マニアックヒーロー

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パーティーのあとで

黄青・最期に抱く相手(R18

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ブルー視点




 オレの膝で怯える黄原が可哀想で、可愛くて。だが、モモくんの身に何かあったらと思うと気が気ではなくて、このままにしておくわけにもいかないと、とんでもない約束をしてしまった……。



「それじゃ、約束……ですよ」
「あ、ああ。わかった」
「それと、ギンタに意識を移している間……。膝枕、していてくれませんか? 戻った時、青山さんの顔が見られると思えばやる気が出そうだから」
「だが、オレもついて行ったほうがいいのでは」

 こんなに怯えている黄原を一人で行かせるのにも躊躇いがあった。

「あの、それなんですけど……。初めてドラゴンに意識をリンクさせる時は精神の安定のため、信頼できる人が本体の傍にいたほうがいいかもしれません。応援ができるブルーなら適任だと思います」

 というシロさんのアドバイスもあって残ることを決め、オレは横たわった黄原に膝枕をしていた。
 戦っている中、一人だけ安全な場所で待機しているのは、なんだかいたたまれない。気づくとシロさんの姿も消えていた。


 そして幸いにも皆、無事に帰ってきてくれた。
 再開したパーティーも終わり、各々部屋へ戻る。


「約束、覚えてますか」


 黄原とオレは同室だ。部屋に入った途端、息をつく暇もなくそう言われた。
 ギンタはエネルギーを大量に消耗したとかで、満足そうにオレの腕の中で寝ている。
 オレはギンタを抱えたまま、固まっていた。

 色恋には鈍いオレだが、さすがに黄原の気持ちには気づいている。いや、あれだけハッキリ言われて、気づくも気づかないもない。

 思えば最初に、好きになっちゃうかも。と言われた。胸がきゅうっとなるような表情で。
 ほだされた。それに黄原みたいにキラキラとした男が、本当にオレを好きになるとも思えなかった。

 そもそもきっかけは、極限状態の寒さの中、オレと隙間なくくっついていたことにある。
 だから時間が経てば気持ちは薄れていくだろうと……そう、思っていた。

 結果、今、こうなっている。

「覚えているが、その……本当に?」
「もちろん! 僕、怖かったけど青山さんのご褒美が待ってるからって、心を奮い立たせたんですよ?」

 黄原がオレの手からギンタを引き剥がしてベッドに置く。
 ご褒美を貰う準備のためだ。生々しくて足が震えた。

「初めてでもあるまいし、そんなに緊張しなくても」
「は、初めてだ」
「えっ!?」

 この歳になるまで? そう言われたような気がした。
 だが黄原は少し驚いた顔をしたあとは、はにかんで嬉しそうに笑った。

「じゃあ僕、青山さんのハジメテ貰えるんだ。嬉しいなあ」

 眩しい。キラキラしてる。本当に。
 アイドルのような君に、そんな顔をしてもらえるだけの価値は、オレにはないぞ。

 それが好きということなんだろう。だから、嬉しい。わかる。わからないのは、その対象がオレだということだ。

「立ったままします?」
「い、いや、座ろう」
「はい」

 座ったまま動かなくなるオレに、黄原が可愛らしく首を傾げた。

「……青山さん?」
「すまない。その……は、恥ずかしくて」
「ッ……。ああ、もうっ! 可愛すぎでしょ……」
「可愛くないだろ、みっともないだろ」

 ギュッと抱きしめられた。

「可愛いです! 自分からキスするだけで、そんなに恥ずかしがるなんて」
「違う! さすがに、その、キス……することが、そこまで恥ずかしいわけでは」

 ないとも、言えないが。

「じゃあ、何がそんなに恥ずかしいんですか?」
「キスをご褒美にするという事実が恥ずかしい」

 アイドルや美女相手ならともかく、相手はオレだ。
 黄原は己がキスをご褒美にできるスペックだから、これがどれだけ恥ずかしいことかわからないんだろう。
 まあ、赤城なら恥ずかしげもなく、ご褒美にキスしてやるよなどと言いそうだが。ちなみに、言われてもオレにとっては嫌がらせでしかないのだが。

 もちろん自分からなど、とても言い出せない。ご褒美に青山さんからキスしてほしいと黄原に言われたので、叫び出したいのをこらえながら頷いたのだ。

 相手が望んでいるのだとしても、いざとなるとこんなに恥ずかしいものだとは。

「……青山さんは、桃くんがキスしてくれるって言ったら、どうしますか?」
「爆発する……」
「爆発するんですか!?」
「推しが……自分にキスをするなど、現実ではありえない。間違いなく倒れる」
「な、なるほど……? ええと、僕は青山さんがキスしてくれるっていうのが、そんな感じなんですけど」
「爆発するのか?」
「しませんけど……」

 黄原は頬を染め、お人形のような青い目を瞬かせた。
 その瞳は潤んでいて、今にも零れ落ちそうに見えた。

「してくれたら、泣きそうなくらい、嬉しいです」

 なんだかオレが泣きそうになってしまった。
 心臓でも掴まれたみたいに胸がつまる。

 恥ずかしさは消えた。ただ、したいと思った。
 気づけばオレは黄原の肩を引き寄せてキスをしていた。

「……びっくり。あれだけ恥ずかしがってた割には、こんな手慣れたふうに」
「いや、あの、すまない」
「なんで謝るんですか?」

 今のはオレにとって、ご褒美のつもりではなかったからだ。
 そう告げたら期待させることになる。だから、言えなかった。

 黄原はハァーとため息をつきながら、両手で唇を押さえた。

「やっぱり嬉しすぎて、泣きそう」

 キス自体は、実はもう何度もしている。いや、されている。
 猫がじゃれるようにではあるが、押し倒されたり、もっと際どいことまで。
 なのに、オレからキスをしたというだけで、こんなに……こんなに、喜んでくれるのか。

「えっ? なんで青山さんが泣くんですか!? 僕にキスしたの、そんなに罰ゲームみたいだった?」

 頬を拭うと確かに濡れていた。自然に涙が出るのは、推しの初ライブに行って以来のことだ。

「もしそうなら、君にキスをされた時点で泣いている」
「まさか……。青山さんも嬉し泣き?」

 ……愛おしく感じて涙が零れたのだと言ったら、君も同じように泣くのだろうか。

「目にゴミが入った」
「ええー!? この雰囲気で、そんなこと言いますか!?」

 27年生きてきて、ここまで好意的に見られたことがなかったので、少し感動してしまった。
 でもこんなにキラキラした若い男が、オレなんかを好きだと言うのが……信じられないというか、推しに告白されているような気にもなる。身体の底が浮くような感覚がして、落ち着かない。

 ……逃げ出したくなってきた。

「はぁ……。青山さんて本当、自己評価が低すぎですよね」
「この年齢で無職だという男の自己評価が高かったら、それはそれで凄いと思うが」
「言葉にされると、まあそうなんですけど……。青山さんくらい顔がよかったら、ヒモでも余裕でしょうに」
「そんな汚いお金でアイドルを応援できない」

 今の推しはモモくんなので、お金はかかっていないが……もし違う推しが画面の中にできていたら、きっとオレは今こうしていられなかった。

「僕は青山さんに推しがいても気にしません。でも、僕のことも見てほしいです」

 まっすぐで、オレには眩しすぎる。どう考えても釣り合いが取れていない。
 正直オレはアイドルに関しては情熱的だが、その他に関しては消極的なんだ。二人で手をつなぎながら笑う毎日など想像もできない。

「ずるいです。責任とるって言ったのに、逃げ続けて」
「それは……」

 どうせ勘違いで終わると思っていたので、誤算すぎた。

 実際のところ、ときめきはある。優越感も。自分より上だと思う存在に認められて、くどかれて、嫌だと思う人間は少ないだろう。
 だがこれは恋ではない。たとえ恋であったとしても、光り輝く未来のある若者に、陰の世界で生きるオレが応えてはいけないと思う。

「黄原はまだ、未成年だから」
「19ならもうよくないですか? 今日誕生日ですし、断る理由がそれしかないなら、応えちゃいません?」

 軽すぎる。こういうところも若さか。30も手前になればそう簡単に踏ん切りがつけられない。有り体に言えば、手を出すのが怖い。

「忠告したのに同じ部屋を望んだのは青山さんですし、ここは強気でいくべきだと思ってます」

 そう。オマケに責任をとるという言質も取られている。
 言い方は軽いが、完全に黄原のほうに分がある。

 もはや言葉だけでなく距離も近く、オレの身体は少しずつ傾いていく。このままだと背がシーツにつくのは時間の問題。
 握られた手は熱く、強気な言い分とは裏腹に僅か震えていた。

 ……こういう、完璧ではないところが、可愛いだとか愛しいと、思ってしまうんだよな。

 怖いのは……。オレの恋愛経験値が低くて、童貞だから……と、いうこともある。呆れられる未来しか見えない。下手すぎてフられる。
 ヒーローを続けなければいけない今、もしそんなことになったら気まずいどころの騒ぎではない。

「わかった。この騒ぎが片付いたら、考える」
「ダメですよ。だって、死んじゃうかもしれないでしょ?」
「死……」
「そうです。今日の烏丸さんだって、僕がいなかったら確実に死んでましたよ」

 そもそも未来が、無いかもしれない。という……ことか。

「悔いがないようにしたいんです。一度でいいから、好きな人を抱いてみたい」
「だっ……。お、オレが抱かれる側なのか!?」
「えっ? はい」

 そのパターンは考えていなかった。どこに挿れるのかと言えばひとつしかないだろうが、突っ込まれて喘ぐ自分を想像すると目眩がする。

 それに童貞を失う前に処女を失うことになるのは、男としてどうなのか。
 だが、しかし……。オレも男だ。そういうことに、興味がないわけでもない。死ぬ前に経験しておきたい気持ちもある……。そして、抱かれる側であればオレが童貞ということもバレず、フられることもないのでは?

 いや。黄原のことを愛しく思う気持ちはあるが、こんな不純な動機で頷くのはどうだろう……。それに。

「実際に抱こうとしたら、萎えるかもしれないぞ。オレなんて」
「僕のココ、青山さんにだけ反応するんで、貴方が無理なら誰でも無理なんですけど」
「そ、そうか……」
「別に最後までできなくてもいいです。ただ、青山さんに、色々したい。あと、好きになってほしいし、好きって言ってほしい」

 頬を染めながら、真摯に訴えてくる。凶悪なくらい、可愛い。
 オレは女性アイドルが好きだが……実際は女装アイドルだった。そして今の推しはモモくんだ。潜在的に言うなら、男も大丈夫だったのかもしれない。
 推しを前にするのとは少し違う、高揚感。恋というにはまだ淡いが、黄原がこの世の最期に抱く相手としてオレを選んだのなら応えてやりたい。応えてみたい。恋になる瞬間を知りたいとも思う。

「好きだという気持ちを知るために、責任を取るのはありだろうか」
「それって、僕とつきあってくれるってことですか?」
「ああ。初めは形だけの関係でも構わないなら……」
「構いません! 好きになってくれるまでは手を出さないって、誓ってもいいですし」
「えっ」
「えっ?」

 やはりオレのほうが不純だった。好きでもないのにそんなことをしようというのはやはりなしか……。

「あの。形だけの関係って、身体も込みってことで、あってます?」
「そこは重要ではないかと思ったんだが」

 建前のようにおずおずと言い訳してみると、黄原が声にならないような声を飲み込んでオレを押し倒してきた。

「き、黄原?」
「あー、もう……。そういうことを、2人きりの時に、ラブホテルで、ベッドの上で言っちゃうかなあ」
「ラブホテルなのは、ここで暮らしているのだからしかたないだろう」

 でも、そうか。今のは誘ったことに……なるのか?
 ということは、黄原は誘われてくれたのか?

「……本当に、鈍そうですもんね、青山さん。身体からっていうのは、むしろ有りかも」

 何気なく失礼なことを言われている。

 額をぐりぐりと胸元に押し付けられる。柔らかそうな金色の髪はいい匂いがした。まるで目の前にたんぽぽが咲いたみたいだ。

 行き場を失っていた片方の手を背に回し、もう片方の手で頭を撫でてやると嬉しそうに擦り寄せてきた。
 ここまでなら微笑ましいで終わる。だが太ももに押しつけられたそれは、すでに凶悪な成長を遂げていた。
 黄原はオレにしか勃たないと言うが、オレからすると、いつも元気だな……という印象しかない。

「でも、青山さんはいいんですか? その、抱かれる側で……」
「ああ。君が望むほうで……」
「も、もしかして、なっ……慣れてたり、とか?」

 慣れているどころか、正真正銘の童貞だ。

「男とするのは初めてだし、女性とも、そんなに……慣れている……わけではない」

 少しだけ見栄を張ってしまった。

「そうなんですね……。僕、大事にしますから……! 青山さんのこと!」

 黄原の中で何やら美しく処理された気がする。
 ここは言わぬが花で黙っておくか。大事にしてくれるようだし。

 壊れ物でも扱うように触れてくる手のひらが心地好い。
 思えば人からこんなに大切にされたことはなかった。まるで宝石にでもなったような気分だ。

「でも意外です。青山さん、こういうことにもっと抵抗ある人だと思ってました」

 抵抗がないわけではない。実際、赤城に襲われそうになった時は男なんてごめんだと思ったし、身体だけの関係を迫られて拒否した。

 ……黄原だから、いいかと思った。言えば喜ぶだろうが、自分の気持ちがハッキリしないままそう告げるのは良くないことだと、鈍いオレにもわかる。
 いや……。こうなっている時点で、充分期待はさせてるのだから、今更だろうか。

「オレも男だからな。興味はあるし、黄原の顔は単純に好みだ」
「青山さんの前ではアイドルみたいな決め顔を意識して作ってきたかいがありました」
「そんなことをしていたのか」

 思わずフッと噴出す。
 そのルックスも確かに素晴らしいが、オレが君をいいなと思ったのは、たまに見せる少し情けないところだ。
 オレなんかに好かれようと努力してくれていたのも健気で可愛い。

「シャツ、脱がせますね」
「ああ……」

 これは……。されるがままで大丈夫なのか。いわゆるマグロというヤツになっているのでは。しかし何かしようにも、アラが出そうな気がする。

「黄原」
「んっ?」

 とりあえず顔をこちらに向けさせてキスしてみた。

「びっくりした……。さっきはあんなに恥ずかしかってたのに」
「あれは……。ご褒美にするのが恥ずかしいだけだと言っただろう」
「嬉しいけど、手慣れててちょっと妬けます」

 今のどこに手慣れてる感が……!? さてはコイツも経験が少ないな。
 いや19と張り合うまい。自分が悲しくなるだけだ。

 それに一年ばかり不能だったと言っていたし……。
 そうとは思えないほど勃起しているが……。これも触ってやったほうがいいのか、オレから。

「あ、あの。あまりそこ、ジッと見ないでくれると……」
「すまない。だが見ないと何かしにくい」
「えっ。何かしてくれるんですか?」
「嫌か?」
「いえ。嬉しい……嬉しいんですけど、男の身体見て青山さんが気持ち悪くなったりしないかなって」

 さすがにいきなり下半身に触れるのはハードルが高い。
 下からそっと、腹のあたりを手のひらでぺたりと触ってみた。
 堅くはない。甘いものが好きだと言っていたから脂肪もついているのか、むしろ柔らかかった。
 思わず指先で少し摘むと、黄原はくすぐったそうにオレの手を遮った。

「う、うう。摘むなんて酷いです。今日から腹筋します」

 傷つけてしまった。だが、なんだろう。可愛い。

「気持ち悪くはならなかった」

 フォローのようにそう告げて、オレも黄原のシャツを脱がした。
 チャリッと小さな音を立てて、ドッグタグが胸元から出てくる。
 アクセサリーだとは思うが、いつ死ぬかわからない今の状況だとシャレにならないな。それとも相応しいと言うべきか。

「眼鏡も……外していいか?」
「はい。元々そこまで悪くはないですし」

 本当に美形だな。眼鏡を外すとより際立つ。あと、やっぱり若い。悪いことをしているような気分になってきた。

「んッ……」

 外した途端、キスをされた。

「少し口、開けてください」
「ああ……」

 ぬるりと舌が滑り込んでくる。口の中を舐められると気持ちが良くて、腰が蕩けそうになる。
 前にも何度か舌を入れられてはいたが、そこまで深くはなかった。今まではこう、舌先で味を確認するような、そんな感じで。
 眼鏡が邪魔に、ならないからか……。
 黄原、舌、長いな。喉の奥まで舐められそうだ。

 されるがままというのもなんだし、オレも。

「痛っ!」
「あっ、すまない。噛んでしまった」
「いえ。こ、こっちこそ」
「違うぞ。嫌だったわけではなく、オレも……舐めて、やろうかと……思って、失敗しただけだ」
「こういうの、失敗とかするんですね。慣れてない感じがして可愛いです」
「う、うるさい」

 お詫びのようにキスをしてから、噛んだ舌を舐めてやる。黄原は一瞬身体を強張らせてからそれに応えた。

 そのまま主導権を奪われ、息もつけないような激しいキスが繰り返される。

 そしてオレは凄いことに気づいた。
 腿に押し当てられている黄原のソレが、先程よりも大きくなってきているのだ。

 あれが最大とばかり思っていたが、まさか……こんなに。しかもこれから更に大きくなるのか? これが尻に入る? 物理的に無理なのでは? もし万一入ったならば、オレは明日からオムツ生活になるだろう。

「すまない。抱かれる側でもいいとは言ったが、入りそうにない気がする」
「……いや、大切にするって言ったじゃないですか。いくらなんでも今日いきなり挿れませんよ」
「そうなのか?」
「はい。触らせてはもらいますけど」
「それは……恥ずかしいな」
「恥ずかしいことしてますし……」

 好奇心が先に立って、オレは抱き合うということの意味を深く考えていなかった気がする。それでも黄原が少し照れたような拗ねたような顔をしているのを見ると、続きをしてみたいと思える。

 オレの興味はいつの間にかセックスよりも、黄原がどんなふうにオレを抱くのかに移っていた。

 何度か目を瞬かせて黄原を見る。間近でも隙ひとつなく美形だ。
 思わず手を伸ばして形を確認するように、目の下から鼻、頬をゆっくりと撫でる。
 黄原はくすぐったそうにフフッと笑ってから、オレにキスをして、いよいよズボンを脱がせてきた。

 人の手でソコを触られるのは、初めてだった。指先でなぞられただけで足先から鋭い快感が走って身を竦める。同時に黄原も指先を強張らせたのがわかった。

「少し驚いただけだ」
「はい」

 緊張しているのがオレだけではないことにホッとする。
 指先一本一本で意識でもさせるように、ゆっくりと握り込まれる。初めは辿々しかった動きが、徐々に大胆なものになってきて、下半身から粘った水音が聴こえてきた。

「……う」
「気持ちいい、ですか?」

 いい、けれど、恥ずかしい。自然と息が弾む。結局されるがままになっている。
 オレも触ってやりたいが他人から与えられる快感に身を委ねていたい気持ちのが強く、何度かシーツを掴んでは離しを繰り返す。
 ふと黄原を見るとあまりにも真剣な表情でこちらを見つめていた。恥ずかしさでとけてしまいそうだ。

「っあ……」

 高く上げた声に、黄原の視線がねっとりとしたものに変わる。
 欲情、されている。オレで勃つのを知ってはいたが、こういう姿を見られてのことだと、また違う。

「あ、待て……。ダメだ」

 イク。イッてしまう。他人の手で。
 息が上手く吸えず、空気を飲み込む。
 
 一方的にイカされることに恐怖を覚え、黄原の手首を掴んで止めようとした。でも止まらなかった。

「あ、や……あっ、うう……」

 目の前が白くなる。自分の意思に添わず上り詰める感覚は、快感よりも焦りのほうが大きい。
 慣れれば純粋な快感のみ追えるようになるのだろうか。

 肩で息をしながら、掴んだ黄原の手首をゆるりと離した。

「待てと言ったのに」
「スミマセン。でも、イク顔が見たかったので……」

 こめかみにキスをされる。次に、目元を舐められた。

「僕の手で気持ちよくなってくれて嬉しいです」

 本当に嬉しそうな顔で言ってくれる。こちらはもういっぱいいっぱいだ。きっと一方的なのがいけない。

 触れる気がしないが、見てみたくはある。実物がどれほどの大きさなのかを……。
 躊躇ってるうちに、黄原の手が早々とオレの尻に伸びた。

「そ、そっちはまだ、無理だ……。本当に」
「指を入れるだけですから」
「今日は触り合うだけにしよう」
「……青山さんも、触ってくれるんですか?」

 口をついて出てしまった。男は度胸だ。

「ああ、もちろん」

 声は震えてはいなかったか? 歳上としての矜持は保ちたい。

「されるほうになると恥ずかしいですね」

 自分のほうはあれだけ大胆なことをしておいて、清純派でも気取るように頬を染めている。
 だが黄原は誇れるサイズをしているから、謙遜とも言えるかもしれない。

 覚悟を決めてズボンを脱がせる……。
 とりあえず、第一印象は、腕が股間から生えているのでは? だった。

 入るわけがない。するならやはり、オレが抱くほうが良さそうな……。
 うん。まあ、今日は挿れないと言っていたし、問題は先送りにしよう。

 想像よりもグロテスクさはなく、触ってもらえる期待にか震えて角度を増すところは可愛く思えた。大きさはまったく、可愛らしさの欠片もないが。
 これならなんとか触れそうだ。見ているだけなのはさすがに申し訳ないし……。ココの扱い方なら、自分ので勝手はわかっている。
 
 最初は確認するように、指を一本すべらせる。形をなぞって、脈打つ幹を押さえるように手のひらで包み込んだ。

「んッ……。青山さん、もっと強く握ってください」
「こ、こうか?」

 思ったよりも柔らかくて、力を入れるのが怖い。それでも黄原のおねだりに従って強く擦ると、くぐもった高い声を上げた。
 黄原の声は甘い顔そのままに男としては高めで、喘がれても気持ち悪さはない。むしろ……少し、興奮した。

「青山さん……。い、一緒に、した……い」
「ッ、オレのはもういい」
「ちがくて、こう……」

 身体をグッと押しつけられて、黄原の巨大なソレで、オレの標準的なモノを擦られた。並べると小さく見えてしまうが標準的なはずだ。

「握ってください」
「んあ、ああ……」

 ぎこちなくまとめて握る。いや、片手だと支えきれない。両手でしっかり押さえると、黄原の手がその上から重ねられた。
 オレの手を使って扱かれている。オレがしているのか、黄原がしているのかわからなくなる、不思議な感覚。

 ねばついた水音と、黄原の荒い息遣いが耳を焼く。そこにオレのみっともない喘ぎ声が加わるのはノイズでしかない。噛みしめると唇をべろりと舐められた。

 ……声を、出せということか。聞いたところで楽しいものでもないだろうに。

 ゆるりと首を横に振ると、ねだるように何度もちゅっちゅっと口づけられた。可愛くて、オレのほうが折れた。

「あ、あ……、あっ……」
「あお、やまさん……。ぼくのなまえ、よんで、ください」
「ん、黄原……ッ」
「みつとです」
「……はぁ、みつ、とッ……」

 性器同士が触れ合う感覚は想像以上に気持ちがよくて、腰が揺れる。下手に声を出すと飲み飲みきれない唾液が口の端から零れそうになる。

 乞われて呼んだ名前は、形だけだった。今度は気持ちを込めてもう一度呼ぶ。

 男同士でも、こんなに気持ちいいものなのか。
 息が上がるのを抑えられないし、胸の奥からジワジワと熱いものが込み上げてくる。推しといるわけでもないのに心が跳ねる。

「……ふぁ、もう……出るッ」
「んん僕も……。な、薙さん……」

 イク瞬間、唐突に下の名前で呼ばれて驚いた。
 下の名前……覚えてたんだな。一度しか言っていないのに。

 二重に気恥ずかしくて、荒い息を整えつつ下向くと、額にちゅうっと音を立ててキスをされた。本当に恥ずかしい。
 黄原の顔を盗み見ると、自分からしておきながら、心底照れくさそうな顔をしていた。

「下の名前で呼ぶのって、思ったよりも照れますね」

 そっちのほうか。
 確かに改めて言われると……。いや、そんなことよりも、今していたことのほうが。思い返すと恥ずかしすぎて毛穴からドバっと汗が噴き出しそうになる。
 ……精液も、お互いの腹の間で凄い量が出ているし。大きいと量も多いのか……。
 オレの分もあるが、オレはさっき一度出したばかりだし……。

 指先で混ぜるように拭うと、黄原がゴクリと唾を飲む音が聞こえた。

「青山さん、ちょっと……えっちすぎます」
「な、何がだ。それより拭くものを取ってくれ。ほとんどオレの腹の上に出てる」
「無自覚とか……。我慢つらいな。せっかく使えるようになったんだから使いたい……」

 黄原はそう小さな声でそうブツブツ言いながら、身体を離した。
 オレのだって使えるけど使ってない。

 そういえば、赤城は挿れられる側でもいいと言っていたな。黄原はオレを抱きたいという。男が好きでも、そのあたりの違いはどこからくるのだろう。
 まあオレは黄原が望むなら、挿れさせてやりたいとは思っているが……。質量的に無理かなと思うだけで……。

「はい、タオルです」
「ありがとう」

 ラブホテルだとこういう備品がすぐに出てくるから助かる。
 本当にそういう目的のために使うことになるとは思わなかったが。しかも、クリスマスに。まるで美人な彼女がいる勝ち組な男だ。

「……はぁ。本当に青山さんと、こういう関係になれたんですね」

 相当に顔がいい。恋人を想うような憂いを帯びた表情はどこか艶があって、誰もが恋に落ちそうだ。
 しかも彼が言う恋人とは……オレの、こと。
 ひょっとしてオレは今まさに、クリスマスに恋人とセックスする、勝ち組な男なのでは?

 ……無職だが。

 してしまったせいか、前よりも黄原がキラキラして見えるし、腹に飛び散った液体は生々しいしで、つい拭く手に力がこもる。

「そんなに擦ったら赤くなりますよ。肌弱そうなのに」

 すぐに見咎められて、やんわりと手首を掴まれた。
 彼氏力が高いというのは、こういうことを言うのだろうか。

「黄原は……。きちんと、気持ちよかったか」
「えっ。そ、それは、そうですよ。イケたし……。ここまで許してくれて、夢のようでしたよ」

 続きだってしたいと思ってる。そう耳元で囁かれて、オレは偏差値の高い顔を押し返した。

「今日はダメだ」
「せっかくのクリスマスなのに」
「もう終わってしまう」
「あ……。本当だ。もうそんな時間なんですね」
「終わるのは、クリスマスではなく……君の誕生日だが」
「え?」

 オレはこっそり隠しておいたプレゼントを、ベッド脇に置いたカバンから取り出して、手渡した。

「お誕生日おめでとう、黄原」
「えっ! だって、プレゼントは……。さっきのパーティーで、渡してくれなかったのに」
「君が言ったんだろう。クリスマスと一緒にされたくないと」

 ちなみに中身はオレにしては奮発したお値段の、甘い蜂蜜色のクッキーだ。
 誕生日プレゼントが食べ物というのもなんだが、オレは君が好きなものをまだよく知らないから。

「青山さん、好きです。結婚してください」
「はあ? 何を言っ……」
「もう一回! 僕、もう一回したいですっ!」
「ま、待て。押し倒すな。せっかく買ってきたんだから、プレゼントを目の前で開けたりだとか、そういう……」

 言い終わる前に、キスをされた。

 ……まあ、誕生日、だしな。今日くらいはおおめに見てやるのが、年上の恋人……と、いうものか?

 少し躊躇ったが、オレは黄原の背に手を回し、ゆっくりと目を閉じた。
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 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
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閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
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タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

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