イケメンと五月病

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その後の話

忘年会の前に

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 今年も残すところ、あと一ヶ月だ。支倉と付きあいだして、もう半年経ったことになる。
 いろいろあったな。七夕に、夏休みハロウィンと。
 初めは俺を抱くんだなんていきまいていた支倉も、今ではすっかり淫乱になってしまった。
 あ、これは元からか。
 
「お前、今何か、凄く意地悪なことを考えてなかったか?」
「別に」
 
 そんでもって、凄く鋭くなった。
 ビールを片手に、二人で酒盛り。恋人同士になっても、こういう関係は変わらない。
 ただ、ほどよく酒を飲んだ後にセックスが加わるようになっただけ。
 
「今年もあと一ヶ月だな、と思っていただけだ」
「ああ、そうだな。早いなあ。隆弘と付きあい初めて半年、いろいろ……されたな」
「まあしたよな。これからもするけどな」
「そ、そんな宣言しなくていい」
「されたくないのか?」
 
 黙り込むな馬鹿、可愛すぎて酒放り出して押し倒したくなるだろ。
 
「まあ、されたくないって言ってもするけどな」
「サドめ……」
 
 そう言いながらビール缶を傾ける。嬉しいくせに、素直じゃない。
 
「そういえば隆弘、今年、忘年会どうするんだ?」
「あー……」
 
 普段は飲み会を断る俺でも、さすがに忘年会は参加しない訳にはいかない。
 去年は支倉のモテっぷりを目の当たりにして、爆発しろこのイケメンが、なんて思ってたっけな。
 
「そりゃ、行くさ、普通に。二十日だっけ? まだだいぶ先の話だろ」
「俺が訊いてるのはそういうことじゃなくて……」
 
 お酒に酔って頬を赤く染めた支倉が、気まずそうに目を逸らす。
 ……赤いのは、酒のせいだけじゃないかもしれないな。
 
「その、忘年会が終わったあと、どうするかって。お前去年は、さっさと帰ったから……」
「そうか。お前その頃にはすでに俺のこと好きだったんだもんな。本当は俺と一緒に帰りたかったりした?」
 
 冗談で訊いたのに、支倉はますます真っ赤になった。
 え、マジで? そうか。そうだったのか……。去年の忘年会、すでにそんなふうに俺のことを見つめていたかと思うと、胸が熱くなる。
 
「誘って、今日みたいに、家で二次会、したかったんだ。二人だけで。でも、女の子の誘いを断ってまで、お前に一緒に帰りたいって強引に誘ったら、おかしいだろ。変に思われるだろ? だから、言えなかったんだ」
「やっぱりお前でも、人の目は気になるんだな」
 
 意外だった。こいつの社内での行動を見る限り、人目を気にしているようには思えん。いつ誰にばれてもおかしくないような熱い視線で、いつも俺を見てる。
 まあ、俺も人のことを言えた義理じゃないんだが。
 
「馬鹿、違う。……お前に、変に……思われるから」
「……支倉」
 
 ダメだ。もう酒どころじゃない。
 
「一次会終わったら、一緒に帰るか、肩を並べて」
「い、いいのか?」
「お前こそ、いいのかよ」
 
 男二人で肩を並べてさっさと帰るなんて、いくら仲良くたっておかしいだろ。しかも、支倉は本人が望まぬとも、目立つ男だし。
 きっとお互い、同じことを気にしていると思う。なんつか、もうばれたっていいかなと。決定的な証拠がなきゃ、違うって言い張れるしな。できてると思われるくらい、たいしたことじゃない。
 むしろ、いっそお前が俺のもんだって、公言しちまいたいくらいだ。だから、手を出すなって。
 
「去年言えなかったことだぞ。嬉しいに決まってる」
「それくらいで喜んでるなよ。忘年会終わったら、クリスマス、年末年始と、恋人同士っぽいイベント目白押しなんだからな」
「嬉しくて俺、死んでしまうかもしれない」
「馬鹿」
 
 お前の台詞にやられて、俺のほうが瀕死状態だっつうの。
 気づけば俺はビール缶を握りつぶして、支倉にキスをしていた。
 テーブルの下に敷かれている新品のカーペットにビールが零れて染みができたが、もう知るもんか。
 
 本当にさ、俺はお前が初めてなんだよ。恋人と一緒に過ごすクリスマスも、年末も。今から楽しみにしていて、まさかその手前でひとつ、イベントが増えるなんて思わなかった。忘年会なんて、去年と同じくこいつがもてんの見て、でも去年とは違って嫉妬して終わりかと思ってた。

 当日は覚悟しておけよ、支倉。付きあい始めてから俺がしてきた無体なことなんて忘れちまうくらい、濃い一夜にしてやるから。
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