、一歩後ろへ下がる。
「そうですか…ないですか。魔法の技能があれば、王都から支援を願い出る所も多いのですが。では、なにかしらの職人技能は?例えば…『防具、武具製作』とか。あと…『料理』に『装飾』…」
「…ないです」
やっぱり私の技能は普通ではなかった…。でも、なんだろう。益々、ゲームじみてきた。主に魔法とか、魔法とか、魔法とか。
…魔法。いいなあ。使ってみたいなあ。
だけど悲しいかな。技能を持っていなかった。適性を見るに…どうも望めそうにない。とほほ。
「大丈夫ですよっ!ちゃんと支援場所はありますから!」
分かりやすくしょげてしまった私を、ミネリさんが元気づけようとしてくれる。ううっ、ありがとうございます。
「どうなるんだろう…」
思わずこぼす。ここに来て、不安が増した。いや、今までが能天気すぎたのか。家なし、金なし、仕事なし。ついでに名前もないときた。
「生きていれば、きっとなんとかなります。…無責任に聞こえるでしょうが。すみません。こんな言葉しか出てこなくて」
「ミネリさん…」
「そうだ。今出ている表示は、余白部分をなぞると消えます。一応、それで得られる情報はすべてです」
身分証の余白部分をなぞってみる。すると技能の表示は消えて、最初の名前と出身地の欄に戻った。
不思議なカードだ。木かと思えば金属に変わり、魂に刻まれているという情報を記した。
「これで身分証の再発行は完了。その身分証は、貴女の身元を保証してくれるものです。大切にしてください」
苦笑しながらも、淡々と事務的に続けるミネリさん。就く仕事によっては技能欄の提示が必要になることと、適性欄は基本他人に見せるものではないことを強めに言われ、説明は終わりとなった。そう。私だけに構っていられないのだ、彼女は。
「なにか質問はありますか?」
「今は…ないです」
「そうですか。では、疑問ができたなら、役所を訪ねて来てください。さあ、これで町の中へ入れます。リズの町へようこそ、です」
そう言うと、その場で少し待つよう告げて、ミネリさんは次の人の元へ行ってしまった。
いつの間にか、私が来た時よりも人が増えていた。身分証を持たぬまま逃げ延びてきた人は、まだまだいるようだ。
はあ。溜息しかないわ。
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