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全裸なんて君の気のせい
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つづるの奴に誘われて、マンションへ遊びに行った。いいDVDが手に入ったと言っていた。
前からそれなりに、二人だけでのやりとりがある程度には仲がよかったが、最近じゃちょっとした親友状態だ。
それというのも、俺が奴の秘密を知ってしまったから……。
奴の家へついて、インターホンを鳴らす。
「あ、悪い。鍵開いてるから入ってくれ。今手が離せないんだ」
料理でも作ってんのか? 不用心だな。
扉を開けて中へ入る。つづるの姿は見えない。かわりにトイレの電気がついていた。
ト……トイレ、だと……?
ま、まあ、小さい方なら全裸にはならんと言っていたし、堂々と俺を家に招き入れたんだ。きっと服は着ているに違いない。
「あー、こんなかっこで悪いな」
ジャーという水を流す音のあと、つづるがのほほんとそんなことを言いながら、トイレから出てきた。
全 裸 で 。
「お前、悪いと思ってるなら出てくるなよ! せめて前隠せ、恥じらえ! 俺が部屋へ行った後に出てこい!」
「いやー、もう透にはバレちゃってるし、いいかと」
ばれてるばれてないの問題じゃない。お前には羞恥心ってもんがないのか、この露出狂め。
目のやり場に困るんだよ。何ドキドキしてるんだよ、俺!
いや……普通はドキドキするだろ、これ。風呂場で全裸になってるとかじゃないんだ。遊びにきたら、いきなりトイレから出てきた友人が全裸なんだ。
って、この前は俺がこれとまんま逆のことしちまったんじゃねーか。だとしたらつづるの言い分も一理ある。いや、ねーよな。俺は誓ってわざとじゃなかったんだし。
「も、もういいから着替えてこいよ」
「ああ。今茶持っていくから、部屋で待っててくれ」
おとなしく頷いて部屋へ行く。
その辺りに散らばっている雑誌を、ベッドを背もたれかわりにパラ見する。
あー……やべえ。つづるの裸が目に焼き付いて離れない。
なんで俺、こんな。あいつはただの友人だろ。いきなりトイレから出てきた姿が全裸だったら驚きはするが、興奮したりはしない。お前何馬鹿やってんだって笑うくらいじゃないか、普通は。いやそもそも普通は全裸で登場なんてせんのだが。
俺はどうしてだか、つづるのことを性的な目で見てしまっている……?
いや、勘違いだ。気のせいだ。これはきっと何かの間違いだ。突飛すぎて心が妙な勘違いをしているにすぎないのだ。
だってつづるは男だ。懐いてくる姿が可愛いだとか、人には言えない秘密を俺だけが知っている優越感とか……。クソッ、何で俺、あいつの部屋でこんなこと考えて……。
「お待たせ、コーヒーは砂糖とミルク一杯ずつだっけ」
「いや、ブラック」
「そっか」
誰と間違ったんだよ。覚えておけよ……とか思ってる俺の馬鹿。
マグカップを手渡してくれたつづると、指が触れ合った。俺は気付けば、つづるの腕を掴んでいた。
「……透?」
「つづる。俺……お前に、言いたいことがある」
「な、なんだよ」
「お前、なんでまだ全裸なんだよ!」
「あー。平然としてるから、もう慣れたのかと思った」
慣れるかボケ!
実はトイレだけとかじゃなく、裸族なんじゃねーのか!?
家の中でどういう恰好をしようと勝手だが、友人が来ている時くらいは勘弁してほしい。
「いいからさ、いいから……。なんでもう……。なんで、全裸なんだよ……お前。せめて前を隠せよ」
「まあ待て。オレがこんな姿でいるのには、訳があるんだ」
つづるが腕を組んで、真面目な顔で頷いた。全裸のまま。結局前は隠してない。
トイレ行ってたからって理由なら俺はもう知っているんだし、他になんの理由があるというんだ。
まさか、俺のことを好きで誘惑するためにそんな恰好をしているとか。俺を惑わすために……? 俺の反応を確かめようと?
なんで俺、そんな考えしか思い当たらないんだ。そんなに無防備な姿を晒されると、俺、なんだか変な気持ちになりそうなんだよ。
気のせいだ。気のせい。これはきっと、気の迷いだ!
「わ、訳ってなんだよ……」
「よく考えたら、着替え……全部この部屋なんだよな。さっきトイレ入る時、ベッドへ脱ぎ捨てていっちまったから」
確かに、ベッドには衣服が脱ぎ散らかされていた。
それから何事もなかったかのように服を着替えてDVDを再生するつづると、何事もなかったかのようにコーヒーを飲みながらDVDを見て談笑して家へ帰った。
……気の迷いだったな、うん。
前からそれなりに、二人だけでのやりとりがある程度には仲がよかったが、最近じゃちょっとした親友状態だ。
それというのも、俺が奴の秘密を知ってしまったから……。
奴の家へついて、インターホンを鳴らす。
「あ、悪い。鍵開いてるから入ってくれ。今手が離せないんだ」
料理でも作ってんのか? 不用心だな。
扉を開けて中へ入る。つづるの姿は見えない。かわりにトイレの電気がついていた。
ト……トイレ、だと……?
ま、まあ、小さい方なら全裸にはならんと言っていたし、堂々と俺を家に招き入れたんだ。きっと服は着ているに違いない。
「あー、こんなかっこで悪いな」
ジャーという水を流す音のあと、つづるがのほほんとそんなことを言いながら、トイレから出てきた。
全 裸 で 。
「お前、悪いと思ってるなら出てくるなよ! せめて前隠せ、恥じらえ! 俺が部屋へ行った後に出てこい!」
「いやー、もう透にはバレちゃってるし、いいかと」
ばれてるばれてないの問題じゃない。お前には羞恥心ってもんがないのか、この露出狂め。
目のやり場に困るんだよ。何ドキドキしてるんだよ、俺!
いや……普通はドキドキするだろ、これ。風呂場で全裸になってるとかじゃないんだ。遊びにきたら、いきなりトイレから出てきた友人が全裸なんだ。
って、この前は俺がこれとまんま逆のことしちまったんじゃねーか。だとしたらつづるの言い分も一理ある。いや、ねーよな。俺は誓ってわざとじゃなかったんだし。
「も、もういいから着替えてこいよ」
「ああ。今茶持っていくから、部屋で待っててくれ」
おとなしく頷いて部屋へ行く。
その辺りに散らばっている雑誌を、ベッドを背もたれかわりにパラ見する。
あー……やべえ。つづるの裸が目に焼き付いて離れない。
なんで俺、こんな。あいつはただの友人だろ。いきなりトイレから出てきた姿が全裸だったら驚きはするが、興奮したりはしない。お前何馬鹿やってんだって笑うくらいじゃないか、普通は。いやそもそも普通は全裸で登場なんてせんのだが。
俺はどうしてだか、つづるのことを性的な目で見てしまっている……?
いや、勘違いだ。気のせいだ。これはきっと何かの間違いだ。突飛すぎて心が妙な勘違いをしているにすぎないのだ。
だってつづるは男だ。懐いてくる姿が可愛いだとか、人には言えない秘密を俺だけが知っている優越感とか……。クソッ、何で俺、あいつの部屋でこんなこと考えて……。
「お待たせ、コーヒーは砂糖とミルク一杯ずつだっけ」
「いや、ブラック」
「そっか」
誰と間違ったんだよ。覚えておけよ……とか思ってる俺の馬鹿。
マグカップを手渡してくれたつづると、指が触れ合った。俺は気付けば、つづるの腕を掴んでいた。
「……透?」
「つづる。俺……お前に、言いたいことがある」
「な、なんだよ」
「お前、なんでまだ全裸なんだよ!」
「あー。平然としてるから、もう慣れたのかと思った」
慣れるかボケ!
実はトイレだけとかじゃなく、裸族なんじゃねーのか!?
家の中でどういう恰好をしようと勝手だが、友人が来ている時くらいは勘弁してほしい。
「いいからさ、いいから……。なんでもう……。なんで、全裸なんだよ……お前。せめて前を隠せよ」
「まあ待て。オレがこんな姿でいるのには、訳があるんだ」
つづるが腕を組んで、真面目な顔で頷いた。全裸のまま。結局前は隠してない。
トイレ行ってたからって理由なら俺はもう知っているんだし、他になんの理由があるというんだ。
まさか、俺のことを好きで誘惑するためにそんな恰好をしているとか。俺を惑わすために……? 俺の反応を確かめようと?
なんで俺、そんな考えしか思い当たらないんだ。そんなに無防備な姿を晒されると、俺、なんだか変な気持ちになりそうなんだよ。
気のせいだ。気のせい。これはきっと、気の迷いだ!
「わ、訳ってなんだよ……」
「よく考えたら、着替え……全部この部屋なんだよな。さっきトイレ入る時、ベッドへ脱ぎ捨てていっちまったから」
確かに、ベッドには衣服が脱ぎ散らかされていた。
それから何事もなかったかのように服を着替えてDVDを再生するつづると、何事もなかったかのようにコーヒーを飲みながらDVDを見て談笑して家へ帰った。
……気の迷いだったな、うん。
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