弟を好きになりました

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中学生編

弟が中学生になりました

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 ああ……。ついに律とヤッてしまった。
 しかも望んでいたのとは逆のポジションで。

 でも、俺が律に突っ込む方でねだられたとしても、こんな簡単にはいかなかったとは思う。
 やるよりはやられる方が罪悪感は薄い。俺が無理矢理やったという感覚がないからだ。
 やられる側でも、許してしまう俺に罪があるわけだから、それなりに罪悪感があるにはあるけど……。

 春休みが終われば中学生になるとはいえ、律は俺の中ではまだ小学生って気がするし、周りの子より幼く見える。
 
 だから早く大人になってくれればいいと思っていたのに、律と身体を繋げてしまったあの日から、俺はなんかおかしい。
 
 たまに律が、怖くなる。あの日は錯覚かと思った。でも違う。
 もちろん律のことは大好きで、大切な弟であり可愛い恋人だ。
 触れ合うことも普通にできる。ぎゅーしたいしちゅーしたいし、一緒にいたい。
 じゃあ、いつ怖くなるのかというと、律にヤりたいって気持ちを向けられた時だ。
 触れたいだけなのかヤりたいのかって、なんとなく判るんだよ。
 そんな視線を向けられるとどうしていいか判らなくて、つい避けてしまう。
 当たり前だけど、なんだかぎこちなくなってしまって、律に不信感を抱かせたまま春休みが終わり……そして。

 弟が中学生になりました。
 
 
 
 
 今日は中学校が始まって初の週末。ばたばたしてはいるけど泊まりに来たいと律からメールが来た。
 春休み中もあれから何度か泊まりに来ていて、何もこれが初めてと言う訳じゃない。
 でも今日は学ランで来てくれるって。どきどきする。
 いつもなら押し倒してしまうかもしれない不安にかられるけど、今はもう平気だ。
 いや、押し倒したくはなるけど、その前に律に見られて身が竦むってだけ。
 性欲もてあましてるだろうしなー。一度しちゃったしな、仕方ないよな。
 自慰を教えたばかりの頃も、こんな様子だったっけ。
 きっといずれ落ち着くよな。
 なるべく普通に振る舞おう。律は別に無理強いしてくる訳じゃないし、やりたいって言い出すこともないんだから。
 
 ケーキを買って仕事から帰ると、律が夕飯を用意して待っててくれた。
 入って来た俺に気付かないのか鼻歌を歌いながら料理を作っている。
 学ランの後ろ姿、アンドエプロン! たまらない、可愛い、後ろから襲いたい……!
 
「律ー! ただいまっ!」
「わっ、びっくりした」
 
 ぎゅっと抱きしめると律が腕の中で跳ねた。
 すっぽりと納まる身体はまだ小さくて、怖くなるなんておかしい話だよ、本当。
 
「ん、その……。お兄ちゃん、しがみつかれると」
 
 いつもならここで、燃えたぎってベッドに直行していた。
 でも今の俺はがちりと身体が固まって、なんとか律を離してゆっくりと後ろのテーブルについた。
 
「その……。料理中にごめん」
「いいよ、今終わったところだから」
 
 律が笑ってエプロンを脱ぐ。
 あー。正面から見ても可愛い。学ランの方が少し大きい感じがまたいい。
 
「律、学ラン似合うなあ」
「ホント? 嬉しいな、ありがとう」
「長ズボンも新鮮でいい」
「もう中学生だからね。半ズボンは小学生で卒業なの!」
「えー! 可愛いのにぃ……。お兄ちゃんの前でだけたまに穿いてよ」
「お兄ちゃん……」
 
 じとっとした瞳で見られた。律がキスのできる距離まで近付いてくる。
 
「やっぱりお兄ちゃん、小学生の僕が好きだったんじゃないの? 育ったらヤになるんじゃない?」
 
 前ならそんなはずないって即答できた。
 俺は律が好きなんであって、年齢なんて関係ない。今だってそう思ってる。なのに……。
 この時俺は、言葉に詰まってしまった。
 
「やっぱり……」
 
 律の目から、大粒の涙がぽろぽろと零れ出す。
 そんなはずないって、違うって言わなきゃ。
 律が泣いてる。俺の律が泣いてる。
 俺は意味なくもらい泣きしてしまった。
 
 律に泣く理由があっても俺が泣く流れではなかったからか、律は驚いて目を丸くした。
 
「なっ、何でお兄ちゃんが泣くの!?」
「だ、だって、り、律が泣いてるとおもっ……たら」
 
 情けないにもほどがある。
「僕が泣いたらって……お兄ちゃんが泣かせたんだよ」
「っ……。ごめ、ごめん、律、違うんだ。大好きだ、育ってくれていいんだ」
「じゃあ……。何で最近、僕に対してよそよそしいの……?」
 
 気付かれてた。それはそうだよな。俺の態度明らかにおかしかったし。
 でも、君が怖かったからなんて言えるはずない。
 それとも……。あの日しちゃったことが原因だってことも気付かれてるのかな。
 中学生になったから。背が伸びたから。セックス最後までしちゃったから。
 律の中では思い当たることが多すぎて訳が判らなくなっているのかもしれない。
 出た結論が『僕が育ったから』だったんだろう。
 
 実際身体を繋げたのは卒業祝いで、同意でのことだ。俺自身、何でこんな感じになってるのかよく判ってない。
 痛かった以上に、兄としてのアイデンティティが崩壊したからか……?
 
「何か言ってよ」
「俺も、どう言えばいいのか」
「何それ。僕が子供だから? 頼りないから? ねえ、僕たち恋人同士だよね? ちゃんと……言ってよ」
 
 律がふわりと俺を抱きしめてくる。今度は怖くない。
 説明にしたって本当に、なんて言えばいい? やりたいオーラ出されると怖くなりますとか言って、全部勘違いだったら俺、相当恥ずかしい奴じゃないか?

 ……でも、このまま律を傷付け続けるよりはいいか。
 
「あのさ、律。俺とまたやりたい?」
「え? 何を?」
「だから、セックス。俺にまた突っ込みたいかって聞いてる」
「お兄ちゃん……」
 
 思い切り呆れた顔をされた。少し怒りの色も見える。
 
「こんな時に何言ってるの。今はそんな話じゃないでしょ」
「関係あるから聞いてる」
「もしかして身体でごまかそうとか、そういう」
「違う」
 
 真剣な表情で言うと、律は大きなため息をついた。
 やや頬を染め、軽く俯いて囁くように言う。
 
「……したいよ」
 
 その途端俺の身体は律の腕の中でびくりと跳ねた。情けないことに、微かな震えまでまとって。
 ここまでくれば、さすがの律も気付くだろう。
 
「ごめん。なんか……。俺、するの怖いみたいで。律はしたいなんて一度も言わないのに勝手に意識して、おかしい態度とってた」
「あー……。うん、そうだったんだ。ありがとう、ちゃんと言ってくれて」
 
 頬に軽くキスをされる。
 抜き合ったり抱きしめあったりは普通にしてたから、律が怖いって訳じゃないことは判ってもらえたと思う。
 
「これは平気?」
「律は怖くない」
「ヤられるのが怖いだけ?」
「そうみたいだ」
「僕を抱きたい?」
 
 暫く間をおいて、俺は頷いた。
 もう嘘はつきたくないし、前回やった時にばれてることだ。
 
「でも高校入るまではダメなんだよね、どっちにしろ」
「そうなんだけど」
「だから僕も、あの日以来したいって言わなかった。お兄ちゃんがダメって言ったから。次は中学の卒業祝いって言ってたから」
 
 そうだ。律はちゃんと俺の言葉を守ろうとしてくれてたのに、俺は……。
 
「でもね、したいのは確かだった。それがお兄ちゃんを怖がらせてたんだね、ごめんね」
 
 俺、やっぱり情けない。弟に慰められて、こんなふうに頭いいこいいこされて。……律に謝らせて。
 俺が悪いのに。勝手に怯えてるだけなのに。 

「そんなの、律が謝ることじゃないだろ。俺が……悪いんだ」
 
 俺からも抱きしめて、頬を擦り寄せた。
 何も気にせずただ愛しさのままぎゅうっとするのは久し振りな気がする。気持ちいい。律の匂いいっぱい。
 しかもあんなこと言ったくせにエロい気分になってくるんだ。もうどうしようもない。
 
「学ラン、本当によく似合う」
 
 こんな姿見せられたら、それは興奮もする。俺が欲情してることに、多分律も気付いてる。
 律は嬉しいような、困ったような表情を浮かべた。
 
「怯えるくせに、こういうふうに誘うんだから」
「だって、律が好きなんだ」
「……うん」
「成長するのも楽しみで、早く最後までしたいとも思うし」
「うん」
 
 背をそっと撫でられて、俺はまた震えた。
 
「律……」
「平気だよ。しないから、ね。怖がらないで?」
 
 律が触れるだけのキスを繰り返す。
 
「お兄ちゃんの好きにしていいよ。いっぱい触って? 僕も抜くだけしてあげるから」
「ん……」
 
 俺は頷いて、学ランの上からいっぱい律に触れた。そのまま脱がせて、ダイニングテーブルで、した。
 俺の下で学ランをはだけ、喘ぐ律の姿はなんとも言えない。
 凄い興奮してるのに申し訳なさのせいか俺のは勃たなかった。だから、律が俺に触れることはなかった。




「さっき、さ」
 
 俺が乱れた衣服を整えていると、律が息を荒くしながらぽつりと呟く。
 
「お兄ちゃんは僕が謝ることじゃないって言ったけど、やっぱり僕が悪いんだよ」
「律……」
「嫌がってたのに、無理矢理抱いたから」
「でも、それは、その。恋人同士なら当たり前だし」
 
 確かに俺は抱きたい側で、抱かれたい訳じゃない。
 その時点で一方的な感情だし律が同じことを思っていたとして、それは仕方のないことだ。結局どっちかが譲らなきゃいけない。
 ……俺としては律に譲って欲しいけど。
 
「それにもう一個謝らなきゃならないんだけど」
「え?」
 
 律が起き上がって、俺に噛み付くようなキスをした。
 さっきの触れるだけの優しいキスじゃない。食い尽くされそうなくらい貪られて、恐怖に動けなくなる。
 情けないことに、目尻から涙が零れ落ちた。
 律はそれを舐めとって、今度は優しいキスをする。
 
「やっぱり、したいって思うんだ。お兄ちゃんを抱きたいよ」
 
 そうは言うけれど、抱きしめてきただけで律がそれ以上してくる様子はない。
 
「でも、今日はしないからね。怖がらなくていいよ」
 
 それはいつかするってことなのか?
 
「理由を聞いたら、僕を怖がるお兄ちゃんがさ、なんだか可愛く思えてきちゃうし……まずいなあ」
「か、可愛いとか言うな。俺は本気で悪いと思ってるのに」
「僕も凄い反省してる。だから、嫌いにならないで?」
「嫌いになんてなるわけない」
「良かった」
 
 甘いキスに安心して、俺も応えた。
 やっぱり律が大好きだ。
 不穏なことは言われたけど、無理矢理してくることはなさそうだし、理由も判ってもらえたし……。
 きっとこのまま、怖さも薄れて元に戻れるよな?
 
 目が合うと、律が優しく可愛く笑ってくれたので、俺も笑った。
 
 それから冷めてしまった夕食を食べ、買ってきたケーキをデザートに食べた。
 久々のお泊り、律を抱きしめて眠っていつも通りの幸せな週末。
 律も意識しているのか、ひたすら甘やかしてくれた。いっぱい大好きって言って、優しいだけのキスを何度もかわした。
 
 日曜の夜律が帰る頃には、学ラン姿可愛かったとか、早く次の週末がこないかなとか、そんな想いばかりになっていた。
 
 結局最後に残るのは、可愛くて愛しい律への恋心。ただそれだけ。 
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