甘すぎるのも悪くない

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微エロ好きさんに20のお題

足りない

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 先輩がベッドへ背をもたれかけさせて漫画を読む。おれはベッドの上からそれを眺める。
 今日の先輩はなんか少し様子がおかしい。
 いつもならおれのベッドを占領するのに、床側だし。おれとしては寝たフリをしつつ、先輩のうなじから背中にかけてのラインを、襟元の隙間から覗けるから幸せだけど。
 それにしても、先輩のうなじって白くて凄く綺麗だ。思わず鼻先をすり寄せて匂いを嗅ぐと、先輩がびくりと身を震わせて手でそこを押さえた。しかも、おれのほうに向き直って後ずさった。
 
「な、なんだよ、後輩くん!」
「先輩、タバコの匂いがします」
「どこかで移ったかな……」
「それにどこか眠そうです。疲れてるっていうか」
 
 じいっと先輩の目を見ると、先輩は軽く俯いて目線を外した。
 
「いや、実はさ、ちょっと誘われてカラオケ行ってきたんだ」
「確かにおれはそれくらいでも嫉妬しますけど、隠されるほうがもっと嫌です。しかも、感じ的にオールしてきましたね!?」
「なっ、何でわかるんだよ。エスパーか?」
「わかります。徹夜でもしてなきゃ、先輩が隙を見せてくれるはずなんてないですもん」
 
 おれに様子がおかしいって思われたり、上手い言い訳が出てこなかったり。そういうこと、滅多にないし。
 
「普通に疲れてるだけなら休ませてあげようかなって思ったけど、やめます」
「結局、単にしたいだけだろー、後輩くんは」
「違います。これは、お仕置きです」
「あー、はいはい」
 
 先輩はおとなしくベッドへ上がっておれに軽いキスをした。
 まあ、先輩の言うことは大体、当たってる。
 見てるだけで幸せだけど、やっぱり触りたいって思うし。
 いくら身体を重ねても足りなくて、何度でもこの人がほしくなる。
 軽くされたキスにすら煽られて、先輩をそのまま押し倒した。
 
「言っておくが、お仕置きと称してあまり変なことはするなよ」
「今日は普通にします。でも、そのかわりいっぱいします」
「ほどほどに頼む」
 
 こういう時でもどこか余裕ありげにしてるんだからなあ……。もうちょっと余裕なくしたところも見てみたいのに。
 首筋を舐めながら身体に手を滑らすと、おれに身を委ねていた先輩が突如おれを押し退けた。
 
「先輩?」
「悪い、ちょっと待って」
「ここまできて何言ってるんですか。急に気が変わったなんて言われても、もう止まりませんから」
「いや、その……」
 
 歯切れが悪い。どうしたんだろうと思いながら服をめくって肌を直にまさぐると、それだけで先輩の身体がはねた。 
 
「んっ……」
「なんか、先輩……今日、感じやすい?」
「ばっ、馬鹿言うな!」
「でも、ここもうこんなですよ」
 
 ズボンの上から存在を主張する熱を指で挟み込むと、先輩が焦ったようにおれの腕を掴んだ。
 
「やっぱり今日はよそう。うん、そうしよう」
 
 軽い口調だけど、どこか焦っているのがわかる。
 
「まさか……変な薬でも飲まされてきたんじゃないでしょうね!?」
「そんな訳ないだろ! 今日学校だったんだぞ。どれだけ潜伏期間の長い薬だ」
 
 確かに、それもそうか。我慢できなくなってトイレで抜いてる先輩っていうのも、妄想するにしては悪くないシチュエーションなんだけど。
 
「徹夜明けで、肌が少しだけ過敏になってるみたいだ」
 
 そう熱に浮かされた顔で、喘ぐような溜息をつく。正直たまらない。
 これ……少しって感じか? 首筋を指先でなぞっただけで震える身体に、とろけていく瞳。本当に薬でも飲まされているみたいだ。
 
「それに、今日はこらえる余裕がない」
「ああ……」
 
 先輩いわく、普段はかなり我慢してるんだっけ。我慢なんてしなくていいのに。
 痛みに弱い、快感にも弱い先輩。そんな姿をそのまま晒してくれるなら、おれとしてはよけいに、ここでやめる理由が見あたらない。
 我慢しないで、たくさん声を出して喘ぐ先輩が見たい。
 おれはごくりと唾を飲んで、先輩のシャツを胸元までぐいっと押し上げた。
 
「や……っ。おい、破けたらどうするんだ。ボタン外せ」
「……はい」
 
 ムードないなぁ。どこか冷静なのか、テンパってるのかどっちだろう。
 肌に口づけると、それでもいつもとは違う反応があって煽られた。
 少しずつ暴かれていくズボンの中身。白い足に指先を這わせて軽く引っかくと、先輩が嫌がって身をよじる。
 痛みのほうも、いつもより過敏になっているっぽい。
 膝裏に手を入れて足を持ち上げ、引っかいた太股を舌で宥めるように舐めあげる。
 
「よせよ、足、なんて……」
「じゃあ……違うところ、舐めます」
「あっ、後輩くっ」
 
 水音と、押し殺したような喘ぎ。こらえる余裕がないって言ったくせに。
 もっと喘いでよ。それだけじゃ足りない。
 せっかくこんなに、感じやすくなっているのに。
 おれの口の中ではねる、熱の塊。自分がされてるわけじゃないけど、先輩のを舐めるだけで身体の中心から熱くなっていくのがわかる。
 もっと先輩を辱めたい。奥に触れて、それでもまだ足りない。身体の中身を全部掻き出したら、おれは満足するんだろうか。
 
「あ、あ、あっ……。指、抜けっ」
「凄い反応。瑞貴さん、中のほうが、よかったんだ? もっとはやく触って、擦ってほしかった?」
「知るか……!」
 
 足りない。ちっとも足りない。もっと、たくさん先輩をおれにください。
 早く入り込みたい。中から食い破る勢いで蹂躙したい。
 こんな、感じやすくなって甘く喘ぐ貴方は、卑怯すぎます。
 もっと、もっと……もっと。
 
「景……」
 
 名前を呼ばれただけで鋭く走る快感に、目眩がした。
 キスをして、顎を舐めながら返事をする。そのあと軽く歯を立てると、先輩が涙目でおれを見上げた。
 ダメだ、まだ早いのに、我慢できない。今日は指でふれてるだけじゃ、ふれられてるだけじゃ……。
 
「足りない」
「えっ……」
 
 ついもれた呟きに唇をおさえたのは、先輩のほうだった。
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