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本編
マリーちゃん
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明日でイベントが終わりだというのに、水の珠が思うように集まっていない……。
そして兄貴への恋心を自覚し、思い悩んだせいでほとんど寝ておらず、今日も長時間狩るのはキツそうだ。
兄貴と顔を合わせるのも気まずいが、これは問題ない。
何しろ恋の相手は引きこもり。まず部屋から出てこない。
ゲーム内でサチに会うのは……。
【アズちゃん、こんばんにゃー!】
うおっ。キラキラして見えるし、なんかいつもより可愛く見える。ただのアバターなのに。恋ってすげえ。
しかし、そんな俺の動揺など、画面には映らないのだ。
だからゲームする分には何も問題ない。寝不足で目はしぱしぱしてるけどな。
待ちかねたかのように現れたサチと、パーティーを組む。
『このマント、見て見て。ムーンシャインシリーズにゃ。ボスから出たのにゃ。たまにキラキラエフェクトがかかるのが可愛くて』
『そ、そうなんだ』
システム的なキラキラだった。
『ところでアズちゃん、気づいていると思うけど、イベントのペースが結構ギリギリにゃ』
『う、うん』
『アズちゃんは、ログインするたびにこれしかしていないから、モチベーションも落ちているにゃね?』
『実はそうなの。サッちゃんと狩れるのは楽しいんだけどね。思うようにも集まらないし……』
自分で集めるって言い出すかな。ここまで頑張ったのに。
きっと俺の分まで集めてくれようとするだろう。優しいサチ……いや、兄貴のことだから。
『フッフッフ。なので今日は助っ人さんを呼んだにゃ。イベントアイテムはたくさん集まるし、新鮮さがあって楽しくなる! こういうのもイベントの醍醐味にゃよ!』
『助っ人……って、ロイ?』
『デロイだけだとイマイチ新鮮味にかけるからにゃー。マリーちゃんも呼んだにゃ!』
新しい名前が出てきた!! 第二のフレさんか。
俺にとってはロイだけでも新鮮な刺し身をワンコそば状態で食わされてる気になるんだが、更に濃いヤツが増えそうな予感がする。
『マリーちゃんはデロイのフレさんで、たまに一緒に狩るのにゃ』
『サッちゃんはそのマリーちゃんて人とフレじゃないの?』
『サチは、相手に言われない限りフレンドは埋めないことにしてるのにゃ』
そういやサチは慣れ慣れしい割には、一言もフレンドになろうとは言ってこなかったっけ。言い出したのは確か俺からだ。
『多分マリーちゃんも自分からはフレなろって言い出さないタイプにゃ。そして気づけばずるずると狩りだけの関係を続けているのにゃ……』
なんかセフレみたいな言い方だな……。
『マリーちゃんのクラスと種族は?』
『天使のアサシンさんにゃ』
『天使のアサシン……』
自分に酔っていて、ロールプレイ大好きそう……。
種族特性の関係上、天使はアサシンには向いてないとされているから、完全に好みで選んだのだろう。
ちなみにアサシンは中衛クラスで、攻撃力高いが防御は紙、鍵のかかった宝箱の解錠や罠を事前感知できるがシーフよりも確率は低め。という、器用貧乏タイプだ。
『でも私、あんまり強くないし平気かなあ』
『クレリックは多少弱くても大丈夫にゃあ。デロイという肉盾もいるし』
『わかった。頑張る。待ち合わせ場所はアニマルパークでいいのかな?』
『うん、10分後に預かり所前に集合だから、よろしくにゃ』
人間、天使、悪魔、獸人は兎、犬、猫という感じなので、圧倒的に獸人プレイヤーが多い。だから大体の待ち合わせはここアニマルパークになっているらしい。
狩りに行く前に待ち合わせをしている姿や、臨時パーティーの募集を叫ぶ姿がよく見受けられる。
サチはちょっとスペルスクロール買ってくるにゃと言い残して姿を消したので、先に預かり所の前で待っていた。
その間、隣の部屋に聞こえないように軽くストレッチする。
人と狩るならいつもより長めになるだろうし、少しでも身体をほぐしておかねば。
「ねえ、さっきあそこにいたの、ロイさんじゃない?」
「うんうん、素敵だよねー」
画面を見ながら腕を伸ばしていると、悪魔の女キャラ二人がヒソヒソとオープンチャットで耳を疑うような会話をしていた。
……あいつはロイつっても実際には略称だし、ロイ違いだよな、うん。
「頼りになるし、ウザかっこいい(笑)」
「うん、かっこいい(笑)」
……間違いなくあのロイだな。ネトゲ内では大体の奴が笑にwを用いるのに、わざわざカッコワライってつけてるし。
待ち合わせしてんのにヤダなー。逃げてえ。サチと組んでる時点で、見られる対象だろうから今更かもしれんが……。
「オレのウワサかな! レディちゃんたち!」
「きゃー!」
「きゃああwwww」
突如わいて出たロイに、女キャラは二人ともバタバタと逃げていった。
「アズキちゃん、待った? お誘いありがとう! サチはまだ来てないんだな。一緒じゃなかったんか?」
話しかけられた。今は傍に寄られたくない気分だったがしかたない。
ストレッチ終了っと……。
「はい。今スペルスクロール買いに行ってます」
「いやー、ウフフ。人気者は困るねえ」
「困るんですか?」
「めっちゃ嬉しい!」
素直だ。若干、馬鹿にされていた気もするが、それでも嬉しいのか。
よく注意してみれば、他にも遠巻きにこちらを見ていそうなキャラがちらほらいる。
さっきみたいにオープンチャットで話していればわかるが、パーティチャットなどで会話している奴が大部分だから、俺がそう感じるだけで真実は謎だ。
「もしかしてロイさんって本当に人気者?」
「当然だ。モテる男はつらいね。どこでも駆けつけてくれる、強い、頼りになる、24時間いつでもいるなどなどと大評判のロイさんだよ!」
後ろから、よっ、廃人! と野次が飛んだ。俺のほうがいたたまれない気分になる。24時間いるのはまずいだろう、いろいろと。
さっさとパーティチャットにしたいが、リーダーであるサチがくるまで組めない。フレンドチャットで会話すればいい話だが、オープンで話しかけられるとなんとなく変えにくいものなのだ。
「フレンド枠もほとんど埋まってて毎日入れ替わり立ち替わりにデートのお誘いが。オレ様超リア充!」
それ、俺の知ってるリア充と違う。
「……あの、ところで、マリーさんという方は一緒じゃないんですか?」
話題を変えてみた。
「ああ、マリゴね。今すぐ来るよー」
マリコじゃなくてマリゴなのか。これも略称かな。
「うん、来たよー」
そう言ってすぐさま現れたのは、男の天使だった。
マリーちゃん、天使、というイメージからすっかり女だと思い込んでいたから、やや面食らう。
「マリーゴールドさん、初めまして。アズキです」
「キミがアズキちゃんか! フフ……ロイからお噂は聞いてるよ」
「マリゴ、余計なことは言うなよ」
なんだかやたらと仲がよさそうだな。ロイはフレンドを作るなら女キャラオンリーって感じがするからちょっと意外。
女キャラが来るだろうって思ってたのは、そのせいでもある。
しかし、俺の噂って……。ロイは何を話してるんだ?
「あっ、もうみんな集まってる。遅くなってごめんにゃ!」
ようやく兄貴……サチが来て、全員が揃う。これでパーティが組めて、周りに会話を見られることもなくなった。
よかった……。なんだか、やたらと視線を感じる気がするからな。
パーティーを組んで、マリーのステータスが見られるようになった。案の定、カンスト済だ。弱いの俺だけ。
基本的にクレリックはパーティ内に一人は必要で、多少弱くても回復さえできれば問題はない。スキルの取り方によってはレベルが高くないとキツイが、俺の振り方は元々ひとりでは狩れないパーティ仕様だ。サチと組むためにそうしていたのが幸いした。
『足を引っ張るとは思いますが、今日はよろしくお願いします』
『わー、凄い。サチにゃんの相方なのに普通なコだ』
サチにゃん!? サチにゃんとか呼ばれてんのか兄貴……。
『あ、僕の名前は長いから適当に略して呼んでくれていいよ』
マリーは雰囲気に関してはロイやサチほど濃いキャラクターには見えない。でも名前と性別、天使でアサシンというクラスであることから見て、ギャップが好きなタイプであろうことは窺える。
そして装備もやっぱり廃人装備だ……。そこは歪みねえな。
『はい、マリーさん』
『よろしくね、アズキちゃん』
簡単に挨拶をかわし、目当ての狩場近くまでテレポート。強めのイベントモンスターは狩場奥に生息しているが、移動時間を含めても効率はいいらしい。サチと二人ではレベル30のイベントモンスターが限界だから、レベル50が狩れるだけでもありがたい。
途中に出てくる雑魚モンスターはマリーの衝撃波で全滅する。アサシンのスキル振りは単体への一撃必殺を取る奴がほとんどだが、マリーは範囲攻撃スキルを中心に上げていると言っていた。ひたすらに、王道から逆を進むタチらしい。
『さて、助っ人に駆り出されたわけだけど……。二人は今、どれくらい進んでいるの?』
『残り150ってとこにゃね』
『わぉ。それは確かにキツイねえ』
『サチはアズキちゃんのために、一緒にゆっくり集めてるんだもんな!』
『へえ~そういう関係いいな。憧れるなー』
マリーは純粋に言っているのかもしれないが、サチのイベントが終わっていないのは確実に俺のせいなので、申し訳ない気分になってくる。
それに、よく考えたらこの二人は終わってるんだろ? つまり今日はつきあわせちまってるってことだ。
『二人はもう終わっているのに、つきあわせてごめんなさい』
『いやいや、逆にオレたちは助かるぜー。今回のイベントアイテム、回復薬に換えられるからさあ、貯めておけると無茶できていい感じ。クレリックと一緒の時じゃねーとなかなかたまんねーしな』
『そうそう、耐久のない僕でもソロできるようになるしねー』
気を遣ってくれているのかもしれないが、そう言ってもらえると心が安まる。
『マリリンはマジ、耐久力ねーからなー、ププッ』
『マリリンって呼ぶのやめろって言ってるだろ、このガチムチデブ!』
『酷い! デブだなんて! それはただの悪口じゃん!』
デブは単に貴方の名前の頭二文字ですが……。
『あ、狩場見えてきたよ。それじゃあ、二人が無事イベント達成できるように頑張りますかね』
『おう。黙って俺についてこいいいいいい! ひゃっはああああああああああ!』
『お前が黙れ』
『デブって言うな!!!!!!』
『言ってないだろ!!!!!!!』
マリーちゃんとロイ、本当に仲いいな。でも……なんつーか。サチと二人でしっぽり狩るのも楽しいが、こういうふうにわいわいするのも楽しい。特に二人の会話、コントみたいだしな。
俺も突っ込みを入れたいところだが、神タイピング速度に追いつかないという。サチはどう突っ込みを入れたらいいのかわからない様子だ。
まあ、もし俺のタイピングが早かったとしても、アズキはツッコミを入れるタイプではない。ここはしとやかに、女性らしく、三人を回復するとしますかね。
『ヒール!』
『んっ? オレ様全快よ、アズキちゃん』
『はわわ、ごめんなさい!』
『はわわだって、ウサ子たまんねえな!』
うおおー、つい! 俺きめぇぇ!
というかだな、回復対象が自分含め4人いると意外と慌てる。
普段サチとペアしかしてないし、ロイは存在感ありすぎにもほどがある。ついヒールするのもしかたない。
つうか、マリーちゃん回避高ッ! ロイも堅いが、マリーはまず喰らわないから、ヒールの必要がほぼないレベル。
そのかわり減る時はサチ並に減る。怖い。
あと、天使だからだと思うが……魔法防御が高いらしく、傘持ちイベント敵に関しては盾にもなれる。回避特化アサシンなのか。面白いな。
ロイのほうは安定した強さ。とにかく脳筋。肉盾。ブルドーザー。いやお前、突っ込みすぎだ。
『大丈夫かい、オレのウサ子ちゃん!』
『僕の前に敵はないッ!!』
『オレ様の前にひれ伏しなぁぁぁ!!』
『僕の刃にかかれたことを光栄に思うんだね』
『ウサ子ちゃん、可愛く癒やしてプリーズ!』
しかし、やかましいな、この二人は。
マリーちゃんもやはり同類だったか……。
『……サチも何か決めセリフ言ったほうがいいにゃ?』
『どうでも……いいんじゃないかな』
俺は戦闘でいっぱいいっぱいなのに、チャットログの流れる速度がヤバすぎる。
サチにも余裕はありそうだったが、結局決めセリフは言わず、ただ黙々と狩っていた。
……可愛く優しく、貴方の心まで癒やしますね!
………………やめておこう。
そして兄貴への恋心を自覚し、思い悩んだせいでほとんど寝ておらず、今日も長時間狩るのはキツそうだ。
兄貴と顔を合わせるのも気まずいが、これは問題ない。
何しろ恋の相手は引きこもり。まず部屋から出てこない。
ゲーム内でサチに会うのは……。
【アズちゃん、こんばんにゃー!】
うおっ。キラキラして見えるし、なんかいつもより可愛く見える。ただのアバターなのに。恋ってすげえ。
しかし、そんな俺の動揺など、画面には映らないのだ。
だからゲームする分には何も問題ない。寝不足で目はしぱしぱしてるけどな。
待ちかねたかのように現れたサチと、パーティーを組む。
『このマント、見て見て。ムーンシャインシリーズにゃ。ボスから出たのにゃ。たまにキラキラエフェクトがかかるのが可愛くて』
『そ、そうなんだ』
システム的なキラキラだった。
『ところでアズちゃん、気づいていると思うけど、イベントのペースが結構ギリギリにゃ』
『う、うん』
『アズちゃんは、ログインするたびにこれしかしていないから、モチベーションも落ちているにゃね?』
『実はそうなの。サッちゃんと狩れるのは楽しいんだけどね。思うようにも集まらないし……』
自分で集めるって言い出すかな。ここまで頑張ったのに。
きっと俺の分まで集めてくれようとするだろう。優しいサチ……いや、兄貴のことだから。
『フッフッフ。なので今日は助っ人さんを呼んだにゃ。イベントアイテムはたくさん集まるし、新鮮さがあって楽しくなる! こういうのもイベントの醍醐味にゃよ!』
『助っ人……って、ロイ?』
『デロイだけだとイマイチ新鮮味にかけるからにゃー。マリーちゃんも呼んだにゃ!』
新しい名前が出てきた!! 第二のフレさんか。
俺にとってはロイだけでも新鮮な刺し身をワンコそば状態で食わされてる気になるんだが、更に濃いヤツが増えそうな予感がする。
『マリーちゃんはデロイのフレさんで、たまに一緒に狩るのにゃ』
『サッちゃんはそのマリーちゃんて人とフレじゃないの?』
『サチは、相手に言われない限りフレンドは埋めないことにしてるのにゃ』
そういやサチは慣れ慣れしい割には、一言もフレンドになろうとは言ってこなかったっけ。言い出したのは確か俺からだ。
『多分マリーちゃんも自分からはフレなろって言い出さないタイプにゃ。そして気づけばずるずると狩りだけの関係を続けているのにゃ……』
なんかセフレみたいな言い方だな……。
『マリーちゃんのクラスと種族は?』
『天使のアサシンさんにゃ』
『天使のアサシン……』
自分に酔っていて、ロールプレイ大好きそう……。
種族特性の関係上、天使はアサシンには向いてないとされているから、完全に好みで選んだのだろう。
ちなみにアサシンは中衛クラスで、攻撃力高いが防御は紙、鍵のかかった宝箱の解錠や罠を事前感知できるがシーフよりも確率は低め。という、器用貧乏タイプだ。
『でも私、あんまり強くないし平気かなあ』
『クレリックは多少弱くても大丈夫にゃあ。デロイという肉盾もいるし』
『わかった。頑張る。待ち合わせ場所はアニマルパークでいいのかな?』
『うん、10分後に預かり所前に集合だから、よろしくにゃ』
人間、天使、悪魔、獸人は兎、犬、猫という感じなので、圧倒的に獸人プレイヤーが多い。だから大体の待ち合わせはここアニマルパークになっているらしい。
狩りに行く前に待ち合わせをしている姿や、臨時パーティーの募集を叫ぶ姿がよく見受けられる。
サチはちょっとスペルスクロール買ってくるにゃと言い残して姿を消したので、先に預かり所の前で待っていた。
その間、隣の部屋に聞こえないように軽くストレッチする。
人と狩るならいつもより長めになるだろうし、少しでも身体をほぐしておかねば。
「ねえ、さっきあそこにいたの、ロイさんじゃない?」
「うんうん、素敵だよねー」
画面を見ながら腕を伸ばしていると、悪魔の女キャラ二人がヒソヒソとオープンチャットで耳を疑うような会話をしていた。
……あいつはロイつっても実際には略称だし、ロイ違いだよな、うん。
「頼りになるし、ウザかっこいい(笑)」
「うん、かっこいい(笑)」
……間違いなくあのロイだな。ネトゲ内では大体の奴が笑にwを用いるのに、わざわざカッコワライってつけてるし。
待ち合わせしてんのにヤダなー。逃げてえ。サチと組んでる時点で、見られる対象だろうから今更かもしれんが……。
「オレのウワサかな! レディちゃんたち!」
「きゃー!」
「きゃああwwww」
突如わいて出たロイに、女キャラは二人ともバタバタと逃げていった。
「アズキちゃん、待った? お誘いありがとう! サチはまだ来てないんだな。一緒じゃなかったんか?」
話しかけられた。今は傍に寄られたくない気分だったがしかたない。
ストレッチ終了っと……。
「はい。今スペルスクロール買いに行ってます」
「いやー、ウフフ。人気者は困るねえ」
「困るんですか?」
「めっちゃ嬉しい!」
素直だ。若干、馬鹿にされていた気もするが、それでも嬉しいのか。
よく注意してみれば、他にも遠巻きにこちらを見ていそうなキャラがちらほらいる。
さっきみたいにオープンチャットで話していればわかるが、パーティチャットなどで会話している奴が大部分だから、俺がそう感じるだけで真実は謎だ。
「もしかしてロイさんって本当に人気者?」
「当然だ。モテる男はつらいね。どこでも駆けつけてくれる、強い、頼りになる、24時間いつでもいるなどなどと大評判のロイさんだよ!」
後ろから、よっ、廃人! と野次が飛んだ。俺のほうがいたたまれない気分になる。24時間いるのはまずいだろう、いろいろと。
さっさとパーティチャットにしたいが、リーダーであるサチがくるまで組めない。フレンドチャットで会話すればいい話だが、オープンで話しかけられるとなんとなく変えにくいものなのだ。
「フレンド枠もほとんど埋まってて毎日入れ替わり立ち替わりにデートのお誘いが。オレ様超リア充!」
それ、俺の知ってるリア充と違う。
「……あの、ところで、マリーさんという方は一緒じゃないんですか?」
話題を変えてみた。
「ああ、マリゴね。今すぐ来るよー」
マリコじゃなくてマリゴなのか。これも略称かな。
「うん、来たよー」
そう言ってすぐさま現れたのは、男の天使だった。
マリーちゃん、天使、というイメージからすっかり女だと思い込んでいたから、やや面食らう。
「マリーゴールドさん、初めまして。アズキです」
「キミがアズキちゃんか! フフ……ロイからお噂は聞いてるよ」
「マリゴ、余計なことは言うなよ」
なんだかやたらと仲がよさそうだな。ロイはフレンドを作るなら女キャラオンリーって感じがするからちょっと意外。
女キャラが来るだろうって思ってたのは、そのせいでもある。
しかし、俺の噂って……。ロイは何を話してるんだ?
「あっ、もうみんな集まってる。遅くなってごめんにゃ!」
ようやく兄貴……サチが来て、全員が揃う。これでパーティが組めて、周りに会話を見られることもなくなった。
よかった……。なんだか、やたらと視線を感じる気がするからな。
パーティーを組んで、マリーのステータスが見られるようになった。案の定、カンスト済だ。弱いの俺だけ。
基本的にクレリックはパーティ内に一人は必要で、多少弱くても回復さえできれば問題はない。スキルの取り方によってはレベルが高くないとキツイが、俺の振り方は元々ひとりでは狩れないパーティ仕様だ。サチと組むためにそうしていたのが幸いした。
『足を引っ張るとは思いますが、今日はよろしくお願いします』
『わー、凄い。サチにゃんの相方なのに普通なコだ』
サチにゃん!? サチにゃんとか呼ばれてんのか兄貴……。
『あ、僕の名前は長いから適当に略して呼んでくれていいよ』
マリーは雰囲気に関してはロイやサチほど濃いキャラクターには見えない。でも名前と性別、天使でアサシンというクラスであることから見て、ギャップが好きなタイプであろうことは窺える。
そして装備もやっぱり廃人装備だ……。そこは歪みねえな。
『はい、マリーさん』
『よろしくね、アズキちゃん』
簡単に挨拶をかわし、目当ての狩場近くまでテレポート。強めのイベントモンスターは狩場奥に生息しているが、移動時間を含めても効率はいいらしい。サチと二人ではレベル30のイベントモンスターが限界だから、レベル50が狩れるだけでもありがたい。
途中に出てくる雑魚モンスターはマリーの衝撃波で全滅する。アサシンのスキル振りは単体への一撃必殺を取る奴がほとんどだが、マリーは範囲攻撃スキルを中心に上げていると言っていた。ひたすらに、王道から逆を進むタチらしい。
『さて、助っ人に駆り出されたわけだけど……。二人は今、どれくらい進んでいるの?』
『残り150ってとこにゃね』
『わぉ。それは確かにキツイねえ』
『サチはアズキちゃんのために、一緒にゆっくり集めてるんだもんな!』
『へえ~そういう関係いいな。憧れるなー』
マリーは純粋に言っているのかもしれないが、サチのイベントが終わっていないのは確実に俺のせいなので、申し訳ない気分になってくる。
それに、よく考えたらこの二人は終わってるんだろ? つまり今日はつきあわせちまってるってことだ。
『二人はもう終わっているのに、つきあわせてごめんなさい』
『いやいや、逆にオレたちは助かるぜー。今回のイベントアイテム、回復薬に換えられるからさあ、貯めておけると無茶できていい感じ。クレリックと一緒の時じゃねーとなかなかたまんねーしな』
『そうそう、耐久のない僕でもソロできるようになるしねー』
気を遣ってくれているのかもしれないが、そう言ってもらえると心が安まる。
『マリリンはマジ、耐久力ねーからなー、ププッ』
『マリリンって呼ぶのやめろって言ってるだろ、このガチムチデブ!』
『酷い! デブだなんて! それはただの悪口じゃん!』
デブは単に貴方の名前の頭二文字ですが……。
『あ、狩場見えてきたよ。それじゃあ、二人が無事イベント達成できるように頑張りますかね』
『おう。黙って俺についてこいいいいいい! ひゃっはああああああああああ!』
『お前が黙れ』
『デブって言うな!!!!!!』
『言ってないだろ!!!!!!!』
マリーちゃんとロイ、本当に仲いいな。でも……なんつーか。サチと二人でしっぽり狩るのも楽しいが、こういうふうにわいわいするのも楽しい。特に二人の会話、コントみたいだしな。
俺も突っ込みを入れたいところだが、神タイピング速度に追いつかないという。サチはどう突っ込みを入れたらいいのかわからない様子だ。
まあ、もし俺のタイピングが早かったとしても、アズキはツッコミを入れるタイプではない。ここはしとやかに、女性らしく、三人を回復するとしますかね。
『ヒール!』
『んっ? オレ様全快よ、アズキちゃん』
『はわわ、ごめんなさい!』
『はわわだって、ウサ子たまんねえな!』
うおおー、つい! 俺きめぇぇ!
というかだな、回復対象が自分含め4人いると意外と慌てる。
普段サチとペアしかしてないし、ロイは存在感ありすぎにもほどがある。ついヒールするのもしかたない。
つうか、マリーちゃん回避高ッ! ロイも堅いが、マリーはまず喰らわないから、ヒールの必要がほぼないレベル。
そのかわり減る時はサチ並に減る。怖い。
あと、天使だからだと思うが……魔法防御が高いらしく、傘持ちイベント敵に関しては盾にもなれる。回避特化アサシンなのか。面白いな。
ロイのほうは安定した強さ。とにかく脳筋。肉盾。ブルドーザー。いやお前、突っ込みすぎだ。
『大丈夫かい、オレのウサ子ちゃん!』
『僕の前に敵はないッ!!』
『オレ様の前にひれ伏しなぁぁぁ!!』
『僕の刃にかかれたことを光栄に思うんだね』
『ウサ子ちゃん、可愛く癒やしてプリーズ!』
しかし、やかましいな、この二人は。
マリーちゃんもやはり同類だったか……。
『……サチも何か決めセリフ言ったほうがいいにゃ?』
『どうでも……いいんじゃないかな』
俺は戦闘でいっぱいいっぱいなのに、チャットログの流れる速度がヤバすぎる。
サチにも余裕はありそうだったが、結局決めセリフは言わず、ただ黙々と狩っていた。
……可愛く優しく、貴方の心まで癒やしますね!
………………やめておこう。
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