全裸から始まる恋もある

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全裸から始まった恋の続き

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 友人の意外な秘密を知ってしまった。
 仲間内やサークル内でイケメンとして名をはせているその男は、全裸でないと落ち着いてトイレができないのだという。
 そしてちょっとした行き違いから、何故か俺は仲間だと思われてしまった。
 全裸トイレ仲間。嫌すぎるにもほどがある。しかもそんな事実はまったくない。
 ……いや、まったくないとは言い切れないのが、これがまた……。
 そういえばこいつ、飲み会や大学にいる時、トイレに立つことなかったなとか、思い当たるあたりがまた。
 からかっているんだろうと思いたかったが、俺の家で全裸になられかけては、信じざるをえない。信じたくねぇけど。むしろそんな事実知りたかなかった。
 おかげさまでそれまでは仲間うちでもちょっと親しい友人という感じだったのが、無二の親友扱いされている。勘弁してほしい。
 共通の秘密というのは、やっぱり二人を一歩進んだ関係にさせるものなんだろうか? 最近二人、仲いいよねと女の子たちからもからかわれる始末。
 このままじゃ勝手にホモップル認定されてしまう。本当に勘弁してほしい。
 何より最悪なのは、俺がこの事態を本気で嫌だと思っていないことだ……!
 俺は暗いわけでもなく、明るすぎるわけでもなく、みんなにまぎれてしまうようなその他大勢。つづるはグループの中心になるような存在。人気者。そして女にもてる。
 そんな奴が自分を特別扱いしてくれるんだから、それは優越感にも浸れるというもの。しかも知っているのは、恥ずかしい秘密だ。
 もしこれが、ひょっとした隙に秘密を知ってしまい、黙っていてくれ、みたいな展開だったら弱みを握った感じで面白かったろうな。
 今となってはもう、俺が騙したみたいな感じになりそうで真実を切り出しにくい。何より、あの嬉しそうな顔を見ちまっちゃな。ショックを受けるだろうと思うと、罪悪感で胸が痛むっつーか……。
 何より俺が、二人の秘密を守っていたいと思ってしまってるってことも、あったりなかったり。
 ただな、その内容が全裸トイレってのがな……ハハ。
 
「オレ、ちょっとトイレ行ってくるわ」
 
 しかしながら飲み会の最中、奴が酔っぱらってそんな台詞を呟き、フラフラと立ち上がったとあっちゃあ、俺も酒を噴き出さざるをえない。
 
「ちょっ、汚ねえ、お前透、何やってんだよ!」
「きゃあ、やだあー!」
 
 仲間にワイワイ騒がれる。
 お前ら、俺がたかが酒を噴いたくらいでそんなに騒いでんじゃねえよ!
 今あいつを止めないと、間違いなく警察が飛び出してくる騒ぎになるんだからな! 
 
「お、俺もトイレ……」
「お前ら連れションかよ。あっやしーな。俺も行こうかなー」
 
 俺ともつづるとも仲のいい一郎が、笑いながらそんなことを言ってくる。
 テーブルの上に噴き零した酒を拭ってくれるいい奴だ。
 後悔するのはつづるだっていうのに、何で俺がこんなふうに気を遣わなきゃなんねーんだよ、ったく。
 酔って脱ぐくらいはトイレで全裸より可能性があることだし、酒の席のことで流されるよな、多分。
 でも……あいつの裸、他の奴には見せたくないな、とか思っちまってる自分もいる。
 というかのんびり考えてると、つづるがすでに姿を消していた。
 や、やべえ……。
 
「一郎、お前は来るな」
「ええ? なんでだよ。冗談抜きで俺、マジでトイレ行きたいんだけど」
 
 マジで?
 
「透くん、そんなにつづるくんとトイレで二人きりになりたいんだぁー」
 
 誤解です。なんで女の子たちはこうホモネタが好きなんだよ! 嬉しそうにするな!
 こいつらにとってはイケメンが脱ぎだしたら嬉しいもんだから、俺、もうほうっといていいかな!?
 あんなトイレで全裸な変態放っておいて、女の子達と楽しいキャンパスライフを……。
 
「やっぱり行かない。一郎、お前が行ってくればいいだろ。つづる酔ってるから、介抱してやったらいい」
 
 俺は立ち上がりかけていた腰を、すとんと落とした。
 今から一郎はトイレに行って、つづるの秘密を知ることになる。そのあと慌てて、慌てて、俺みたいに焦ればいいさ!
 
「じゃあ俺行ってくる~。つづるくんとトイレで友好深めてきまーっす!」
 
 明るくおちゃらける一郎を、はやしたてる女共。ちょ……全裸のつづると、どんな友好を深めるつもりだああああ!
 やっぱだめだ! あんな秘密を人に知られるなんて、つづるが可哀想すぎる! 決して独占欲とかそんなもんじゃねえ!
 というか酔ってる。酔ってるんだ、俺は。
 俺は立ち上がって、トイレへと向かう一郎の肩をがっしりと掴んだ。
 
「ま、待て、一郎。あんな姿のつづるをやっぱりお前に見せる訳にはいかない」
「え? 何、つづるどんな姿してんの? 普通に気になるんだけど」
「いいから。いいから、ちょっとだけ待っててくれ!」
 
 せめて服を着せてやって、話はそれからだ!
 というかここは貸し切りじゃないんだ。他の何も知らない奴が入ってしまったら……。せめて脱ぐなら、個室の中で脱いでてくれ。風邪だって引くかもしれない。
 それとも秘密を知る俺がなんとかしてくれると思って油断してるのか? つづるめ……今まで外でトイレなんか行かなかったじゃないか。
 俺が……俺がなんとかしないと……。
 
 俺はいろいろな覚悟をして、トイレへと飛び込んだ。
 
「あれ? 透もしょんべん?」
 
 上機嫌のつづるが、服を着たまま普通にトイレから出てきた。意外過ぎて俺はそのまま普通にトイレへと押し戻してしまった。
 てか、そんな爽やかヅラでしょんべんとか言うな。口を開けば期待を裏切る奴だな、本当に。
 
「おいおい、何してんだよ」
「お前トイレしにきたんじゃなかったのか?」
「いや、しにきたけど、普通に」
「だって、服……」
「あ。ああー。何馬鹿なこと言ってんだよ、透」
 
 何。もしかして俺、からかわれてた? そうだよな。普通トイレで全裸なんて……。
 
「しょんべんするなら、ちんこだけポロッと出せばいい話だろ? もしかして透、立ってする時も全裸にならないとダメなタチか……大変だな」
 
 同情を含んだ哀れみの瞳、やめてください本当に。というか立ってする時だけじゃなく、普通は全裸にならねーよアホ!
 
「オレ、なるべく誰もトイレに来ないよう見張ってるから、さっとしてこい、な?」
「誤解だ、誤解!」
「わかってる。わかってるから、気にするなよ」
 
 わかってねええええええええええええ!
 ダメだ。何を言ってもわかっていたことにされる。間違いない。酔ってるしな、こいつ。
 はー……もうどうでもいいや。俺もしょんべんだけして戻ろう。
 一郎は来てみたら今度はつづるに止められて、膀胱炎にでもなればいい。
 
 
 
 俺は用を足しながら、ふと思った。別にうんこする時も、ケツだけポロッと出せばいい話だろ……。何で、どこが違うんだよ、つづる……。
 
 
 
 次の日大学では、透くんは酔って色っぽくなったつづるくんの姿を誰にも見せたくなくて何人たりともトイレに近付かせなかったという不名誉な噂が流れていた。
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