甘すぎるのも悪くない

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とけたそのあとで

甘いおねだり

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 先輩は初めてしたあの日から、一度もさせてくれない。
 手ではするけど、それだけ。舐めさせてもくれない。
 お互いに気持ち良く愛し合えればそれでいいだろって言って。
 俺はもっと深く愛したいのに……。
 でもそれをしつこく言い出すと、おれがやられる側になりかねないから自重。
 手だけでも気持ちいいことはいいけど、先輩の中の熱さを知っているおれとしては、もっと味わいたいと思ってしまうのだ。
 
 舐められることに関しては、自分ができないから申し訳なくなるらしい。
 別にいいのに。おれは先輩の舐めたら興奮するし……。それだけで充分で、させようとか思わない。
 それは、してくれたら嬉しいけど。
 でも、身体を重ねるっていうのは本当に凄いと思う。
 これ以上はないって思うくらい先輩が好きだったのにおれはもっと好きになったし、先輩も多分同じ。
 おれを見る視線が前より熱いし甘いんだ。
 しょっちゅうぎゅーっと抱きしめてくれる。
 
 そしておれは……また先輩を抱きたいなって思ってしまう。
 
 そこでおれは、先輩にお酒を飲ませてほろ酔い気分にさせたところを美味しくいただくことにした。
 せっかくの夏休みだし、多少ははめをはずすのもありかな、なんて。

 ちなみにおれは飲まない。未成年だし。
 先輩はもうあれだけ育ってるから多少飲んでもいいと思う。
 うちに来た時に早速父秘蔵のブランデーを勧めてみた。
 
 けど……。
 
「あ、俺酒飲まないから」
 
 あっさりと野望が砕かれた。
 
「ジュースの方が安くて甘くて美味しいしな。甘いカクテルなら多少はいけるが変な味するし。ちなみに煙草は苦いから嫌いだ」
「両方凄いやってそうなのに……」
「よく言われる」
 
 しかしおれには酒の他にもうひとつ、秘密兵器があった。
 
「あの、先輩……これ使ってみませんか?」
 
 先輩の手にそれをそっと握らせると、ぎょっとした顔で俺を見た。
 
「何考えてんだ、お前」
「先輩に気持ち良くなって欲しいなって」
「……あー、うん。俺自分がする側でもさ、こーゆーのあんま使ってないんだ。基本的にノーマルなのが好きなんだよな」
「手だけで済ませるのがノーマルとは思えませんけど」
「う……」

 実はこれは嘘。先輩とするために調べたら、男同士は身体に負担がかかるから毎回挿入ってことはあまりなく、先輩のように触り合うだけを好む人も多いみたいだ。

「それに平気ですよ! 使われるのは先輩ですから!」
「もっと嫌に決まってるだろ!」
 
 ……まあ、それはそうか……。
 
「あのですね、ぶっちゃけて言ってしまうとおれ、先輩を開発したい……」
「ぶっちゃけすぎだ、馬鹿。お前欲求不満なんだよ。してやるからおとなしくしてろ」
「っ、先輩……」
 
 指先を熱に這わされて、はふ、と息が漏れる。
 確かに欲求不満かもしれないですよ。
 貴方はあれから指すら入れさせてくれなくなってしまった。なのにおれのことを好きだという気持ちは凄く伝わってくる……。
 無意識に誘って、なのに拒んで……おれ、どうにかなりそうです。

「先輩、好きです、好き……」
 
 顔中に甘いキスを落として、甘える。
 先輩の指は凄く巧みで気持ちがいい。
 でもそれでも、欲張りなおれはもっともっとと思ってしまう。
 いつか……この人から欲しがってくれる日はくるのかな。

「そんな、泣きそうな顔するなよ。俺が後輩くんを無理矢理もてあそんでるみたいだろ、この見た目じゃ」
「だって……」
「……そんな、したいのかよ」

 おれがこくりと頷くと、先輩はおれに甘く口付けて指先を止めた。

「いつでも泣き落としが効くとは思うなよ? あと、ソファはもう嫌だからな」
「先輩ッ……大好きです!」
「判った、判ったから」

 身体はまだ全然だけど、心はすっかり開発済み。
 しつこくねだるより引いて甘えられるのに弱いですよね、先輩は。

 卑怯でごめんなさい。でも絶対に、死ぬほど気持ち良くしますから、許してくださいね。




 その日は秘密兵器を用いてついには泣かすまでしつこくしてしまい、怒られて一週間のお預けを言い渡された。
 でもおれはにやけた顔が戻らなかった。
 先輩すっごく可愛かったし、それに……それって一週間経ったらまたしてもいいってことですよね?

 また触らせてくれるなら頑張って待ちますから、たまには甘いご褒美もよろしくお願いします。
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