親友ポジション

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エクストラステージ

恋人ポジション

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 現実とゲームの世界は別物だ。たとえ恋人がいようとも、ギャルゲーをやらない理由にはならない。
 
 真山くんとの仲が落ち着いた頃から、俺は再びそんなゲームをやり出した。
 あくまでゲームはゲームで、真山くんを好きな気持ちとは別物。
 ただ、なんとなく、主人公に自分の名前をつけるのはやめた。
 
 俺がエロゲーをプレイしていても、真山くんは特に妬くこともなく……。
 
「お、このコ可愛いなー。でも冬夜の好みはこっちだろ。なっ? 当たり?」
 
 後ろから覗き込んでそんなことを言ってくる。
 プレイしといてなんだけど、なんか俺のほうが妬いてしまう。ゲームと現実は別だなんでわかってるのに。
 真山くんが元は虚構の存在だから、やっぱりゲームの中に戻りたいのかな……とか思っちゃうからかな。
 でも、それなら真山くんも、似たような観点で妬いてくれたっていいのに。
 
「……なんだ、この親友役は。主人公を困らせるだけで、ちっとも役に立たねーじゃねーか! これは、親友役失格だな!」
 
 ……どうやら親友役には嫉妬するらしい。
 それってどうなの、恋人としては。
 
「そうだね。このゲーム、親友ルートとかはないみたいだし」
 
 真山くんの身体が、びくっと跳ねる。
 
「あったら、やるのか?」
「まさか。俺の親友は、後にも先にも君一人だよ」
「そ、そうか」
 
 満足そうな顔しちゃってまあ、可愛いったら……。
 
「恋人も、ね」
 
 パソコンから顔を上げてのけ反り、後ろにいる真山くんにキスをねだる。
 眼鏡を外されて、唇が落ちてきた。
 
「嫁はたくさんいたけどな?」
 
 君は触れるだけのキスの後、そう意地悪そうな顔で笑った。
 いいんだよ。君は俺の嫁じゃなくて、親友で。
 こうして隣で笑っていてくれれば、名目なんてなんでもいい。
 俺と君が両思いなのはまぎれもない、現実、なんだから。 
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