10 / 140
10日目
しおりを挟む
未だ城内見物コンプリートならず。
それというのも、関係者以外立ち入り禁止区域があるため。まあ、仕方ないか。
だけど私はともかく、案内をしてくれる王様にも、許可がなければ入れないところがあるなんて。「王といえども、どこでもかしこでも入ることはできない」とは、主上の言葉。解らないでもないけど、どうもね?
ここの王様は威厳というか、高貴さというか、そういうのが欠けているような気がする。
まあ、それはさておき。それでもこの数日で、大体は城内を把握したのではないだろうかと思われた。
今、私が寝泊まりしているのは『学術塔』と呼ばれるところ。名前の通りの高い塔で、そこにあるアケイルさんに宛てがわれた研究室の一つを占拠している。
ここからアケイルさんが、城付きの錬金術師という身分であることが判る。確か、筆頭だと言われていた。つまりは偉い人ということだ。腰が低いので、そんなふうには見えないけれど。
その『学術塔』を含め、白銀城の周りには六本の塔が建っている。それらすべてが敷地となるので、一口に城と言っても、ここはとてつもなく広い。
城の前方、向かって右側に『右翼軍塔』、左側に『左翼軍塔』。後方右側に『技術塔』、左側に『学術塔』。真後ろに当たる位置に『親衛塔』。この五つの塔を線で結ぶと、丁度星型ーー五芒星というのか?ーーになる。城は星の結界の中に、といった感じだ。
そして六本目の『占者塔』は、『親衛塔』の後方、五つの塔からは出っ張った位置にひっそりと建っている。
この内、私が勝手にうろつけるのは、学術塔と城の一画のみ。軍塔、技術塔、占者塔に至っては、主上に遠くから指さされただけで近づいたこともない。当然どんな人がいて、なにをするところなのかも不明。その呼称から、ある程度の推測はできるけれど。
しかし。こうして改めて考えると、大体を把握したとは言い難いか。
「なんだ?小娘。今日も来たのか?」
あれこれ頭を整理させながら、今日も今日とてーーと言ってもまだ二日目なのだけどーー学術塔内図書室にやって来た私に声をかけてきたのは、フルルクスの爺様だった。
昨日も見られていたのか。
「はい。私が自由に動けるのは、この塔くらいですから」
気後れしつつも返事する。
「フン。それとて、アケイルの口添えあってのものだ。感謝しろ」
…言われなくとも、しています。
本当に、この爺様は気難しい。
数日前、私の身体検査に立ち会っていたのがこの人、召喚術師のフルルクス。ちょっと仙人っぽい爺さんで、見る限りずっと眉間に縦皺を寄せている。くっきりと。白雪の胸にある術式とかいうものに顔を近づけた時、それは際立っていた。いろいろ思うところがあるのだろう。だけど、もう少し柔らかくてもいいのではないだろうか?
何気なく、手元にあった一冊を手に取った。
『召喚入門』ーー爺様に出くわすわけだ。このあたり、召喚術の専門書地帯だよ。
「小娘、召喚術に興味があるのか?」
ギロリと睨まれた。不機嫌そうな上に目つきが鋭いので、これは怖い。
「あ、いえ。なんとなくですね、目に付いたので」
他意はなかった。本当になんとなくだ。
「…フン。好きにしろ」
踵を返して、フルルクスはさっさと行ってしまった。嫌われているのかな?うーん、普通に考えて、人造人間を気味悪がらない人なんていないか?真っ当な反応ということか。
…ヘコんだところで状況改善は望めない。とりあえず、手にした本を広げてみますか。
昨日初めてここへ来て、驚愕の事実に行き当たった。本好きの私は図書室の存在を知り、喜び勇んで足を運び、なんでもいいからと本を開いた。
読めた。何故か。知らない文字にも拘わらず。これだって驚きだ。だけど驚愕はそこではなかった。
なんと言おうか。一目見れば丸暗記、だったのだ。
信じられないが、本を読むのにじっくり文字を追う必要がない。パラパラと頁を捲っていくだけで、一言一句違わずすべて記憶できるのだから。
これに呆然となった。
但し。内容は理解していない。
そうであるための、知識がなさすぎた。ついでに言うなら、それを補う勤勉さもさしてない。真の意味で役立つことはなさそうと言えた。
だけどやっぱり、すごいことではある。完全記憶脳だ。
〈私の最高傑作〉だと言った、ノーツの言葉が蘇る。
どうやら、見たもの聞いたこと、すべて鮮明に覚えているよう。生前の私では考えられない能力。白雪の造りは、かなりの高性能であるようだ。他にも思い当たるフシがあった。
まいった。本当に。
半ば呆れつつ、悩んでも仕方ないので召喚入門の本を広げる。そこには「森羅万象、術式に書き換えられる。之、すべての式術に通ずる道なり」ーーなどと、解るような解らないことが始めに書かれていた。意味不明。入門書で躓いている。
もういいや。頁だけ捲っておこう。
理解はできなくても覚えられるのだから、とりあえず吸収できるものはすべて吸収しておこう。
特に深くも考えないで、図書室へ通いつめることにした。
それというのも、関係者以外立ち入り禁止区域があるため。まあ、仕方ないか。
だけど私はともかく、案内をしてくれる王様にも、許可がなければ入れないところがあるなんて。「王といえども、どこでもかしこでも入ることはできない」とは、主上の言葉。解らないでもないけど、どうもね?
ここの王様は威厳というか、高貴さというか、そういうのが欠けているような気がする。
まあ、それはさておき。それでもこの数日で、大体は城内を把握したのではないだろうかと思われた。
今、私が寝泊まりしているのは『学術塔』と呼ばれるところ。名前の通りの高い塔で、そこにあるアケイルさんに宛てがわれた研究室の一つを占拠している。
ここからアケイルさんが、城付きの錬金術師という身分であることが判る。確か、筆頭だと言われていた。つまりは偉い人ということだ。腰が低いので、そんなふうには見えないけれど。
その『学術塔』を含め、白銀城の周りには六本の塔が建っている。それらすべてが敷地となるので、一口に城と言っても、ここはとてつもなく広い。
城の前方、向かって右側に『右翼軍塔』、左側に『左翼軍塔』。後方右側に『技術塔』、左側に『学術塔』。真後ろに当たる位置に『親衛塔』。この五つの塔を線で結ぶと、丁度星型ーー五芒星というのか?ーーになる。城は星の結界の中に、といった感じだ。
そして六本目の『占者塔』は、『親衛塔』の後方、五つの塔からは出っ張った位置にひっそりと建っている。
この内、私が勝手にうろつけるのは、学術塔と城の一画のみ。軍塔、技術塔、占者塔に至っては、主上に遠くから指さされただけで近づいたこともない。当然どんな人がいて、なにをするところなのかも不明。その呼称から、ある程度の推測はできるけれど。
しかし。こうして改めて考えると、大体を把握したとは言い難いか。
「なんだ?小娘。今日も来たのか?」
あれこれ頭を整理させながら、今日も今日とてーーと言ってもまだ二日目なのだけどーー学術塔内図書室にやって来た私に声をかけてきたのは、フルルクスの爺様だった。
昨日も見られていたのか。
「はい。私が自由に動けるのは、この塔くらいですから」
気後れしつつも返事する。
「フン。それとて、アケイルの口添えあってのものだ。感謝しろ」
…言われなくとも、しています。
本当に、この爺様は気難しい。
数日前、私の身体検査に立ち会っていたのがこの人、召喚術師のフルルクス。ちょっと仙人っぽい爺さんで、見る限りずっと眉間に縦皺を寄せている。くっきりと。白雪の胸にある術式とかいうものに顔を近づけた時、それは際立っていた。いろいろ思うところがあるのだろう。だけど、もう少し柔らかくてもいいのではないだろうか?
何気なく、手元にあった一冊を手に取った。
『召喚入門』ーー爺様に出くわすわけだ。このあたり、召喚術の専門書地帯だよ。
「小娘、召喚術に興味があるのか?」
ギロリと睨まれた。不機嫌そうな上に目つきが鋭いので、これは怖い。
「あ、いえ。なんとなくですね、目に付いたので」
他意はなかった。本当になんとなくだ。
「…フン。好きにしろ」
踵を返して、フルルクスはさっさと行ってしまった。嫌われているのかな?うーん、普通に考えて、人造人間を気味悪がらない人なんていないか?真っ当な反応ということか。
…ヘコんだところで状況改善は望めない。とりあえず、手にした本を広げてみますか。
昨日初めてここへ来て、驚愕の事実に行き当たった。本好きの私は図書室の存在を知り、喜び勇んで足を運び、なんでもいいからと本を開いた。
読めた。何故か。知らない文字にも拘わらず。これだって驚きだ。だけど驚愕はそこではなかった。
なんと言おうか。一目見れば丸暗記、だったのだ。
信じられないが、本を読むのにじっくり文字を追う必要がない。パラパラと頁を捲っていくだけで、一言一句違わずすべて記憶できるのだから。
これに呆然となった。
但し。内容は理解していない。
そうであるための、知識がなさすぎた。ついでに言うなら、それを補う勤勉さもさしてない。真の意味で役立つことはなさそうと言えた。
だけどやっぱり、すごいことではある。完全記憶脳だ。
〈私の最高傑作〉だと言った、ノーツの言葉が蘇る。
どうやら、見たもの聞いたこと、すべて鮮明に覚えているよう。生前の私では考えられない能力。白雪の造りは、かなりの高性能であるようだ。他にも思い当たるフシがあった。
まいった。本当に。
半ば呆れつつ、悩んでも仕方ないので召喚入門の本を広げる。そこには「森羅万象、術式に書き換えられる。之、すべての式術に通ずる道なり」ーーなどと、解るような解らないことが始めに書かれていた。意味不明。入門書で躓いている。
もういいや。頁だけ捲っておこう。
理解はできなくても覚えられるのだから、とりあえず吸収できるものはすべて吸収しておこう。
特に深くも考えないで、図書室へ通いつめることにした。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる