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「イー…ディ…ス?」
《……》
「イーディスッ!?イーディスッ!!」
《…ラ》
「イーディスッ!ああっどうしようっ。あ、そ、そうだ!ポーション、ポーションを!待って?リュックはーー」
《フラー》
「ない!提げてたリュックがっ!あれにーー」
《おいフラー!落ち着け!》
「どうしよう?どうしよう!」
《フラー!》
「あ…イーディ…ス?」
《ポーションはいいから、話を聞け》
でも、イーディスの刀身にひびがーー
《いいか?まず、ベルクラはおそらく心配ない》
「え?」
《アーレイが動いてるなら、表立って動けなくともなにかしら手は打っているはずだ。だがら、慌てる必要はない》
「…分かった」
《それと、迎えは来るから焦るな》
「迎え?それって…ここがどこだか、分かってるってこと?」
《さあな。知らねえ。だが、そこのイカれ女が、ベルクラからお前をここへ運んだんだろ?これもおそらくだが、転移陣を使ったはずだ。それならユルと眼鏡が必ず辿ってくる》
「…なる…ほど?」
視線を少し離れて倒れているアマリアへと移す。私とラズロが対峙している間、まったく動かなかった。今もその気配はない。
《落ち着いたか?》
「え?あ、はい…」
《落ち着いたなら、いま少し話を聞いてくれ。それくらいの時間はあるだろうから》
「…え?」
それ、どういう意味?
「イーディーー」
《前にも話したと思うが、俺はお前と同じで生前こことは違う世界で生きてた。そこは多分ーーお前のいた世界とも違う》
「イーディス、待って。なんの話をーー」
《いいから聞け。俺のいたところってのは、そりゃもうクソみたいなところでな。どこもかしこも争いばかりしてた。そんな中で、俺は特殊な部類の者に当て嵌まった》
「特殊な…部類?」
《ああ。なんてんだ?身体能力が高く丈夫で、ここで言う魔法のような能力を、生まれながらに持った者だ。魔法なんてない世界だったから、希少だったと言える。それでも一定数いて、人の上位種だなんて言われていた》
「上位種…」
《病の心配もない、怪我をしても治りが早い。普通の人間からしてみれば、出来すぎた種だ。羨望される反面、妬まれ、異質なモノとして扱われた。それで、だ。そんなのが一定の割合で生まれてきて乱世となれば、必然的に国の為に働くことを強要されることになる》
「それってーー」
《もれなく戦争に駆り出された。生きる兵器としてな》
「ーーっ!」
《戦災孤児だったこともあって、物心ついた時から軍属だ。来る日も来る日も戦って…そして、やっと死んだ》
「イーディ…ス」
何故、今そんな話をーー
《だから…なにも知らなかった》
「え…?」
《なにも知らなかったんだよ俺は。当たり前な、人並みのことをなにも》
「人並みのこと?」
《誰かと、一緒に暮らして》
《向かい合って、飯食って》
《帰ってくれば「おかえり」なんて、言葉がかけられる》
ああ。噛みしめるように、口にされるそれらはーー
《心配なんてされたのも、初めてだったな》
「イーディス…」
《あー、あと。「とーさま」なんて呼ばれたのもな。まさか、子持ちの気分まで味わうことになるとは》
「…嫌でした?」
《いいや。意外にも悪くなかった。娘がいるってのは、あんなもんなのかね?まあ、お前は絶対、娘ではないけどな》
「そうですね。私はーー」
《フラー》
「…はい」
《ありがとう、な。お前のお陰で、思いもしなかったことを知ることができた》
「…お礼なんて。それは…私の台詞です。イーディスには、随分…助けられました。きっとこれからもーー」
声が震える。
さっきからずっと、イーディスに入った亀裂が広がり続けていてーー
「私との日常は、新鮮だったみたいですね?でも、まだまだですよ?これからもっと、一緒に新しいことをーー…っ」
《フラー》
「イーディ…ス」
《泣くな》
「ーーっ!無理だよ。私のせいなのに…」
《言っておくが、主だから盾になったわけじゃねえぞ》
「主じゃなければ、傷を負うことはなかった!」
《まあ、義務はあったな。けど、そんなことは頭から抜けていたのは確かだ》
「イーディス…」
《あとな、お前が主でなければなにも知らないままだった。そんなのはもう、考えられねえ。ファシオとの旅でも多くを見たが、まったく違う。お前はーー…》
「私は…?」
《なんつうか…しまったと思ってる》
「それは私で…」
《違う。お前との距離が妙に居心地良くて、手を出しそこねちまったことを言ってる》
「っ!イーディス、私…」
亀裂が更に広がった。
「ーーっ!」
《…フラー、頼みがある》
「……なに?」
《人に戻してくれ》
「で、でも!傷が…!」
《分かるだろ?どっちだろうと変わらねえ。持っていた治癒の魔結晶は使った。それでこのザマだ》
「イー…ディ…ス、だ、けど…」
《頼む》
「……」
当たり前のように提がっていた鞘を腰から外し、刀身を収めた。
瞬間、聖剣は人の姿へと変わりーー
「わりい…」
「ーーっ」
イーディスが覆いかぶさってきた。支えきれず後ろへ下がり、壁際まで到達したところで、もたれ掛かかってズルズルと二人、床へ沈む。
「なさけ…ねえ」
私の肩に頭を乗せ、体重を預けたイーディスが呟いた。そっと背中に手をまわすと、濡れている感触が。思わず手を上げ、仰ぎ見る。
真っ赤に染まっていた。
《……》
「イーディスッ!?イーディスッ!!」
《…ラ》
「イーディスッ!ああっどうしようっ。あ、そ、そうだ!ポーション、ポーションを!待って?リュックはーー」
《フラー》
「ない!提げてたリュックがっ!あれにーー」
《おいフラー!落ち着け!》
「どうしよう?どうしよう!」
《フラー!》
「あ…イーディ…ス?」
《ポーションはいいから、話を聞け》
でも、イーディスの刀身にひびがーー
《いいか?まず、ベルクラはおそらく心配ない》
「え?」
《アーレイが動いてるなら、表立って動けなくともなにかしら手は打っているはずだ。だがら、慌てる必要はない》
「…分かった」
《それと、迎えは来るから焦るな》
「迎え?それって…ここがどこだか、分かってるってこと?」
《さあな。知らねえ。だが、そこのイカれ女が、ベルクラからお前をここへ運んだんだろ?これもおそらくだが、転移陣を使ったはずだ。それならユルと眼鏡が必ず辿ってくる》
「…なる…ほど?」
視線を少し離れて倒れているアマリアへと移す。私とラズロが対峙している間、まったく動かなかった。今もその気配はない。
《落ち着いたか?》
「え?あ、はい…」
《落ち着いたなら、いま少し話を聞いてくれ。それくらいの時間はあるだろうから》
「…え?」
それ、どういう意味?
「イーディーー」
《前にも話したと思うが、俺はお前と同じで生前こことは違う世界で生きてた。そこは多分ーーお前のいた世界とも違う》
「イーディス、待って。なんの話をーー」
《いいから聞け。俺のいたところってのは、そりゃもうクソみたいなところでな。どこもかしこも争いばかりしてた。そんな中で、俺は特殊な部類の者に当て嵌まった》
「特殊な…部類?」
《ああ。なんてんだ?身体能力が高く丈夫で、ここで言う魔法のような能力を、生まれながらに持った者だ。魔法なんてない世界だったから、希少だったと言える。それでも一定数いて、人の上位種だなんて言われていた》
「上位種…」
《病の心配もない、怪我をしても治りが早い。普通の人間からしてみれば、出来すぎた種だ。羨望される反面、妬まれ、異質なモノとして扱われた。それで、だ。そんなのが一定の割合で生まれてきて乱世となれば、必然的に国の為に働くことを強要されることになる》
「それってーー」
《もれなく戦争に駆り出された。生きる兵器としてな》
「ーーっ!」
《戦災孤児だったこともあって、物心ついた時から軍属だ。来る日も来る日も戦って…そして、やっと死んだ》
「イーディ…ス」
何故、今そんな話をーー
《だから…なにも知らなかった》
「え…?」
《なにも知らなかったんだよ俺は。当たり前な、人並みのことをなにも》
「人並みのこと?」
《誰かと、一緒に暮らして》
《向かい合って、飯食って》
《帰ってくれば「おかえり」なんて、言葉がかけられる》
ああ。噛みしめるように、口にされるそれらはーー
《心配なんてされたのも、初めてだったな》
「イーディス…」
《あー、あと。「とーさま」なんて呼ばれたのもな。まさか、子持ちの気分まで味わうことになるとは》
「…嫌でした?」
《いいや。意外にも悪くなかった。娘がいるってのは、あんなもんなのかね?まあ、お前は絶対、娘ではないけどな》
「そうですね。私はーー」
《フラー》
「…はい」
《ありがとう、な。お前のお陰で、思いもしなかったことを知ることができた》
「…お礼なんて。それは…私の台詞です。イーディスには、随分…助けられました。きっとこれからもーー」
声が震える。
さっきからずっと、イーディスに入った亀裂が広がり続けていてーー
「私との日常は、新鮮だったみたいですね?でも、まだまだですよ?これからもっと、一緒に新しいことをーー…っ」
《フラー》
「イーディ…ス」
《泣くな》
「ーーっ!無理だよ。私のせいなのに…」
《言っておくが、主だから盾になったわけじゃねえぞ》
「主じゃなければ、傷を負うことはなかった!」
《まあ、義務はあったな。けど、そんなことは頭から抜けていたのは確かだ》
「イーディス…」
《あとな、お前が主でなければなにも知らないままだった。そんなのはもう、考えられねえ。ファシオとの旅でも多くを見たが、まったく違う。お前はーー…》
「私は…?」
《なんつうか…しまったと思ってる》
「それは私で…」
《違う。お前との距離が妙に居心地良くて、手を出しそこねちまったことを言ってる》
「っ!イーディス、私…」
亀裂が更に広がった。
「ーーっ!」
《…フラー、頼みがある》
「……なに?」
《人に戻してくれ》
「で、でも!傷が…!」
《分かるだろ?どっちだろうと変わらねえ。持っていた治癒の魔結晶は使った。それでこのザマだ》
「イー…ディ…ス、だ、けど…」
《頼む》
「……」
当たり前のように提がっていた鞘を腰から外し、刀身を収めた。
瞬間、聖剣は人の姿へと変わりーー
「わりい…」
「ーーっ」
イーディスが覆いかぶさってきた。支えきれず後ろへ下がり、壁際まで到達したところで、もたれ掛かかってズルズルと二人、床へ沈む。
「なさけ…ねえ」
私の肩に頭を乗せ、体重を預けたイーディスが呟いた。そっと背中に手をまわすと、濡れている感触が。思わず手を上げ、仰ぎ見る。
真っ赤に染まっていた。
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