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ご褒美追加

眼鏡とフェティシズム

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※直人視点


 新しくできた俺の恋人は、精神病一歩手前なんじゃないかと思うほどおかしい男だ。
 正直他人ごとながら、普通に社会人としてやっていけているのか不安になる。
 
 プレイの時以外は恋人に甘い、そんな俺でも常から殴ってしまうようなオーラを発している。プレイという枠を超越し、突っ込まずにはいられない奇行を繰り返すから、それも仕方ないとは思う。
 見ているとイライラする、そんな恋人でも、姿さえ見ていなければ何か喜ぶことをしてやりたくなる。
 好きな相手の笑顔が見たいのは当然だ。泣きわめく顔ももちろん大好きだが、両方見られるに越したことはないからな。
 
 そんな訳で、俺は今日伊達眼鏡をかけて、奴の部屋に押しかけた。
 こういう冷たそうに見えるアイテム、望は絶対に好きそうだと思った。
 
「……よぉ」
 
 軽く挨拶をしただけなのに、案の定よだれを垂らしそうな勢いでこちらを見ている。食いつきよすぎじゃないか?
 
「どっ……どうしたんですか、それ!」
「似合わないか?」
「いえ、すっごくすっごく似合ってます、あぁ……」
 
 玄関先なのに足元に縋って荒い息を吐き始めた。仕方ないので頭を踏んでやった。
 
「ズボンがシワになるだろう」
「だ、だって、凄い似合いすぎて……。もっと、もっと踏んでください!」
 
 こちらが引くほどの興奮っぷり。
 期待を裏切らない反応に満足しつつも、相変わらず気持ちの悪い男だと思わずにはいられない。
 たかが眼鏡をかけただけで、何が変わるのか。
 ファッションとして恋人に似合うからうっとり見とれているというよりは明らかに性的興奮を煽られている感じだ。変態め。
 
「そんなにこれがいいか?」
 
 眼鏡を指先で正しながら縋り付いてくる肩を足で押してやる。
 
「素晴らしいです! 鬼畜っぽい! 見てるだけで漏らしそうです」
 
 こんな風に喜んでもらいたくて眼鏡をかけてきたはずなのに、なんだか面白くない。
 俺が眼鏡を外すと明らかにがっかりしやがったので、腹を蹴ってやった。
 ……まあ、奴にはご褒美にしかならないだろうが。
 
「似合ってたのに……」
 
 まだぐずぐず言っている。
 でも、もうかける気にはなれない。とりあえず今日のところは。
 理由なんて判っていたが、腹立たしいのであえて気付かないフリをした。
 
 ……もう一発蹴ってみたら、少しだけすっとした。
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