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とけたそのあとで
チョコレートポッキー
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夏休み、先輩が午後から家に遊びに来た。先輩は週3くらいで来てくれたり、一緒に街へ出掛けたり。
暑さにとにかく弱いおれは、夏がこんなに幸せなものだなんて、初めて知った。
クーラーの効いたリビングで寄り添って見ていた映画がエンドロールを迎えた時、先輩がぽつりと問題発言をした。
「俺昨日さー、合コン行って来ちゃった」
「は!? 先輩、おれがいるのに何考えて……」
やっぱり女がいいとか言い出されたらどうしようとか、最悪な考えが頭の中をぐるぐる回る。
「おーい、落ち着け。頭合わせだから、なっ?」
「なら何でわざわざおれに言う必要があるんで……」
口唇を指先に押し当てられて、言葉の続きを飲み込んだ。
「ポッキーゲーム、やってきたんだけど」
「おれにとってはキスでも浮気ですからねっ」
「ちゃんと口が近付く前に折ったって」
先輩はすっごいニコニコして、おれが膨らませた頬を指先でつつく。
「俺の景ちゃんはこれくらいで妬いちゃって、かわいーなー、もー」
「っ……」
ここぞとばかりに名前なんて呼んで。そんなことくらいで機嫌が…………直っちゃうんだから、おれって安い。
「なあ、お前も俺としたくね? ポッキーゲーム」
先輩がおれに、ちゅっと投げキッスを送る。
「誰も見てないところでやって、それ何か楽しいんですか?」
「ははっ」
「俺はどっちかというと、ここにチョコ垂らして食べたいですけどね。ポッキーみたいに」
先輩のをジーパンの上からやんわりと撫でる。ジーパンの固さはあるけど、中身は柔らかい。当たり前か。
「はっ!? お前何考えてんだよ! そんなエロ親父みたいな……」
「でも……久し振りに舐められたくありません?」
そう言って迫ると、先輩がぐっと詰まった。
「ん……なんつーかさ。俺、それならできっかも」
「え? 何が……?」
「だから、逆にさ。チョコがお前のにかかってんなら、舐めてやれるかもって」
「えええ……!」
先輩がおれのを!
当然そんなの、してもらったことなんてない。やばい、想像するだけで頭が煮える。
いや、想像でなら何度かしたけど。
その綺麗な形の口唇に、おれの……。
「それにほら、俺より後輩くんの方がポッキーっぽいし」
「………………」
ふくらんでいた気持ちが一気にしぼんだ。
「べっ、別におれはそんなに小さくないですよ、標準です! 先輩だってそんなに大きくないじゃないですか!」
「でも後輩くんよりは大きいぞ。それに、お前の細長くないか、ポッキーみたいに」
「何言っ……わあ、脱がさないでください!」
「いいからいいから」
そんなこと言われたあとで見せられるもんか! 恥ずかしすぎる!
おれは先輩の魔の手から逃れつつ、逆にその身体を押し倒した。
「じゃあ、今日は最後までしましょうか。挿れさせてくださいよ、瑞貴さん……」
「は? 待て、何でそうなる」
「だっておれのここ、ポッキーなんでしょ? なら出し入れしてもそんなに痛くないですよねぇえ……」
「出し入っ……リアルすぎる! すまん、俺が悪かった。なっ? 後輩くんのおっきくて、俺、壊れちゃう」
「今更白々しい! どうせおれのなんてポッキーですから、貴方の身体で存分にゲームを楽しませていただきます」
「ちょ、おま、目がマジ……」
「中で折れないようにしますから安心してくださいね」
「できるかあぁぁあ!」
そうしておれは、瑞貴さん言うところのポッキーでその甘い身体をたっぷり楽しませてもらった。
ことが終わったら瑞貴さんが本格的に拗ねてしまったので、ご機嫌をとるべくコンビニでポッキーを買ってきた。
一番ポピュラーなチョコレートポッキー。
なのに、機嫌が直るどころかますます睨まれた。
「何だ、これは」
「何って、本当のポッキーゲームやろうと思いまして」
「普通のポッキーじゃないか」
「……そうですけど」
「苺のムースポッキーとか、抹茶とかバナナとか色々あるだろ!」
「はあ……」
「フランとか!」
「それ既にポッキーじゃありませんから!」
おれは先輩の手からパッケージを奪ってぺりぺりと開けた。
「先輩……ゲームがやりたかったんじゃなくてポッキーが食べたかっただけなんですか、もしかして……」
「う……」
図星だったらしい先輩の前に、ポッキーを差し出してみる。
さっきの会話が会話なだけに、ちょっと連想してしまう。
「じゃあこのポッキーはいらないんですね?」
「いらないね」
やっぱまだ拗ねてる。可愛いけど可愛くない。食べたいくせに。
先輩が甘いものいらないなんてありえないんだから。
「じゃあおれが食べようっと」
やっぱり食べたい、と言わせたくて見せ付けるようにくわえると、先輩がにっと笑った。
「俺はゲームをしたいだけだからさ」
先輩がポッキーの端からくわえて、顔を進めてくる。
少し伏し目のその表情はやっぱり整っていて凄くかっこいい。
「ん……」
……ポッキーは途中で折れたりしなかった。
暑さにとにかく弱いおれは、夏がこんなに幸せなものだなんて、初めて知った。
クーラーの効いたリビングで寄り添って見ていた映画がエンドロールを迎えた時、先輩がぽつりと問題発言をした。
「俺昨日さー、合コン行って来ちゃった」
「は!? 先輩、おれがいるのに何考えて……」
やっぱり女がいいとか言い出されたらどうしようとか、最悪な考えが頭の中をぐるぐる回る。
「おーい、落ち着け。頭合わせだから、なっ?」
「なら何でわざわざおれに言う必要があるんで……」
口唇を指先に押し当てられて、言葉の続きを飲み込んだ。
「ポッキーゲーム、やってきたんだけど」
「おれにとってはキスでも浮気ですからねっ」
「ちゃんと口が近付く前に折ったって」
先輩はすっごいニコニコして、おれが膨らませた頬を指先でつつく。
「俺の景ちゃんはこれくらいで妬いちゃって、かわいーなー、もー」
「っ……」
ここぞとばかりに名前なんて呼んで。そんなことくらいで機嫌が…………直っちゃうんだから、おれって安い。
「なあ、お前も俺としたくね? ポッキーゲーム」
先輩がおれに、ちゅっと投げキッスを送る。
「誰も見てないところでやって、それ何か楽しいんですか?」
「ははっ」
「俺はどっちかというと、ここにチョコ垂らして食べたいですけどね。ポッキーみたいに」
先輩のをジーパンの上からやんわりと撫でる。ジーパンの固さはあるけど、中身は柔らかい。当たり前か。
「はっ!? お前何考えてんだよ! そんなエロ親父みたいな……」
「でも……久し振りに舐められたくありません?」
そう言って迫ると、先輩がぐっと詰まった。
「ん……なんつーかさ。俺、それならできっかも」
「え? 何が……?」
「だから、逆にさ。チョコがお前のにかかってんなら、舐めてやれるかもって」
「えええ……!」
先輩がおれのを!
当然そんなの、してもらったことなんてない。やばい、想像するだけで頭が煮える。
いや、想像でなら何度かしたけど。
その綺麗な形の口唇に、おれの……。
「それにほら、俺より後輩くんの方がポッキーっぽいし」
「………………」
ふくらんでいた気持ちが一気にしぼんだ。
「べっ、別におれはそんなに小さくないですよ、標準です! 先輩だってそんなに大きくないじゃないですか!」
「でも後輩くんよりは大きいぞ。それに、お前の細長くないか、ポッキーみたいに」
「何言っ……わあ、脱がさないでください!」
「いいからいいから」
そんなこと言われたあとで見せられるもんか! 恥ずかしすぎる!
おれは先輩の魔の手から逃れつつ、逆にその身体を押し倒した。
「じゃあ、今日は最後までしましょうか。挿れさせてくださいよ、瑞貴さん……」
「は? 待て、何でそうなる」
「だっておれのここ、ポッキーなんでしょ? なら出し入れしてもそんなに痛くないですよねぇえ……」
「出し入っ……リアルすぎる! すまん、俺が悪かった。なっ? 後輩くんのおっきくて、俺、壊れちゃう」
「今更白々しい! どうせおれのなんてポッキーですから、貴方の身体で存分にゲームを楽しませていただきます」
「ちょ、おま、目がマジ……」
「中で折れないようにしますから安心してくださいね」
「できるかあぁぁあ!」
そうしておれは、瑞貴さん言うところのポッキーでその甘い身体をたっぷり楽しませてもらった。
ことが終わったら瑞貴さんが本格的に拗ねてしまったので、ご機嫌をとるべくコンビニでポッキーを買ってきた。
一番ポピュラーなチョコレートポッキー。
なのに、機嫌が直るどころかますます睨まれた。
「何だ、これは」
「何って、本当のポッキーゲームやろうと思いまして」
「普通のポッキーじゃないか」
「……そうですけど」
「苺のムースポッキーとか、抹茶とかバナナとか色々あるだろ!」
「はあ……」
「フランとか!」
「それ既にポッキーじゃありませんから!」
おれは先輩の手からパッケージを奪ってぺりぺりと開けた。
「先輩……ゲームがやりたかったんじゃなくてポッキーが食べたかっただけなんですか、もしかして……」
「う……」
図星だったらしい先輩の前に、ポッキーを差し出してみる。
さっきの会話が会話なだけに、ちょっと連想してしまう。
「じゃあこのポッキーはいらないんですね?」
「いらないね」
やっぱまだ拗ねてる。可愛いけど可愛くない。食べたいくせに。
先輩が甘いものいらないなんてありえないんだから。
「じゃあおれが食べようっと」
やっぱり食べたい、と言わせたくて見せ付けるようにくわえると、先輩がにっと笑った。
「俺はゲームをしたいだけだからさ」
先輩がポッキーの端からくわえて、顔を進めてくる。
少し伏し目のその表情はやっぱり整っていて凄くかっこいい。
「ん……」
……ポッキーは途中で折れたりしなかった。
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