イケメンと五月病

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本編

お友達から

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 溜息をついてるイケメン様。五月病かと社の女の子たちが色めき立つ。
 俺がへこんでいようと誰も見向きやしないくせに、やっぱり男は顔なんですねと思う瞬間。
 でも残念ながらそのイケメンは、お前たちになびくことはない。
 何故なら奴はホモで、どうやら俺に惚れているらしいから。
 あんな美形なのに男……しかも冴えない俺がいいなんて、まったくもって趣味が悪い。

 お前の周りには綺麗な花がいくらでもあるだろう。なのに雑草を選ぶなんて、どうかしてる。

 いつもなら女の子を放って俺のとこへくだらない雑談しに来るのに、昨日の今日で気まずいのか近付いて来ない。
 昨日は、去り際までイケメン……とか思ったが、内心言った台詞を後悔してたのか?

 手の内を明かしたのは奴だけ。俺はまだカードを伏せたまま。




「帰り慰めてあげるからデートしません?」
「んー。そうだな。佐久間さんに甘えるかな。でもちゃんと仕事はしよう」
「わかってますってー」
 
 そんな声が聞こえ、俺はデスクから立ち上がって思わず奴の手を引いて駆けていた。
 勢いで非常階段まで引きずって来たが、さてこれからどうしたもんか。
 
「お前、仕事中に……こんな風に出てきて」
「帰りなら、俺が付き合ってやるよ」
「何、デート?」
「五月病なんだろ。励ましてやる」
 
 支倉の態度は想像以上にいつも通りだ。昨日の台詞はなかったことにするつもりなのかもしれない。
 
「お前は昨日と違って、なんかすっかり元気だな」
 
 もっと思い悩んでると思ったか?
 支倉からすれば、俺は女にはモテもしないくせに同僚兼親友に告白された哀れな男だろうしな。
 
「俺はへこんでた原因、取り除けたんだよ」
「そうか……」
「けどまあ、せっかくだし、合コンのかわりに誰か紹介はしてもらうかな」
「ん。任せろ。親友の頼みだからな。どういうコがいい?」
 
 あーあ。そんな無理して作ったような笑顔見せやがって。
 
「俺に彼女ができるかもしれないと思っただけで、五月病になっちゃうような奴がいい」
「そ、れは……」
 
 支倉が目を見開いて言葉をつまらせる。
 
「俺、該当者、男しか知らないんだけど」
「うん」
「……それでいい?」
「とりあえず、お友達からな」
「親友から降格してる」
 
 軽口を叩いてはいるが、支倉は震えていた。
 俺相手に緊張とかするんだ、こいつ。なんか可愛いな。
 俺は少し背伸びして、支倉の頬に口付けた。唇へは勇気が足りない。
 
「とりあえず、帰りにデートってことで……。仕事場戻るか」
「あ、え? あ……」
 
 その日のイケメン様は、仕事がまったく手についていなかった。頭の中は五月から遡ってすっかり春爛漫。

 ……まあ、俺もなんだけど。
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