11 / 29
本編
クリスマスの話2(R15
しおりを挟む
首筋に跡が残らない程度に柔らかく何度か吸い付いて、邪魔なネクタイをほどく。
「白いタキシードだと花婿に悪戯してるみたいで、ちょっと背徳感ありますね」
一応床は綺麗に掃除してるけど、畳の跡がついたり、ささくれたところに引っかけやしないかと少し心配になる。なんせ、無茶苦茶高そうだ、これ……。
「なら、君が花嫁さんかな」
「僕は花嫁から貴方を強奪した男の役ですよ」
「強奪? 想像できない」
「そんなおとなしそうに見えますか、僕」
「そうではなくて。私の隣にいる相手は、元から君以外ないと思うから」
なんという殺し文句を吐いてくれるんだ。ウェディングドレスでもなんでも着てやりたくなるだろ。
照れもないってことは素で言ってるのか、これ。
「わかりました。僕が花嫁でいいです。旦那さんを美味しくいただきます」
「それって逆じゃあ……」
シャツの上から胸の辺りを舐めると、うっすら透けて赤く色づく。卑猥で凄くやらしい。東吾さんの肌は、肌色というよりは本当に白に近くて透き通るみたいで綺麗。
さっき貰った薔薇の花でも散らしたら白い肌とタキシードに映えてさぞかし背徳さが増すことだろう。
「ん……」
「気持ちいいですか?」
「よ、よく、わからない。でも君が触れていると思うと嬉しい」
うう、可愛い。いつかキッチリ開発しよ……。
触るだけって言ったのに、東吾さんの身体は緊張で強張ってガチガチだ。信用されてないわけじゃない……と思いたい。
目の辺りに唇を近づけると反射的に閉じたので、瞼に口づけを落とす。
「緊張してます?」
「少し」
「うーそ。固まりすぎですって」
身体をぎゅっと抱き締めたり、手をにぎにぎしたりしながらマーキングするように肌を擦りあわせる。あとはこっちからねだって、頬を触ってもらったりしていると、ようやく恋人同士っぽいイチャイチャになってきた。
うん、ツキアイハジメ、なんだから、やっぱりこれくらい甘ったるくないと。
それからしばらく中学生みたいなスキンシップを楽しんでいたんだけど、そこはやはり大人の男二人だ。身体が後にはひけないような状態になってきた。
僕はこの先にある快感を知っている。でも東吾さんがどんな反応をするか、どんな声を上げるか、どんな顔でイクかは知らない。そして、とても知りたいと思う。
貴方が凄く欲しいよってことを、足に擦り付ける形で伝えると、東吾さんの顔がさっと朱に染まった。
「せ、せーた」
「東吾さんの手でシテほしいな。だめ?」
こくりと白い喉が上下したのがわかる。跡をつけないように加減したつもりだったけど、いくつかキスマークがついちゃってる。跡が残りやすいのかもしれない。
「その……じゃあズボン、を」
「はい。東吾さんが脱がせてください」
きちっとした東吾さんの格好と違って僕はパーカーに緩めのズボン。ウエストはボタンですらなくゴム。手を突っ込めば普通に触れると思う。
脱がすほうがエロいことしてる感じになるかなーと思ってなんとなく言ったけど、ちんこが生えてるのはもうどうしようもないとして、どうしたって男の足だし、そんなに濃くはないほうだけど脛毛も生えてる。
見てしまえば、王子様にかかった魔法がとけてしまうかもしれない。
「あー……。待ってください。やっぱり脱がすのはナシで、このまま上から」
「どうして?」
「男の身体だから、東吾さん気持ち悪くなるかもしれないなって」
「……私の身体を見たら、せーたも気持ち悪くなるかな?」
「それはないです」
「同じことだよ」
「じゃあ、見たいんですか? 僕の裸」
胸もない。細い、筋ばった身体。どう考えても、見たって楽しくなさそう。
東吾さんは同じ男として見惚れるような身体つきをしてると思う。足長いし、バランスもとれてて、筋肉はついているのにすらりとしていてモデルみたい。いや、もはや芸術の域。
貧相な僕の身体とは全然違う。だから引き合いに出すのも、おかしい気がする。
「せ、せーたは見たいと思うのかい?」
「また質問を返すんです? 見たいです。もう滅茶苦茶見たいです。言ったんだから、脱がせていいですよね」
「わっ、ちょっ……と待って」
ベルトを外してズボンを脱がすと、反応した股間が柔らかそうなトランクスを持ち上げていた。
東吾さんも興奮してくれてるんだとわかって嬉しくなる。……けど、デカッ。これは予想外の大きさ。下着の上からだけど、きっとマックスじゃないよな、これ。
東吾さんが望むのなら僕が掘られる側でもいいやと思ってたけど無理。これはもう物理的に無理。東吾さんが怖がっていた理由もわかった気がする。自分のを参考にしていたら、それは入らないと思っても仕方ないよ、うん。
「東吾さん、安心してください」
「え、な、何?」
東吾さんはおたおたしながら、ズボンを引き上げようと躍起になっている。
「僕のはそんなに大きくないから、するっと入ると思うんです」
「何の話だ。それより、私だけ脱がすなんて狡いじゃないか」
思わぬ反撃。東吾さんのズボンを下げたまま押さえていた僕の手は、その行動を阻止できなかった。ずるりと下げられた。下着まで落ちなかっただけまだいいけど、想像以上に恥ずかしい。
なんだこのノリは。これじゃ恋人同士ってより、ガキのじゃれあいだ。
「あれ……反応してない……?」
えー……っ。普通に勃ってるんですけど。これでも標準サイズのつもりだったんですけどダメ泣きたい。
……パンツが。
そう、今日のパンツは厚手だから……。
「さ、触って、ください」
どうせいつかはバレることだ。ここで気まずくなるなら、下手な言い訳せずに触ってもらったほうがいい。
東吾さんのズボンを脱がせた途端に萎えたなんて妙な誤解をされたら最悪だし。
手を引いて半ば無理矢理触らせると、東吾さんがハッという表情をして、確認するように僕のそこを揉んだ。
申し訳なさそうな顔をされると、かえって傷つくんですが。
「せーた」
「ん……」
宥めるように、キスをされる。パンツの隙間から指先が忍び込んで、僕のそれに直接触れた。
「あ……。気持ちい……」
「良かった。ちゃんと反応してて」
「いえ……」
何も言われないと、僕のほうが気になってしまう。
そもそも、あんまり大きくないって前置きしたのに。
「すみません。僕の、勃ってることに気づけないくらい、小さくて」
「ち、違うんだ。人のなんて見たことなかったから……。それに私は、せーたの好きだよ」
東吾さん今自分がとんでもないこと口にしてるってわかってんのかな。僕のちんこが好きって言ってるんだけど。しかも扱きながらとか。
焦ってる故の発言だとしても、僕を煽るには充分すぎ。
「ほんとに? もう一度好きって言ってください」
「好きだよ」
天使か……。
「もう一度。僕の何が好きか、きちんと言ってください」
「せーたの……」
あ、気づいた。
東吾さんは茹で蛸みたいに真っ赤になって、僕のパンツからバッと手を引き抜いて畳に転がる。
「違うんだ……!」
「違うんですか?」
「……ち、違わない、けど……そういう、その」
まいった。可愛すぎます。もう降参。
顔を両腕で覆ってしまってる東吾さんにのしかかって、反撃開始。
半脱ぎになっているズボンを下着ごと引き下ろすと、想像以上に大きなものが目の前に現れた。
でも。全然グロテスクなんかじゃなくて、凄い綺麗。嫌悪感なんて微塵もない。
この王子様に巨大で凶器みたいな形のモノがぶら下がっていたらそれはそれでエロくて興奮するかもと思うくらいには盲目気味なんだけど、そんな色眼鏡を差し引いても可愛らしかった。可愛らしいと言っても皮をかぶってるわけじゃない。くすんでないピンク色で、バランスのいい形をしてるってことだ。
陰毛も薄い上に金色だし、脛毛もそうだからまるで彫刻か何かみたい。
「僕も東吾さんの好きだな」
「あ……あっ」
東吾さんは口をパクパクさせて、眼前に晒されたそれを見て固まっている。
「見せるのも初めてとか?」
「お、大人になって、からは……」
指先で先端からつうっとなぞると、少しだけ粘り気のある滴が溢れた。
「東吾さんも気持ちいい?」
「ん……。で、でも死ぬほど、恥ずかしい。触られてるのも、こんなところを見られているのも」
恥ずかしがる姿がもっと見たくて、手のひらで包み込むように擦りあげる。ぬるぬるしてきて、触ってるだけなのに僕まで気持ちいい。
「あ、まっ……。待って、本当に恥ずかしいから」
「なら、東吾さんも、また触ってください。そうしたら恥ずかしくなくなりますよ」
ん、と頷いて、東吾さんが再び僕に触れた。パンツの中がグショグショで気持ち悪かったから、自分で脱ぐ。
東吾さんの手が、器用に僕のモノを擦り上げる。その動きで、相手の好きなトコロがなんとなくわかる。確認するように擦ってくる場所は、きっと東吾さんが感じるトコ。
男同士だから、手コキはさすがにツボを得ていて気持ちいい……。けど、近くに並んでしまうと、差が歴然だ。大きさの。
穴があったら入りたくなるのは、まさにこんな時だろうか。いやまあ普通に挿れたいけど。
胸に顔を埋めて何度か吸いつくと、びくびくと身体が震える。気持ちいいのかなと思って表情を見ようと上を向いたら、東吾さんから唇を重ねてくれた。
「っ……。恥ずかしく、なくなりました?」
「恥ずかしい、けど。気持ちいい……。それに、せーたが、可愛い……」
東吾さん、とろけた顔、してる。僕も今こんな顔見せてるのかな。
下半身からぬちぬちと粘着質な水音が響く。安普請だから隣の部屋に聞こえてしまいそうだ。
気持ちよくて喘いじゃいそうなんだけど、声はなんとかこらえてる。東吾さんもたまに声をあげかけては、息と一緒に飲み込む。我慢しないでいいんですよって煽るには、壁の厚さが足りない。
はっはっ、と短く切るような吐息だけでも興奮するけど、やっぱり声……聞きたかったな。
「ごめん、せーた。もう、あまりもたない」
「いいですよ。僕ももう……」
東吾さんの肌、興奮するとほんのり赤く染まるんだ。想像通り、凄く綺麗。
イキそうになったら目をぎゅっとつぶってしまうかと思ってたのに、欲情を隠さない瞳でじっと僕を見てる。
「っ……せーた」
その瞬間に僕の名前を呼んだ東吾さんに引きずられるようにして、僕も果てた。熱い液体が断続的に出て手を汚す。
わー……。東吾さんをイカせてしまった。これが、東吾さんの。
いや、僕も出してるし、シテもらったんだけど。
出したら冷静になると思ったのに幸せと熱がじわじわやばい。
幸福を噛みしめ……る前に。
「東吾さん、ティッシュ! 拭いてください! 畳に垂れそう!」
「あ、こ、これで!」
「ちょ、タキシードで拭くのはまずいです!」
タオルでも敷いておけば良かった。余韻もクソもない。
でも畳に落ちると拭くのが大変なんだ。これがまた、僕のも東吾さんのも結構濃くて量も多くて。
ようやく手を拭いて、畳も無事でふうって息ついて、顔を見合わせる。思わず笑ってしまった。
「すみません。せっかくなのに、ムードなくて」
「気まずくなるよりは、よっぽどいい。せーた、可愛かったし」
ごそごそとズボンを引き上げながら、東吾さんも笑顔を見せる。頬はまだちょっと赤い。
僕の下着はとても穿ける状態じゃなかったので、そのままズボンを穿いた。ジーパンじゃないからまだマシだけど、布地がごわごわする。
「また、したいって思ってくれました?」
東吾さんは素直に頷いた。
「それに……せーたに触りたいって気持ちが、さっきよりもずっと強くなった。もやもやしてた感情が、ストンって納まった気がする」
「良かった」
僕も同じだ。ちょっとエッチなことをしただけなのに、この人は僕のものなんだって強く感じる。
……あと、なんか。責任取らなきゃみたいな気持ち。
「もっと触ってもいいんですよ?」
「そうしたいのはやまやまなんだけれど、これ以上したら頭の中がパンクしそうなんだ」
残念ながら王子様はキャパオーバーらしい。
でも触りたいって思ってくれてるなら、次もあるだろ。部屋も隣同士だし、一緒にいる時間も長いし、機会はいくらでもある。急ぐ必要はない。
「せーたはちゃんと気持ち良かった? 人のを触るなんて、君と違って初めてだったから……」
「や、いや! さすがに他人のアレ触るのは僕だって初めてですよ!? でもほら、男ならそこは自分ので慣れてるじゃないですか」
「あー……」
やっぱり王子様も、一人でなさるのか。
それはそうか。この話題はさすがにちょっと気まずい。今してたことがことなだけに。
「だから、その。ちゃんと気持ち良かったです。またしてほしいし、この先もしたい」
「……うん」
頷いちゃうんだ!?
え、この先の意味わかってるよな。さっきしっかり、尻に突っ込むって言ったし。
……僕のサイズを見て平気だと思い直したんだったら少し複雑。確かにそう言って迫ったけども。
理由はどうであれ、東吾さんもしたいと思ってくれているなら嬉しい。
深いところで、繋がりたい。少し触れたら更にそれを意識した。
「嬉しいです」
誓いの約束みたいなキスをして、こつんと額を合わせた。
「もう少しだけ、一緒にいたいな。ダメですか?」
「いや、私もまだ、もう少し一緒にいたい。それと……プレゼントがあるんだ。クリスマスの」
「さっきのシャンパンと薔薇の花束がプレゼントじゃないんですか?」
正直あれだけで、お返しができないほどお金かかってそうなんだけど。
こういうのは金額じゃないとわかってはいても、貧乏暮らしが長いからかとても気になってしまう。
「恋人ごっこの流れで渡す予定だったんだけど、本物になってしまったな」
そう言って、東吾さんは僕の左手薬指にシンプルな銀のリングをはめた。
まさかの……指輪。サイズなんて、いつの間にはかったんだ。ぴったりなんだけど。
お約束でブカブカとかありそうなものなのに、こういうところはぬかりない王子様クオリティ。
「ありがとうございます」
嬉しい。嬉しいけど、凄い高そう。こんなの貰って、今更どんな顔で僕のプレゼントを渡せばいいんだ。
いっそのこと僕がプレゼント! とかやらかしたほうがいい気がしてきた。
指輪をはめてもらったかわりに、僕を東吾さんにハメ……いや、よそう。ギャグとしては最低だ。
「ふふ……。君の笑顔が、一番のプレゼントだよ」
僕の笑顔、引きつってないだろうな。
や、嬉しいは嬉しいんだけど。そして僕も用意してあることはあるんだけど……。
「その、一応僕も、プレゼント……用意してあるんです」
「本当に? せーたから貰えるなら、どんなものでも嬉しいな」
でも東吾さんがくれたものと、明らかに釣り合ってない。
値段なんて気にしない人だとわかってはいても、やっぱり少し、気後れしてしまう。値段ってよりはモノがモノだからな。
僕はおずおずと、タンスから厚ぼったい包装紙を取り出して東吾さんに渡した。
「開けていい?」
「どうぞ」
中身は僕とお揃いの、着る毛布。前、僕が着ているのを見て欲しいって言ってたから。
どんな表情をするかと不安だったけど、東吾さんは嬉しそうに眼を輝かせた。
「わあ! これ、あったかそうで羨ましかったんだ。凄く嬉しいよ! ありがとう、せーた!」
実用性に溢れまくってて、恋人同士の要素が感じられないプレゼント……。
でも、飛び上がるみたいにして喜んでくれてるから、いいか。凄い安物なんだけど。プレゼントはお金じゃないし。うん。
「早速着てみていいかい?」
「はい。僕も着たところを見てみたいです」
タキシードの上に着る毛布。なんか凄い絵面だ。そして野暮ったい毛布を着ていても、王子様は王子様。きらきらしてる。
「どうかな?」
「似合ってます」
「凄い、暖かい。今夜から暖房消して寝られそうだよ」
東吾さんが毛布にくるまれながら、僕をぎゅーっと抱きしめてくる。僕も暖かい。幸せそうな顔、可愛い。心もほかほかする。
「あのさ、せっかくだから、さっきのキャンドルライトつけないか? クリスマス、らしく」
「えっ……」
「そしてそっと、傍に寄り添っていたい……」
僕から見ると、どう見ても違うムードが満載になるんだが……。ただでさえ、着る毛布で恋人同士の甘い雰囲気が崩壊しかけてて、寄り添ったら暖を取るためみたいに見えそうだし。
でも、恋人の可愛いおねだりに否と言えるはずもなくて、電気が止められているだけって感じのボロ屋を堪能するはめになった。
着る毛布な王子様の周りだけ、なんだかメルヘン。
……うん。うっかり、機会を逃して、僕はずっとノーパンのままなんだ。
うん……。とても、パンツ出してきますって言える雰囲気じゃなくて。
まあ、王子様が幸せそうだから、いいか。
僕は指にはめてもらったリングを、幸せな気持ちで優しく撫でた。
「白いタキシードだと花婿に悪戯してるみたいで、ちょっと背徳感ありますね」
一応床は綺麗に掃除してるけど、畳の跡がついたり、ささくれたところに引っかけやしないかと少し心配になる。なんせ、無茶苦茶高そうだ、これ……。
「なら、君が花嫁さんかな」
「僕は花嫁から貴方を強奪した男の役ですよ」
「強奪? 想像できない」
「そんなおとなしそうに見えますか、僕」
「そうではなくて。私の隣にいる相手は、元から君以外ないと思うから」
なんという殺し文句を吐いてくれるんだ。ウェディングドレスでもなんでも着てやりたくなるだろ。
照れもないってことは素で言ってるのか、これ。
「わかりました。僕が花嫁でいいです。旦那さんを美味しくいただきます」
「それって逆じゃあ……」
シャツの上から胸の辺りを舐めると、うっすら透けて赤く色づく。卑猥で凄くやらしい。東吾さんの肌は、肌色というよりは本当に白に近くて透き通るみたいで綺麗。
さっき貰った薔薇の花でも散らしたら白い肌とタキシードに映えてさぞかし背徳さが増すことだろう。
「ん……」
「気持ちいいですか?」
「よ、よく、わからない。でも君が触れていると思うと嬉しい」
うう、可愛い。いつかキッチリ開発しよ……。
触るだけって言ったのに、東吾さんの身体は緊張で強張ってガチガチだ。信用されてないわけじゃない……と思いたい。
目の辺りに唇を近づけると反射的に閉じたので、瞼に口づけを落とす。
「緊張してます?」
「少し」
「うーそ。固まりすぎですって」
身体をぎゅっと抱き締めたり、手をにぎにぎしたりしながらマーキングするように肌を擦りあわせる。あとはこっちからねだって、頬を触ってもらったりしていると、ようやく恋人同士っぽいイチャイチャになってきた。
うん、ツキアイハジメ、なんだから、やっぱりこれくらい甘ったるくないと。
それからしばらく中学生みたいなスキンシップを楽しんでいたんだけど、そこはやはり大人の男二人だ。身体が後にはひけないような状態になってきた。
僕はこの先にある快感を知っている。でも東吾さんがどんな反応をするか、どんな声を上げるか、どんな顔でイクかは知らない。そして、とても知りたいと思う。
貴方が凄く欲しいよってことを、足に擦り付ける形で伝えると、東吾さんの顔がさっと朱に染まった。
「せ、せーた」
「東吾さんの手でシテほしいな。だめ?」
こくりと白い喉が上下したのがわかる。跡をつけないように加減したつもりだったけど、いくつかキスマークがついちゃってる。跡が残りやすいのかもしれない。
「その……じゃあズボン、を」
「はい。東吾さんが脱がせてください」
きちっとした東吾さんの格好と違って僕はパーカーに緩めのズボン。ウエストはボタンですらなくゴム。手を突っ込めば普通に触れると思う。
脱がすほうがエロいことしてる感じになるかなーと思ってなんとなく言ったけど、ちんこが生えてるのはもうどうしようもないとして、どうしたって男の足だし、そんなに濃くはないほうだけど脛毛も生えてる。
見てしまえば、王子様にかかった魔法がとけてしまうかもしれない。
「あー……。待ってください。やっぱり脱がすのはナシで、このまま上から」
「どうして?」
「男の身体だから、東吾さん気持ち悪くなるかもしれないなって」
「……私の身体を見たら、せーたも気持ち悪くなるかな?」
「それはないです」
「同じことだよ」
「じゃあ、見たいんですか? 僕の裸」
胸もない。細い、筋ばった身体。どう考えても、見たって楽しくなさそう。
東吾さんは同じ男として見惚れるような身体つきをしてると思う。足長いし、バランスもとれてて、筋肉はついているのにすらりとしていてモデルみたい。いや、もはや芸術の域。
貧相な僕の身体とは全然違う。だから引き合いに出すのも、おかしい気がする。
「せ、せーたは見たいと思うのかい?」
「また質問を返すんです? 見たいです。もう滅茶苦茶見たいです。言ったんだから、脱がせていいですよね」
「わっ、ちょっ……と待って」
ベルトを外してズボンを脱がすと、反応した股間が柔らかそうなトランクスを持ち上げていた。
東吾さんも興奮してくれてるんだとわかって嬉しくなる。……けど、デカッ。これは予想外の大きさ。下着の上からだけど、きっとマックスじゃないよな、これ。
東吾さんが望むのなら僕が掘られる側でもいいやと思ってたけど無理。これはもう物理的に無理。東吾さんが怖がっていた理由もわかった気がする。自分のを参考にしていたら、それは入らないと思っても仕方ないよ、うん。
「東吾さん、安心してください」
「え、な、何?」
東吾さんはおたおたしながら、ズボンを引き上げようと躍起になっている。
「僕のはそんなに大きくないから、するっと入ると思うんです」
「何の話だ。それより、私だけ脱がすなんて狡いじゃないか」
思わぬ反撃。東吾さんのズボンを下げたまま押さえていた僕の手は、その行動を阻止できなかった。ずるりと下げられた。下着まで落ちなかっただけまだいいけど、想像以上に恥ずかしい。
なんだこのノリは。これじゃ恋人同士ってより、ガキのじゃれあいだ。
「あれ……反応してない……?」
えー……っ。普通に勃ってるんですけど。これでも標準サイズのつもりだったんですけどダメ泣きたい。
……パンツが。
そう、今日のパンツは厚手だから……。
「さ、触って、ください」
どうせいつかはバレることだ。ここで気まずくなるなら、下手な言い訳せずに触ってもらったほうがいい。
東吾さんのズボンを脱がせた途端に萎えたなんて妙な誤解をされたら最悪だし。
手を引いて半ば無理矢理触らせると、東吾さんがハッという表情をして、確認するように僕のそこを揉んだ。
申し訳なさそうな顔をされると、かえって傷つくんですが。
「せーた」
「ん……」
宥めるように、キスをされる。パンツの隙間から指先が忍び込んで、僕のそれに直接触れた。
「あ……。気持ちい……」
「良かった。ちゃんと反応してて」
「いえ……」
何も言われないと、僕のほうが気になってしまう。
そもそも、あんまり大きくないって前置きしたのに。
「すみません。僕の、勃ってることに気づけないくらい、小さくて」
「ち、違うんだ。人のなんて見たことなかったから……。それに私は、せーたの好きだよ」
東吾さん今自分がとんでもないこと口にしてるってわかってんのかな。僕のちんこが好きって言ってるんだけど。しかも扱きながらとか。
焦ってる故の発言だとしても、僕を煽るには充分すぎ。
「ほんとに? もう一度好きって言ってください」
「好きだよ」
天使か……。
「もう一度。僕の何が好きか、きちんと言ってください」
「せーたの……」
あ、気づいた。
東吾さんは茹で蛸みたいに真っ赤になって、僕のパンツからバッと手を引き抜いて畳に転がる。
「違うんだ……!」
「違うんですか?」
「……ち、違わない、けど……そういう、その」
まいった。可愛すぎます。もう降参。
顔を両腕で覆ってしまってる東吾さんにのしかかって、反撃開始。
半脱ぎになっているズボンを下着ごと引き下ろすと、想像以上に大きなものが目の前に現れた。
でも。全然グロテスクなんかじゃなくて、凄い綺麗。嫌悪感なんて微塵もない。
この王子様に巨大で凶器みたいな形のモノがぶら下がっていたらそれはそれでエロくて興奮するかもと思うくらいには盲目気味なんだけど、そんな色眼鏡を差し引いても可愛らしかった。可愛らしいと言っても皮をかぶってるわけじゃない。くすんでないピンク色で、バランスのいい形をしてるってことだ。
陰毛も薄い上に金色だし、脛毛もそうだからまるで彫刻か何かみたい。
「僕も東吾さんの好きだな」
「あ……あっ」
東吾さんは口をパクパクさせて、眼前に晒されたそれを見て固まっている。
「見せるのも初めてとか?」
「お、大人になって、からは……」
指先で先端からつうっとなぞると、少しだけ粘り気のある滴が溢れた。
「東吾さんも気持ちいい?」
「ん……。で、でも死ぬほど、恥ずかしい。触られてるのも、こんなところを見られているのも」
恥ずかしがる姿がもっと見たくて、手のひらで包み込むように擦りあげる。ぬるぬるしてきて、触ってるだけなのに僕まで気持ちいい。
「あ、まっ……。待って、本当に恥ずかしいから」
「なら、東吾さんも、また触ってください。そうしたら恥ずかしくなくなりますよ」
ん、と頷いて、東吾さんが再び僕に触れた。パンツの中がグショグショで気持ち悪かったから、自分で脱ぐ。
東吾さんの手が、器用に僕のモノを擦り上げる。その動きで、相手の好きなトコロがなんとなくわかる。確認するように擦ってくる場所は、きっと東吾さんが感じるトコ。
男同士だから、手コキはさすがにツボを得ていて気持ちいい……。けど、近くに並んでしまうと、差が歴然だ。大きさの。
穴があったら入りたくなるのは、まさにこんな時だろうか。いやまあ普通に挿れたいけど。
胸に顔を埋めて何度か吸いつくと、びくびくと身体が震える。気持ちいいのかなと思って表情を見ようと上を向いたら、東吾さんから唇を重ねてくれた。
「っ……。恥ずかしく、なくなりました?」
「恥ずかしい、けど。気持ちいい……。それに、せーたが、可愛い……」
東吾さん、とろけた顔、してる。僕も今こんな顔見せてるのかな。
下半身からぬちぬちと粘着質な水音が響く。安普請だから隣の部屋に聞こえてしまいそうだ。
気持ちよくて喘いじゃいそうなんだけど、声はなんとかこらえてる。東吾さんもたまに声をあげかけては、息と一緒に飲み込む。我慢しないでいいんですよって煽るには、壁の厚さが足りない。
はっはっ、と短く切るような吐息だけでも興奮するけど、やっぱり声……聞きたかったな。
「ごめん、せーた。もう、あまりもたない」
「いいですよ。僕ももう……」
東吾さんの肌、興奮するとほんのり赤く染まるんだ。想像通り、凄く綺麗。
イキそうになったら目をぎゅっとつぶってしまうかと思ってたのに、欲情を隠さない瞳でじっと僕を見てる。
「っ……せーた」
その瞬間に僕の名前を呼んだ東吾さんに引きずられるようにして、僕も果てた。熱い液体が断続的に出て手を汚す。
わー……。東吾さんをイカせてしまった。これが、東吾さんの。
いや、僕も出してるし、シテもらったんだけど。
出したら冷静になると思ったのに幸せと熱がじわじわやばい。
幸福を噛みしめ……る前に。
「東吾さん、ティッシュ! 拭いてください! 畳に垂れそう!」
「あ、こ、これで!」
「ちょ、タキシードで拭くのはまずいです!」
タオルでも敷いておけば良かった。余韻もクソもない。
でも畳に落ちると拭くのが大変なんだ。これがまた、僕のも東吾さんのも結構濃くて量も多くて。
ようやく手を拭いて、畳も無事でふうって息ついて、顔を見合わせる。思わず笑ってしまった。
「すみません。せっかくなのに、ムードなくて」
「気まずくなるよりは、よっぽどいい。せーた、可愛かったし」
ごそごそとズボンを引き上げながら、東吾さんも笑顔を見せる。頬はまだちょっと赤い。
僕の下着はとても穿ける状態じゃなかったので、そのままズボンを穿いた。ジーパンじゃないからまだマシだけど、布地がごわごわする。
「また、したいって思ってくれました?」
東吾さんは素直に頷いた。
「それに……せーたに触りたいって気持ちが、さっきよりもずっと強くなった。もやもやしてた感情が、ストンって納まった気がする」
「良かった」
僕も同じだ。ちょっとエッチなことをしただけなのに、この人は僕のものなんだって強く感じる。
……あと、なんか。責任取らなきゃみたいな気持ち。
「もっと触ってもいいんですよ?」
「そうしたいのはやまやまなんだけれど、これ以上したら頭の中がパンクしそうなんだ」
残念ながら王子様はキャパオーバーらしい。
でも触りたいって思ってくれてるなら、次もあるだろ。部屋も隣同士だし、一緒にいる時間も長いし、機会はいくらでもある。急ぐ必要はない。
「せーたはちゃんと気持ち良かった? 人のを触るなんて、君と違って初めてだったから……」
「や、いや! さすがに他人のアレ触るのは僕だって初めてですよ!? でもほら、男ならそこは自分ので慣れてるじゃないですか」
「あー……」
やっぱり王子様も、一人でなさるのか。
それはそうか。この話題はさすがにちょっと気まずい。今してたことがことなだけに。
「だから、その。ちゃんと気持ち良かったです。またしてほしいし、この先もしたい」
「……うん」
頷いちゃうんだ!?
え、この先の意味わかってるよな。さっきしっかり、尻に突っ込むって言ったし。
……僕のサイズを見て平気だと思い直したんだったら少し複雑。確かにそう言って迫ったけども。
理由はどうであれ、東吾さんもしたいと思ってくれているなら嬉しい。
深いところで、繋がりたい。少し触れたら更にそれを意識した。
「嬉しいです」
誓いの約束みたいなキスをして、こつんと額を合わせた。
「もう少しだけ、一緒にいたいな。ダメですか?」
「いや、私もまだ、もう少し一緒にいたい。それと……プレゼントがあるんだ。クリスマスの」
「さっきのシャンパンと薔薇の花束がプレゼントじゃないんですか?」
正直あれだけで、お返しができないほどお金かかってそうなんだけど。
こういうのは金額じゃないとわかってはいても、貧乏暮らしが長いからかとても気になってしまう。
「恋人ごっこの流れで渡す予定だったんだけど、本物になってしまったな」
そう言って、東吾さんは僕の左手薬指にシンプルな銀のリングをはめた。
まさかの……指輪。サイズなんて、いつの間にはかったんだ。ぴったりなんだけど。
お約束でブカブカとかありそうなものなのに、こういうところはぬかりない王子様クオリティ。
「ありがとうございます」
嬉しい。嬉しいけど、凄い高そう。こんなの貰って、今更どんな顔で僕のプレゼントを渡せばいいんだ。
いっそのこと僕がプレゼント! とかやらかしたほうがいい気がしてきた。
指輪をはめてもらったかわりに、僕を東吾さんにハメ……いや、よそう。ギャグとしては最低だ。
「ふふ……。君の笑顔が、一番のプレゼントだよ」
僕の笑顔、引きつってないだろうな。
や、嬉しいは嬉しいんだけど。そして僕も用意してあることはあるんだけど……。
「その、一応僕も、プレゼント……用意してあるんです」
「本当に? せーたから貰えるなら、どんなものでも嬉しいな」
でも東吾さんがくれたものと、明らかに釣り合ってない。
値段なんて気にしない人だとわかってはいても、やっぱり少し、気後れしてしまう。値段ってよりはモノがモノだからな。
僕はおずおずと、タンスから厚ぼったい包装紙を取り出して東吾さんに渡した。
「開けていい?」
「どうぞ」
中身は僕とお揃いの、着る毛布。前、僕が着ているのを見て欲しいって言ってたから。
どんな表情をするかと不安だったけど、東吾さんは嬉しそうに眼を輝かせた。
「わあ! これ、あったかそうで羨ましかったんだ。凄く嬉しいよ! ありがとう、せーた!」
実用性に溢れまくってて、恋人同士の要素が感じられないプレゼント……。
でも、飛び上がるみたいにして喜んでくれてるから、いいか。凄い安物なんだけど。プレゼントはお金じゃないし。うん。
「早速着てみていいかい?」
「はい。僕も着たところを見てみたいです」
タキシードの上に着る毛布。なんか凄い絵面だ。そして野暮ったい毛布を着ていても、王子様は王子様。きらきらしてる。
「どうかな?」
「似合ってます」
「凄い、暖かい。今夜から暖房消して寝られそうだよ」
東吾さんが毛布にくるまれながら、僕をぎゅーっと抱きしめてくる。僕も暖かい。幸せそうな顔、可愛い。心もほかほかする。
「あのさ、せっかくだから、さっきのキャンドルライトつけないか? クリスマス、らしく」
「えっ……」
「そしてそっと、傍に寄り添っていたい……」
僕から見ると、どう見ても違うムードが満載になるんだが……。ただでさえ、着る毛布で恋人同士の甘い雰囲気が崩壊しかけてて、寄り添ったら暖を取るためみたいに見えそうだし。
でも、恋人の可愛いおねだりに否と言えるはずもなくて、電気が止められているだけって感じのボロ屋を堪能するはめになった。
着る毛布な王子様の周りだけ、なんだかメルヘン。
……うん。うっかり、機会を逃して、僕はずっとノーパンのままなんだ。
うん……。とても、パンツ出してきますって言える雰囲気じゃなくて。
まあ、王子様が幸せそうだから、いいか。
僕は指にはめてもらったリングを、幸せな気持ちで優しく撫でた。
1
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる