8 / 38
本編
好みのタイプ
しおりを挟む
「梅雨を吹き飛ばせイベント?」
「そうにゃ。ヘブンズアースオンライン初のイベントにゃよー! 昨夜緊急告知されたんにゃ!」
兄貴のソワソワの原因は、コレかー!! ボスじゃなかったか……。
サチはとても嬉しそうにしている。無理もない。何しろ、レベルがカンストしてからしばらく経ち、レアドロップ狙いのボス待ちくらいしかすることなくなってたろうしな。
このゲームのリリースは、兄貴が引きこもり始める少し前。
それなりに人気があって、プレイ人数も多い。俺みたいに始めたばかりの奴もいるから、兄貴のような廃人を基準にしたレベルキャップ解放はそう簡単には行われないだろう。そこで、プレイヤーのモチベーション維持に重要なのがイベントとなるワケだ。
俺はサチのおかげでレベルだけは初心者の枠からなんとか抜け出せているし、それなりに楽しめそうだな。
「参加レベルは、20からのようにゃ」
うおっ、あぶね。ギリギリだった。
20まではすぐ上がるように作られてるってことか……。
とはいえ、俺は始めてから一週間経ってないし、そんな長い時間プレイしてないのにコレって、結構凄いんじゃね?
サチにスパルタされてんのが効いてるな。まあスパルタ過ぎて遠回りになる時もあるから、結局トントンかもしれない。
「よかった! それなら私も参加できる!」
「アズちゃんと一緒にイベントできて嬉しいにゃー!」
サチはそう言って、俺をパーティーに誘った。流れるように了承すると、すぐにパーティーチャットが飛んできた。相変わらずの神速タイピングだ。
『ちょっとゲームとは関係ない話なんだけど、聞いてほしいにゃ! 昨日、弟に謝れたーって話をしたと思うんにゃけど』
おぉ。兄貴からリアルの話を振ってきてくれるとは!
ガッツリとしたロールプレイをしているから、現実を持ち出したくないタイプだと思ってたが……。それとも、サチにとってアズキが特別だからなのか。
『なんと今日! プレゼントをくれたにゃ』
それって……。俺がやったココアとチーズケーキ?
『サチもう、嬉しくて嬉しくて。あの小さかった弟が……』
俺、兄貴の中で何歳に設定されてんのよ。
『怒ってなかったどころか、そんな気遣いしてくれるなんて、サッちゃんの弟って優しいね!』
せっかくだから、とことん自画自賛してやった。
ち、ちっと、くすぐったい感じはするが。まあ、こういうのは悪くはねぇな……。
『うん。サチ、だいぶ家族に心配かけちゃってたみたいにゃぁ……。弟がやたら優しいのも、きっと両親に言われたからにゃ……』
『そ、そんなことない! 弟だって凄く心配してるよ?』
『でも弟はかなり長いこと、よそよそしかったんにゃよ?』
『それは、その。男の子にはそういう年頃も、あるんだよ……』
これは嘘じゃない。少なくとも俺が中学の頃だったら、こんなふうに兄貴と向き合えてない。こじらせたのはその頃で、それからきっかけがなくて、ズルズルと。
『……励ましてくれてありがとうにゃ。実は……なるべく少しずつ、引きこもりをやめようと思っているにゃ。あ、ゲームはまだまだ終われないにゃ。だから、だいたいいるから安心してにゃ』
できねーよ! 俺にとっちゃゲームよりも現実のアンタに会えるほうが重要なんだからな!
『私は、サッちゃんが……いつもいるより、現実で頑張ってたほうが嬉しいかな』
ハテナマークのモーションが出る。
『……どうしてにゃ? やっぱサチ、うざかった?』
うぐぐ、説明しづれーなあ。
アズキにとってはゲームでしかサチに会えない。だとしたら、サチがいつでもログインしてたほうが都合がいいわけだ。少なくとも、サチはそう考えている。
つまり俺の発言は、ゲーム内にサチがいないほうがいいと捉えられてしまってるってことだ。ややこしいが。
『ほら、のめり込みすぎてポックリいった話とか、聞くし』
『サチはまだまだ若いから大丈夫にゃ』
『……私はね、現実でのサッちゃんのことも、心配なの』
『アズちゃん……』
リアルでのサチを気にする美少女クレリックを演出してみた。
少しくらい、兄貴もアズキの中の人を気にしてんのかな。そのうちネカマやってることに、罪悪感を抱いたりする日がくるんだろうか。少なくとも俺は、いつか嘘をついてることが心苦しくなりそうだ。今は楽しいけど。
『現実の話を、ちょっとしすぎたにゃあ。それよりイベントにゃ、イベント!』
話を逸らされた。まあ、かなり楽しみにしていたイベントっぽいからな。無理もない。現実でもまだソワソワしてんのかな。
俺は昨夜は兄貴とそのフレさんに付き合わされて公式チェックをまったくしていないから、その概要はサッパリわからない。これだけ喜んでいるなら、相当オイシイ、イベントなんだろうか。
兄貴の場合はな、もうやることないからな……。オイシイとか、そういうところではかってるわけじゃないかもしれんが。
『イベントの開始地点は、種族それぞれの初期町の酒場前だって書いてあったにゃ。アズちゃんとサチは、ここアニマルパークにゃね』
『ふむふむ』
『開始時刻は夜の20時。アズちゃん、ナイスタイミングだったにゃあ』
『えっ、今から? ずいぶん遅い時間からだね』
けどもし始まっていたら兄貴もこんな悠長に話してないし、俺が部屋の前でうろちょろしていようが、きっと出てこなかっただろう。
『正午予定だったんにゃけど、延長による延長で……。サチ20回も公式チェックしに行ったにゃ』
行き過ぎだろ。
でもそんなに延長を繰り返してるんじゃ、そりゃソワソワもするわな。ユーザーも初めてのイベントってことで多少おおめに見てはくれるだろうが、開始時間が安定しないのはよろしくない。見切り発車すぎる。
まー、でも俺にとっちゃラッキーだった。兄貴のこの楽しみっぷりを見る限りじゃ、もし昼間から始まってたら俺がログインをする頃にはサチはイベントクリアしていたに違いない。さすがにそれはつまらない。せっかくだから、一緒に楽しみたい。
……それとも、待っててくれたかな。アズキのこと。
俺はサチに案内されるまま、町の酒場前へ移動した。
うわ、これ全部プレイヤーかよ。すげえ人だな。あたりをオープンチャットが飛び交っていて、俺は思わず耳を傾けた。
まあ、オープンでタイピングされると自然と目に入ってくんだけどさ。
「そろそろかな。イベントNPCはもう配置されてるね」
NPCっていうのは、お店屋さんや町に設置された、定型文を喋る……いわゆる中の人がいないキャラクターのことだ。
今回はいつもいない場所に、イベント用に出現しているんだろう。
「コイツは昼間からいるよー。ボク30回くらい声かけちゃった」
兄貴を越える廃人が……。
『甘いにゃ。サチは50回は声をかけてるにゃ』
……張り合うなよ、頼むから。
『あのNPC、遠くからでも話しかけれるかな?』
『クリックすれば会話は可能だと思うにゃ。混雑は想定してただろうし、その配慮かにゃ?』
なるほど。
イベント用NPCはわかりやすく、オレンジ色の傘をさしている。キツネのような尻尾が見えるから、種族ごとでグラフィックが違うのかもしれない。
<<はあー、困ったな。でももう少しだけ待ってみよ>>
話しかけてみるとそう表示された。
『もう少しもう少しって、どんだけ待たされたと思ってるにゃ……』
サチさんご立腹です。まあ、昼頃から待って50回も話しかけてりゃ、こう言いたくもなるだろうな。
突如、目覚まし時計の音が響き渡った。画面に集中してたから一瞬ゲーム内かと思ったが、隣だ。
その後、慌てたような物音と共に音が止んだ。
……あ、兄貴いィィ……。浮かれてるのはわかるが、笑いをこらえるのがつらいから勘弁してくれ。
時刻は20時ちょうど。イベント開始時間にあわせて、アラームをセットしてたんだろう。
画面はさっき以上に騒がしくなっていて、話しかけられたらそのキャラのほうを向くNPCがあっち向いたりこっち向いたり大回転状態だ。
サチも真面目にテキストを読んでいるのか、反応がない。
さて、俺も声をかけてみるか。一体どんなイベントなんだ……?
<<うーん、やっぱりダメ、降らない! 三日前には降るハズだったのに……。あ、キミ冒険者だよね? ちょっといいかな、お願いがあるんだけど……>>
降るハズだった、ってのは、雨のことか。梅雨を吹き飛ばせってイベント名なのに、雨を降らせるためのクエストってどうなんだそれ。
そのままキャラの話を聞いていくと、モンスターを倒して、水の珠、というアイテムを手に入れてほしい、ということだった。
それがあれば晴れた天気のままでも、水不足にならないんだとか。夢のようなアイテムだな。現実でもそういうのほしい。
今日も雨だったし、明日もだ。梅雨時は本当にうんざりする。
『そっかぁ……もう梅雨。外では毎日、雨なんにゃね』
引きこもってる兄貴には、梅雨は関係ないらしい。
『サッちゃんは、雨は好き?』
『うーん、あまり好きじゃないにゃあ。サチはゲーム内ではこーんにゃ可愛らしいアバターにゃけど、現実ではスポーツ万能で勉強もできて、苦手なことなんてほとんどなかったにゃ。だから外に出られない雨は憂鬱だったにゃ』
って、おいおい、リアル自慢かよ……。一応ノっておくか。
『そうなんだ、すごーい!』
『ふふっ。こんなの信じちゃうなんて、アズちゃんは可愛いにゃあ。冗談にゃよ、冗談。サチは見たまま、バカワイイ子猫ちゃんにゃよ』
確かにゲームだけでの付き合いなら、さっきの発言が本当かどうかなんてわからない。ニャンニャン言ってるこの姿を見たら、普通にジョークだと思うだろうな。
でも俺は……現実での兄貴を知ってるから。今、言ったこと。それが本当だってわかってる。それを自慢するような性格じゃないってこともな。
それに、外に出られない雨が憂鬱だったなら、どうして引きこもってんだ? って話。真実はどうであれ、兄貴はハイスペックである自分が多分あんま好きじゃなかったんじゃなかろうか。だからこそ、別のキャラクターを演じてる。
人生順風満帆で悩みもなく明るく楽しく生きてきてるように見えたのにな。わからんものだ。
でもこうして、冗談に交えてでも現実のことをアズキに話してくれるなら、現実にも未練があるって思っていいよな? 今はちょっとネトゲ夢中になってるだけで、ちゃんと戻ってきてくれるよな? 今はこうして……俺も一緒にゲームを楽しんでいれば、それでいいよな?
俺、この手の自問自答、何回したら気が済むんだろ。兄貴がネットゲームから卒業するまでかな……。
『というか、普通に笑うと思ったのに、本気に思われてちょっと焦ったにゃ……。アズちゃんは純粋なんにゃね』
うっ。もしかして俺、探られてる? バレないようにしているとはいえ、俺と兄貴の部屋は隣同士。いつどんなキッカケでバレるかわからない。用心はしているつもりだが、ハイスペックすぎる兄貴はいつも俺の想像もつかないことをやってのけるからな。
ちなみに、ネトゲにはまってネカマやってるってのはその中でもダントツだ。
『だって、サッちゃん凄いもの! 呪文を唱えるタイミング、知識。現実でも頭いいんだろうなあって思うよ?』
『て、照れるにゃ……。アズちゃんも、ヒールのタイミング凄く気持ちいいにゃよ。サチ好みだにゃあ』
サチが照れてるって感じのエモーションを出す。本当に照れてるのかな。なんか可愛い。中身が兄貴だってわかってても可愛い。畜生、はまってるのは俺のほうだ。
わかってんだよ……。なんか、だんだん、混同してきてるって。今までどれだけゲームやっても、現実と一緒くたにしたことなかったのに。これがロールプレイの闇か。
『ネトゲこれが初めてって言ってたのに、結構詳しいしにゃ』
『それは少しでも、サッちゃんに追いつきたいなあって、勉強してるの』
はあ、度々心臓に悪い。知識をあまり表に出すのも控えておいたほうがよさそうだな。
『じゃあ、サチに近づくために頑張って、レベル上げしながらイベントしにいくにゃ!』
『うん』
そうして俺たちは、いそいそとアニマルパークを出た。
今回のイベントでは、専用のスイドロってモンスターがフィールド全域に現れるらしい。モンスターのレベルは20、35、50。それぞれ帽子の色が違くて、レベルが高い敵ほど水の珠を多く落とす。50個集めるごとに特殊な回復薬、500集めるとアバターアイテムである相合傘が手に入るんだとか。
その傘を使ってある儀式をする……。ことで、奉納完了。
『もうアズちゃんもレベル20だから、強いところでいいにゃね?』
『ヒールしてるだけになっちゃうけど……』
『クレリックはヒールをするのがお仕事にゃん。サチ、頑張ってモンスター倒すにゃね』
『ふふっ……頑張ってね』
『アズちゃんの声援で、元気100倍にゃよ!』
画面ではねる、ドットの猫耳キャラクター。人間の想像力ってのは逞しい。俺の目の前には、猫耳美少女がいるようにも、兄貴が猫耳つけてるようにも見え……いや、そっちはギャグだ。封印しとけ。思ったより似合うかも、とか考えるんじゃない。
兄貴はアズキを通して、どんな美少女を思い描いてるんだろ……。
ちらりちらりと気になってはいたことだったが、今になって無性に知りたくなった。画面の向こうには兄貴好みの、理想の女性像が映し出されてんのかな。そもそも、兄貴が好きな女のタイプって、どんなんだ? 浮いた噂のひとつもねーし、さすがにサチに訊くワケにもいかん。んなこと訊いたら、ネカマだって決め付けてるようなもんじゃねーか。
……でも気になる。ウズウズ……。
好きな男のタイプを訊いてみるとか? これなら不自然じゃない! って、そんなこと訊いてどーすんだよ俺。ゲーム内では女同士キャッキャした雰囲気にはなるかもしらんが、中身を考えるとゾッとするだけだ。いい歳した男二人が、好みの男のタイプについて話し合ってるなんて。
しかし、だ。女だったらと変換して、話してくれるような気もする。たとえば、笑顔の素敵な人とかそういう言い回しなら、男女どっちでも構わない。傾向は掴めるんじゃなかろうか。それに実はネカマなんだと暴露してくるかもしれない。
……いや、そりゃないか。ここまで完全にロールプレイしてるんだから。
『アズちゃんは、どんな男の人がタイプかにゃあ』
狩場までそんなことを悶々としながら考えていたら、サチからのこの問題発言ですよ。俺はどんな反応をすればいいんです?
これってやっぱ、その、兄貴が……アズキのことを気にしてるって考えていいんだろうか。
『私は結構理想が高いかな。頭がよくて、顔もよくて、身長も高くないと! それでいて優しい人』
ちなみに兄貴なら、この理想をすべて叶えられる。
俺はあくまでアズキとして答えている。あとは……。
『アウトドアが好きだから、アクティブな人だと嬉しいかも』
引きこもるなっつーこと。
『そ、想像以上に、理想が高いにゃね……』
『ウフフ。私もそれに見合った、美少女ですから』
はあ……。嘘が大きくなってく。まー、実際に逢うつもりはないから構わんだろう。
『でも、どうしてそんなこと……急に?』
『デロイにアズちゃんのタイプを訊いてほしいって頼まれたにゃ』
まさかの。ちょっ……リアルで、デスクトップ画面に額を打ちそうになったぞ。あの野郎。
兄貴が気にしてたんじゃねーのかよ。そもそもあのテンションバーンな男が、わざわざそんな回りくどいことしますかねえ。他人に任せず、自分で訊いてくんだろ。
『そっかあ。じゃあー、サッちゃんの好みの男性は?』
結局訊いてしまった……。いや、この流れだと、訊かないほうが不自然だし……。
兄貴が実は男なんだ、と言うはずはないと思うのに、なんだか酷くドキドキしてきた。心臓がやばい。
さあ、なんて答えるんだ、兄貴! じゃなくてサチ!
『もちろんレベルは50で最強装備で、立ち回りが上手い前衛さんかにゃ』
ちげーだろおおおおおおおおおおおお!
それ女性でも男性でも一緒だし! 百歩譲って、そういうプレイができる相手と結婚したいとか思ってるんだったらどうしよう。てか、デロイ? それデロイのことなの!? そんな嫁連れてこられても困ります!
俺だけ普通に答えさせておいて……。いや、確かに勝手に俺がリアルの話として答えただけで、兄貴は現実での男のタイプとは言わなかったが、なんか卑怯じゃね、これ。
『現実では?』
なので、突っ込んで訊いてみた。
『にゃはは。やっぱり見逃してもらえにゃいか。現実でなら、いつでもサチの傍にいてくれる人……かにゃ。なんか照れるにゃね』
いつでも……傍に……。
っ……な、なんで俺、自分思い浮かべてんだよ。確かにいつでも傍に? ってか、隣の部屋にいるけどよ。そういうこっちゃねーだろ。
いかん。兄貴がネカマなんてやってるからいけない。だからこんな、妙な連想するんだ。
でも『かっこよくてー、背が高くてー』みたいなバカっぽいこと言った俺よりは、なんかよっぽどマジっぽく聞こえる。
『サッちゃんって、寂しがり屋なんだね、可愛いv』
俺はそう打ち込みながらハートマークのエモーションを出してみた。
『うん、そうなんにゃ。だからアズちゃん、ずっと傍にいてね』
まったく動じてない。強い。
というか、待てよ……もしかしてこれって、アズキのことじゃねえか?
いや、でも俺は男性のタイプって言ったんだし! それに現実でいくら探したところで【アズキ】は存在しないんだ。傍にいてやるなんて、できるはずがない。言ってしまえばそれこそ、俺だ。俺なら傍に……いてやれるけどさ。
……なんて。こんなゲーム内の戯言に、何動揺してんだかな。
『私なら、ずっと傍にいるよ。サッちゃんの隣に』
正確には隣の部屋に。
サチは笑って、嬉しそうに、アズちゃん大好きにゃ、と言った。
アズキに惚れさせる予定だったんだから歓迎すべき事態のハズなのに、何故か俺の胸はきしりと痛んで。ログアウトしてしまいたいような気分になった。
「そうにゃ。ヘブンズアースオンライン初のイベントにゃよー! 昨夜緊急告知されたんにゃ!」
兄貴のソワソワの原因は、コレかー!! ボスじゃなかったか……。
サチはとても嬉しそうにしている。無理もない。何しろ、レベルがカンストしてからしばらく経ち、レアドロップ狙いのボス待ちくらいしかすることなくなってたろうしな。
このゲームのリリースは、兄貴が引きこもり始める少し前。
それなりに人気があって、プレイ人数も多い。俺みたいに始めたばかりの奴もいるから、兄貴のような廃人を基準にしたレベルキャップ解放はそう簡単には行われないだろう。そこで、プレイヤーのモチベーション維持に重要なのがイベントとなるワケだ。
俺はサチのおかげでレベルだけは初心者の枠からなんとか抜け出せているし、それなりに楽しめそうだな。
「参加レベルは、20からのようにゃ」
うおっ、あぶね。ギリギリだった。
20まではすぐ上がるように作られてるってことか……。
とはいえ、俺は始めてから一週間経ってないし、そんな長い時間プレイしてないのにコレって、結構凄いんじゃね?
サチにスパルタされてんのが効いてるな。まあスパルタ過ぎて遠回りになる時もあるから、結局トントンかもしれない。
「よかった! それなら私も参加できる!」
「アズちゃんと一緒にイベントできて嬉しいにゃー!」
サチはそう言って、俺をパーティーに誘った。流れるように了承すると、すぐにパーティーチャットが飛んできた。相変わらずの神速タイピングだ。
『ちょっとゲームとは関係ない話なんだけど、聞いてほしいにゃ! 昨日、弟に謝れたーって話をしたと思うんにゃけど』
おぉ。兄貴からリアルの話を振ってきてくれるとは!
ガッツリとしたロールプレイをしているから、現実を持ち出したくないタイプだと思ってたが……。それとも、サチにとってアズキが特別だからなのか。
『なんと今日! プレゼントをくれたにゃ』
それって……。俺がやったココアとチーズケーキ?
『サチもう、嬉しくて嬉しくて。あの小さかった弟が……』
俺、兄貴の中で何歳に設定されてんのよ。
『怒ってなかったどころか、そんな気遣いしてくれるなんて、サッちゃんの弟って優しいね!』
せっかくだから、とことん自画自賛してやった。
ち、ちっと、くすぐったい感じはするが。まあ、こういうのは悪くはねぇな……。
『うん。サチ、だいぶ家族に心配かけちゃってたみたいにゃぁ……。弟がやたら優しいのも、きっと両親に言われたからにゃ……』
『そ、そんなことない! 弟だって凄く心配してるよ?』
『でも弟はかなり長いこと、よそよそしかったんにゃよ?』
『それは、その。男の子にはそういう年頃も、あるんだよ……』
これは嘘じゃない。少なくとも俺が中学の頃だったら、こんなふうに兄貴と向き合えてない。こじらせたのはその頃で、それからきっかけがなくて、ズルズルと。
『……励ましてくれてありがとうにゃ。実は……なるべく少しずつ、引きこもりをやめようと思っているにゃ。あ、ゲームはまだまだ終われないにゃ。だから、だいたいいるから安心してにゃ』
できねーよ! 俺にとっちゃゲームよりも現実のアンタに会えるほうが重要なんだからな!
『私は、サッちゃんが……いつもいるより、現実で頑張ってたほうが嬉しいかな』
ハテナマークのモーションが出る。
『……どうしてにゃ? やっぱサチ、うざかった?』
うぐぐ、説明しづれーなあ。
アズキにとってはゲームでしかサチに会えない。だとしたら、サチがいつでもログインしてたほうが都合がいいわけだ。少なくとも、サチはそう考えている。
つまり俺の発言は、ゲーム内にサチがいないほうがいいと捉えられてしまってるってことだ。ややこしいが。
『ほら、のめり込みすぎてポックリいった話とか、聞くし』
『サチはまだまだ若いから大丈夫にゃ』
『……私はね、現実でのサッちゃんのことも、心配なの』
『アズちゃん……』
リアルでのサチを気にする美少女クレリックを演出してみた。
少しくらい、兄貴もアズキの中の人を気にしてんのかな。そのうちネカマやってることに、罪悪感を抱いたりする日がくるんだろうか。少なくとも俺は、いつか嘘をついてることが心苦しくなりそうだ。今は楽しいけど。
『現実の話を、ちょっとしすぎたにゃあ。それよりイベントにゃ、イベント!』
話を逸らされた。まあ、かなり楽しみにしていたイベントっぽいからな。無理もない。現実でもまだソワソワしてんのかな。
俺は昨夜は兄貴とそのフレさんに付き合わされて公式チェックをまったくしていないから、その概要はサッパリわからない。これだけ喜んでいるなら、相当オイシイ、イベントなんだろうか。
兄貴の場合はな、もうやることないからな……。オイシイとか、そういうところではかってるわけじゃないかもしれんが。
『イベントの開始地点は、種族それぞれの初期町の酒場前だって書いてあったにゃ。アズちゃんとサチは、ここアニマルパークにゃね』
『ふむふむ』
『開始時刻は夜の20時。アズちゃん、ナイスタイミングだったにゃあ』
『えっ、今から? ずいぶん遅い時間からだね』
けどもし始まっていたら兄貴もこんな悠長に話してないし、俺が部屋の前でうろちょろしていようが、きっと出てこなかっただろう。
『正午予定だったんにゃけど、延長による延長で……。サチ20回も公式チェックしに行ったにゃ』
行き過ぎだろ。
でもそんなに延長を繰り返してるんじゃ、そりゃソワソワもするわな。ユーザーも初めてのイベントってことで多少おおめに見てはくれるだろうが、開始時間が安定しないのはよろしくない。見切り発車すぎる。
まー、でも俺にとっちゃラッキーだった。兄貴のこの楽しみっぷりを見る限りじゃ、もし昼間から始まってたら俺がログインをする頃にはサチはイベントクリアしていたに違いない。さすがにそれはつまらない。せっかくだから、一緒に楽しみたい。
……それとも、待っててくれたかな。アズキのこと。
俺はサチに案内されるまま、町の酒場前へ移動した。
うわ、これ全部プレイヤーかよ。すげえ人だな。あたりをオープンチャットが飛び交っていて、俺は思わず耳を傾けた。
まあ、オープンでタイピングされると自然と目に入ってくんだけどさ。
「そろそろかな。イベントNPCはもう配置されてるね」
NPCっていうのは、お店屋さんや町に設置された、定型文を喋る……いわゆる中の人がいないキャラクターのことだ。
今回はいつもいない場所に、イベント用に出現しているんだろう。
「コイツは昼間からいるよー。ボク30回くらい声かけちゃった」
兄貴を越える廃人が……。
『甘いにゃ。サチは50回は声をかけてるにゃ』
……張り合うなよ、頼むから。
『あのNPC、遠くからでも話しかけれるかな?』
『クリックすれば会話は可能だと思うにゃ。混雑は想定してただろうし、その配慮かにゃ?』
なるほど。
イベント用NPCはわかりやすく、オレンジ色の傘をさしている。キツネのような尻尾が見えるから、種族ごとでグラフィックが違うのかもしれない。
<<はあー、困ったな。でももう少しだけ待ってみよ>>
話しかけてみるとそう表示された。
『もう少しもう少しって、どんだけ待たされたと思ってるにゃ……』
サチさんご立腹です。まあ、昼頃から待って50回も話しかけてりゃ、こう言いたくもなるだろうな。
突如、目覚まし時計の音が響き渡った。画面に集中してたから一瞬ゲーム内かと思ったが、隣だ。
その後、慌てたような物音と共に音が止んだ。
……あ、兄貴いィィ……。浮かれてるのはわかるが、笑いをこらえるのがつらいから勘弁してくれ。
時刻は20時ちょうど。イベント開始時間にあわせて、アラームをセットしてたんだろう。
画面はさっき以上に騒がしくなっていて、話しかけられたらそのキャラのほうを向くNPCがあっち向いたりこっち向いたり大回転状態だ。
サチも真面目にテキストを読んでいるのか、反応がない。
さて、俺も声をかけてみるか。一体どんなイベントなんだ……?
<<うーん、やっぱりダメ、降らない! 三日前には降るハズだったのに……。あ、キミ冒険者だよね? ちょっといいかな、お願いがあるんだけど……>>
降るハズだった、ってのは、雨のことか。梅雨を吹き飛ばせってイベント名なのに、雨を降らせるためのクエストってどうなんだそれ。
そのままキャラの話を聞いていくと、モンスターを倒して、水の珠、というアイテムを手に入れてほしい、ということだった。
それがあれば晴れた天気のままでも、水不足にならないんだとか。夢のようなアイテムだな。現実でもそういうのほしい。
今日も雨だったし、明日もだ。梅雨時は本当にうんざりする。
『そっかぁ……もう梅雨。外では毎日、雨なんにゃね』
引きこもってる兄貴には、梅雨は関係ないらしい。
『サッちゃんは、雨は好き?』
『うーん、あまり好きじゃないにゃあ。サチはゲーム内ではこーんにゃ可愛らしいアバターにゃけど、現実ではスポーツ万能で勉強もできて、苦手なことなんてほとんどなかったにゃ。だから外に出られない雨は憂鬱だったにゃ』
って、おいおい、リアル自慢かよ……。一応ノっておくか。
『そうなんだ、すごーい!』
『ふふっ。こんなの信じちゃうなんて、アズちゃんは可愛いにゃあ。冗談にゃよ、冗談。サチは見たまま、バカワイイ子猫ちゃんにゃよ』
確かにゲームだけでの付き合いなら、さっきの発言が本当かどうかなんてわからない。ニャンニャン言ってるこの姿を見たら、普通にジョークだと思うだろうな。
でも俺は……現実での兄貴を知ってるから。今、言ったこと。それが本当だってわかってる。それを自慢するような性格じゃないってこともな。
それに、外に出られない雨が憂鬱だったなら、どうして引きこもってんだ? って話。真実はどうであれ、兄貴はハイスペックである自分が多分あんま好きじゃなかったんじゃなかろうか。だからこそ、別のキャラクターを演じてる。
人生順風満帆で悩みもなく明るく楽しく生きてきてるように見えたのにな。わからんものだ。
でもこうして、冗談に交えてでも現実のことをアズキに話してくれるなら、現実にも未練があるって思っていいよな? 今はちょっとネトゲ夢中になってるだけで、ちゃんと戻ってきてくれるよな? 今はこうして……俺も一緒にゲームを楽しんでいれば、それでいいよな?
俺、この手の自問自答、何回したら気が済むんだろ。兄貴がネットゲームから卒業するまでかな……。
『というか、普通に笑うと思ったのに、本気に思われてちょっと焦ったにゃ……。アズちゃんは純粋なんにゃね』
うっ。もしかして俺、探られてる? バレないようにしているとはいえ、俺と兄貴の部屋は隣同士。いつどんなキッカケでバレるかわからない。用心はしているつもりだが、ハイスペックすぎる兄貴はいつも俺の想像もつかないことをやってのけるからな。
ちなみに、ネトゲにはまってネカマやってるってのはその中でもダントツだ。
『だって、サッちゃん凄いもの! 呪文を唱えるタイミング、知識。現実でも頭いいんだろうなあって思うよ?』
『て、照れるにゃ……。アズちゃんも、ヒールのタイミング凄く気持ちいいにゃよ。サチ好みだにゃあ』
サチが照れてるって感じのエモーションを出す。本当に照れてるのかな。なんか可愛い。中身が兄貴だってわかってても可愛い。畜生、はまってるのは俺のほうだ。
わかってんだよ……。なんか、だんだん、混同してきてるって。今までどれだけゲームやっても、現実と一緒くたにしたことなかったのに。これがロールプレイの闇か。
『ネトゲこれが初めてって言ってたのに、結構詳しいしにゃ』
『それは少しでも、サッちゃんに追いつきたいなあって、勉強してるの』
はあ、度々心臓に悪い。知識をあまり表に出すのも控えておいたほうがよさそうだな。
『じゃあ、サチに近づくために頑張って、レベル上げしながらイベントしにいくにゃ!』
『うん』
そうして俺たちは、いそいそとアニマルパークを出た。
今回のイベントでは、専用のスイドロってモンスターがフィールド全域に現れるらしい。モンスターのレベルは20、35、50。それぞれ帽子の色が違くて、レベルが高い敵ほど水の珠を多く落とす。50個集めるごとに特殊な回復薬、500集めるとアバターアイテムである相合傘が手に入るんだとか。
その傘を使ってある儀式をする……。ことで、奉納完了。
『もうアズちゃんもレベル20だから、強いところでいいにゃね?』
『ヒールしてるだけになっちゃうけど……』
『クレリックはヒールをするのがお仕事にゃん。サチ、頑張ってモンスター倒すにゃね』
『ふふっ……頑張ってね』
『アズちゃんの声援で、元気100倍にゃよ!』
画面ではねる、ドットの猫耳キャラクター。人間の想像力ってのは逞しい。俺の目の前には、猫耳美少女がいるようにも、兄貴が猫耳つけてるようにも見え……いや、そっちはギャグだ。封印しとけ。思ったより似合うかも、とか考えるんじゃない。
兄貴はアズキを通して、どんな美少女を思い描いてるんだろ……。
ちらりちらりと気になってはいたことだったが、今になって無性に知りたくなった。画面の向こうには兄貴好みの、理想の女性像が映し出されてんのかな。そもそも、兄貴が好きな女のタイプって、どんなんだ? 浮いた噂のひとつもねーし、さすがにサチに訊くワケにもいかん。んなこと訊いたら、ネカマだって決め付けてるようなもんじゃねーか。
……でも気になる。ウズウズ……。
好きな男のタイプを訊いてみるとか? これなら不自然じゃない! って、そんなこと訊いてどーすんだよ俺。ゲーム内では女同士キャッキャした雰囲気にはなるかもしらんが、中身を考えるとゾッとするだけだ。いい歳した男二人が、好みの男のタイプについて話し合ってるなんて。
しかし、だ。女だったらと変換して、話してくれるような気もする。たとえば、笑顔の素敵な人とかそういう言い回しなら、男女どっちでも構わない。傾向は掴めるんじゃなかろうか。それに実はネカマなんだと暴露してくるかもしれない。
……いや、そりゃないか。ここまで完全にロールプレイしてるんだから。
『アズちゃんは、どんな男の人がタイプかにゃあ』
狩場までそんなことを悶々としながら考えていたら、サチからのこの問題発言ですよ。俺はどんな反応をすればいいんです?
これってやっぱ、その、兄貴が……アズキのことを気にしてるって考えていいんだろうか。
『私は結構理想が高いかな。頭がよくて、顔もよくて、身長も高くないと! それでいて優しい人』
ちなみに兄貴なら、この理想をすべて叶えられる。
俺はあくまでアズキとして答えている。あとは……。
『アウトドアが好きだから、アクティブな人だと嬉しいかも』
引きこもるなっつーこと。
『そ、想像以上に、理想が高いにゃね……』
『ウフフ。私もそれに見合った、美少女ですから』
はあ……。嘘が大きくなってく。まー、実際に逢うつもりはないから構わんだろう。
『でも、どうしてそんなこと……急に?』
『デロイにアズちゃんのタイプを訊いてほしいって頼まれたにゃ』
まさかの。ちょっ……リアルで、デスクトップ画面に額を打ちそうになったぞ。あの野郎。
兄貴が気にしてたんじゃねーのかよ。そもそもあのテンションバーンな男が、わざわざそんな回りくどいことしますかねえ。他人に任せず、自分で訊いてくんだろ。
『そっかあ。じゃあー、サッちゃんの好みの男性は?』
結局訊いてしまった……。いや、この流れだと、訊かないほうが不自然だし……。
兄貴が実は男なんだ、と言うはずはないと思うのに、なんだか酷くドキドキしてきた。心臓がやばい。
さあ、なんて答えるんだ、兄貴! じゃなくてサチ!
『もちろんレベルは50で最強装備で、立ち回りが上手い前衛さんかにゃ』
ちげーだろおおおおおおおおおおおお!
それ女性でも男性でも一緒だし! 百歩譲って、そういうプレイができる相手と結婚したいとか思ってるんだったらどうしよう。てか、デロイ? それデロイのことなの!? そんな嫁連れてこられても困ります!
俺だけ普通に答えさせておいて……。いや、確かに勝手に俺がリアルの話として答えただけで、兄貴は現実での男のタイプとは言わなかったが、なんか卑怯じゃね、これ。
『現実では?』
なので、突っ込んで訊いてみた。
『にゃはは。やっぱり見逃してもらえにゃいか。現実でなら、いつでもサチの傍にいてくれる人……かにゃ。なんか照れるにゃね』
いつでも……傍に……。
っ……な、なんで俺、自分思い浮かべてんだよ。確かにいつでも傍に? ってか、隣の部屋にいるけどよ。そういうこっちゃねーだろ。
いかん。兄貴がネカマなんてやってるからいけない。だからこんな、妙な連想するんだ。
でも『かっこよくてー、背が高くてー』みたいなバカっぽいこと言った俺よりは、なんかよっぽどマジっぽく聞こえる。
『サッちゃんって、寂しがり屋なんだね、可愛いv』
俺はそう打ち込みながらハートマークのエモーションを出してみた。
『うん、そうなんにゃ。だからアズちゃん、ずっと傍にいてね』
まったく動じてない。強い。
というか、待てよ……もしかしてこれって、アズキのことじゃねえか?
いや、でも俺は男性のタイプって言ったんだし! それに現実でいくら探したところで【アズキ】は存在しないんだ。傍にいてやるなんて、できるはずがない。言ってしまえばそれこそ、俺だ。俺なら傍に……いてやれるけどさ。
……なんて。こんなゲーム内の戯言に、何動揺してんだかな。
『私なら、ずっと傍にいるよ。サッちゃんの隣に』
正確には隣の部屋に。
サチは笑って、嬉しそうに、アズちゃん大好きにゃ、と言った。
アズキに惚れさせる予定だったんだから歓迎すべき事態のハズなのに、何故か俺の胸はきしりと痛んで。ログアウトしてしまいたいような気分になった。
0
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る
桜城 寧
BL
処刑された記憶とともに、BLゲームに登場する悪役会計に転生したことに気付いた主人公・カイル。
処刑されないために、チャラ男としての仮面を被り、生徒会長に媚びを売ったり、どうにか能力を駆使したりして生き延びようと必死になるが、愛された経験がなく、正しい人との距離感が分からないカイルは、無意識のうちに危うい振る舞いをしてしまう。
その言動や立ち回りは本人の自覚とは裏腹に、生徒会長をはじめ、攻略対象や本来深く関わるはずのなかった人物たちから過剰な心配や執着、独占欲を向けられていく。
ただ生き残りたいだけなのに、気付けば逃げ場のないほど色々な人に大切に囲われる話。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる