8 / 76
小学校低学年編
弟の特別
しおりを挟むバレンタインの時もそんな話はしてなかったから、俺は安心しきっていたんだ。
まさかその三日後に、こんな地雷が待ち受けていようとは……。
「お兄ちゃん、今日ね、学校の女の子に好きだって言われた!」
ついにこの日がきてしまった……。
早い。小1だろう。弟よ。それに、好きだなんて幼稚園の頃からガンガン言われていたじゃないか。今更だ!
今更なのに言ってくるってことはつまりあれだ! 早い!
……ちょっと血圧上がりすぎて自分でも何を考えているんだかよく判らなくなってきた。
「ど、どうするんだ? つ、つ、つっつっつっつきあうとか」
「つっつきあうの?」
「ごめん。兄ちゃん最近どもりが酷くて、は、はは」
動揺しすぎた。
多分これは……あれだろう。チョコをもらって告白を受けて、その意味に気付いてない弟に痺れをきらして言ったってところだろう。
「あのね、律。よく聞いて? その子は律と今よりもっと仲良くなりたいって思ってるんだ」
「もっと?」
「うん。他の人と違う、特別になりたいってこと。付き合いたい、と思ってるんだよ」
「とくべつ……」
律が考え込んで、顔を上げた。
「それってお兄ちゃんよりも、大事ってこと?」
……凄い、胸にきた。律に俺より大事な人ができる。
考えただけで、涙がこぼれそうだ。
俺はそれをぐっとこらえながら返事をする。
「ん……。うん、そうだよ」
「じゃ、無理だ。何を言われても僕、お兄ちゃんより好きになれそうな人なんて居ないもの。それじゃ、その、付き合う? っていうのは、だめなんだよね?」
律。お兄ちゃん、今死んでもいいよ。
たとえそれが、子供の頃のことだけでも、俺には大事で絶対的なことなんだ。今の君のその気持ちが、嬉しくてたまらないんだ。
きっとそんなことを言っても、いつかそのうち、兄ちゃんのことなんかどうでもよくなって、もっと大事な人ができて付き合ったりなんかする。
そう思うと、泣きそうになるけど……。
俺は律をぎゅっと抱きしめた。
「お、お兄ちゃん?」
「うん。その通りだよ。律。好きでもない女の子と付き合うって言うのは、相手を傷付けることになる。だから、こうしてぎゅっとした時に、どきどきする相手と付き合うんだ」
「そうなんだ。だったら判るかも。だって、お兄ちゃんにこうされると、すごく安心するの。これがドキドキだったらいいってことだよね?」
「うん、そうだ……」
律にとって俺は安心できる相手。それで充分じゃないか。
可愛い可愛い律。お願い、神様。俺にもう少しだけ、律を独占させてください。
それはそんな長い時間じゃないかもしれない。
でもあともう少し。一日一ヶ月、一年でも長く、この笑顔が俺のものだけでありますように。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募するお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる