甘すぎるのも悪くない

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先輩視点の番外編

練習

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「先輩、自分の立場判ってるんですか?」
 
 なんて可愛らしく上目遣いで睨んでくるから、ついにやついた顔になってしまうんだろう。後輩くんは、ますます俺を睨んできた。
 
「判ってる。ちゃんと判ってるって。お前の恋人で、女の子とキスしてたから怒ってるんだろ?」
「やっぱり……してたんだ」
「いや、してない」
「どっちですかっ!」
「お前が勘違いしてるだけだって、あれは目にゴミが入ったから……」
「そんなベタな。大体、目にゴミが入って見てるっていう状況じゃないでしょ、あれ!」
 
 学校の中庭、人があまり通らないところで木に押し付けられるシチュエーションはおいしいのに、この誤解はおいしくない。
 演劇部員にちょっと付き合ってよと言われ、ラップ越しにキスをしているところを見られてしまった。
 直にでないとはいえ、あんなに密着して唇を触れさせた事実。俺はそれくらいなら……と思うんだが、後輩くんは嫉妬深いからなぁ。まさか偶然見られるとは思わなかった。
 そういう練習を許した事実に対しても、激怒する筈だ。まあ、もうこの時点ですっかり怒ってるんだから、今更か。
 
「演劇の練習で、ラップ越しにちょっと、しただけだって」
「……本当に?」
「俺が今キスしたいと思うのは後輩くんだけだ」
 
 言った途端、ぐいっとネクタイを引かれてキスをされた。思わず舌を入れると、押し返された。
 
「そっちからキスしてきたくせに」
「先輩は、こうやって……反射的に舌とか入れてくるから心配なんですよ」
「お前にだけだ」
「だっておれのこと、そこまで好きでもない頃から、こういうキスはしてくれてたじゃないですか」
「それは、まあ、恋人がいない時だったし。俺、割りと一途で誠実だぞ。お前もそろそろ、判るだろ。付き合って一ヶ月や二ヶ月じゃないんだ」
「不安なんですよ。おれ、貴方を好きだったけど、今はあの頃よりもっと、大好きだから」
 
 潤んだ目で見上げてくるなって。可愛いから。
 大体その台詞は、俺の台詞。ここまでお前にはまるなんて、きっとあの頃は思っちゃいなかった。
 俺のことを凄く好きなとこも、その大きい目も、抱きしめてくる体温もみんな好きだ。可愛い、大切にしたいって思ってる。
 だから実は嫉妬されるのだって、そう嫌いじゃない。
 前は俺がラブレター貰ってても、もててても、モデルなんだからそれくらい当然とか思ってる節があったけど、きっと我慢してたんだろうって今なら判る。
 こういう姿を見せてくれるようになったってのは、俺が後輩くんのことをきちんと好きだということを、理解してくれるようになったからかもしれない。
 付き合い初めの頃は、俺相当軽い感じだったからな。
 
「また笑ってるし」
「好きな奴に嬉しい告白されて、笑わない奴いないだろ」
「先輩の笑い方は、軽いんですよ。おれが怒ってるって判ってるのに」
 
 後輩くんは俺の襟元をはだけ、思い切り噛みついてきた。
 
「痛ッ……。ば、どうすんだよ、これ! 歯形!」
 
 血は出てないけどすっかり跡のついたそこを、後輩くんがねっとりと舐め上げてくる。
 そのままベルトに手をかけられ、中に手を滑り込まされて、快感より恐怖が背を駆けた。
 
「ここを、どこだとっ……」
「学校の中庭ですけど」
 
 しれっと言うな、馬鹿!
 
「誰かに見られたら……」
「おれは見られてもいいですけど。先輩がおれのものだって、みんなに言って回りたいですよ」
「……ん、んんっ……」
 
 後輩くんが、俺の太股に熱を押し付けてくる。後輩くんが欲情していることに、欲情する。
 ……しかも、手、止めないし。
 
「よせって」
「抜くだけですから」
「やめろ! もう! ここでわざわざこんなことしなくたって、俺はちゃんと……お前の恋人だし、家に帰ったらいくらでも好きなだけさせてやるから!」
「いくらでも?」
「い、いくらでも……」
「最後まで? 先輩から足開いてくれます?」
「何でそうなるんだ」
「たまにはいいじゃないですか、いつもと違うシチュエーションも。ばれるのが嫌なら、トイレでもいいですよ」
 
 まったく、調子に乗りやがって。って、俺がいちいち許してるから、こうなるんだよな。
 でも後輩くんに拗ねてねだられたら拒めない。
 
「判ったよ」
「おれとは練習じゃなくて、ほんとのキス、してくださいね」
 
 だって可愛いんだもんなあ。いつも負け戦だ。
 あとで何をされるか考えるとちょっと怖いが、最近ではそれも楽しみになってしまっている俺がいた。
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