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13日目(1)
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つまらない。
つまらなすぎる!ここにある本は。いわゆる専門書というものばかり。娯楽本はないのか?これだけ本があるのに。四方八方、本だらけなのに。私の読みたい本が一冊もない。あ、ひょっとしたら、この世界には推理小説なんてないのかも。
学術塔にある図書室だということを、忘却の彼方へ吹き飛ばしていた。一般の図書室ならいざ知らず、ここにそんな俗っぽいものが置かれているはずがないのだ。
そうでなくても、スペースが足りていない。そのためアケイルさんの研究室なんて、本にまみれている。地震が来たら危ないと思うくらい。
そしてこの図書室も、それと近い状態だった。つまりは、棚に入り切らない本で山がいくつもできている。
現状には理由がある。少なくない数の者が、思い思いに利用している施設だからだ。管理する司書がいないのが痛かった。
これの示すこと。それはつまり、学術塔にはアケイルさんやフルルクスの爺様の他に、多くの術師がいるということだ。
『錬金術師』、『召喚術師』の他に、ここには『白魔術師』と『黒魔術師』というものが存在していた。
そして、この術師たちの使う技ーー白雪の身体に刻まれている、術式という魔方陣っぽいモノがそれだなーーを『式術』というらしい。
いよいよ理解の範疇を、超えてきたと言わざるを得ない。
アケイルさんにざっくりと、それぞれの概要は教わった。
錬金術師は科学者、召喚術師は物理学者、白魔術師は医者、黒魔術師は自然研究学者、といった印象だ。
だけどおそらく私の想像とはズレがあり、根本的に違うものだろう。
結局「魔法」の一言で、頭の中では処理された。正直、お手上げである。
それでも本を手に取った。
召喚術専門地帯はすでに、基本から応用まで抜粋して読み終えた。正確には「頁を捲り終えた」なのだが、まあそこはご愛嬌。
今は錬金術専門地帯。まずは自分に深く関係のあるところから。
理解できない以上、この行為はなんら意味をなさない。だけど私は続けていた。
無意識にーー気付いていたのだと思う。事の重要性に。高性能であるがゆえ。
「よっ。今日もここか」
主上がやって来て、声をかけられた。今日も。この人はこのところ、一日一度は私の前に姿を現す。ヒマなのか?
「はい。今日もヒマそうですね、主上」
そのまま口にした。
「あのな…一応、政務を一段落終えてから顔を出しているんだが?」
「そうなんですか?」
主上は本当に気安い。それは、その性格に因るところが大きいのだけれど、もう一つ明確な理由もあった。
外見だ。黒い髪に黒い目。他の人と違って、日本人の私にとても馴染み深い色合いの持ち主なのだ。それに歳も近そう。確認してはいないのだけど。
そんなわけで、人付き合いの苦手な私には珍しく、この人には比較的愛想よく接することができていた。…多分だけど。
「どうだ?今日も塔を出ないか?」
「そろそろ城の外、とかですか?」
「うっ!?すまん。それはまだ駄目だ。許可が下りていない」
王様が誰に許可を得るというのだろう?訊くまい、面倒だ。
「いいですよ。期待はしていませんでしたから。行きましょう」
「そのうち連れて行ってやるから。もう少し、辛抱してくれ」
主上が苦笑する。
インドア派なので、実はそれほど苦になっていない。
だけど。城の外を見てみたいのは確か。まあ、そのうちなんとかなるだろう。お気楽主義でよかったなあ。
「はい。辛抱します」
つられて私も、小さく笑った。
つまらなすぎる!ここにある本は。いわゆる専門書というものばかり。娯楽本はないのか?これだけ本があるのに。四方八方、本だらけなのに。私の読みたい本が一冊もない。あ、ひょっとしたら、この世界には推理小説なんてないのかも。
学術塔にある図書室だということを、忘却の彼方へ吹き飛ばしていた。一般の図書室ならいざ知らず、ここにそんな俗っぽいものが置かれているはずがないのだ。
そうでなくても、スペースが足りていない。そのためアケイルさんの研究室なんて、本にまみれている。地震が来たら危ないと思うくらい。
そしてこの図書室も、それと近い状態だった。つまりは、棚に入り切らない本で山がいくつもできている。
現状には理由がある。少なくない数の者が、思い思いに利用している施設だからだ。管理する司書がいないのが痛かった。
これの示すこと。それはつまり、学術塔にはアケイルさんやフルルクスの爺様の他に、多くの術師がいるということだ。
『錬金術師』、『召喚術師』の他に、ここには『白魔術師』と『黒魔術師』というものが存在していた。
そして、この術師たちの使う技ーー白雪の身体に刻まれている、術式という魔方陣っぽいモノがそれだなーーを『式術』というらしい。
いよいよ理解の範疇を、超えてきたと言わざるを得ない。
アケイルさんにざっくりと、それぞれの概要は教わった。
錬金術師は科学者、召喚術師は物理学者、白魔術師は医者、黒魔術師は自然研究学者、といった印象だ。
だけどおそらく私の想像とはズレがあり、根本的に違うものだろう。
結局「魔法」の一言で、頭の中では処理された。正直、お手上げである。
それでも本を手に取った。
召喚術専門地帯はすでに、基本から応用まで抜粋して読み終えた。正確には「頁を捲り終えた」なのだが、まあそこはご愛嬌。
今は錬金術専門地帯。まずは自分に深く関係のあるところから。
理解できない以上、この行為はなんら意味をなさない。だけど私は続けていた。
無意識にーー気付いていたのだと思う。事の重要性に。高性能であるがゆえ。
「よっ。今日もここか」
主上がやって来て、声をかけられた。今日も。この人はこのところ、一日一度は私の前に姿を現す。ヒマなのか?
「はい。今日もヒマそうですね、主上」
そのまま口にした。
「あのな…一応、政務を一段落終えてから顔を出しているんだが?」
「そうなんですか?」
主上は本当に気安い。それは、その性格に因るところが大きいのだけれど、もう一つ明確な理由もあった。
外見だ。黒い髪に黒い目。他の人と違って、日本人の私にとても馴染み深い色合いの持ち主なのだ。それに歳も近そう。確認してはいないのだけど。
そんなわけで、人付き合いの苦手な私には珍しく、この人には比較的愛想よく接することができていた。…多分だけど。
「どうだ?今日も塔を出ないか?」
「そろそろ城の外、とかですか?」
「うっ!?すまん。それはまだ駄目だ。許可が下りていない」
王様が誰に許可を得るというのだろう?訊くまい、面倒だ。
「いいですよ。期待はしていませんでしたから。行きましょう」
「そのうち連れて行ってやるから。もう少し、辛抱してくれ」
主上が苦笑する。
インドア派なので、実はそれほど苦になっていない。
だけど。城の外を見てみたいのは確か。まあ、そのうちなんとかなるだろう。お気楽主義でよかったなあ。
「はい。辛抱します」
つられて私も、小さく笑った。
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