お喚びでしょうか、ご主人様

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さよなら(R15

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 失われた少年時代を取り戻すかのように、小学校へ通う日々が続いた。美少女としてだけど。
 ちえちゃんという友達がいること、ルルが傍にいてくれることが勇気の後押しとなって、上手く振る舞えていると思う。やや天然扱いされているのは、まあ本当の小学生ではないから仕方ない。
 小学生……楽しいことは楽しいんだけど、凄く疲れる。最初はロリショタに囲まれて幸せだった。しかしながら、精神年齢が違いすぎて疲れのほうが先にきた。どうせ手を出せないなら、やっぱり2次元最強だなって。
 本当、子供っていろんなことが唐突すぎてよくわからない……。
 ルルにそれを話したら、ご主人様の行動に似ていますが、と辛辣な台詞を吐かれた。
 もしかして、ルルから見ると僕ってこんななのか。

 僕は毎日をずっとだらだらと過ごしていたから、小学生がこんなに忙しくて大変って初めて知った。今までグータラしすぎてただけってのもあると思うけど。
 ランドセルを背負って帰ればルルがご飯を用意してくれるし、夜は寝かしつけてくれる。まるで親子にでもなったみたい。この場合、ルルは母親役?
 引きこもってばかりで、こんな生活を送ったことなんてないはずなのに、なんだか妙に懐かしい。
 流されるまま、ホンモノの小学生になってしまうんじゃないか……。そう思い始めた頃、変化が起こった。




「タツコちゃん、おはよう!」

 なめらかな挨拶だったから、僕は初めそれがちえちゃんから発せられたものだと気づかなかった。

「ちえちゃん、声……」
「うん。朝起きたら治ってたの。もう普通に話せるの!」
「そっかあ」

 ちえちゃんの目元が潤んでいる。僕も泣けてきた。何これ奇跡? こんな、唐突に治るものなのか。きっかけというなら、僕という友達ができて前向きになったこと。それとも、ルルが何か……。

「ちえ、わかってるから」
「え? 何を……」

 ほっぺに、ちゅっとキスされた。

「ありがと、カミサマ!」

 神様。僕が。ちえちゃんの、神様……。
 こんな僕でも、人の役に立つことができた。

 良かったね、ちえちゃん! って、一緒にはしゃいで笑いたい。でも、出るのは嗚咽ばかりだ。
 意識がどろどろにとける。妙な浮遊感と共に、目の前が真っ暗になった。




 次に気づいた時、僕は真っ白なベッドに寝ていた。薄い消毒薬みたいな匂いがする……。

「ルル……」

 名前を呼んだのは、ほぼ無意識だった。それしか出てこなかった。

「お喚びでしょうか、ご主人様」

 だから、ポッと枕元に出てこられた時は、名前を呼んでおきながら凄く驚いてしまった。
 でも、昨日の失敗は繰り返さない。ルルは僕が呼んでないって言ったらあっさり踵を返しやがるから。

「うん。呼んだ」

 今度はきちんと、意思を伝える。まあ実際呼んだし……。

「何かご用でしょうか」
「えっ」

 そこまで考えてなかった。言葉を詰まらせた僕に、ルルも不思議そうにしている。

「用がなかったら呼んじゃダメなの?」
「いいえ。ですが、貴方が用もなく私を呼ぶとは思いませんでしたので……」

 これは、ぽそりと名前を呟いただけでも現れてくるな。迂闊に独り言も言えないじゃないか。
 というか、用はないけど訊きたいことならあった。

「ここ、どこ?」

 普通に会話してたけど、本来まず一番先に気になることだよな。僕、テンパりすぎかよ。そもそもルルが突然現れるから。
 あと、一応尋ねてはみたけど、なんとなく予想はついていた。

「保健室です」
「だよね。でも、僕どうして……? 倒れたの?」
「はい」
「幸せになった分だけ、僕の魂を削ったからとか?」
「そんなに器用なことはできません。単に、力の使いすぎでしょう」

 まさか、毎日の疲れがたまりすぎて倒れたのか!?
 小学生たちとキャッキャウフフできる興奮で、疲れてることに気づいてなかったとか。

「暗示をかけた時も、翼を生やした時もご主人様のイメージを借りたと思うのですが」
「それ僕の体力も消費するのかよ……」

 体力というより、多分魔力的な? 僕にそんなのがあるかわかんないけど。
 倒れたのは地獄の筋肉痛のかわりなのかも。

「そうだ。ちえちゃん、吃りが治ったって! あれって、ルルの力だったりする?」
「はい」
「無理だって言ってたじゃん」
「前は無理だったのです。貴方の強い願いが蓄積されて、可能になりました」

 ようやく、話の流れが掴めた。
 僕の力を借りてちえちゃんを治したせいで、僕は倒れてしまったのだと。
 僕自身に何かした自覚はないのだけれど、実際にちえちゃんは治ったし僕は倒れた。ルルも心なしか疲れてそうに見える。

「そっか、良かった……。ほんとに治ったんだ」

 僕の魂も削られてなくて良かった。でもその日は、順調に近づいていそうだな。

「あ! そ、そういえば、僕ちえちゃんに、カミサマとか言われたんだけど」
「子供は感覚が変に鋭かったりしますから。さすがに貴方が元の姿に見えていることはないと思いますが、何かしら気づいているのかもしれません」

 もし元の姿に見えていたら明らかに変質者。ロリショタに混じって体育を頑張るアラサーとか笑えない。ちえちゃんも悲鳴をあげるよね。だからそこは平気だと思いたい。

「僕、初めて会った時に神様が見えるとか言っちゃったしな……」
「そして貴方に会ってからすべてが好転した。彼女にとって、貴方は神にも等しいのでしょう」
「もしかするとクラスメイトって暗示は上手くかかってないのかな?」
「他の方と違って縁がありますから、その可能性は高いです」

 何故かクラスに馴染んでいる僕のことを、不思議に思っていたのかもしれない。でも、人とは違うものだと思っていたから、何も言わなかった、とか。
 ……さしずめ、トイレの神様かあ、僕。どうせなら、もう少しかっこいい感じが良かったな。

「去るならば、このタイミングが一番だと思いますが、いかがいたしましょう」
「え……」
「彼女を……ちえちゃんを治して、役目を終えたから消えるのだと」

 ずっとこのままではいられない。わかってたのに、胸にぽっかりと穴が空いたような気分。かといって、小学校生活を続けたいかと問われれば答えはノーだ。

「少し、寂しいね」
「半年くらいは、存分に通われますか?」
「ううん。いいよ、終わろう」
「では本日が最後の小学校生活になりますね」

 そうか。明日からは小学校へ通わなくていいのか。何もおかしくない。僕はオッサンなのだから。

「今何時かな? 最後の授業、うけてくるよ」
「もう放課後です」
「えっ!?」

 そんなに寝てたのか。
 ……じゃあ、本当にこれで最後? みんなに……ちえちゃんにも、会わずに?

「明日は登校して、自分の口から皆さんに別れを告げますか?」

 湿っぽいのは苦手だ。後ろ髪は引かれるけど……。

「未練が残りそうだから、やめとく。僕も今日のこのタイミングが最適だと思うよ」
「ちえちゃんにだけ、会いますか? 家に行くとか、枕元に立つとか」
「枕元って幽霊かよ。ここは綺麗に神様としてサヨナラするのがベストでしょ」

 元々、どこかで区切りをつけなきゃいけなかった。それが今日になっただけ。
 ちえちゃんの吃りが治ったと同時に消えるなんて、ルルも言っていたけどいいタイミングだ。
 初めての友達は奪ってしまうけど……こじらせている僕と違って、きっとすぐに新しい友達ができる。そして僕のことなんて、忘れていくんだ。子どもの頃にあった、夢かもしれない少し不思議なできごとにされちゃうかも。

「ご主人様にとっても、お友達がいなくなることに」
「いいの! 僕には、ルルも……いるし」
「ご主人様」
「ほら、帰ろ。夜はあれ作ってよ」
「オムライス、ですね」
「……うん」

 綺麗な黄色の卵の上にはまた可愛らしいハートマークが書いてあるかな。味も申し分なく美味しいだろうけど……。今日はちょっぴり、塩からいかもしれない。ちょっとだけね。




 オムライスを食べてお風呂に入っていつものようにゲームして、夜は膝枕で耳かきをしてもらう。前までなら絶対、ルルが大きい日には頼まなかっただろうな。
 頻繁に耳かきしたらいけないっていうけど、僕にとってはかなり幸せな時間なので、つい頼んでしまう。
 まあ……。どうせ、長生きはできないんだろうから、身体にいい悪いは関係ないし。
 もこもこしたほうで穴の中をくすぐられて、はうんと妙な声をあげそうになる。

「ちえちゃんさ、これから幸せになれるかな」
「貴方がそう望めば、きっと」
「僕がいなくなったこと、少しは寂しく思ってくれるかな」
「寂しいのもそうですし心細さもあるでしょう」
「だよね……」
「やはり、明日も行きますか?」
「う、ううん。さよならするなら小さいうちのほうがいいと思うし……」

 ルルに頼めば、彼女の今後を報告してもらうこともできるだろうけど。それはなんだか、違う気がした。

「だから、明日はルルと……」
「私と?」

 二人っきりだよなあ。って今更何を言ってるんだ、僕は。別に今だって二人でいるんだし、わざわざ言うことでもない。
 いや、明日は小さいから。明日は、小さいルルちゃんと二人だから、改めてしみじみそう思っただけで。別に他意は。

「ゆっくりできるね」
「確かに、最近は毎日せわしなかったですから」

 ルルが僕の髪を優しく撫でる。身体に覚えのある感覚が走って、僕は思わず股間を押さえた。
 え。何。なにこれ。たっ……勃っちゃってる。な、な、なんで……!?

「ご主人様?」

 ルルが首を傾げる。僕はルルを見上げる。
 股間を押さえてる状態だし、ルルの位置から僕の身体は丸見え。バレないわけがない。

「こ、これは疲れマラっていって男なら仕方のない状態というか!」
「……今日は、この姿を崩せそうにありませんし、部屋を出ていたほうがよろしいでしょうか」

 そんな気の遣い方されたくないんですけどぉおお! や、自家発電するなら居座られたら確かに気まずいけど! でも、直接的すぎるだろ。用事を思い出したとか、なんか他に言い方が!

「ご主人様、膝をどかしますので、少し浮かせてください」

 焦っている僕に対してルルはいつも通り冷静。
 じっと見つめられて、深く暗い瞳に引き込まれそうになる。
 心臓が物凄い音を立てた。頬が熱を持ち始めて、喉がカラカラになる。下半身はもう、時間経過だけではおさまらないほど硬くなっていた。

「あ……。手を」
「はい」
「手で、してくれないかな。目をつぶっていれば、小さいルルちゃんにされてるって思えるから……」

 ルルが自分の手をじっと見つめた。嫌そうにされると僕のガラスハートが砕け散る。
 子供の姿では何回かしてくれてたのに、今更躊躇うのか。

「かなり、無理がありませんか? 大きさが、全然……」
「ですよねー!」

 でも良かった。すること自体が嫌なわけじゃなかった。
 ……もちろん、僕に尽くすのは仕事であって否と言えないだけっていうのは理解してるつもりだけど。

「それでもいいから」
「……はい」
「うん」

 今までも、えっちの途中で大きなルルになってしまうことは度々あった。でも、初めからそれでもいいよって言うのは、今日が初めてだ。
 見た目で言うなら今のほうが断然普通で背徳感もないのに、どうしてかいつもより興奮する。
 やっぱり僕はショタコンではないのか……。さよなら僕のアイデンティティー。
 ……否。単に大人も実はイケたってだけで、この場合は守備範囲が広いというのだ。
 男も女も子供もとか広すぎって気がしないでもないけど。あ、ある意味、老までカバーしてるのか? ルルの実年齢的には。

「では、失礼します」

 ルルは事務的にそう言って、僕の頭を優しく膝から下ろす。

「目を……つぶっていてください」

 その言い方は、なんだかやらしくていい。
 見ていたい気がしたけど、見てはいけないような気もして、僕はそっと目を閉じた。そもそも目をつぶっていればいいと言い出したのは僕のほうだ。
 ズボンの中に長い指が滑り込む。最初は確認するように触れて、それから少しずつ絡んでいく。
 強めにきゅっと裏を擦ったり、先端を摘まむように撫でたり。僕が小さなルルちゃんに、そこはこうしてってお願いした動きをしてる。
 いつものたどたどしい感じも気持ち良いいんだけど、手が大きいとなんか凄い。うわ、そこまでくるの? みたいな。

「っ……ん、んん」

 手でしてもらってるだけなのに、あられもない声が出そう。
 ……気持ち、いい……。凄い。

「ルル……。手、全体で握って擦って」
「こうですか?」

 大きな手のひらで覆うように擦られて、くまなく刺激される。

「あっ、それ凄い。もう片方で先端グリグリッてして」

 ルルは僕の望むまま、言われた通りに手を動かす。強い快感が全身を満たして、頭の中が真っ白になった。
 いつも早いけど、それより更に早い……。

「っく……」

 ルルの手の中で、白濁を先からポタポタとたらしながら震えるソレ。凄く気持ち良かったから勢いよく出るかと思ったけど、ゆっくり流れ出ている。

「……残り、絞り出すみたいに……触って」
「こうでしょうか」
「あーッ。は……はあ、ヤバ……」

 ルルが相変わらず冷静なのが逆にくる。
 いつもは……ルルちゃんが小さいせいかあまり考えたりしないけど、ルルも自分で自分のをすることってあるんだろうか。

「ありがとう、気持ち良かった! 手、これで拭いて」

 ティッシュを手渡しながらルルの股間をちらっと見てみたけど、興奮してる様子は微塵もない。
 顔を上げるとがっちりと目があった。ルルは少しだけ気まずそうに俯いて、頬を染めた。
 なんだこの、いつになく可愛らしい反応は。

「ご主人様」

 ルルに、押し倒された。荒い息が部屋に響く。
 何これ何これ! ルル、興奮してんの? 身体めっちゃ熱くなってるし、息が荒いし……。

「ルル、もしかして具合悪い?」

 とても、具合が悪そうだった。はあはあと肩で息をしている。

「ぼ、僕が触らせたから?」
「違います。今日は……本当に、力を使いすぎました」

 そうか。ちえちゃんを治したから。
 最初は無理だと言っていたお願いごとだったんだ。僕の力を借りたとはいえ、身体に凄く負担がかかったに違いない。
 それでも僕が望んでいたから、僕のためにやってくれた。

「ごめん、ルル! 落ちこぼれなのに、無理をさせて……!」
「………………」

 僕の言葉がトドメだったかどうかはわからないけど、ルルは僕を押しつぶすようにパッタリと倒れこんでしまった。

 悪魔も風邪を引くのかわからないけど、いつもひんやりしているルルの身体が熱い。
 えっ。本当に具合悪いの? どうしようどうしよう。

 とりあえず、寝かせて布団かけて、タオル濡らして頭に乗せて……。
 抜いた後で気だるい身体と頭ををフル回転させて、思い付く限りの看病らしいことをした。
 冷蔵庫にはリンゴも入っていたけど、包丁とかは使えないから諦めてレモン味のスポーツ飲料だけ持ってきた。

「ルル、これ飲める?」
「あ……。意識を飛ばしていたようですみません。疲れていた身体に何か酷くショックを受けた気がして……」

 落ちこぼれって言うの、もうやめよう……。デリカシーがなくてごめん。
 まだ少しふらふらする足取りで、ルルがベッドから這い出してきた。

「あっ、寝てていいよ」
「いえ。こうなったら普通には回復しません。少し、出てきます」
「出てくって……どこに?」
「この世界の外です。私が元々住んでいた場所へ……」
「実家に帰らせていただくの!?」
「……実家?」

 仕事を放棄するわけじゃないよね。
 ずっと。今までずっと一人だったのに、置いていかれるのが怖い。ルルが僕の傍にいなくなるのがつらい。一人は嫌だ。離れたくない。ルルと一緒にいたい。

「ぼ、僕も連れてって!」
「え……」

 服の裾をぎゅっと掴むと、ルルは冷たい溜め息をついた。さっきまでは酷く熱かったのに。

「無理です」
「なら、もう……魂、抜いてもいいから」

 できないってわかってるのに言った。駄々っ子みたいだと、自分でも思う。

「そうできたなら、どんなにいいか」

 やっぱりルルは、この生活を早く終わらせたがっているんだ。
 でもその割に声は切なくて優しくて、きゅうっと胸に響いた。

「今はまだ時ではありません。もういい大人だというのに、仕方のない人」

 手のひらが、僕の頬を撫でる。ひんやり感じるのは、僕の頬が熱いからかもしれない。

「2日くらいですから。そんなに不安になられなくても大丈夫です」
「2日……」

 短いようで、きっと僕には長い。
 でも、ルルの身体は心配だ。それしかないと言うのなら、引き留めるわけにはいかない。

「待ってるから、なるべく早く帰ってきて」
「はい。ご主人様……今日はこの姿の私に対しても、ずいぶんと好意的なのですね」

 ルルは僕の頭を軽く撫でてから、窓へ向かった。目の前を掠めていく長い髪を掴みたくなる衝動をこらえ、僕はその背を見送った。
 無表情でいられると、まるで今生の別れみたいに思えてくる。別れ際に笑顔くらい、見せてくれてもいいじゃないか。
 だから早く帰ってきて、僕に笑ってみせてよ、ルル。
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