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秋の音色

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※直人視点



 ある日家に帰ると、夕飯が芋づくしだった。
 サツマイモの煮浸し、サツマイモのみそ汁、サツマイモのサラダ、デザートにはサツマイモのボートバター乗せ。
 
「なんだ。近所のスーパーでサツマイモの大安売りでもしていたのか?」
「はいっ! 美味しそうだったので買ってきました」
 
 見ているだけで胸やけがする……。
 
「みそ汁とサラダだけでいい。後はお前が食え」
「え、ええー! せっかく作ったのに!」
「いくらなんでも、こんなに芋ばかり食いたいと思うか」
「で、でも、二品程度じゃ……」
 
 何か、言い方に引っかかるものを感じた。
 
「……何を企んでいる」
「な、何も……。全部食べてくれないと悲しいなあってくらいですよ!」
 
 絶対に何か隠している。まあ、用意されたのが芋という時点で、大体予想はつくが。
 
「外で食ってくる」
 
 一度は脱いだスーツを再び羽織ると、望が慌てたように縋り付いてくる。
 
「ま、ま、待ってください、白状しますからあ!」
 
 どうやら隠していることを言わないから外で食べてくるという脅しに聞こえたらしく、勝手に弁解を始めた。
 
「だって、直人さんのオナラって一回も聞いたことないんですよ!」
 
 ……案の定……。何故そんなものが聞きたいんだ。理解できない。
 
「変態だとわかってはいたが、いっそキチガイだな!」
「ああっ、もっと言ってください、ハァハァ……。で、でも好きな人の恥ずかしい姿がみたいのは、正常なことだと思うんです。きっと直人さんならオナラでさえ天上で鈴が転がるような音色……」
「黙れ」
 
 目眩がしてくるほど存在が恥ずかしい男だ。
 俺は縋る望の顔を足でぐりぐりと踏みつける。
 恍惚そうな顔しやがって。こうされることが真の目的じゃないだろうな。
 
「僕は直人さんに、あんな姿も、こんな姿も……心底恥ずかしい姿を見せているのに!」
「お前の場合、好きで見せているんだろうが」
「そうですけどぉ……」
 
 うざい。心底うざい。テーブルにある料理を吐くまで詰め込んでベッドへ縛り付け、そのままぽっこり出た下腹を踏み付けて、自分の屁の音でも聞かせ続けてやろうか……。癖になられたら俺にダメージがくるが……。
 
「直人さんの恥ずかしがる姿が見たいんです。ねっ、ねっ?」
「……恥ずかしがる姿ならいくらでも見ればいい。今だって凄く恥ずかしいぞ」
「えっ。な、何がですか?」
「お前みたいな恋人を持って心底恥ずかしい……」
「…………ぼ、僕が直人さんを恥ずかしがらせているなんて! はぁはぁ」
 
 ……どこまでも斜め上の反応をする男だな。
 でも、まあ……。本当……タチだってのに足開かされて突っ込まれて、なんだかんだできちんとイッて……それで、俺が恥ずかしくないとでも思っているのか、こいつは。
 死んでも言ってはやらないが、これ以上話が続く前にこいつを縛り上げてテーブルの上、片っ端から突っ込んでやるとしよう。
 上からも下からも。
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