13 / 140
13日目(3)
しおりを挟む
ため息混じりの主上に引っ張られ、親衛塔を後にした。私たちは城内散歩を継続中。
まいった。大変失礼いたしました。主上はちゃんと王様でした。おかしいな?全然それらしくないんだけどな。
事実から言うと、確かに私は疑われ監視されていた。ただ、その監視役が正真正銘の王様だっただけ。普通、王様ってのはそんな役目は負わないと思うのだけど。これで私が本当に刺客だったら、どうするんだ?
「お前は無害だ。少なくとも、俺はそう思っている。本気で監視しようと思ったら、こんなに緩いはずがない」
立ち直りが早い。にっこり笑って主上が言った。
「はあ。まあ、そうですね。でも、なんで主上が?」
「言っただろう?俺しかヒマな奴がいないんだ。それに、責任を持つと皆に言ったからな」
……つまり。
私という者は無害だと見極めたので、監視に余計な人手を割くのは無用。責任は自分が持つーーそう主上は周囲を説き伏せた、ということだ。
多分、反対意見は多かったのだろう。カクカの言葉、フルルクス爺様の態度が、それを物語っている。
「感謝します」
ちょっと感動。主上、ありがとうございます。王様らしくないなんて言って、ごめんなさい。
「いや、すまなかった。監視の意があることを、故意に黙っていた」
すごく自然に謝罪の言葉を口にする。こういうところが王様らしくないって、解っているのかな?
でも、この方がいい。王様らしさなんて、クソ喰らえだ。
気を取り直して散歩続行。と、そうだ。ノーツの研究記録、アレの所在に私なりの考えが浮かんでいたんだ。それを言っておこう。
そう思ったのだけれどーー
「あの、主じょーー」
んん?
言いかけた言葉を飲み込んだ。たった今、視界に入った人の姿に気を取られたためだ。
「どうした?」
主上が私の異変に気付く。
「あそこに、人が…」
ずいぶん向こうに見える人物を指さす。木漏れ日の中、白い石畳上の遥か先を歩くその人は、技術塔へ向かう道へ折れ曲がって行った。
「主上、あの人を知ってますか?」
「無茶言うな。ここから顔の判別なんて、できるわけないだろう?」
あ、そうか。そうなんだ。確かに。この距離、判別は無理か。常人なら。
でも。私にはできている。
これは…。さすが白雪、超高性能。視力いくらある?6・0とか7・0、普通にあるのでは?
その白雪の目で見ても、なんの変哲もないただの若い男。格好からすると城の文官って感じの。顔も穏やかで無害そう。無害そうなんだけどーー
胸がザワつく。
それはフィルを見て起こるザワめきとは、まるで違う。彼の時はこう…血流、新陳代謝上昇、でもってテンション急上昇!という感じ。だけどあの男の場合、腹の中で風邪菌がワサワサするというか、食いすぎて胃がムカムカするというか。とにかく気持ち悪い。
身体が勝手に駆け出していた。
軽い。白雪の身体は、なんて軽いんだろう。瞬く間に、先を歩いていた男に追いついてしまった。
「待って!」
「はい?」
思わずの私の呼びかけに、男は不思議そうに返事をしながら振り向いた。
「貴方…刺客…」
直感を口走る。
「おい!どうした?」
主上も追いついてきた。
男の表情が消え、微かな手の動き。
私の言葉と、主上の声、それに男の動作。すべてがほぼ同時だった。
そしてーー
ナニかが飛んできた!?
右足を軸に回れ右、そのまますぐ後ろまで来ていた主上に体当たり。王様を突き飛ばす。
間一髪。主上のコートの裾に、透けるほどに薄い剃刀(?)が三枚、刺さっていた。
男はすでに駆け出している。逃がすかと、履いていた靴を片方脱ぎ投げつけた。
見事、男の頭に鋭く命中。ぶっ倒れてくれた。よし、と思うがそれも一瞬。今度は頭上から、新手の刺客が飛び降りてきた。木の上にもいたのか!
驚くしかできなかった。だけど、新たに現れた刺客は、その驚きと同時に薙ぎ払われていた。
え?
主上が剣を手に、傍らに立っていた。
私が男に追いついてからここまで、僅か数秒のことだったと思う。信じられない。非日常にもほどがある。冗談でしょ?
「…よく見えたな」
足元のコートに刺さる剃刀に視線を移し、主上が言った。あの僅かの間に、コートを脱ぎ捨て、剣を抜き、突発的に現れた敵を薙ぎ払うとは。この王様は一体?
「すごく高性能なんですよ、この身体。それにしても、主上はずいぶん腕が立つんですね?」
「ん?そうか?」
そうだよ!すごいよ主上。私には、いや、白雪の感覚には、判るんだよ!主上が並々ならぬ手練だって。
あ、だからなのか。監視役なんて買って出ても、皆を納得させられたのは。
「高性能…」
一人勝手に納得する私の隣で、主上は呟いた。
まいった。大変失礼いたしました。主上はちゃんと王様でした。おかしいな?全然それらしくないんだけどな。
事実から言うと、確かに私は疑われ監視されていた。ただ、その監視役が正真正銘の王様だっただけ。普通、王様ってのはそんな役目は負わないと思うのだけど。これで私が本当に刺客だったら、どうするんだ?
「お前は無害だ。少なくとも、俺はそう思っている。本気で監視しようと思ったら、こんなに緩いはずがない」
立ち直りが早い。にっこり笑って主上が言った。
「はあ。まあ、そうですね。でも、なんで主上が?」
「言っただろう?俺しかヒマな奴がいないんだ。それに、責任を持つと皆に言ったからな」
……つまり。
私という者は無害だと見極めたので、監視に余計な人手を割くのは無用。責任は自分が持つーーそう主上は周囲を説き伏せた、ということだ。
多分、反対意見は多かったのだろう。カクカの言葉、フルルクス爺様の態度が、それを物語っている。
「感謝します」
ちょっと感動。主上、ありがとうございます。王様らしくないなんて言って、ごめんなさい。
「いや、すまなかった。監視の意があることを、故意に黙っていた」
すごく自然に謝罪の言葉を口にする。こういうところが王様らしくないって、解っているのかな?
でも、この方がいい。王様らしさなんて、クソ喰らえだ。
気を取り直して散歩続行。と、そうだ。ノーツの研究記録、アレの所在に私なりの考えが浮かんでいたんだ。それを言っておこう。
そう思ったのだけれどーー
「あの、主じょーー」
んん?
言いかけた言葉を飲み込んだ。たった今、視界に入った人の姿に気を取られたためだ。
「どうした?」
主上が私の異変に気付く。
「あそこに、人が…」
ずいぶん向こうに見える人物を指さす。木漏れ日の中、白い石畳上の遥か先を歩くその人は、技術塔へ向かう道へ折れ曲がって行った。
「主上、あの人を知ってますか?」
「無茶言うな。ここから顔の判別なんて、できるわけないだろう?」
あ、そうか。そうなんだ。確かに。この距離、判別は無理か。常人なら。
でも。私にはできている。
これは…。さすが白雪、超高性能。視力いくらある?6・0とか7・0、普通にあるのでは?
その白雪の目で見ても、なんの変哲もないただの若い男。格好からすると城の文官って感じの。顔も穏やかで無害そう。無害そうなんだけどーー
胸がザワつく。
それはフィルを見て起こるザワめきとは、まるで違う。彼の時はこう…血流、新陳代謝上昇、でもってテンション急上昇!という感じ。だけどあの男の場合、腹の中で風邪菌がワサワサするというか、食いすぎて胃がムカムカするというか。とにかく気持ち悪い。
身体が勝手に駆け出していた。
軽い。白雪の身体は、なんて軽いんだろう。瞬く間に、先を歩いていた男に追いついてしまった。
「待って!」
「はい?」
思わずの私の呼びかけに、男は不思議そうに返事をしながら振り向いた。
「貴方…刺客…」
直感を口走る。
「おい!どうした?」
主上も追いついてきた。
男の表情が消え、微かな手の動き。
私の言葉と、主上の声、それに男の動作。すべてがほぼ同時だった。
そしてーー
ナニかが飛んできた!?
右足を軸に回れ右、そのまますぐ後ろまで来ていた主上に体当たり。王様を突き飛ばす。
間一髪。主上のコートの裾に、透けるほどに薄い剃刀(?)が三枚、刺さっていた。
男はすでに駆け出している。逃がすかと、履いていた靴を片方脱ぎ投げつけた。
見事、男の頭に鋭く命中。ぶっ倒れてくれた。よし、と思うがそれも一瞬。今度は頭上から、新手の刺客が飛び降りてきた。木の上にもいたのか!
驚くしかできなかった。だけど、新たに現れた刺客は、その驚きと同時に薙ぎ払われていた。
え?
主上が剣を手に、傍らに立っていた。
私が男に追いついてからここまで、僅か数秒のことだったと思う。信じられない。非日常にもほどがある。冗談でしょ?
「…よく見えたな」
足元のコートに刺さる剃刀に視線を移し、主上が言った。あの僅かの間に、コートを脱ぎ捨て、剣を抜き、突発的に現れた敵を薙ぎ払うとは。この王様は一体?
「すごく高性能なんですよ、この身体。それにしても、主上はずいぶん腕が立つんですね?」
「ん?そうか?」
そうだよ!すごいよ主上。私には、いや、白雪の感覚には、判るんだよ!主上が並々ならぬ手練だって。
あ、だからなのか。監視役なんて買って出ても、皆を納得させられたのは。
「高性能…」
一人勝手に納得する私の隣で、主上は呟いた。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる