イケメンと五月病

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本編

狼にはさせない

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 帰り、駅周辺を歩きながらうろうろ。今日は気になる職場のイケメン様と、アフターファイブをデートで過ごす日。
 
「どこ入る?」
「こういうのは、お前の方が得意だろ。幹事とかよくやってんだし」
「あ、そ、そうだな」

 合コンとかもよく開いてて、会社では気配りもできる厭味のないスーパーヒーロー。なのに、俺相手に店の一つも決められないくらい、緊張してんだぜ。こんな優越感はそうないな。
 
「それとも、うちに来るか?」
 
 ちょっとの下心を含ませて、誘ってみる。来るのが初めてって訳でもないのに、奴は盛大に赤くなった。
 馬鹿、こっちがつられて照れる。
 
「何赤くなってんだよ」
「いや、だってお前……」
「来たことくらいあるだろ、今更」
「今日は止めておく。居酒屋でいいよ、居酒屋で」
「何で」
「……言わせるなよ。自分の身が可愛かったら、狼をそんな風に連れ込むな」
 
 とんでもなく格好いい顔を近付けて、そんな風に凄んでくる。
 そういう劣情を俺に抱けるのかと思ったら、なんだか変な感じがした。でも嫌じゃない。
 
「じゃ、今日は居酒屋にしておくか」
「ああ」
 
 俺があっさりそう言ったのを、少しは残念に思ってる?
 というか、すっかり自分が抱く側でいる気な訳ね。俺だって男なのに、自分が襲われるとは思ってもみないんだろうか。
 いざとなった時に慌てる姿を見てみたいから、今はそういうことにしておいてやろう。
 
「楽しそうだな」
 
 自分がらしくないことは判っているのか、支倉がやや拗ね気味にそう呟く。そんなところも可愛く見えるんだから、俺も重症。
 
「そりゃ、お前みたいな男が俺に惚れてるんだから、楽しくないっていう方が嘘だろ」
「趣味が悪いぞ、お前」
「どっちが。それに俺の趣味は悪くないと思うぞ。好きになった相手は社内一のイケメン様だし?」
「お前、ホント馬鹿……」
 
 背中を向けてもスタイルの良さが判る。こいつはやっぱり格好いい。男としては多少、劣等感があるにはある。でもそれ以上に好きだからな、仕方ない。
 
 酔ったフリしてお持ち帰りされて、食おうと襲ってきたところを逆に押し倒してみるとかどうだろう。
 でもきっと帰り際まで紳士なんだろうな。俺はいつまでも、紳士ではいられないけどな。
 いつかお前の耳元で抱きたいとか突っ込みたいとか囁いて、慌てふためく姿を見るのが今から楽しみでたまらない。 
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