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第二幕

2踏目(R18

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 出しっぱなしにしているシャワーの音よりもやらしい水音が開かれた足の間から響く。
 白くなめらかな太腿に水滴が零れ落ちていくのがエロティックだ。
 シャツの前は全開、インナーは乳首が見える辺りまで押し上げられ、下半身は僕の手によって全て脱がされている。目でも楽しめる幸せ。
 僕もいつ射精してしまってもいいように、下だけは全て脱いでいた。
 
「っ、く……う」
 
 手錠ががしゃりと音を立てる。苦しげな吐息を分けて欲しくて口付けると、舌をがりりと噛まれた。
 
 血の味に、興奮する。
 
 僕にこういったことは快感にしかならないって判ってて噛むなんて、やっぱ直人さんは僕のことが好きなんだ。嬉しい。
 血の滲む舌で直人さんの唇を舐めると、まるでルージュを引いたみたいになった。
 
「綺麗、直人さん……」
「っ……馬鹿、何言って……」
 
 息を詰めて喘ぐ。中、僕の指をしっかり覚えてるみたい。
 タチしかしないって言ってたけど、絶対ネコの素質あると思う。
 ちゃんと前立腺で快感を得られているようだし、声も出てるもの。
 
「よせ、指……抜け」
「恋人同士なのに、どうしてそう嫌がるんですか? 大人なら身体の関係込みだって、貴方も納得してたじゃないですか」
「それはお前を、ネコだと思っていたからだ」
「僕は直人さんがタチでも好きなのに、酷い」
「貴様、何をぬけぬけと……」
 
 この状況でも僕を睨めるんだ。本当に理想通り過ぎるよ、直人さぁん。
 ああ、早くこの熱くて狭い中に入りたい。僕のでぐちゃぐちゃに掻き回したい。
 
「っ、そんな、掻き混ぜるな」
 
 喉仏がひくりと動くのに誘われて、水が滴る顎を舐めてからそこに吸い付いた。水よりも甘いような気がした。
 
「ね、命令してください。挿れろ望、って貴方のその低い声で命じて……」
 
 指先で前立腺を擦り上げながら懇願すると、直人さんは身体を震わせながら小さな声を上げた。
 
「あ……ッ。だ……」
 
 何か言おうとしてくれてる。僕は興奮しすぎて射精しそうな身体をなんとか抑え、シャワーを止めた。
 水音で声が掻き消されるのはもったいない。
 熱い中からは変わらずぐちぐちと卑猥な音が響いているけれど。
 
「誰が言う、か、死ねッ……!」
 
 とすんと、ハートに矢が刺さった気がした。
 
「じっ、焦らしプレイですね! たまりません! 本当にたまりません! ハァハァ……」
「………………」
  
 声のせいかな。焦らしプレイはされ続けていたけど目の前で言われると全然違う。
 低いけれど透き通っている直人さんの声が僕の指先ひとつで甘く掠れる。もっともっと聞きたくなる。
 
 殴られても蹴られても僕にとっては心地いいだけ。
 
 本当なら抵抗するためじゃなくて、プレイでしてくれたらいいのに……。でもそれは、まだ無理かな。
 
「好きですよ、直人さん。貴方がタチだってことは判ってますけど、でも……好きなんです」
 
 濡れた髪の毛を撫でながら囁いて、頬にキスをする。
 下肢を探る指はそのままだから、たまに苦しそうな声が漏れてくる。
 
「俺はお前なんて、好きじゃない」
「恋人同士なのに」
「恋人同士なんかじゃない。お前がネコなら考えてやるって程度で、元から好みじゃないんだよ」」
「そっ、そんな……! 僕を騙したんですね!」
「お前に言われたくない」
「合い鍵もくれたのに……」
「お前が勝手に取っていったんだ!」
 
 ここまできてなんという衝撃の事実……。
 
「じゃあ好きになってもらいます! 好きになってもらえるように頑張ります、身体から!」
「頑張るな、馬鹿……ッ」
 
 もう我慢できないくらい切羽詰まってたけど、自分の欲望を後回しにしてひたすら快感を与えることにした。
 
「く……ッ」
 
 たまにもれる甘い喘ぎが、触れてない僕の身体にも快感をもたらす。
 
 前も奥もどろっどろになるまで舐め続けた。
 直人さんが僕に挿れろと命令してくれることはなかったけど、それでもいい。我慢した。
 
「気持ちいいですか? 直人さん」
「ッ……気分は最悪だ」
「挿入しなければネコもタチもないでしょう? 命令して舐めさせてる、そう思えばいいんです」
 
 でも頭の中は挿れたいってそればっかり。耐え切れなくて、足に擦りつけてしまった。
 
「直人さん。直人さぁん……」
「っ……猫みたいに鳴くな」
「僕はタチですよ!!」
「そのネコじゃなくて。ああ、もう。プレイしてやるからこれをはずせ」
「だめっ! だって直人さん、はずしたら僕に突っ込むでしょ?」
「挿入しないさ。望……判るだろ? 俺たちにとって、セックスはそれだけじゃない」
 
 足で蹴り飛ばされて、タイルに尻餅をつく。
 
「そのまま開いてろ。足で……してやるから」
 
 直人さんの大きくて綺麗な足が僕のそれを擦る。
 嘘ッ……。夢にまで見た屈辱的な足コキ……! たまに当たる爪の感触がッ。
 
「ん、んんッ……直人さんっ」
「何だ? 人の腿に擦りつけてただけでこんなにガチガチのどろどろにしやがって。見ろ、足がもう汁まみれだ。この変態」
 
 ぞくぞくした。身体が震える。
 
「あぁっ、もっと言って、僕をなじって……!」
 
 それからたっぷり卑猥な言葉で責められ、爪で先端を引っ掻かれたその痛みに吐精した。
 白濁にまざる赤色に思わず恍惚とする。
 ここまで躊躇いなくいってくれるなんて、やっぱり直人さんは僕の理想だ。
 激痛に身体の震えと感動が止まらない。
 
「すご、かったぁ……」
「ほらな、気持ち良かったろ?」
「はい……」
 
 もうメロメロ過ぎる。凄いテクだ。凄すぎる。足だけでこんな……。
 
「お前に何をしたところで無駄なのはもう判った。それこそ殺す以外な。挿入なしの条件でいいなら、恋人になってやる」
「え……! いや、でも……挿れたい……」
「俺の言うことが聞けないのか、望」
「きっ、聞きますぅ!」
 
 か、カッコイイ……!
 こんな人が恋人になってくれるなら、それくらい我慢できる。じらしプレイだと思えばいいんだ!
 
「でも、そんな気になってくれたってことは、直人さんも僕のことが好きってことですよね!?」
「は、馬鹿か……。奴隷として囲っておくのもいいかと思っただけだ。手綱握って操縦してやるよ」
「あ、貴方に操縦されたいです……」
  
 直人さんにはめた手錠ががしゃりと音を立てる。
 
「だから……さあ、早くこれを外せ」
「はい」
 
 おとなしく従うと、直人さんは手首についた跡を撫でさすってから思い切り僕の腹を殴った。
 
「顔は勘弁してやる」
「……う、くっ」
「うずくまってる暇はないぞ、早くタオルとバスローブを持って来い。いつまで俺にこんな恰好をさせておくつもりだ」
「はっ、はいぃ……!」
 
 骨の芯から痺れた。殴ってくれたこともそうなんだけど、殴った瞬間の気持ち良さそうな顔とか、命令して当たり前だと思ってるとことか。
 えへへ、幸せ……。あとはこれで挿れさせてくれればなぁ。
 でも僕に挿れないって言ってくれただけでいいか。ご主人様がいてくれるってだけで嬉しいし。
 
 脱衣所の衣装ケースからバスローブとバスタオルを出して直人さんの元へ戻ると、浴槽にもたれかかってぐったりしていた。
 
「へ、平気ですか、直人さん!」
「お前、もう絶対にあのスプレー使うなよ。まだひりひりする」
「……すいません」
「もう一回殴らせろ」
「はいっ!」
「蹴らせろ」
「容赦ないですね、どうぞ!」
 
 弁えているのか、スーツの外から見える場所は絶対に痛め付けない。
 今日は威力が落ちているんだろうなあ。残念。
 
「ほとんどプレイじゃなく暴力なのにこれでも気持ちいいなんて、本当に変態だな」
「いいんです、直人さんがすっきりしてくれるなら、僕はそれで……ハァハァ……」
 
 直人さんが僕の下半身をちらりと見る。
 
「すっきりしてるのは俺だけじゃなさそうだがな」
 
 ……射精してた。そういえば下半身だけ丸出しのままだった。
 
「服を全部脱いでベッドへ来い。服は洗濯機に入れておいて構わないぞ」
 
 まさかのベッドへのお誘い!
 挿入させないって言ってたからこれはいわゆる我慢プレイ……?
 やばい、また出そう……興奮しすぎて。
 しかも素っ裸で来いだなんて。直人さんはバスローブ着てるのに、僕だけ。
 こんな屈辱的な構図興奮するなって方が無理な訳で。
 僕はいそいそと服を脱いでベッドへ向かった。 
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