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教えてください(R15
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小松さんに、初めての中学校はどうでしたか。お友達はできましたか。と訊かれた。俺は後ろの席のクラスメイトと少し会話をしただけですと答えた。それを聞いた秋尋様は、どこか嬉しそうにしていた。
俺に友人ができることが、面白くないのかもしれない。
たとえそれが使用人に対する独占欲だとしても、震え上がるほど嬉しかった。
一生友人などいなくてもいい。俺には貴方さえいれば。
……とはいえ、近衛家の使用人として、友好的に近づいてくる相手を拒むのはよろしくない。人脈を広げておけば、それがいずれ秋尋様の役に立つこともあるだろうしな。
まだ見ぬ友人像を思い描いてみたけれど、欠片も想像できなかった。
制服を着たからといって何が変わるわけでもなく、いつもと違うのは小松さんの質問くらいで、普通に屋敷へついた。
秋尋様は部屋に戻り、俺は掃除の手伝いと勉強と、あとはボディーガードであるための鍛錬。
お屋敷には運動をするためのトレーニングルームがあり、働いている人は自由に使っていいことになってる。
たまに本職ボディーガードの方もここを利用していて、その時は体術などを色々教わっている。今日は残念ながら誰もいなかったので、一人で基礎体力作りに励んでいた。
いつもの通り筋力トレーニングをしていると、珍しく秋尋様がやってきた。
二人きりになれるのが嬉しくて、手のひらを返したように、誰もいなくて良かったなぁと思った。
「どうしたんですか、秋尋様」
「別に……」
「一緒に軽く運動しますか? 健康にいいですし」
「僕も鍛えようかな……」
「えっ!? 秋尋様はそんなに鍛えなくてもいいんです。私がお護りするんですから!」
「僕はお前に護ってほしいなんて、一言も言ってない」
しまった。せっかくきてくれたのに、機嫌を損ねた。もうちょっと話していたいのになあ。部屋に帰っちゃうかなあ。なんとかして気を引けないかな……。
「申し訳ありません。ただの、私の我が儘なのです。貴方をお護りするのは私がここにいるために、必要なことだと思えるので」
本当は違う。俺が貴方を好きすぎるからだ。傷のひとつもつけたくない。貴方に何かあったら、きっと生きてはいけない。
それと、もうひとつ。もし俺が……貴方を庇って死ぬほどの怪我を負ったら、貴方は一生俺に縛られてくれるかもしれない。そんな、病んでいるような感情もある。
けど、できれば隣を歩いていたいから、そうならないために身体を鍛えている。
「まあ、お前はただの使用人だからな」
「そうです。私は秋尋様の使用人です。手足のようにお使いくださればいいんです。貴方はその唇で、ひとつ命じるだけでいい」
「……ッ。お前は、何故そんな台詞を、そんなに嬉しそうに言うんだ」
「貴方にお仕えすることが、私の幸せですから」
あ……。赤くなった。可愛すぎて死んでしまいそうだ。
貴方を好きすぎてどうしようもない男の前で、その表情は反則です。
「もう部屋に戻る」
「お供します」
「いい。ついてくるな」
「何かあったら大変ですから」
「家の中で何が……ッ!?」
「あ、危ない!」
足を滑らせて背中から倒れそうになる秋尋様の身体を抱き留めて、そのままヒョイッとすくいあげた。
無事でよかったし、お姫様抱っこもできてホクホクだ。
「ほら、こういうことがあるといけませんから」
「な、何を……。降ろせっ!」
「せっかくですから、部屋までこうして運びましょうか、お姫様」
秋尋様の体温が手の平に……。はあ、幸せ。なんか暴れてるけど、鍛えてる俺に敵うものか。さっさと移動してしまおう。
背は残念ながら俺のほうが低いから少しきまらないけど、こうしていればご尊顔も近くに見える。
「何がお姫様だ。お前のほうが姫みたいな顔をしているくせに」
「嬉しいですね。秋尋様から見て、私はそんなに可愛いですか?」
可愛いですよね。女の子と間違えてプロポーズしたくらいなんですから。
貴方の中では思い出したくない過去に分類されてるかもしれませんが、俺は一生忘れません。
「お前があの頃から私なんて言っているから、勘違いしたんだ。それだけだからな」
「ああ、秋尋様の使用人になりたくて、子供ながらに頑張ってましたから」
しかし、可愛いのほうを否定してこないとは……。どうしたんだ、今日の秋尋様はいつにも増して可愛らしいな。熱でもあるんじゃないだろうか。そういえば身体も熱い気がする。
もっと熱烈にしがみついてくれないかなあ。
「あっ」
「わっ……!」
少し手を緩めて落とすフリをすると、秋尋様が反射的にギュッとしてくれた。
至福すぎる……。
「やっぱりお前にはきついんだろう。ほら、早く降ろせ!」
したり顔な秋尋様も可愛い。俺がわざとやったなんて微塵にも思ってないんだろう。
「大丈夫ですよ。もう部屋も見えてきましたし」
俺は足早に部屋へ近付いて、片手で秋尋様を支えながらドアを開けた。
「……お前の筋力はどうなっているんだ」
「秋尋様のために鍛えてますから」
部屋へ入って、ベッドへそっと下ろしてから足首を確認する。
「ひねってはいないようですね」
白い、綺麗な足。今朝叱られたばかりだけど、舐めたい。足だけじゃなくって、もっと……。
命令してくれれば、俺、貴方の身体中どこだって、ただひたすら舐め続けてあげるのに。
なんとかして少しでも、性的な方向に話をもっていけないだろうか?
もし好きだと告げて、使用人でいられなくなるのは困るから、できれば今の関係のまま、おこぼれをいただきたい。
「あの、秋尋様……」
「なんだ」
「自慰をしたことはありますか?」
「……!? なっ、何を言って……」
「今日クラスメイトが話していたのですが、私にはよくわからず……。秋尋様ならお詳しいのではないかと」
「なんで僕が、詳しいだなんて思うんだ! 知るか、そんなこと!」
俺の真意も知らずに赤くなる秋尋様。
でもそんなに真っ赤になるってことは、それがなんのことだかはわかってるってことだ。
やっぱり秋尋様も、一人でシテいるのか……。ああ、一度でいいから見てみたい……。
「知らないのですか?」
「し……知らない」
「したことも……ないと」
「ない……っ」
「では……少し、教わってはきましたので……一緒に、試してみませんか?」
「一緒にって……」
焦る姿が可愛らしくて、暴走しそうなのを抑えるのが大変だ。
叱られる分にはかまわない。この気持ちさえばれなければ。
「ここを、擦るらしいんですが、どうですか?」
服の上からやんわりと撫でると、秋尋様がびくびくと身体を震わせた。
「……ッ。待て! その……本当に、したことが……ないんだ」
「え……」
中3なのに? それはないだろう。でも、嘘をついているようには見えない。本当に、したことがないのか……。
確かに秋尋様は清らかそうだなぁと思ってはいたけど、曇った俺の目による願望かと。それがまさか、本当に?
まずい。凄く、興奮してきた。
「大丈夫です。私も初めてですから」
こういうことに、興味がないはずがない。したことなくても、知識としてあるようだし。
触りたい。少しでいいから、気持ちよさそうな顔が見たい。俺の手で、気持ちよくしてあげたい。
「秋尋様……」
そっとベッドに乗り上げて、ゆっくりと薄い胸に顔を埋めた。嘘みたいに、早い心音を刻んでいた。
こういう時は自分の容姿に感謝したい。こうして甘えるように縋っていれば、そんなに警戒もされず、恐怖心も与えずに済むだろうから。
まだ多少理性は残っていて、秋尋様が突き飛ばしてくれたら、やめるつもりだった。
でも、秋尋様は彫像のように固まってしまって動かない。
未知の快楽を知りたい、という気持ちもどこかにあるんじゃないか。そう思った段階で、俺の躊躇いはなくなった。
こんな据え膳、早々捨てておけるものか。ほんの少しでいいから、貴方に触れたい。
ズボンの中に手を滑らせるだけで、秋尋様の身体がびくりと跳ねる。
着替えさせているんだから、裸なんて何度も見ているのに、今、物凄く見たくてしかたない。
指が、震えそうだ。秋尋様のに触ったら、俺、それだけでイケるかもしれない。凄く興奮してる。
「んっ……。朝香……ッ」
ゆっくり触れると、秋尋様が切なげな声で俺の名前を呼んだ。
やばい……やばい、やばい。可愛い。暴走しそう……。
「秋尋様……」
最後までなんて、しなくていい。でも、抱きしめたい。好きだって囁きたい。好きだからこういうことをしているんだって、貴方に伝えたい。
でもそれを言ってしまえばきっと貴方は拒むだろう。触る口実ができるのなら、俺は性欲処理の道具だってかまわないんだ。
「……やめろ。離せッ……!」
けど、一回上下にゆうるりと擦っただけで、秋尋様はあっさりと俺を突き飛ばした。
青ざめて震えるその顔に、自分が酷いことをしたような気分になってくる。
……秋尋様、泣きそう。涙がこぼれたら、舐め取ってあげたい。
性に興味のある年頃だろうに、こんなにアッサリ嫌がるなんて、俺……本当は相当嫌われてるのかな。それともやっぱり男だから、ダメなのかな。
「性教育みたいなものだと、割り切ってしまえばいいのに」
「お前に教わりたくない」
「……申し訳、ありませんでした。出過ぎた真似をしました」
そう言われて引くだけの理性は、まだ残っていたらしい。
秋尋様に要らないと言われるのが怖いから、秋尋様の拒否の声を聞けば俺はいくらだって自分の気持ちも身体も押し殺せる。
「なら、いつか……秋尋様が私に、教えてくださいますか?」
「なんで僕が、お前に教えなきゃならないんだ」
「年上だからでしょうか」
「そ、そうか。なら……しかたないな」
納得しちゃうんだ、そこで……。可愛いなあ……。
「でも、お前にはまだ早い」
別に早くはないと思うんだけど。特に秋尋様は遅いほうだと思う。
本当に初めてなら、快感が怖かったのかも。俺は初めて一人でした時、あまり怖いとか思わなかった。もしこれを擦っているのが秋尋様だったらと考えると、たまらなくて。
想像でしかできないんだから、想像くらいは自由にしたい。
「わかりました。では、私は下がりますね。また明日の朝、起こしにまいります」
「……いい。来なくていい」
「秋尋様」
まいったな。よほどショックだったのか。でも、さっきは青ざめていたのに今は頬を少し染めて、目元を熱く潤ませてて、なんだか……。凄く、えっちだ。
抱きしめて、その唇にキスしたい。さっきは腕の中に秋尋様の体温を感じられて、死ぬほど幸せだった。
俺、本当に貴方が好きでたまらない。貴方が俺のものじゃなくても、俺はずっと……ずっと、貴方のものです。
だからそんな顔、しないでください。無理矢理にでも奪いたくなるでしょう? 今のすべてを投げうってでも。
少しだけ近づこうとすると、秋尋様は俺を拒むように震えた。
俺は溜息をひとつついて、頭を下げてから部屋を出た。
出て、ドアに背をつけて二度目の溜息。今度は吐いた息が酷く熱かった。
……なんか、今更だけど、凄いことをしてしまった。
自慰をしたことがないって言ってたけど、本当なのかな?
秋尋様自身も知らない快感を、俺が教える。熱を手に感じる。舐めて味わうことができる。
想像しただけで、身体がまずい。立っていられなくなりそうだ。
後ろのドアに秋尋様の気配を感じながら扱いたら絶対に気持ちいいだろうけど、もし誰かに見られたら間違いなく俺の使用人生命が終わる。
俺は急いでトイレへ駆け込んだ。
ズボンを下ろして、さっきの秋尋様を思い浮かべる。
黒い髪、黒い瞳。不安気に俺を見て、指が肌に触れただけで怯えた表情をして……。
それに俺、この手で秋尋様のモノに触れたんだ……!
「っ……あ」
同じ手で自分の熱を擦れば、それだけで先端からトロトロと蜜が溢れた。ぬめりを全体に広げるようにして擦る。くちゅ、というやらしい水音がトイレ内に響く。
凄い……。ああ……、ここを、秋尋様のと擦り合わせたい。あの身体を柔らかい豪奢なベッドに押し付けて奥まった場所に打ち付けたい。
「は……あ、あッ……」
もう片方の指先で、俺は自分の唇をなぞる。舌で湿らすように、唇を舐めてから指先を口に含んだ。
初めは……キスしてる気分になれるかなと思ったけど、気づけば秋尋様の熱をしゃぶる妄想へと変化していった。
やばい。凄く気持ちがいい。秋尋様はこの快感を本当に知らないのか……? 教えてあげたい……。とびきり気持ち良くしたら、身体から落ちてくれないだろうか。好きなんだと錯覚してくれないだろうか。
貴方がひとつ望めば、俺は足だって簡単に開くし、お尻の穴だって足の裏だって喜んで舐めるし、本当になんだって……してあげるのに。
結婚できなくても、俺が男でも、あの日までのように俺を好きになってはくれませんか?
貴方の笑顔と優しさが、頭の中から離れません。離すつもりも、ないけれど。
俺に友人ができることが、面白くないのかもしれない。
たとえそれが使用人に対する独占欲だとしても、震え上がるほど嬉しかった。
一生友人などいなくてもいい。俺には貴方さえいれば。
……とはいえ、近衛家の使用人として、友好的に近づいてくる相手を拒むのはよろしくない。人脈を広げておけば、それがいずれ秋尋様の役に立つこともあるだろうしな。
まだ見ぬ友人像を思い描いてみたけれど、欠片も想像できなかった。
制服を着たからといって何が変わるわけでもなく、いつもと違うのは小松さんの質問くらいで、普通に屋敷へついた。
秋尋様は部屋に戻り、俺は掃除の手伝いと勉強と、あとはボディーガードであるための鍛錬。
お屋敷には運動をするためのトレーニングルームがあり、働いている人は自由に使っていいことになってる。
たまに本職ボディーガードの方もここを利用していて、その時は体術などを色々教わっている。今日は残念ながら誰もいなかったので、一人で基礎体力作りに励んでいた。
いつもの通り筋力トレーニングをしていると、珍しく秋尋様がやってきた。
二人きりになれるのが嬉しくて、手のひらを返したように、誰もいなくて良かったなぁと思った。
「どうしたんですか、秋尋様」
「別に……」
「一緒に軽く運動しますか? 健康にいいですし」
「僕も鍛えようかな……」
「えっ!? 秋尋様はそんなに鍛えなくてもいいんです。私がお護りするんですから!」
「僕はお前に護ってほしいなんて、一言も言ってない」
しまった。せっかくきてくれたのに、機嫌を損ねた。もうちょっと話していたいのになあ。部屋に帰っちゃうかなあ。なんとかして気を引けないかな……。
「申し訳ありません。ただの、私の我が儘なのです。貴方をお護りするのは私がここにいるために、必要なことだと思えるので」
本当は違う。俺が貴方を好きすぎるからだ。傷のひとつもつけたくない。貴方に何かあったら、きっと生きてはいけない。
それと、もうひとつ。もし俺が……貴方を庇って死ぬほどの怪我を負ったら、貴方は一生俺に縛られてくれるかもしれない。そんな、病んでいるような感情もある。
けど、できれば隣を歩いていたいから、そうならないために身体を鍛えている。
「まあ、お前はただの使用人だからな」
「そうです。私は秋尋様の使用人です。手足のようにお使いくださればいいんです。貴方はその唇で、ひとつ命じるだけでいい」
「……ッ。お前は、何故そんな台詞を、そんなに嬉しそうに言うんだ」
「貴方にお仕えすることが、私の幸せですから」
あ……。赤くなった。可愛すぎて死んでしまいそうだ。
貴方を好きすぎてどうしようもない男の前で、その表情は反則です。
「もう部屋に戻る」
「お供します」
「いい。ついてくるな」
「何かあったら大変ですから」
「家の中で何が……ッ!?」
「あ、危ない!」
足を滑らせて背中から倒れそうになる秋尋様の身体を抱き留めて、そのままヒョイッとすくいあげた。
無事でよかったし、お姫様抱っこもできてホクホクだ。
「ほら、こういうことがあるといけませんから」
「な、何を……。降ろせっ!」
「せっかくですから、部屋までこうして運びましょうか、お姫様」
秋尋様の体温が手の平に……。はあ、幸せ。なんか暴れてるけど、鍛えてる俺に敵うものか。さっさと移動してしまおう。
背は残念ながら俺のほうが低いから少しきまらないけど、こうしていればご尊顔も近くに見える。
「何がお姫様だ。お前のほうが姫みたいな顔をしているくせに」
「嬉しいですね。秋尋様から見て、私はそんなに可愛いですか?」
可愛いですよね。女の子と間違えてプロポーズしたくらいなんですから。
貴方の中では思い出したくない過去に分類されてるかもしれませんが、俺は一生忘れません。
「お前があの頃から私なんて言っているから、勘違いしたんだ。それだけだからな」
「ああ、秋尋様の使用人になりたくて、子供ながらに頑張ってましたから」
しかし、可愛いのほうを否定してこないとは……。どうしたんだ、今日の秋尋様はいつにも増して可愛らしいな。熱でもあるんじゃないだろうか。そういえば身体も熱い気がする。
もっと熱烈にしがみついてくれないかなあ。
「あっ」
「わっ……!」
少し手を緩めて落とすフリをすると、秋尋様が反射的にギュッとしてくれた。
至福すぎる……。
「やっぱりお前にはきついんだろう。ほら、早く降ろせ!」
したり顔な秋尋様も可愛い。俺がわざとやったなんて微塵にも思ってないんだろう。
「大丈夫ですよ。もう部屋も見えてきましたし」
俺は足早に部屋へ近付いて、片手で秋尋様を支えながらドアを開けた。
「……お前の筋力はどうなっているんだ」
「秋尋様のために鍛えてますから」
部屋へ入って、ベッドへそっと下ろしてから足首を確認する。
「ひねってはいないようですね」
白い、綺麗な足。今朝叱られたばかりだけど、舐めたい。足だけじゃなくって、もっと……。
命令してくれれば、俺、貴方の身体中どこだって、ただひたすら舐め続けてあげるのに。
なんとかして少しでも、性的な方向に話をもっていけないだろうか?
もし好きだと告げて、使用人でいられなくなるのは困るから、できれば今の関係のまま、おこぼれをいただきたい。
「あの、秋尋様……」
「なんだ」
「自慰をしたことはありますか?」
「……!? なっ、何を言って……」
「今日クラスメイトが話していたのですが、私にはよくわからず……。秋尋様ならお詳しいのではないかと」
「なんで僕が、詳しいだなんて思うんだ! 知るか、そんなこと!」
俺の真意も知らずに赤くなる秋尋様。
でもそんなに真っ赤になるってことは、それがなんのことだかはわかってるってことだ。
やっぱり秋尋様も、一人でシテいるのか……。ああ、一度でいいから見てみたい……。
「知らないのですか?」
「し……知らない」
「したことも……ないと」
「ない……っ」
「では……少し、教わってはきましたので……一緒に、試してみませんか?」
「一緒にって……」
焦る姿が可愛らしくて、暴走しそうなのを抑えるのが大変だ。
叱られる分にはかまわない。この気持ちさえばれなければ。
「ここを、擦るらしいんですが、どうですか?」
服の上からやんわりと撫でると、秋尋様がびくびくと身体を震わせた。
「……ッ。待て! その……本当に、したことが……ないんだ」
「え……」
中3なのに? それはないだろう。でも、嘘をついているようには見えない。本当に、したことがないのか……。
確かに秋尋様は清らかそうだなぁと思ってはいたけど、曇った俺の目による願望かと。それがまさか、本当に?
まずい。凄く、興奮してきた。
「大丈夫です。私も初めてですから」
こういうことに、興味がないはずがない。したことなくても、知識としてあるようだし。
触りたい。少しでいいから、気持ちよさそうな顔が見たい。俺の手で、気持ちよくしてあげたい。
「秋尋様……」
そっとベッドに乗り上げて、ゆっくりと薄い胸に顔を埋めた。嘘みたいに、早い心音を刻んでいた。
こういう時は自分の容姿に感謝したい。こうして甘えるように縋っていれば、そんなに警戒もされず、恐怖心も与えずに済むだろうから。
まだ多少理性は残っていて、秋尋様が突き飛ばしてくれたら、やめるつもりだった。
でも、秋尋様は彫像のように固まってしまって動かない。
未知の快楽を知りたい、という気持ちもどこかにあるんじゃないか。そう思った段階で、俺の躊躇いはなくなった。
こんな据え膳、早々捨てておけるものか。ほんの少しでいいから、貴方に触れたい。
ズボンの中に手を滑らせるだけで、秋尋様の身体がびくりと跳ねる。
着替えさせているんだから、裸なんて何度も見ているのに、今、物凄く見たくてしかたない。
指が、震えそうだ。秋尋様のに触ったら、俺、それだけでイケるかもしれない。凄く興奮してる。
「んっ……。朝香……ッ」
ゆっくり触れると、秋尋様が切なげな声で俺の名前を呼んだ。
やばい……やばい、やばい。可愛い。暴走しそう……。
「秋尋様……」
最後までなんて、しなくていい。でも、抱きしめたい。好きだって囁きたい。好きだからこういうことをしているんだって、貴方に伝えたい。
でもそれを言ってしまえばきっと貴方は拒むだろう。触る口実ができるのなら、俺は性欲処理の道具だってかまわないんだ。
「……やめろ。離せッ……!」
けど、一回上下にゆうるりと擦っただけで、秋尋様はあっさりと俺を突き飛ばした。
青ざめて震えるその顔に、自分が酷いことをしたような気分になってくる。
……秋尋様、泣きそう。涙がこぼれたら、舐め取ってあげたい。
性に興味のある年頃だろうに、こんなにアッサリ嫌がるなんて、俺……本当は相当嫌われてるのかな。それともやっぱり男だから、ダメなのかな。
「性教育みたいなものだと、割り切ってしまえばいいのに」
「お前に教わりたくない」
「……申し訳、ありませんでした。出過ぎた真似をしました」
そう言われて引くだけの理性は、まだ残っていたらしい。
秋尋様に要らないと言われるのが怖いから、秋尋様の拒否の声を聞けば俺はいくらだって自分の気持ちも身体も押し殺せる。
「なら、いつか……秋尋様が私に、教えてくださいますか?」
「なんで僕が、お前に教えなきゃならないんだ」
「年上だからでしょうか」
「そ、そうか。なら……しかたないな」
納得しちゃうんだ、そこで……。可愛いなあ……。
「でも、お前にはまだ早い」
別に早くはないと思うんだけど。特に秋尋様は遅いほうだと思う。
本当に初めてなら、快感が怖かったのかも。俺は初めて一人でした時、あまり怖いとか思わなかった。もしこれを擦っているのが秋尋様だったらと考えると、たまらなくて。
想像でしかできないんだから、想像くらいは自由にしたい。
「わかりました。では、私は下がりますね。また明日の朝、起こしにまいります」
「……いい。来なくていい」
「秋尋様」
まいったな。よほどショックだったのか。でも、さっきは青ざめていたのに今は頬を少し染めて、目元を熱く潤ませてて、なんだか……。凄く、えっちだ。
抱きしめて、その唇にキスしたい。さっきは腕の中に秋尋様の体温を感じられて、死ぬほど幸せだった。
俺、本当に貴方が好きでたまらない。貴方が俺のものじゃなくても、俺はずっと……ずっと、貴方のものです。
だからそんな顔、しないでください。無理矢理にでも奪いたくなるでしょう? 今のすべてを投げうってでも。
少しだけ近づこうとすると、秋尋様は俺を拒むように震えた。
俺は溜息をひとつついて、頭を下げてから部屋を出た。
出て、ドアに背をつけて二度目の溜息。今度は吐いた息が酷く熱かった。
……なんか、今更だけど、凄いことをしてしまった。
自慰をしたことがないって言ってたけど、本当なのかな?
秋尋様自身も知らない快感を、俺が教える。熱を手に感じる。舐めて味わうことができる。
想像しただけで、身体がまずい。立っていられなくなりそうだ。
後ろのドアに秋尋様の気配を感じながら扱いたら絶対に気持ちいいだろうけど、もし誰かに見られたら間違いなく俺の使用人生命が終わる。
俺は急いでトイレへ駆け込んだ。
ズボンを下ろして、さっきの秋尋様を思い浮かべる。
黒い髪、黒い瞳。不安気に俺を見て、指が肌に触れただけで怯えた表情をして……。
それに俺、この手で秋尋様のモノに触れたんだ……!
「っ……あ」
同じ手で自分の熱を擦れば、それだけで先端からトロトロと蜜が溢れた。ぬめりを全体に広げるようにして擦る。くちゅ、というやらしい水音がトイレ内に響く。
凄い……。ああ……、ここを、秋尋様のと擦り合わせたい。あの身体を柔らかい豪奢なベッドに押し付けて奥まった場所に打ち付けたい。
「は……あ、あッ……」
もう片方の指先で、俺は自分の唇をなぞる。舌で湿らすように、唇を舐めてから指先を口に含んだ。
初めは……キスしてる気分になれるかなと思ったけど、気づけば秋尋様の熱をしゃぶる妄想へと変化していった。
やばい。凄く気持ちがいい。秋尋様はこの快感を本当に知らないのか……? 教えてあげたい……。とびきり気持ち良くしたら、身体から落ちてくれないだろうか。好きなんだと錯覚してくれないだろうか。
貴方がひとつ望めば、俺は足だって簡単に開くし、お尻の穴だって足の裏だって喜んで舐めるし、本当になんだって……してあげるのに。
結婚できなくても、俺が男でも、あの日までのように俺を好きになってはくれませんか?
貴方の笑顔と優しさが、頭の中から離れません。離すつもりも、ないけれど。
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さいとう みさき
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